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建設業の更新・変更届の法的ルールとは?


更新日: 2025/11/20
建設業の更新・変更届の法的ルールとは?

この記事の要約

  • 建設業許可は5年ごとの更新と変更届提出が法律上の義務
  • 期限管理と正確な手続きが事業継続と社会的信用の鍵となる
  • 違反時は許可取消や懲役等の重い法的罰則が科される
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建設業許可を取得した事業者は、許可を受けた後も建設業法という厳格な法律に基づき、適切な管理を行う義務を負います。その中心となるのが、5年ごとの「更新」と、事業内容が変わった際の「変更届」です。これらは単なる事務手続きではなく、手続きを怠ったり、虚偽の申告を行ったりした場合、法律に基づき「許可の取り消し」「刑罰(懲役・罰金)」が科されるリスクがあります。本記事では、建設業者が必ず知っておくべき更新・変更届の法的ルールと、実務上の重要ポイントを体系的に解説します。

建設業法における許可の有効期間と更新の義務

建設業法第3条第3項において、建設業許可の有効期間は許可があった日から5年間と明確に定められています。この有効期間は、許可を受けた建設業者が「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」などの許可要件を継続して満たしているか、また財産的基礎や誠実性が維持されているかを定期的に見直すためのものです。

更新義務のポイント
  • 有効期間の原則
    許可日から5年間。期間満了日の翌日に許可は失効します。

  • 更新申請の期限
    期間満了後も引き続き建設業を営む場合は、期間満了の日の30日前までに更新の手続きを行わなければなりません。

  • 失効のリスク
    更新手続きを行わずに有効期間が経過した場合、その許可は法律上当然に効力を失います。失効すれば、軽微な工事を除く建設工事の請負ができなくなります。

変更届の提出が法律で義務付けられる理由

更新が5年に一度の定期的な確認であるのに対し、変更届は許可行政庁が業者の最新情報を常に把握しておくために義務付けられています。建設業法第11条では、許可申請書の記載事項に変更があった場合、所定の期間内に変更届を提出しなければならないと定めています。

この届出が必要とされる法的な理由は、発注者保護と適正な施工確保の観点にあります。例えば、経営者が変わったり、技術者が退職したりした場合、その業者が以前と同じ施工能力や経営能力を有しているとは限りません。行政庁および発注者が常に正しい業者情報を参照できるようにすることは、建設業界全体の透明性と信頼性を担保するために不可欠な法的ルールなのです。

建設業許可の更新手続きで押さえておくべき法律上の要件

更新手続きは、単に書類を出せば良いというものではありません。5年前と変わらず、あるいはそれ以上に適正な経営体制が整っていることを法律に照らして証明する必要があります。ここでは、更新時に特に注意すべき法的要件と具体的な手続きの内容について解説します。

更新申請を行うための法的要件とタイミング

更新申請を行うためには、現在の許可が有効期限内であることはもちろん、建設業法で定められた以下の「許可の基準(要件)」を現在進行形で満たしている必要があります。

  • 経営業務の管理責任者(経管)の常勤
    経営体制の責任者が常勤していること。

  • 専任技術者(専技)の常勤
    各営業所に資格や実務経験を持つ技術者が常勤していること。

  • 誠実性
    請負契約に関して不正や不誠実な行為をするおそれがないこと。

  • 財産的基礎
    500万円以上の自己資本など、金銭的な信用があること(一般建設業の場合、更新時は直前の決算で確認されることが多い)。

  • 欠格要件への非該当
    役員等が禁錮以上の刑に処せられていないことなど。

申請のタイミングは、一般的に有効期間満了日の3ヶ月前から30日前までとされています(自治体により受付開始時期が異なる場合があります)。法律上、有効期間の末日が土日祝日であっても、その日までに手続きが完了(または申請受理)していなければなりません。

【STEP解説】法律に基づく更新手続きの流れ

更新手続きを円滑に進めるため、以下のステップに沿って準備を行ってください。期限管理は法律上の義務です。

  • 1. 有効期限の確認
    許可通知書を確認し、有効期間満了日を特定します。満了日の3ヶ月前から準備を開始するのが理想的です。

  • 2. 未提出の変更届の確認
    過去5年間で、役員や所在地、資本金などに変更があったにもかかわらず、提出していない変更届がないか確認します。未提出のものがある場合、更新手続き前にすべて提出(解消)する必要があります。

