「BIM」の基本知識

BIMによるコスト削減とは?手戻り防止の具体策を紹介


更新日: 2026/02/12
BIMによるコスト削減とは?手戻り防止の具体策を紹介

この記事の要約

  • BIMは3Dモデルで情報を統合し、工事の無駄を排除する
  • 事前の干渉チェックにより、現場の手戻りコストを削減
  • フロントローディングでプロジェクト全体の利益率を高める
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BIMによるコスト削減の基本:なぜ費用が抑えられるのか?

BIM(Building Information Modeling)は、建物の属性情報を持つ3Dモデルを活用することで、設計から施工、維持管理までのプロセスを効率化する手法です。従来の2D図面主体の管理から脱却し、デジタル空間で情報を一元管理することが、抜本的なコスト削減の鍵となります。

従来の2D設計とBIMによるコスト管理の違い

従来のCADを用いた2D設計と、情報を統合したBIM設計では、情報の整合性や意思決定のプロセスにおいて大きな差が生じます。以下の表でその主要な違いを整理しました。

比較項目 従来の2D設計(CAD) BIMによる設計
情報の整合性 図面ごとに個別の修正が必要で、不整合が発生しやすい 3Dモデルと全図面が自動連動し、一箇所の修正が全体に反映される
意思決定の速度 複雑な図面の読解が必要であり、関係者の合意形成に時間がかかる 視覚的な3Dモデルにより、直感的な把握と迅速な判断が可能になる
コスト管理 積算業務が設計完了後に行われるため、コスト把握が後手に回る 設計段階から部材情報を随時抽出し、正確なコストシミュレーションができる
主なコストロス 現場での干渉発覚による解体・再施工などの大規模な手戻り 事前のシミュレーションにより、物理的な不具合をデジタル空間で解消

[出典:一般社団法人日本建設業連合会「BIM 活用による生産性向上の手引き」]

フロントローディングによるコスト最適化の仕組み

BIM導入による最大のメリットの一つが、フロントローディングによるコストの最適化です。これは、プロジェクトの初期段階(設計段階)に労力を集中させることで、後工程でのトラブルを未然に防ぐ考え方です。

フロントローディングによる利益確保のステップ
  • 早期の問題抽出
    施工段階で発生しやすい不具合を設計段階で見つけ出し、修正コストを最小化します。

  • 設計変更の容易性
    工事着手後の設計変更は多額の費用を伴いますが、デジタルデータ上での変更であればコストを抑えられます。

  • 全体工期の短縮
    手戻りが減ることで現場作業がスムーズに進み、結果として人件費や機材レンタル費の削減につながります。

最新の設備が整った明るい建設事務所で、エンジニアが大型のタッチパネルモニターを操作して建物の3D構造モデルを確認している様子

BIMを活用して工事の手戻りを防止する5つの具体策

建設現場で発生する「手戻り」は、利益を圧迫する最大の要因です。BIMを具体的な手順に沿って活用することで、無駄な作業を排除し、プロジェクトの収益性を高めることが可能になります。ここでは、実務に直結する5つの具体策を紹介します。

3Dモデルによる干渉チェックの徹底

設計段階で、意匠、構造、設備の各モデルを重ね合わせ、部材同士の衝突(干渉)を自動で検知します。

  • 物理的干渉の回避
    「配管が梁を貫通している」「扉の開閉時に設備に当たる」といった問題を、着工前に100%近く解消することが可能です。
  • 修正費用の根絶
    現場での「ハツリ工事」や「部材の再発注」などの突発的な支出を未然に防ぎます。

施工シミュレーションによる工程の可視化

BIMモデルに時間軸(4D)を追加し、施工手順を時系列でシミュレーションすることで、工程の不備を洗い出します。

  • 重機・資材配置の最適化
    クレーンの稼働範囲や資材の搬入動線を事前に検討し、現場での作業待ち時間を削減します。
  • 安全管理の向上
    足場の設置状況や高所作業の危険箇所を可視化し、事故による工事中断リスクを回避します。

数量算出(積算)の自動化と精度向上

BIMモデルに含まれる部材の属性情報から、必要な資材量を自動的かつ正確に算出します。

数量算出によるコスト削減のポイント
  • 正確なコンクリート打設量の把握
    過剰発注による廃棄コストや、不足による作業中断を防止します。
  • 仕上げ材の面積計算の自動化
    複雑な壁面や床の面積を正確に算出し、材料のロスを最小化します。
  • 鉄筋・鋼材のプレカット精度向上
    データに基づく工場加工により、現場での端材発生を抑制し、産廃処理費を低減します。

関係者間のリアルタイムな情報共有と意思決定の迅速化

クラウド上の共通データ環境(CDE)を活用し、施主、設計者、施工者が常に最新のBIMデータを確認できるようにします。

  • 情報の先祖返り防止
    古い図面を誤って参照することによる施工ミスを物理的に排除します。
  • 承認フローの加速
    3Dモデルを用いることで、施主への説明がスムーズになり、意思決定までの待機時間を短縮できます。

現場でのAR/MR活用による施工ミスの削減

BIMデータをAR(拡張現実)デバイスで現場空間に投影し、実物と設計値を照らし合わせます。

  • 施工精度の確認
    墨出しの位置やスリーブの設置場所が正しいかを、壁を透視するように視覚的にチェックできます。
  • 若手技術者の教育・補完
    図面の読解経験が浅い作業員でも、3Dガイドを見ながら正確な作業が行えるようになり、品質管理コストが下がります。

