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建設業許可の29業種一覧と分類の基準とは?


更新日: 2025/11/12
建設業許可の29業種一覧と分類の基準とは?

この記事の要約

  • 建設業法に基づく29業種の区分と法的基準を徹底解説
  • 一式工事と専門工事の違いや誤解しやすい定義を明確化
  • 許可違反を防ぐための正しい業種選定とリスク管理
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建設業法などの法律において、建設業の許可は大きく29の業種に区分されています。建設業を営む事業者が適切な許可を取得するためには、この法定区分を正しく理解することが不可欠です。ここでは、許可申請の基礎となる業種の全体像と、法律上の分類について解説します。

建設業許可の29業種を象徴する多様な建設現場の様子

一式工事と専門工事の法的な違い

建設業許可の29業種は、法律上、大きく以下の2つに大別されます。この区分は、単なる工事の種類だけでなく、契約上の立場や責任範囲にも関わる重要な分類です。

一式工事と専門工事の法的定義
  • 一式工事(2業種)
    土木一式工事、建築一式工事が該当します。原則として元請の立場で、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を建設する大規模かつ複雑な工事を指します。

  • 専門工事(27業種)
    大工工事、左官工事、電気工事などが該当します。それぞれの専門的な技術を用いて、特定の工程や設備の施工を行う工事を指します。

重要なポイントは、一式工事の許可を持っていても、個別の専門工事を単独で請け負うことはできないという点です。例えば、建築一式工事の許可があっても、500万円以上の内装工事のみを請け負う場合は、別途「内装仕上工事業」の許可が必要となります。

【一覧表】建設業許可の29業種リスト

建設業法で定められた29業種を、その性質(土木・建築・設備等)に基づいて整理した一覧表です。
[出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」]

分類 業種名(略称) 業種の内容・工事例
一式工事 土木一式 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(ダム、トンネル、橋梁など)
建築一式 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事(新築、増改築など)
土木系 土工(とび・土工・コンクリート) 足場の組立、掘削、コンクリート打設、基礎杭打ちなど
石材の加工・積方(石積み、石張りなど)
舗装 道路などの地盤面をアスファルト等で舗装する工事
しゅんせつ 河川や港湾などの水底をさらう工事
水道施設 上水道等の取水、浄水、配水施設を築造する工事(※家屋内の配管とは異なる)
建築系 大工 木材の加工・取付け、型枠工事など
左官 壁土、モルタル、漆喰などをこて塗りする工事
屋根 瓦、スレート、金属薄板などで屋根をふく工事
タイル(タイル・れんが・ブロック) コンクリートブロック積み、タイル張りなど
鋼構造物 形鋼や鋼板の加工・組立て(鉄骨工事、鉄塔工事など)
鉄筋 鉄筋の加工・接合・組立て
板金 金属薄板を加工して取付ける工事(雨どい、水切りなど)
ガラス ガラス加工・取付け工事
塗装 塗料、塗材等を吹き付け・塗り付けする工事
防水 アスファルト、モルタル、シーリング材等での防水工事
内装 インテリア、天井仕上、間仕切り、畳、ふすま工事など
建具 金属製・木製建具の取付け(サッシ、シャッター、ドアなど)
解体 工作物の解体を行う工事
設備系 電気 発電・変電・送配電設備、構内電気設備などを設置する工事
冷暖房、空調、給排水、衛生等の設備を設置する工事
電気通信 有線・無線電気通信設備、情報処理設備等を設置する工事
その他 清掃 清掃施設(ごみ処理施設等)を設置する工事(※クリーニング業とは異なる)
機械(機械器具設置) 現場で組み立て等を要する機械器具を設置する工事(※単なる設置は含まない)
熱絶縁 工作物や設備に熱絶縁保冷を行う工事
さく井 井戸などを掘る工事
消防施設 火災警報設備、消火設備等を設置する工事

法律による業種区分の考え方と基準

単にリストを眺めるだけでは、どの業種を選ぶべきか判断が難しい場合があります。業種区分は、法律上の明確な基準に基づいて定められています。ここでは、「なぜそのように分類されるのか」という基準と、特に誤解が生じやすいポイントについて法的根拠に基づき解説します。

土木一式・建築一式工事の正しい定義

「一式工事」という名称から、「これを取れば何でもできる」と誤解されがちですが、法律上の定義は非常に限定的です。

一式工事の要件(ガイドラインより)
  • 総合的な企画・指導・調整
    単に複数の専門工事を束ねるだけでなく、元請として工程管理、安全管理、品質管理などを総合的に行う必要があります。

  • 工事の規模と複雑性
    原則として大規模かつ複雑な工事が対象です。例えば「一軒家の内装リフォーム」のみを請け負う場合、規模が大きくても「建築一式」ではなく「内装仕上工事業」に該当します。

附帯工事(ふたいこうじ)の法的な扱い

建設業法第4条には、許可を受けた業種に関連する「附帯工事」についての特例があります。

  • 附帯工事とは
    主たる工事を施工するために必要、または施工することによって生じる「従たる工事」のことです。

  • 法律上のルール
    許可を受けた本工事(主たる工事)に付随するものであれば、その業種の許可を持っていなくても施工が可能です。

例として、屋根工事(主)を行う際に、一部の塗装(従)を行う場合、屋根工事業の許可があれば塗装工事業の許可は不要です。ただし、附帯工事の額が500万円以上になる場合は、その業種の主任技術者を配置する必要があります。

