月次決算とは?建設業で注意すべき会計処理とその手順

この記事の要約
- 月次決算は現場利益を早期把握し経営リスクを下げる重要業務。
- 建設業特有の原価管理や進行基準の適切な処理が成功の鍵。
- 正確な月次データが資金繰り安定と銀行の信頼獲得に繋がる。
- 目次
- 月次決算の基礎知識と建設業における会計の重要性
- 月次決算とは?その定義と目的
- 建設業特有の会計管理が必要な理由
- 建設業が月次決算・会計業務を行うメリットと読者の不安解消
- リアルタイムな経営状況の把握と資金繰り対策
- 決算間際の「赤字発覚」を防ぐためのリスク管理
- 建設業の月次決算における具体的な会計処理の手順
- 各現場の進捗確認と原価の集計
- 未払金・前受金の整理と試算表の作成
- 建設業の会計で特に注意すべき3つのポイント
- 工事進行基準と工事完成基準の適切な運用
- 外注費と労務費の計上タイミングのズレ
- 現場ごとの粗利計算と予実管理
- 月次決算と年次決算の比較
- まとめ:建設業の会計管理を効率化するために
- 月次決算に関するよくある質問
- Q1. 月次決算は必ず毎月1日に始めなければなりませんか?
- Q2. 小規模な工務店でも、現場別の会計管理は必要ですか?
- Q3. 月次決算を導入すると事務負担が不安です。
月次決算の基礎知識と建設業における会計の重要性
月次決算は、1年間の経営成績をまとめる年次決算とは異なり、1ヶ月単位で会社の損益を確定させるプロセスです。特に建設業ではプロジェクトが長期にわたるため、月次の計数管理が経営の成否を分ける重要な役割を果たします。
月次決算とは?その定義と目的
月次決算とは、毎月末日で帳簿を締め切り、その1ヶ月間の売上、原価、経費を算出する業務を指します。年次決算が税務申告や外部報告を主な目的とするのに対し、月次決算は経営者が「現在の自社の状態」を正確に把握するための社内管理用としての側面が強くなります。
- 月次決算の主な目的
- 経営成績の早期把握
前月の利益やキャッシュフローを迅速に確認し、経営判断に活かすため。 - 予算と実績の比較
期初に立てた計画や各現場の実行予算と、実際のコストが乖離していないかを確認するため。 - 金融機関への信頼醸成
タイムリーな試算表の提出は、経営管理能力が高い証として融資審査で有利に働きます。
- 経営成績の早期把握
建設業特有の会計管理が必要な理由
建設業の会計は、一般的な小売業や製造業と比べて特殊です。一つの工事が複数の会計期間にまたがることや、現場ごとに収支を管理しなければならない「個別原価計算」が求められるためです。
建設業において月次管理を怠ると、工事が完了するまで利益が出ているのか赤字なのかが判明せず、気づいた時には取り返しのつかない損失が発生しているリスクがあります。そのため、毎月の原価進捗を確認する体制が不可欠です。
[出典:国土交通省 建設業における会計基準等の遵守について]
建設業が月次決算・会計業務を行うメリットと読者の不安解消
月次決算を導入することで、経営上の不透明さが解消されます。特に資金の動きが激しい建設業界において、数字に基づいた裏付けを持つことは、経営者の心理的な安定と具体的な戦略立案の両面で大きなメリットをもたらします。
リアルタイムな経営状況の把握と資金繰り対策
建設業では、資材の購入費や外注費などの支払いが先行し、売上の入金が数ヶ月後になることが珍しくありません。月次決算によって正確なキャッシュフローを把握することで、いわゆる「黒字倒産」の危機を事前に察知することが可能になります。