建設現場の鉄骨構造の前で、技術者がタブレット端末を使用してAR技術によりデジタル図面と現実の施工箇所を照合している様子

BIM導入時に多くの企業が抱える不安と解消法

BIMの有効性は認めつつも、導入にかかるコストや体制構築に不安を感じる企業は少なくありません。しかし、これらは適切な戦略と評価軸を持つことで解消できる課題です。

導入費用(初期投資)に対する費用対効果(ROI)

BIMソフトのライセンス費用や高スペックPCの購入、教育費は決して安価ではありません。しかし、ROI(投資対効果)を「損失回避額」の視点から評価することが重要です。

ROIを正しく評価するための視点
  • 再施工コストの削減分
    1件の大規模な手戻りが発生した場合、その修正費用だけでBIMの年間ライセンス料を上回るケースが多々あります。
  • 残業代と工期延長の抑制
    情報の不備による手待ち時間を減らすことで、現場管理費と人件費を削減できます。

専門人材の不足と外注の検討

社内でBIMを扱える人材がいない場合、自社での育成と外部専門会社への委託(BPO)を天秤にかける必要があります。

検討軸 自社育成・内製化 BPO(外注)活用
初期コスト ライセンス購入や教育研修費がかかる プロジェクトごとの委託費のみで開始可能
技術の蓄積 自社内に知見が残り、長期的な競争力になる 外部に依存するため、自社にノウハウが残りにくい
導入スピード 習熟までに時間がかかり、即時の効果は限定的 専門家が対応するため、すぐに高品質なモデルを得られる
向いている企業 BIMを標準業務として継続的に活用する企業 特定の大型案件のみでスポット的にBIM対応が必要な企業

BIMによるコスト削減効果を最大化するための比較検討ポイント

単にBIMを導入するだけでなく、いかに効率的に運用するかがコスト削減の成否を分けます。以下のポイントを比較検討の基準としてください。

自社導入とアウトソーシングのトータルコスト比較

自社で運用する場合、初期費用だけでなく、定期的なソフト更新やハードウェアのメンテナンス、オペレーターの給与といったランニングコストが発生します。

  • トータルコスト(TCO)の算出
    3年から5年のスパンで、自社運用と外注継続のどちらが安価で、かつ利益への貢献度が高いかをシミュレーションすることが不可欠です。
  • ハイブリッド運用の選択
    基本モデルの作成は外注し、コスト削減に直結する干渉チェックや工程検討は自社で行うといった分担も有効な選択肢です。

ソフトウェア選びで失敗しないための基準

高機能なソフトウェアは魅力的ですが、自社の業務範囲を超えたツールは宝の持ち腐れとなり、コストを押し上げる要因になります。

  • 機能の過不足を確認
    意匠設計が主目的なのか、施工管理の効率化が目的なのかを明確にし、必要最小限の機能を持つソフトを選ぶことが無駄な出費を抑えます。
  • 互換性とデータ連携
    協力会社や施主と同じデータ形式(IFC形式など)でスムーズに連携できるかを確認してください。データの変換や再作成に要する時間は、隠れた大きなコストロスとなります。

まとめ:BIMによるコスト削減は「手戻り防止」が最大の鍵

BIMを活用したコスト削減の本質は、デジタル空間での事前検証によって「現場での手戻り」を根絶することにあります。

  • フロントローディングの徹底
    設計段階にリソースを集中させ、問題を前倒しで解決することで、プロジェクト全体の利益を守ります。
  • 具体的な防止策の実施
    干渉チェック、施工シミュレーション、正確な数量算出などの機能を活用し、現場の無駄を排除します。
  • 戦略的な投資判断
    初期費用にとらわれず、手戻り回避による損失防止額を考慮した中長期的なROIでBIM導入を評価してください。

BIMは単なる3D図面作成ツールではなく、建設プロジェクト全体の収益性を最適化するための強力な経営戦略です。

Q1. 小規模な現場でもBIMによるコスト削減効果はありますか?

A. はい、効果はあります。規模に関わらず、配管が密集する箇所や意匠性が高い建物では、事前の干渉チェックによる手戻り防止効果が初期投資を上回ることが一般的です。また、正確な資材発注ができるため、小規模現場でも材料ロスの削減に寄与します。

Q2. BIMを導入すれば、積算業務は完全になくなりますか?

A. 完全にゼロにはなりませんが、大幅に効率化されます。3Dモデルから主要な部材の数量を自動抽出できるため、手作業による拾い出しの時間を大幅に削減し、かつ計算ミスを排除できます。積算担当者は、より高度なコスト管理業務に注力できるようになります。

Q3. コスト削減を実感できるまで、どのくらいの期間がかかりますか?

A. 一般的には、設計から施工までをBIMで完結させた最初のプロジェクトの終了時に、手戻り工事の減少や工期遵守といった形で明確な効果を実感できます。習熟期間を考慮すると、2〜3プロジェクト目以降にさらに高い投資対効果(ROI)が得られる傾向にあります。

[出典:国土交通省「BIM/CIM活用ガイドライン」]

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