  • 3. 必要書類の収集と作成
    納税証明書や登記簿謄本など、公的書類を取得し、申請書を作成します。

  • 4. 管轄行政庁への申請
    原則として期間満了の30日前までに申請を行います。

  • 5. 新しい許可通知書の受領
    審査を経て、問題がなければ新しい許可通知書が発行されます。

カレンダーで更新期限を確認しながら申請書類を準備する建設業者

更新手続きに必要な書類と法定費用

更新手続きには、現状の経営状況や技術者の配置状況を証明するための書類と、法定の手数料が必要です。これらは法律および各自治体の手引きに基づいて厳格に指定されています。

表:更新手続きに必要な主な書類と法定費用

区分 項目 内容・備考
法定費用 許可手数料 50,000円(収入証紙などで納付)。大臣許可や知事許可で納付方法が異なる場合があります。
必要書類 建設業許可申請書 更新用の様式を使用します。
役員等の一覧表 現在の役員構成を記載します。
営業所一覧表 本店・支店の所在地情報を記載します。
専任技術者一覧表 資格者証の写し等は変更がない限り省略可能な場合もあります。
工事経歴書 直前1年間の主な工事実績を記載し、施工能力を証明します。
直前3年の施工金額 過去3年間の実績報告書です。
財務諸表 直前の決算内容(変更届で提出済みの場合は省略可能な場合も)。
各種確認資料 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入証明資料など。

[出典:建設業法および各都道府県の手引き]

変更届の提出が必要なケースと法律で定められた期限

「変更届」は、更新のタイミングに関わらず、会社の状況が変わった際にその都度提出が求められる書類です。建設業法第11条等の規定により、変更事項ごとに厳格な提出期限(2週間または30日)が設けられています。期限を過ぎても提出は可能ですが、法律違反の状態となるため注意が必要です。

変更届の提出が必要となる主な事項

建設業許可業者は、申請内容に以下のような変更が生じた場合、速やかに届出を行わなければなりません。これらは行政庁が管理すべき重要事項として法律で定義されています。

  • 商号・名称
    会社名や屋号が変わった場合。

  • 営業所の所在地
    本店や支店が移転した場合。

  • 資本金額
    増資や減資を行った場合。

  • 役員等
    取締役等の就任・退任・氏名変更があった場合。

  • 経営業務の管理責任者
    交代した場合や氏名が変わった場合。

  • 専任技術者
    交代した場合や氏名が変わった場合。

  • 令3条の使用人
    支店長や営業所長が変わった場合。

建設現場で図面を確認し打ち合わせを行う現場監督と作業員

変更内容による提出期限の違い(2週間以内と30日以内)

変更届の提出期限は、変更内容の重要度や緊急性、事実確認の容易さなどによって2週間以内30日以内の2種類に法律で区分されています。特に「人」に関わる重要な変更は期限が短く設定されています。

提出期限の区分
  • 2週間以内(変更事実発生日の翌日から)
    ・経営業務の管理責任者
    ・専任技術者
    ・令3条の使用人(支店長など)
    ・欠格要件への該当
    ※許可の根幹に関わる「人」の変更。要件を満たさなくなるリスクが高いため、早急な報告が求められます。

  • 30日以内(変更事実発生日の翌日から)
    ・商号・名称
    ・営業所の所在地・電話番号
    ・資本金額
    ・役員の就任・退任
    ・支配人
    ※会社の基本情報や組織体制に関する変更。登記手続き等が必要な場合もあり、2週間より長い猶予があります。

法律違反による罰則と許可取り消しのリスク

建設業法における手続きの義務を軽視することは、企業の存続に関わる重大なリスクを招きます。「知らなかった」「忘れていた」では済まされない厳しい法的措置が定められており、コンプライアンス(法令遵守)の観点からも正確な理解が不可欠です。

届出を怠った場合の建設業法上の罰則

変更届を提出しなかった場合、または虚偽の記載をして提出した場合、建設業法第50条に基づき、「6ヶ月以下の懲役」または「100万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性があります。これは行政処分よりも重い、法的な刑罰です。

