「会計」の基本知識

クラウドツールとは?会計×工事管理を効率化する5選を紹介


更新日: 2025/12/17
クラウドツールとは?会計×工事管理を効率化する5選を紹介

この記事の要約

  • 会計と現場のズレを解消するクラウド活用術
  • ANDPADなど実名でおすすめツール5選を比較
  • インボイス対応や原価管理を自動化し利益最大化
目次
『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに

建設業の会計業務を変えるクラウドツールとは?基本を解説

建設業界において、現場の進捗と会計業務(原価管理・支払・請求)は密接に関わっていますが、これらを別々のシステムやアナログな手法で管理している企業は少なくありません。ここでは、インターネット経由でデータにアクセスし、会計と工事情報をリアルタイムに連携させる「クラウドツール」の基本について解説します。場所を選ばずに最新の数値を確認できる環境は、経営の意思決定スピードを劇的に向上させます。

クラウドツールとオンプレミス型の違い

従来の自社サーバーにインストールする「オンプレミス型」に対し、「クラウド型」はサーバー設置が不要で、初期費用を抑えやすい特徴があります。特に建設業では、現場からスマホで日報や経費を入力し、即座に会計システムへ反映できるクラウド型の利便性が注目されています。

表:クラウド型とオンプレミス型の違い比較

比較項目 クラウド型(SaaS) オンプレミス型(インストール型)
初期費用 安価(月額・年額制が主流) 高額(サーバー代・ソフト購入費)
導入スピード 最短即日から利用可能 数週間〜数ヶ月かかる場合がある
場所・端末 インターネットがあればどこでも可 社内の特定PC・ネットワークのみ
法改正対応 自動アップデートで即時対応 手動更新や追加購入が必要な場合あり
データ連携 API等で他ソフトと連携しやすい 連携にはカスタマイズ開発が必要

なぜ今、建設業で「会計×工事管理」の連携が重要なのか

建設業では、資材高騰や人手不足により、正確な利益管理が急務となっています。さらに、インボイス制度電子帳簿保存法の施行により、請求書や領収書のデータ保存が義務化されました。これらに手作業で対応するのは限界があり、工事管理システムで入力した受発注データを、そのまま会計ソフトへ流し込む「データ連携」が、業務効率化と法令遵守の両立において不可欠となっています。

クラウドツール導入のポイント
  • 現場情報と会計データのズレをなくし、経営判断を高速化する
  • 法改正(インボイス・電帳法)への対応コストを最小化する
  • 場所を選ばない働き方を実現し、業務効率を向上させる

なぜ建設業の会計は複雑なのか?アナログ管理の限界

建設業の会計処理は、一般的な物品販売とは異なり、「工期が長い」「未成工事支出金の管理が必要」「現場ごとの原価把握」など特有の複雑さがあります。Excelや紙ベースのアナログ管理では、リアルタイムな経営状況の把握が難しく、どんぶり勘定に陥るリスクが高まります。ここでは、建設業特有の会計課題とアナログ管理の限界について掘り下げます。

工事ごとの原価管理と会計処理のズレ

現場担当者が管理する「実行予算・原価」と、経理担当者が処理する「会計帳簿」の間には、タイムラグや認識のズレが生じがちです。

  • 集計の遅れ
    現場ごとの材料費や外注費の集計に時間がかかり、工事完了後でないと正確な利益が確定しない。

  • 振替ミス
    「未成工事支出金」と「完成工事原価」の振り替えミスが発生しやすい。

  • 請求漏れのリスク
    追加工事や仕様変更の費用が、即座に会計データに反映されず、請求漏れが起きる。

複数の現場における経費精算の手間

建設業では複数の現場が同時に進行するため、現場監督や職人は移動が多くなります。アナログ管理の場合、領収書をため込んでから月末にまとめて経理に提出するため、処理が集中し、経理担当者の負担が増大します。また、領収書の紛失リスクや、どの現場の経費かが不明瞭になる問題も頻発します。

法律改正への対応コストの増加

インボイス制度の開始により、取引先(一人親方など)が適格請求書発行事業者かどうかを確認し、消費税額を正しく計算・記帳する必要が生じました。アナログ管理では、請求書一枚ごとの確認作業や保管業務に膨大な時間が割かれ、本来のコア業務である施工管理や経営分析に時間を割けなくなっています。

クラウドツール導入で実現する会計・工事管理の効率化メリット

クラウドツールを導入し、工事管理と会計業務をシームレスにつなぐことで、単なるペーパーレス化以上の経営的メリットが生まれます。重複入力の排除や、経営数値の見える化により、組織全体の生産性が向上します。

リアルタイムな予実管理と利益の見える化

工事管理システムに入力された発注・日報データが即座に原価として集計されるため、工事進行中に「現在どれくらいの利益が出ているか(予実管理)」を把握できます。これにより、赤字になりそうな現場に対して早期に対策を打つことが可能になります。