決算間際の「赤字発覚」を防ぐためのリスク管理
「年度末に集計したら予想外の赤字だった」という事態は、月次の原価管理で防ぐことができます。毎月、現場ごとに原価率の推移を追跡していれば、材料費の高騰や工期の遅れによる人件費増大を早期に察知し、対策を講じることができます。
- 月次決算が解消する読者の不安
- 資金ショートの恐怖
月次の資金繰り表により、数ヶ月先の預金残高を予測できるようになります。 - 現場のどんぶり勘定
現場ごとの数字が可視化されるため、現場監督へのコスト意識の徹底が可能です。
- 資金ショートの恐怖
建設業の月次決算における具体的な会計処理の手順
建設業の月次決算は、現場からの情報収集が全ての基本となります。事務部門だけで完結せず、現場サイドとの連携を密に行うことが、制度の高い試算表作成に繋がります。
各現場の進捗確認と原価の集計
まず、当月中に発生した全てのコストを現場ごとに分類・集計します。
| 手順 | 実施内容 | 会計上の注意点 |
|---|---|---|
| 1. 証憑回収 | 請求書、領収書、外注先からの出来高報告書を集める。 | 電子帳簿保存法に基づき、データ保存の形式を確認する。 |
| 2. 原価振分 | 発生した費用を「工事番号」ごとに4要素(材料・労務・外注・経費)に分ける。 | 共通費(自社倉庫費など)の配分基準が一貫しているか確認。 |
| 3. 進捗確認 | 現場の物理的な完成度を現場監督にヒアリングし、原価と整合させる。 | 原価だけが発生し、進捗が伴っていない現場を特定する。 |
未払金・前受金の整理と試算表の作成
建設業では発生主義に基づいた処理が極めて重要です。現金が動いていなくても、作業が完了している分は費用や収益として認識する必要があります。
- 1. 未払費用の計上
外注先から請求書が届いていなくても、当月に作業が完了している分は見込額で計上します。 - 2. 未成工事支出金の振替
当月発生した費用のうち、未完成の現場分は「資産」として計上し、当期の費用からは除外します。 - 3. 未成工事受入金の処理
既に受け取った着工金などは売上ではなく「負債」として計上し、完成時に売上に振り替えます。
[出典:企業会計基準委員会 収益認識に関する会計基準]
建設業の会計で特に注意すべき3つのポイント
建設業独自の商慣習や会計基準により、月次決算では特有の「落とし穴」が存在します。以下の3点は、税務調査や経営審査でも厳しくチェックされる項目です。
工事進行基準と工事完成基準の適切な運用
収益をいつ計上するかという基準には「完成基準」と「進行基準」があります。
- 工事完成基準
建物の引渡しが完了した時点で一括して売上を計上する方法。 - 工事進行基準
進捗度に応じて、毎月の工事利益を分割して売上に計上する方法。
2026年現在の会計基準では、一定の条件を満たす長期工事には進行基準の適用が強く求められます。自社がどちらを適用すべきか、税理士等と連携して明確にしておく必要があります。
外注費と労務費の計上タイミングのズレ
外注費の計上漏れは、月次決算の利益を過大に見せてしまう原因となります。作業は終わっているが支払いは翌々月、といったケースでは、必ず「未払金」を計上して原価を当月に反映させなければなりません。

現場ごとの粗利計算と予実管理
全社の利益だけでなく、現場ごとの粗利益を管理することが建設業会計の核心です。
| 管理項目 | 概要 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 実行予算 | 工事開始前に設定した利益目標。 | 着工後の追加工事が予算に反映されているか。 |
| 発生原価 | 月次で集計された実際のコスト。 | 材料の無駄や外注の過剰発注がないか。 |
| 予実乖離 | 予算と実績の差。 | 乖離が5%を超えた場合に理由を解明する体制があるか。 |
月次決算と年次決算の比較
月次決算と年次決算は、相互に補完し合う関係にあります。月次決算の精度を高めることが、結果として正確な年次決算と節税対策に繋がります。
| 比較項目 | 月次決算 | 年次決算 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 迅速な経営判断・進捗管理 | 確定申告・外部報告・経審対応 |
| 法的義務 | なし(任意だが推奨) | あり(法人税法・会社法) |
| 確定の速さ | 翌月10日〜15日程度 | 決算日から2ヶ月以内 |
| 精度 | 実務に支障ない範囲の概算も可 | 1円単位の厳密な整合性 |
[出典:国務省 収益認識に関する会計基準の適用指針]
まとめ:建設業の会計管理を効率化するために
建設業における月次決算は、企業の生存戦略そのものです。複雑な会計処理を伴いますが、手順をルーチン化し、現場と事務の連携を強化することで、経営の視界は大きく開けます。
- 月次決算成功のためのアクションプラン
- ICTツールの活用
建設業特有の原価管理に対応したクラウド会計ソフトを導入し、入力を自動化する。 - 報告ルールの策定
現場監督が毎月何日までに日報や請求書を提出するか、社内規定を設ける。 - 数字を経営に活かす
試算表を作成して終わりにせず、役員会議等で予算との乖離を分析する場を持つ。
- ICTツールの活用
月次決算に関するよくある質問
Q1. 月次決算は必ず毎月1日に始めなければなりませんか?
月次決算の開始日に厳密な決まりはありませんが、前月のデータを翌月の10日から15日頃までに確定させるのが理想的です。これ以上遅れると、問題が発生した際の対策が後手に回るため、早期化の体制を整えましょう。
Q2. 小規模な工務店でも、現場別の会計管理は必要ですか?
はい、規模に関わらず不可欠です。建設業は一件あたりの金額が大きいため、一つの現場の赤字が会社全体の倒産リスクに直結します。小規模だからこそ、現場別収支を把握して確実に利益を積み上げる必要があります。
Q3. 月次決算を導入すると事務負担が不安です。
最初は全ての項目を完璧にしようとせず、まずは「主要な現場の原価把握」から始めるなど、段階的な導入を検討してください。また、会計ソフトと銀行連携機能を活用することで、通帳記帳の手間を省くなど、事務負担を軽減する手法は数多く存在します。
[出典:日本公認会計士協会 建設業の会計実務指針]





