材料費の仕訳とは?在庫管理の基本ルールを建設業向けに解説

この記事の要約
- 建設業独自の材料費定義と正確な会計処理の重要性を解説します
- 購入・投入・決算の各段階における仕訳の流れを整理します
- 材料貯蔵品と未成工事支出金の適切な区別方法を明示します
- 目次
- 1. 建設業の会計における材料費の基礎知識
- 建設業における材料費の定義
- なぜ建設業では独自の会計処理が必要なのか
- 2. 建設業会計での材料費の仕訳フローとタイミング
- 材料購入時と現場投入時の仕訳ルール
- 決算時における棚卸資産の評価
- 3. 在庫管理の基本ルール:材料貯蔵品と未成工事支出金の区別
- 資産計上の基準と判断ポイント
- 端材や現場残材の適切な取り扱い
- 4. 読者が抱きやすい「材料費の会計処理」への不安と対策
- どんぶり勘定を防ぐ!実地棚卸の重要性
- 現場担当者と経理担当者の連携をスムーズにする方法
- 5. 自社に最適な会計管理方法の比較検討
- Excel管理と会計ソフト(ERP)の比較
- 外注費と材料費を区分する際の注意点
- 6. 建設業の会計業務を効率化するためのまとめ
- Q1. 現場に余った少額の釘やボルトも、すべて材料貯蔵品に戻すべきですか?
- Q2. 材料の購入価格が変動する場合、どの単価で仕訳をすればよいですか?
- Q3. 材料を誤って紛失してしまった場合、どのように仕訳しますか?
1. 建設業の会計における材料費の基礎知識
建設業の会計において、材料費は工事原価の主要な構成要素です。一般的な製造業や小売業とは異なり、建設業では工事が複数の会計期間にわたることが多く、材料の購入時点と消費時点が大きくずれることがあります。そのため、適切な期間損益を算出するための特殊な会計思考が求められます。
建設業における材料費の定義
建設業の材料費とは、工事を完成させるために直接的、または間接的に消費される物品のコストを指します。これらは用途に応じて主に以下の3つに分類されます。
- 主要材料費
木材、鋼材、コンクリート、セメント、レンガなど、建物の構造体そのものを構成する主要な資材です。 - 補助材料費
釘、ボルト、接着剤、溶接棒、塗料など、主要材料の消費や施工を補助するために使用される資材です。 - 社内製品製造材料費
自社の作業場などで部材をあらかじめ加工・製造する際に必要となる原材料です。
なぜ建設業では独自の会計処理が必要なのか
建設業は「受注生産方式」であり、かつ「工期が長い」という特徴があります。もし材料を購入した時点で全額を費用として処理してしまうと、工事が完了していない期に多額の赤字が発生し、完成した期に過大な利益が計上されるという歪みが生じます。
適正な会計報告を行うためには、購入した材料のうち「未消費のもの」は資産として保留し、工事の進捗や引き渡しに合わせて費用(完成工事原価)へ振り替える処理が必要となります。
- 建設業における材料費管理の目的
・工事ごとの正確な原価を把握し、赤字受注やコスト超過を早期に発見するため
・決算期において適正な棚卸資産を計上し、健全な財務諸表を作成するため
・資材の過剰発注や紛失、盗難を防ぎ、キャッシュフローを改善するため
2. 建設業会計での材料費の仕訳フローとタイミング
材料費の会計処理は、仕入れ時、現場投入時、そして決算時の3つのタイミングで適切に行わなければなりません。特に材料が「現場へ直送されるか」あるいは「一度倉庫に保管されるか」によって、使用する勘定科目が変わる点に注意が必要です。
材料購入時と現場投入時の仕訳ルール
材料を購入した際、搬入先の実態に合わせて以下の通り仕訳を行います。
【表:搬入シチュエーション別の仕訳科目と処理内容】
| 搬入のシチュエーション | 使用する勘定科目 | 会計処理の内容 |
|---|---|---|
| 購入後、直接現場へ搬入 | 未成工事支出金 | 工事原価(仕掛品)として即時に計上する |
| 購入後、一旦自社倉庫に保管 | 材料貯蔵品 | 棚卸資産として計上し、消費されるまで待機させる |
| 倉庫から現場へ払い出し | 未成工事支出金 | 材料貯蔵品から未成工事支出金へ勘定を振り替える |
特定の工事のために発注し、そのまま現場で使われるものは「未成工事支出金」として扱いますが、汎用品などで在庫として抱える場合は「材料貯蔵品」として資産計上します。

