「積算」の基本知識

積算書の作成手順とは?実務フローを詳しく解説


更新日: 2026/01/08
積算書の作成手順とは?実務フローを詳しく解説

この記事の要約

  • 積算の基礎知識と見積もりとの決定的な違いを明確にします。
  • 正確な積算書を作成するための5つの実務ステップを解説。
  • ミスを防ぐチェックリストとツールの比較で業務を効率化。
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積算とは?作成手順を学ぶ前に知っておくべき基礎知識

積算とは、設計図面や仕様書から必要な材料の数量、作業に必要な人数などを算出し、それらに単価を掛け合わせて合計金額(原価)を導き出す業務です。単なる計算作業ではなく、施工計画を頭の中で組み立てる緻密なプロセスであり、利益を確保するための土台となります。

積算と見積もりの決定的な違い(表で整理)

積算と見積もりは混同されやすいですが、実務上の役割は明確に分かれています。積算が「原価の算出」であるのに対し、見積もりは「販売価格の提示」を指します。

項目 積算(せきさん) 見積もり(みつもり)
定義 設計図や仕様書に基づき、必要な材料や労働力を積み上げる作業 積算額に利益や経費を上乗せし、提示金額を確定させる作業
主な目的 工事や製造にかかる「適正な原価」を把握すること 顧客へ「受注希望価格」を提示し、契約を結ぶこと
主な成果物 積算内訳書、数量計算書 見積書、内訳明細書

[出典:国土交通省 公共建築工事積算基準]

積算業務がプロジェクトの成否を分ける理由
  • 正確な利益管理の実現
    精度の高い積算は、予期せぬ赤字(逆ざや)を防ぎ、企業の収益性を安定させます。

  • 適切な工期設定の根拠
    必要な労務量を正確に把握することで、無理のない現実的なスケジュール管理が可能になります。

  • 対外的な信頼の向上
    根拠のある数字を提示することで、顧客や取引先からの信頼を獲得し、円滑な交渉が行えます。

【実務フロー】正確な積算書を作成する5つの手順

正確な積算書を作成するには、漏れや重複を防ぐための体系的なフローが必要です。以下の5つのステップを遵守することで、誰が担当しても客観的な根拠に基づいた数値が算出できるようになります。

設計図面と計測器具を用いて正確な数量算出を行うデスクの風景

手順1:設計図面と仕様書の精読(図面拾い)

まずは、対象となる案件の全体像を把握するために設計図面と仕様書を読み込みます。図面から形状や寸法を抽出し、仕様書からは使用する材料のグレード、施工方法、特別な制約条件(夜間作業の有無など)を確認します。この段階での読み飛ばしは、後のすべての工程に波及する致命的なミスにつながるため、細部まで確認が必要です。

手順2:材料や項目の数量算出(数量拾い)

図面に基づき、必要な部材の数、面積、体積などを算出する作業を「数量拾い」と呼びます。

  • 正味数量の算出
    図面の寸法通りに計算した、建物や製品そのものの純粋な数量です。

  • 所要数量(ロス率)の考慮
    施工過程で発生する切り屑や破損を見込んだ数量です。材料ごとに3%〜10%程度のロス率を加味します。

手順3:単価の設定と直接工事費の算出(表で整理)

算出した数量に「単価」を乗じ、現場で直接発生する費用(直接工事費)を求めます。単価の選定基準は以下の通りです。

単価の種類 内容 参照先
材料単価 資材や部品の購入費用 物価資料、メーカー見積、実勢価格
労務単価 職人や作業員の人件費 公共工事設計労務単価、自社規定
外注単価 特定の工程を協力会社へ依頼する費用 外注先見積、過去の実績データ

[出典:一般財団法人 建設物価調査会]

手順4:共通仮設費・現場管理費・一般管理費の計上

目に見える工事費以外に、現場運営や会社経営に必要な経費を計上します。

  • 共通仮設費
    仮設トイレや足場、現場事務所の設置費用などです。

  • 現場管理費
    現場監督の人件費、通信費、保険料などが含まれます。

  • 一般管理費
    本社の運営維持費や福利厚生費など、会社全体を支えるための費用です。

手順5:最終確認と積算書の完成

すべての数値を積み上げたら、最後にダブルチェックを実施します。計算式の誤り、単位の取り違え(mmとmの混同など)、前回案件からの単価の据え置きミスがないかを念入りに確認し、指定のフォーマットに整理して完成です。