法律違反にならないための業種選びの注意点

実際の工事内容と取得している許可業種が不一致(無許可施工)の場合、建設業法違反となるリスクがあります。ここでは、「どの業種を取ればいいかわからない」という方のために、判断に迷いやすい類似業種の境界線や、コンプライアンス(法令遵守)の観点からの注意点を解説します。

建設業許可の業種追加について書類を確認する専門家と実務者

類似した業種の判断基準と境界線

内容が似ている業種については、法律や実務上のガイドラインによって区分が定義されています。代表的な間違いやすいケースを整理します。

表:間違いやすい業種の区分基準

比較する業種 区分の判断基準(法律・実務上のポイント)
とび・土工 vs 石工事 コンクリートブロック積み等は「とび・土工」だが、石材の加工や積み上げが主体の場合は「石工事」。擁壁工事などは工法により分かれます。
管工事 vs 水道施設工事 管工事:家屋・敷地「内」の配管工事。
水道施設工事:上水道等の取水・浄水・配水施設などの「公道下」や処理施設自体の築造工事。
鋼構造物 vs 機械器具設置 現場で組立てる鉄骨等は「鋼構造物」。現場で組立て・据付けを要する機械(エレベーター等)は「機械器具設置」。単に置くだけなら許可不要またはとび・土工等になる場合もあります。
内装仕上 vs 建具工事 木製のドアや造作家具の取付けは「建具工事」とも「内装仕上」とも取れるが、工事の主たる目的によって判断します。

許可等のない業種で施工した場合のリスク

許可が必要な規模の工事(請負代金が500万円以上など)を、該当する業種の許可なく請け負った場合、建設業法違反として以下の罰則が科される可能性があります。

  • 刑事罰
    3年以下の懲役または300万円以下の罰金。

  • 行政処分
    営業停止処分や許可の取消し。

  • 欠格要件への該当
    処分を受けると、その後5年間は新たな建設業許可を取得できなくなります

「知らなかった」では済まされないため、自社が請け負う工事がどの業種に該当するか、法律に照らし合わせて厳密に判断する必要があります。

建設業許可取得後の業種追加に関する法律知識

事業の拡大に伴い、最初とは異なる種類の工事を請け負う機会が増えることがあります。その際は「業種追加」の手続きが必要です。将来を見据えた許可戦略について、法律の規定に基づき解説します。

業種追加を行うための要件とタイミング

業種追加とは、すでに建設業許可を持っている業者が、別の業種の許可を追加で取得することを指します。

  • 財産的基礎要件の緩和
    一般建設業許可の場合、すでに許可を持っていれば、追加申請時の「500万円以上の資金力」の証明は基本的に不要です(更新手続き等が滞りなく行われている場合)。

  • 手続きのタイミング
    随時申請可能です。事業計画に合わせて、要件が整い次第申請を行います。

専任技術者の資格要件と実務経験の兼ね合い

業種追加で最も高いハードルとなるのが、各営業所に配置義務のある「専任技術者」の確保です。法律では、業種ごとに技術者の要件が厳格に定められています。

技術者要件を満たす主な方法
  • 国家資格の活用
    1級土木施工管理技士や建築士など、1つの資格で複数の業種(例:土木一式、とび・土工、舗装など)の要件を満たせる場合があります。これを活用すれば、1人の技術者で複数の業種許可を維持できます。

  • 実務経験(原則10年)
    資格がない場合、原則として1業種につき10年の実務経験が必要です。実務経験期間は重複してカウントできないため、「内装」と「大工」を両方取得するには計20年の経験が必要となり、ハードルが高くなります。

まとめ:事業目的に合わせた適切な業種選定を

建設業許可の29業種は、建設業法という法律によって明確に区分されています。一式工事は万能ではなく、専門工事は施工内容に合わせて個別に取得する必要があります。やみくもに多くの業種を取得するのではなく、自社の強みである工事内容と、確保できる技術者の資格要件を照らし合わせ、計画的に業種を選定・追加していくことが、企業の信頼性と持続的な発展につながります。

よくある質問

建設業許可の業種区分に関して、よく寄せられる質問をまとめました。

Q1. 一つの会社ですべての業種の許可を取ることは可能ですか?

理論上は可能ですが、現実的には非常に困難です。すべての業種を取得するには、それぞれの業種に対応した要件(特に専任技術者)を満たす必要があります。29業種すべてに対応できる技術者を確保・維持するには、多大なコストと人材が必要となるため、大手ゼネコンなどを除き、全業種取得は一般的ではありません。

Q2. 解体工事業の新設に伴う経過措置は現在どうなっていますか?

経過措置期間はすでに終了しています。平成28年の法改正で「解体工事業」が新設されましたが、その経過措置(とび・土工工事業の許可でも解体工事が可能だった期間)は、令和3年(2021年)6月30日をもって終了しました。現在、解体工事(500万円以上)を請け負うには、必ず「解体工事業」の許可が必要です。

Q3. 「軽微な工事」であれば、どの業種でも許可は不要ですか?

はい、法律で定められた「軽微な工事」の範囲内であれば、業種に関わらず許可は不要です。具体的には以下の基準です。

  • 建築一式工事の場合
    請負代金が1,500万円未満、または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事。

  • その他の工事の場合
    請負代金が500万円未満の工事。

ただし、許可が不要でも、解体工事登録や電気工事士法など、他法令の遵守は必要ですので注意してください。

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