「会計」の基本知識

外注費の会計処理とは?建設業の実務で重要な勘定科目を解説


更新日: 2026/01/05
外注費の会計処理とは?建設業の実務で重要な勘定科目を解説

この記事の要約

  • 外注費の定義と建設業の利益管理における重要性を網羅。
  • 勘定科目の分類や未成工事支出金の処理手順を構造化。
  • インボイス制度下での税務調査リスクと対策を客観的に解説。
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外注費の会計処理が建設業で重要な理由

建設業において外注費は、原価の大部分を占める極めて重要なコスト項目です。適切な会計処理を行うことは、単なる記帳にとどまらず、現場ごとの収益性を正しく把握し、税務当局からの指摘を回避するための基盤となります。

建設業における外注費の定義と役割

建設業における「外注費」とは、自社で直接雇用している従業員ではなく、他の建設業者や一人親方などの外部リソースに工事の一部を委託した際に発生する費用のことです。
多くの専門工種が組み合わさる建設現場では、すべての作業を自社で完結させることは稀であり、外注費の管理が会計上の大きなウェイトを占めます。

外注費の主な役割
  • 原価管理の適正化
    各現場に紐づく外注費を正確に集計することで、正確な工事粗利を算出できます。

  • キャッシュフローの安定
    支払条件が異なる複数の外注先を管理し、資金繰り計画の精度を向上させます。

  • 税務コンプライアンスの維持
    「外注費」として認められる実態を維持することで、適正な税額控除を可能にします。

税務調査で「外注費か給与か」が厳しくチェックされる背景

会計実務において最も警戒すべきリスクは、実態が「雇用」であるにもかかわらず、形式だけを「外注」として処理することです。
もし税務調査で給与とみなされた場合、会社は過去に遡って多額の消費税の納付や、源泉所得税の未納分、さらに延滞税などの附帯税を課せられる可能性があります。税理士や専門家も、この区分の客観性を強く重視します。

明るい事務所で工事請負契約書と請求書を照合する担当者の写真

建設業の会計実務で使われる主な勘定科目

建設業の会計では、発生した費用を「工事原価」として分類します。外注費はその中でも中核をなす科目ですが、材料費や諸経費、さらには決算時に発生する特有の科目との使い分けを理解しておく必要があります。

外注費(労務外注費・支払外注費)の基本

実務上、外注費はさらに「労務外注費」と「支払外注費」に細分化して管理されることがあります。
これらは施工の内容に応じて、帳簿上の透明性を高めるために使い分けられます。

  • 労務外注費
    主に職人の手間(労働力)を委託する場合に使用されます。

  • 支払外注費
    材料の調達を含めて、特定の工事範囲を丸ごと委託する場合に使用されます。

材料費・経費との違い(表で整理)

外注費を他の原価科目と混同すると、正確な原価分析が困難になります。以下の表で、主要な科目間の定義の違いを整理します。

勘定科目 内容の定義 会計処理のポイント
外注費 外部の業者へ施工や加工を委託した費用 成果物の完成・引渡しに対して対価を支払う
材料費 工事のために購入した資材や物品の代金 モノの購入であり、外部の加工賃は含まない
労務費 自社で雇用する従業員に支払う賃金 雇用契約に基づき発生し、社会保険料が伴う
経費 外注費・材料費・労務費以外の諸費用 通信費、旅費交通費、事務用品費など

建設業特有の「未成工事支出金」としての処理

決算期を跨ぐ工事においては、外注費の会計処理に注意が必要です。
工事が完成して引き渡されるまでは、支出した外注費を「費用」として損益計算書に載せることはできません。これらは貸借対照表上の「未成工事支出金(資産)」として計上し、完成時に初めて原価へ振り替えます。

未成工事支出金の処理上の注意
  • 期間損益の適正化
    工事の収益(売上)が発生する期と、そのための費用が発生する期を一致させる必要があります。

  • 決算時の仕訳
    (借方)未成工事支出金 / (貸方)外注費(または現金・未払金)

[出典:国税庁 工事原価の意義と範囲]

失敗しない外注費の会計処理ステップ

適切な会計処理を継続するためには、現場と事務部門が連携したフローの構築が不可欠です。契約から支払、そして記帳までの工程を構造化し、漏れのない管理体制を整えましょう。

契約形態の確認(請負契約か派遣契約か)

まず最初に行うべきは、取引の実態が「請負」であることを確認する作業です。
会計上の外注費として処理するためには、自社が直接作業員に指揮命令を下していないことが前提となります。

  • 1. 請負契約書の締結
    業務範囲、納期、報酬額を明記した書面を取り交わします。

  • 2. 施工体制の確認
    外注先が自らの責任で作業を管理し、道具や資材を自己負担しているかを確認します。

  • 3. 指揮命令系統の分離
    自社の現場監督が外注先の作業員に対し、直接的な指示を出しすぎていないかチェックします。

請求書の受領と仕訳のタイミング

外注費の計上時期は、原則として「検収(工事完了の確認)」が完了した時点です。
請求書が届いた日付ではなく、実際に工事が終わった日付で会計処理を行うことが重要です。