現場と経理部門のデータ連携による二重入力の削減

従来は「現場が日報に記入」→「事務員がExcelに入力」→「経理が会計ソフトに入力」という多重入力が発生していました。連携可能なクラウドツールであれば、一度入力したデータが見積・発注・請求・会計仕訳へと連動するため、入力ミスと手間を大幅に削減できます。

バックオフィス業務のテレワーク化・ペーパーレス化

請求書や注文書を電子データでやり取り・保存できるため、紙の書類を探したり保管したりする手間がなくなります。経理担当者も出社して紙の書類を処理する必要が減り、建設業のバックオフィス部門でもテレワークなどの柔軟な働き方が実現可能です。

表:導入前と導入後の業務フロー比較

業務フェーズ 導入前(アナログ・Excel) 導入後(クラウドツール連携)
発注・契約 紙・FAXでやり取り。郵送コスト発生。 電子契約・Web発注で完結。コスト削減。
原価管理 月末に領収書を集計するまで不明。 日々の入力でリアルタイムに自動集計。
請求業務 現場のメモを基にExcelで作成・印刷。 工事データからワンクリックで請求書作成。
会計処理 請求書を見ながら手入力で仕訳。 請求・入金データから仕訳を自動生成。

クラウドツールで工事データを確認する現場監督

自社に合う会計・工事管理システムの失敗しない選び方

数多くのツールが存在する中で、自社の課題に合ったものを選ばなければ、かえって現場の負担が増える結果になりかねません。ここでは、会計連携を重視したシステム選定の重要な視点を3つのステップで解説します。

STEP1:「会計特化型」か「工事管理一体型」かを見極める

ツールには大きく分けて、会計ソフト自体に工事管理機能がついた「会計特化型」と、現場管理システムが会計ソフトと連携する「工事管理一体型」があります。経理部門の効率化を最優先するなら前者、現場の工程・写真・図面管理も含めて効率化したいなら後者が適しています。

STEP2:既存の会計ソフトや他ツールとの連携性を確認する

すでに「勘定奉行」や「弥生会計」、「freee」などを利用している場合、それらのソフトとAPI連携(データ自動連携)ができるかを確認してください。CSVインポートのみの対応か、ボタン一つで仕訳データが送れるかによって、経理の実務負担は大きく変わります。

STEP3:現場の職人や担当者にとっての操作性をテストする

どれほど高機能でも、現場の職人や監督が使いこなせなければ意味がありません。スマホやタブレットでの入力が簡単か、画面が見やすいか(UI/UX)は非常に重要です。導入前に現場担当者を含めたトライアルを行うことを推奨します。

見落としがちなチェックポイント
  • サポート体制:建設業界特有の商習慣に詳しい担当者がいるか
  • セキュリティ基準:通信の暗号化やISMS認証取得など、データの安全性が確保されているか

建設業の業務フローに適し、かつ会計業務(原価管理・仕訳・請求)の効率化に貢献する代表的なクラウドツールを5つ厳選しました。それぞれの特徴と、連携の強みを比較します。

表:おすすめクラウドツール5選の比較一覧

ツール名 タイプ 特徴・会計連携 無料トライアル
ANDPAD 一気通貫型 シェアNo.1。受発注から会計連携まで網羅 要問合せ
AnyONE 既存活用型 「Excel」に近い操作感。主要会計ソフトと連携 あり
建設BALENA 業務効率型 一度の入力で全帳票作成。中小工務店に最適 あり
freee クラウド会計 経理特化。APIで多くの施工管理アプリと連携 あり
建設奉行クラウド 会計特化型 建設業特有の会計基準に完全準拠。大規模対応 あり(体験版)

ANDPAD(アンドパッド):原価管理から会計連携まで一気通貫

【原価管理から会計連携まで一気通貫で管理したい企業向け】
利用社数18万社以上(※2024年時点)を誇る、建設業界シェアNo.1クラスの施工管理アプリです。引合から施工、メンテナンスまでを一元管理でき、オプション機能の「ANDPAD受発注」を利用することで、発注データをそのまま会計ソフト用の仕訳データとして出力可能です。

  • 主な機能:工程表作成、チャット機能、電子受発注、実行予算管理、主要会計ソフト(勘定奉行、弥生会計、freeeなど)とのCSV連携

AnyONE(エニワン):既存の会計ソフトを活かしつつ現場管理を強化

【既存の会計ソフトを活かしつつ現場管理を強化したい場合】
工務店業務に必要な機能をバランスよく搭載し、Excelのような操作感で使えるため、ITに不慣れな現場でも定着しやすいのが特徴です。現在使用中の会計ソフト(弥生、奉行、JDLなど)を変えずに、AnyONEで作成した入出金データをそのまま渡す仕組みが整っています。

  • 主な機能:見積作成、顧客管理、アフター管理、主要会計ソフト向けデータ出力、原価管理

建設BALENA(バレナ):中小規模向け・低コストで導入しやすい

【中小規模向け・低コストで導入しやすいシンプル設計】
中小工務店やリフォーム会社向けに特化しており、「一度の入力で全ての書類を作成する」ことをコンセプトにしています。見積もりデータがそのまま実行予算、発注書、請求書へと連動するため、入力ミスを極限まで減らせます。