積算業務を効率化・正確に行うためのポイント

積算は膨大な数値を扱うため、人為的なミスを完全にゼロにするのは容易ではありません。ここでは、実務の現場で取り入れられている精度向上と効率化のコツを紹介します。

算出ミスを防ぐためのチェックリスト
  • 単位の変換ミス(mmとm、平方メートルと坪など)はないか
  • 数量の重複カウントや、逆に拾い漏れはないか
  • 最新の物価資料(単価)を参照しているか
  • 端数処理(切り捨て・切り上げ)のルールが統一されているか
  • 支給品を誤って計上していないか

エクセル管理と積算ソフトの比較検討(表で整理)

積算をどのようなツールで行うかは、業務効率に大きく影響します。自社の規模や案件数に合わせた選択が重要です。

比較項目 エクセル(手入力) 積算専用ソフト
初期コスト 非常に低い(既存PCを活用) 高い(ライセンス料・保守費)
入力速度 遅い(手動入力・計算式設定) 早い(部材マスタ・自動連動)
精度維持 数式ミスやコピペミスが発生しやすい 整合性チェック機能でミスを抑制
適した組織 案件数が少なく、計算が単純な小規模事業者 案件数が多く、標準化が必要な組織

積算でよくある不安と失敗しないための対策

実務担当者が抱きやすい「拾い漏れ」への恐怖や、外部要因による単価変動といった不確実性への対応策を整理します。

データの正確性を象徴する建設現場と数値管理のイメージ

数量の「拾い漏れ」をゼロにするための工夫

複雑な図面から数量を抽出する際、「チェック図」の作成が極めて有効です。抽出が終わった箇所をマーカーで塗りつぶしていくことで、未処理の箇所を視覚的に浮き彫りにします。また、平面図だけでなく断面図や詳細図を横断的に確認し、三次元的な視点で部材を捉えることが漏れを防ぐ鍵となります。

予期せぬ単価高騰(物価変動)への備え

見積提出から着工までの期間に資材価格が急騰するリスクがあります。これに対するリスクヘッジとしては、以下の対策が考えられます。

  • スライド条項の活用
    一定以上の物価変動があった場合に、価格を調整する旨を契約条件に盛り込む。

  • 有効期限の明示
    見積書の有効期限を短めに設定し、期限を過ぎた場合は再積算を行うルールにする。

  • リスク予備費の計上
    あらかじめ予測される変動範囲を予備費として計上し、赤字転落を防ぐ。

まとめ:正しい積算手順をマスターして信頼性の高い書類を作成しよう

積算はプロジェクトの利益を守るための最後の砦です。以下の重要ポイントを再確認しましょう。

この記事のまとめ
  • 積算は「原価」を算出する工程であり、見積もりの前段階として不可欠である。

  • 5つの手順を遵守することで、属人化を防ぎ、根拠のある正確な積算書が作成できる。

  • 適切なツールの活用により、人為的ミスを最小限に抑え、業務時間を短縮できる。

正確な積算は、会社に利益をもたらすだけでなく、発注者に対する誠実な姿勢の証明でもあります。本記事で紹介した実務フローとチェックリストを活用し、精度の高い積算業務を目指してください。

よくある質問

Q1. 未経験から積算業務を覚えるには、まず何をすべきですか?

A:まずは正確に図面を読むスキルを磨くことが最優先です。図面上の記号が現場でどのような立体物になるのかをイメージできるようになる必要があります。その上で、簡単な部位の「数量拾い」から始め、熟練者によるダブルチェックを繰り返すことで、徐々に感覚を養っていきましょう。

Q2. 積算の精度が低いと、どのようなリスクがありますか?

A:原価を過小評価した場合は受注後に赤字(逆ざや)が発生し、逆に過大評価した場合は価格競争力が低下して失注(受注機会の損失)につながります。どちらも企業の存続に関わる重大なリスクとなるため、適正な原価算出が求められます。

Q3. 積算ソフトを導入するタイミングの目安は?

A:案件数が増加し、エクセルでの計算や転記に割く時間が本来の業務を圧迫し始めた時が目安です。また、担当者によって積算結果にバラツキが出ている場合、組織として基準を統一するためにソフトを導入するメリットが大きくなります。

[出典:一般財団法人 経済調査会 積算資料]

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