決算時における棚卸資産の評価
決算期末には、実際に手元に残っている材料の数量と金額を確認する「棚卸(たなおろし)」作業が発生します。帳簿上の在庫数と実際の在庫数に差異がある場合は、棚卸減耗損などの科目を用いて調整を行い、正しい資産価値を確定させます。
[出典:一般財団法人建設業振興基金 建設業経理士検定試験 基準]
3. 在庫管理の基本ルール:材料貯蔵品と未成工事支出金の区別
材料費の会計実務において最も重要なのが、「材料貯蔵品」と「未成工事支出金」の厳密な区別です。これらを混同すると、現場ごとの原価率が不正確になり、経営判断を誤る恐れがあります。
資産計上の基準と判断ポイント
どちらの科目で処理すべきかは、その材料の「専用性」と「消費のタイミング」で判断します。
- 材料貯蔵品として扱うべきもの
・複数の現場で共通して使用するボルト、釘、軍手などの消耗品 ・将来の工事を見越して一括購入し、自社倉庫で管理している木材や鋼材 - 未成工事支出金として扱うべきもの
・特定の工事のために設計・発注されたキッチンセット、サッシ、タイルなどの特注品 ・現場に直接搬入され、その工事以外には転用できない資材
端材や現場残材の適切な取り扱い
工事が完了した際、現場で使い切れなかった材料(残材)の処理も重要です。余った材料を倉庫に戻す場合は、以下の手順で会計処理を行います。
- 現場での残材特定:使用しなかった材料の数量と金額を確定させる。
- 振替仕訳の実行:現場投入時に計上した「未成工事支出金」をマイナスし、その分を「材料貯蔵品」に振り戻す。
- 原価の適正化:この処理を行うことで、その現場の「実際の消費額」だけが正確に工事原価として残ります。
- 残材処理を怠った際のリスク
・現場の利益率が見かけ上低くなり、正しい採算管理ができなくなる
・本来資産として残っているはずの材料が費用化されたままになり、税務上の問題が生じる
・資材の紛失や私的流用があっても気づきにくい管理体制になる
4. 読者が抱きやすい「材料費の会計処理」への不安と対策
「現場と経理で数字が合わない」「材料の管理が複雑でミスが起きやすい」といった悩みは、多くの建設会社が抱えています。これらを解消するためには、現場の動きをリアルタイムで反映させる仕組み作りが必要です。
どんぶり勘定を防ぐ!実地棚卸の重要性
帳簿上の数値だけに頼っていると、材料の破損や紛失、盗難による資産の減少に気づけません。定期的な「実地棚卸」は、会計の正確性を担保するだけでなく、現場の規律を高める効果もあります。実地棚卸を行う際は、棚卸表を作成し、複数名でダブルチェックを行う体制が理想的です。
現場担当者と経理担当者の連携をスムーズにする方法
情報の断絶を防ぐため、以下の運用ルールを徹底することが推奨されます。
- 入出庫伝票のデジタル化
紙の伝票ではなく、スマートフォンやタブレットでその場で入出庫を入力できる仕組みを導入します。 - 材料消費報告書の月次提出
毎月の締め日に、どの現場で何をどれだけ消費したかを現場監督が報告し、経理側で突合します。 - 資材コードの統一
見積もり、発注、仕訳で共通の資材コードを使用することで、データの連携を容易にします。

5. 自社に最適な会計管理方法の比較検討
材料費の管理を効率化するためには、自社の規模や工事の件数に適した管理手法を選択する必要があります。Excelでの手書き管理と、専門の会計ソフト(ERP)を活用する方法を比較します。
Excel管理と会計ソフト(ERP)の比較
【表:管理手法別の特徴と比較】
| 比較項目 | Excel・手書き管理 | 建設業向け会計ソフト・ERP |
|---|---|---|
| 導入コスト | ほぼゼロ | 数万〜数百万円(初期・月額) |
| 入力の負担 | 高い(二重入力が発生しやすい) | 低い(一度の入力で連動する) |
| 情報の正確性 | 計算ミスや上書きミスのリスクがある | 自動計算とバリデーションでミスを防ぐ |
| 原価把握 | 集計作業に時間がかかり、遅れがち | リアルタイムで工事ごとの原価がわかる |
小規模で工事数が限定的な場合はExcelでも対応可能ですが、成長フェーズにある企業や、複数の現場を抱える企業では、建設業特有の「未成工事支出金」の振替を自動で行えるシステムの導入が、結果として人件費などのコスト削減につながります。
外注費と材料費を区分する際の注意点
建設業界では、材料の調達と施工を一括で依頼する「材工込み外注」が多く見られます。これを一括して「外注費」として仕訳をするのか、見積書の内容に基づいて「材料費」と「外注費」に按分するのか、社内で統一した会計方針を持つことが重要です。一貫性のない処理は、過去のデータとの比較を困難にします。
6. 建設業の会計業務を効率化するためのまとめ
建設業における材料費の仕訳は、プロジェクトの成否を分ける原価管理の第一歩です。複雑な業界特有のルールを理解し、実務に落とし込むことで、経営の透明性は飛躍的に向上します。
- 本記事の重要ポイントまとめ
・建設業の材料費は、工期に合わせて「資産」から「費用」へ振り替える独自の処理が必要
・現場直送は「未成工事支出金」、倉庫保管は「材料貯蔵品」として区別を徹底する
・決算時の棚卸と現場残材の振替を正しく行い、正確な利益を算出する
・現場と経理の連携を仕組み化し、必要に応じてITツールによる自動化を検討する
正確な会計処理を継続することで、資金繰りの予測精度が高まり、金融機関からの信用力アップにも寄与します。まずは自社の現在の仕訳フローを見直し、漏れや遅れが生じていないかを確認することから始めましょう。
[出典:国土交通省 建設業簿記概説]
Q1. 現場に余った少額の釘やボルトも、すべて材料貯蔵品に戻すべきですか?
A.会計上の「重要性の原則」に基づき、管理コストが材料の価値を上回るほど少額なものについては、厳密に振り戻さない運用も一般的です。ただし、「1万円未満は現場消費とする」などの具体的な社内規定を設けておくことが、税務調査対策としても有効です。
Q2. 材料の購入価格が変動する場合、どの単価で仕訳をすればよいですか?
A.あらかじめ届け出た「棚卸資産の評価方法」に従う必要があります。建設業では特定の現場のために購入することが多いため「個別法」がよく使われますが、ボルトなどの汎用品は、仕入れ単価を平均する「移動平均法」を用いるのが実務上は正確です。一度決めた方法は継続して使用する必要があります。
Q3. 材料を誤って紛失してしまった場合、どのように仕訳しますか?
A.実地棚卸で紛失が判明した場合、不足分を「棚卸減耗損」という科目で費用処理します。これは営業外費用、あるいは原価として計上されます。紛失が頻発する場合は、会計処理以前に、現場の保管管理体制を抜本的に見直す必要があります。