  • 主な機能:現場写真管理、日報管理、見積・請求連動、連動型会計処理(CSVエクスポート)

freee(フリー):バックオフィス全体の効率化とAPI連携に強い

【発注・請求・入金管理に特化し、他アプリとも連携したい場合】
クラウド会計ソフトのシェアトップクラスであるfreeeは、「freeeプロジェクト管理」などを活用することで建設業の原価管理にも対応します。最大の特徴はAPI連携の豊富さで、施工管理に特化した他社アプリ(KANNAやSpiderPlusなど)とデータを自動連携させ、経理処理を完全自動化する構築が可能です。

  • 主な機能:AIによる自動仕訳、レポート作成、API連携、請求書発行、経費精算

建設奉行クラウド:大規模工事対応・伝統と信頼の会計特化

【大規模工事対応・正確な建設業会計を求める企業向け】
老舗のOBCが提供する、建設業会計に特化したクラウドシステムです。「未成工事支出金」や「完成工事原価」の振替など、複雑な建設業特有の会計処理をミスなく行えます。JV(共同企業体)管理にも対応しており、中堅〜大手ゼネコン・サブコンでの導入実績が豊富です。

  • 主な機能:財務会計、建設原価管理、支払管理、債権債務管理、電子申告対応、包括的なセキュリティ

クラウド会計導入に関するよくある不安と解消法

便利なクラウドツールですが、会計データを外部サーバーに預けることに対する不安の声も聞かれます。ここでは一般的な懸念点とその解消法について整理します。

データ漏洩やセキュリティに対する懸念

「クラウドは情報漏洩が怖い」と感じる方もいますが、実際には自社サーバーの管理よりも、専門業者が24時間体制で監視・運用するクラウドの方が安全性が高いケースが大半です。

一般的なクラウドツールのセキュリティ対策
  • 通信の暗号化(SSL/TLS):データを盗聴されないよう暗号化して送信する技術。
  • 自動バックアップ:災害やサーバー障害に備え、複数の拠点でデータを分散保存。
  • アクセス権限管理:担当者ごとに閲覧・編集できる情報を細かく制限する機能。

導入コストと費用対効果が見合うか

月額費用が発生しますが、サーバー保守費用、法改正対応のための更新料、そして何より「事務作業の削減による人件費削減」を考慮すると、多くのケースで費用対効果はプラスになります。例えば、経理担当者の残業が月20時間減るだけでも、ツールの月額費用を上回るコスト削減効果が期待できます。

現場スタッフが使いこなせるかどうかの不安

導入失敗の多くは「現場への定着不足」です。これを防ぐためには、機能が豊富なものより「画面がシンプルで見やすいもの」を選ぶことが重要です。また、導入初期にベンダー(開発会社)による操作説明会を実施したり、ITに強い若手社員を推進リーダーに任命したりするなどの対策が有効です。

クラウド会計ツールのセキュリティ対策イメージ

まとめ:クラウドツールで会計と工事管理を一元化し、業務改善へ

本記事では、建設業の会計業務と工事管理を効率化するクラウドツールについて解説しました。ツールを活用することで、正確な原価管理と法対応を同時に実現し、経営基盤を強化することができます。

記事の要点まとめ
  • 会計と現場のデータを連携させることで、二重入力のムダをなくし、リアルタイムな経営判断が可能になる。
  • インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正にも、クラウドツールなら自動的かつスムーズに対応できる。
  • ツール選びでは、自社の規模や課題に合わせて「一気通貫型」か「連携型」かを見極めることが重要。

会計・工事管理クラウドツールに関するよくある質問

最後に、クラウドツールの導入を検討する際によくある疑問をQ&A形式で解説します。

Q. 小規模な工務店でも導入するメリットはありますか?

はい、あります。小規模だからこそ、社長や少数のスタッフが兼務している事務作業を自動化することで、本業である営業や施工に集中できる時間が生まれ、売上アップにつながります。また、月額数千円から始められる安価なプランを用意しているツールも多く存在します。

Q. 現在使っている会計ソフトデータは移行できますか?

多くのクラウド工事管理ツールは、主要な会計ソフトとのデータ連携(API連携またはCSV連携)に対応しています。ただし、ツールによって連携の深さや対応ソフトが異なるため、導入前に必ず「お使いの会計ソフト名」を伝えて確認することをおすすめします。

Q. インボイス制度には自動対応していますか?

ほとんどの最新クラウドツールはインボイス制度に対応しています。適格請求書の発行だけでなく、受け取った請求書の登録番号照合機能を持つツールもあります。詳細は各ツールの機能一覧や公式サイトをご確認ください。

[出典:国税庁「インボイス制度の概要」]
[出典:国土交通省「建設業におけるICTの活用」]

『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに
NETIS
J-COMSIA信憑性確認
i-Construction
Pマーク
IMSM

株式会社ルクレは、建設業界のDX化を支援します