また、更新手続きを忘れて有効期間を経過してしまった場合は、前述の通り「許可の失効」となります。無許可状態で500万円(建築一式工事は1500万円)以上の工事を請け負うと、建設業法違反(無許可営業)となり、さらなる重い罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)の対象となります。

実務上、変更届の提出が遅れた場合には、窓口で「始末書」や「理由書」の提出を求められることが一般的です。これらは行政指導の一環として行われますが、度重なる違反や悪質な隠蔽と判断されれば、指示処分や営業停止処分に発展する恐れもあります。

社会的信用の失墜と将来的な許可取得への影響

法的な罰則に加え、社会的信用の失墜も大きなリスクです。建設業許可業者の情報は一般に公開されており、法令違反の事実は発注者や元請業者に知られる可能性があります。

  • 入札参加資格への影響
    公共工事の入札参加資格審査(経審)において、法令違反は減点対象となる場合があり、ランクダウンや指名停止につながります。

  • 将来の許可への影響
    役員が懲役刑などの重い刑罰を受けた場合、その後5年間は「欠格要件」に該当し、建設業許可を新規に取得することも、役員として登記することもできなくなります。

法律に基づいた更新と変更届の違いを比較

ここまで解説した「更新」と「変更届」は、どちらも建設業法に基づく重要な手続きですが、その性質は異なります。適正な管理を行うために、両者の違いを整理します。

更新手続きと変更届の比較一覧

表:更新手続きと変更届の比較

項目 更新手続き 変更届(決算変更届含む)
目的 5年ごとに許可基準の適合性を再審査し、免許を維持するため。 行政庁が常に最新の業者情報を把握し、管理するため。
提出時期・期限 有効期間満了の30日前まで(5年に1回)。 事由発生後、2週間または30日以内(その都度)。
主な法定費用 50,000円(証紙代等)。 原則無料(証明書類取得費等の実費は除く)。
法的リスク 手続きをしないと許可が失効する(営業権の喪失)。 未提出は懲役・罰金の対象となり、更新申請も受理されない。
対象となる状況 すべての許可業者に定期的に訪れる。 会社情報や人事、決算内容に変更があった場合のみ。

まとめ

建設業の更新・変更届は、単なる事務手続きの枠を超え、建設業法という法律を遵守し、事業を健全に継続するための生命線です。許可の失効や法的罰則は、企業の信用を失墜させ、将来のビジネスチャンスを奪うことになりかねません。

建設業者は、以下の点を徹底して管理する必要があります。

  • 1. 許可の有効期限(5年)の正確な把握
  • 2. 変更事項発生時の即時の届出(2週間/30日ルール)
  • 3. 毎事業年度終了後の決算変更届の提出

自社での管理に不安がある場合や、手続きが複雑な場合は、建設業法を専門とする行政書士に相談し、適切なサポートを受けることを推奨します。法令順守の徹底こそが、建設業者としての信頼の証です。

よくある質問

Q1. 変更届を出し忘れていた場合、更新手続きはできますか?

原則として、未提出の変更届をすべて提出した後でなければ、更新手続きは受け付けられません。例えば、過去に役員の変更があったにもかかわらず届け出ていない場合、まずはその変更届(遅延理由書等の添付が必要な場合あり)を提出し、その後に更新申請を行う流れになります。

Q2. 役員の住所変更などは変更届の対象になりますか?

以前は役員の住所変更も届出が必要でしたが、令和2年の建設業法改正等に伴い、一部の書類が簡素化され、現在は役員個人の住所のみの変更であれば届出は不要となっている自治体が一般的です。ただし、最新の規則や自治体の運用によって異なる場合があるため、管轄の土木事務所等への確認が推奨されます。

Q3. 更新手続きの期限を1日でも過ぎたらどうなりますか?

原則として、有効期間満了日を1日でも過ぎると許可は失効します。救済措置は基本的に設けられていません。失効した場合、再度「新規」として許可を取り直す必要があります。新規申請は更新に比べて審査期間が長く、要件確認も厳格になるため、営業できない期間(空白期間)が発生するリスクが極めて高くなります。

[出典:建設業法第3条、第11条、第50条]

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