  1. 工事完了報告の受領:外注先から施工完了の通知を受ける
  2. 現場検収の実施:仕上がりが発注通りであるか、現場監督が確認し、検収印を押す
  3. 請求書の受領と照合:届いた請求書の金額が、検収済みの内容と一致しているか照合する
  4. 会計ソフトへの入力:検収日を計上日として、仕訳を起票する

プレハブ事務所でPC画面と現場写真を確認しながら請求書を扱う風景

外注費と他科目の比較(表で整理)

実務で判断に迷いやすい「外注費(請負)」「給与(雇用)」「派遣費(労働者派遣)」の3つを比較します。会計処理における税務・労務上の取り扱いは根本的に異なります。

比較項目 外注費(請負) 給与(雇用) 派遣費(労働者派遣)
主な勘定科目 外注費 給与・手当 支払手数料・外注費
指揮命令権 外注先にある 自社にある 自社(派遣先)にある
消費税の扱い 課税仕入(控除可能) 対象外(控除不可) 課税仕入(控除可能)
社会保険料 負担なし 会社負担あり 負担なし
源泉徴収 原則不要(個人は例外) 必要 不要
残業代の支払 不要 必要 不要(派遣元へ支払)

[出典:厚生労働省 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準]

外注費の会計処理でよくある不安と注意点

制度の改正や税務判断の複雑化により、会計担当者が直面する課題は増えています。特に2026年現在、インボイス制度の経過措置期間中であることも含め、最新の動向を踏まえた対応が必要です。

インボイス制度開始後の消費税仕入税額控除

インボイス制度の導入により、適格請求書発行事業者ではない外注先(免税事業者の一人親方など)への支払は、会計上の仕入税額控除が制限されます。

2026年時点のインボイス対応ポイント
  • 経過措置の活用
    2026年9月30日までは、免税事業者からの仕入れであっても、消費税相当額の80%を控除できる特例があります。

  • 登録番号の確認
    新規の外注先とは、必ず適格請求書発行事業者の登録有無を確認し、契約書や請求書に番号を記載してもらいます。

  • 端数処理の統一
    インボイスのルールに基づき、1つの適格請求書につき1回の消費税計算を行うよう徹底します。

源泉徴収が必要なケースと不要なケース

法人の外注先への支払いに源泉徴収は不要ですが、個人の一人親方や専門家へ支払う際には、業務内容によって会計処理時に源泉所得税を差し引く必要があります。

  • 施工そのものに対する報酬
    一般的な建築・土木工事の施工代金であれば、源泉徴収は原則不要です。

  • 設計・デザイン・測量等の報酬
    これらは所得税法上の「報酬・料金」に該当するため、個人に支払う場合は10.21%(100万円超は20.42%)の源泉徴収が必要です。

  • 支払調書の作成
    源泉徴収が発生した場合は、翌年1月末までに税務署へ支払調書を提出する義務があります。

まとめ:正確な会計処理で建設経営の健全化を

建設業における外注費は、金額が大きく税務上の焦点となりやすいため、精度の高い会計管理が求められます。特に「給与」との明確な区分、インボイス制度への対応、そして未成工事支出金の適切な振替は、適正な決算と納税を行うための三原則です。
客観的な証拠となる契約書や請求書を整え、実態に即した処理を継続することで、企業の社会的信用と強固な経営基盤を築くことができます。最新の税制改正を常に把握し、必要に応じて税理士などの専門家のアドバイスを受けながら、透明性の高い財務管理を目指しましょう。

Q1. 一人親方への支払いはすべて外注費で処理できますか?

会計上の「外注費」として処理できるかどうかは、形式ではなく実態で判断されます。一人親方が自前の道具を使い、自らの裁量で作業を行い、自社が指揮命令を直接下していない場合は外注費となります。しかし、勤務時間が固定されていたり、材料や道具をすべて自社が提供している場合は、実態が「給与」とみなされ、消費税の控除が否認されるリスクがあります。

Q2. 工事が翌期にまたぐ場合の外注費はどうすればいいですか?

決算日時点で引き渡しが完了していない工事に関する外注費は、当期の費用ではなく資産として扱います。具体的には「未成工事支出金」という勘定科目を使用し、次期に工事が完成・引き渡しされたタイミングで「完成工事原価」へ振り替える会計処理を行います。これにより、売上と費用の対応関係(費用収益対応の原則)を適正に保つことができます。

Q3. 外注費の振込手数料はどちらが負担すべきですか?

振込手数料の負担は契約上の取り決めによります。自社負担の場合は「支払手数料」などの科目で処理します。一方で、外注先負担(手数料を差し引いて振り込む)の場合は、差し引いた後の金額が支払額となりますが、会計ソフト上では本来の請求額(外注費)と、控除した手数料(雑収入や支払手数料のマイナス)を明確に記録し、インボイス制度の要件を満たす支払い明細書を作成することが望ましいです。

[出典:国税庁 消費税法上の仕入税額控除の取扱い]
[出典:財務省 インボイス制度に関する経過措置について]

次のステップ:
この記事を基に、より具体的な仕訳のパターン集や、建設業向けの会計ソフトの比較記事を作成することも可能です。執筆や詳細な調査をご希望の際は、いつでもお知らせください。

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