建設業許可とは?要件・手続きと罰則を解説

この記事の要約
- 建設業許可が必要・不要な工事の基準を解説
- 許可取得に必要な4つの法律上の要件を詳説
- 無許可営業時の罰則(懲役・罰金)についても説明
- 目次
- 建設業許可とは?その必要性と法律の基本
- 建設業許可が必要なケース・不要なケース
- 許可の区分:「一般建設業」と「特定建設業」の違い
- 29種類の許可業種
- 建設業許可の取得要件:法律で定められた基準
- 経営体制の要件(経営業務の管理責任者の配置)
- 技術力の要件(専任技術者の配置)
- 財産的基礎・金銭的信用の要件
- 誠実性・欠格要件の非該当
- 建設業許可の申請手続きと法律上の注意点
- 申請先:「知事許可」と「大臣許可」
- 申請手続きの基本的な流れ(HowTo)
- 許可取得にかかる期間と費用
- 許可取得後の注意点(更新・変更届)
- 無許可営業の罰則:法律違反のリスク
- 無許可営業に対する罰則
- その他の法律違反と行政処分
- まとめ:建設業許可は適正な事業運営のための重要な法律ルール
- よくある質問(FAQ)
- Q:個人事業主でも建設業許可は必要ですか?
- Q:下請けとして工事を請け負うだけの場合も許可は必要ですか?
- Q:許可の有効期間はどれくらいですか? 更新は必要ですか?
建設業許可とは?その必要性と法律の基本
建設業許可制度は、建設工事の適正な施工の確保、発注者の保護、そして建設業の健全な発達を目的として「建設業法」という法律に基づき設けられています。一定規模以上の建設工事を請け負う事業者は、この許可を取得する法的な義務があります。まずは、許可の必要性、種類、業種の区分といった制度の根幹を理解しましょう。
建設業許可が必要なケース・不要なケース
原則として、建設工事の完成を請け負う営業(法人・個人事業主を問わず)を行う場合、建設業許可が必要です。ただし、法律上、例外として「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可がなくても営業活動が認められています。
表:軽微な建設工事の基準
| 工事の種類 | 許可が不要となる「軽微な建設工事」の基準 |
|---|---|
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が1,500万円未満(消費税含む) または、延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事 |
| 建築一式工事以外 (専門工事など) |
1件の請負代金が500万円未満(消費税含む) |
上記の金額を超える工事を一件でも請け負う場合は、該当する業種の許可が必要となります。
許可の区分:「一般建設業」と「特定建設業」の違い
建設業許可は、元請として受注した工事を下請けに出す際の金額規模によって、「一般建設業」と「特定建設業」の2種類に区分されます。この区分は、発注者から直接請け負う「元請」の立場になった際の法律上の制限であり、下請として営業するのみであれば一般建設業許可で問題ありません。
表:一般建設業と特定建設業の区分
| 区分 | 下請けに出す金額(1件の工事につき) | 主な対象者 |
|---|---|---|
| 一般建設業 | 4,500万円未満 (建築一式工事の場合は7,000万円未満) |
・下請けとして工事を請け負う事業者 ・元請だが、下請けに出さない事業者 ・元請で下請けに出す金額が上記未満の事業者 |
| 特定建設業 | 4,500万円以上 (建築一式工事の場合は7,000万円以上) |
・元請として大規模な工事を受注し、 大規模な下請発注(上記金額以上)を行う事業者 |
特定建設業許可は、大規模工事における下請業者を保護するため、一般建設業よりも厳しい取得要件(特に財産的基礎)が設定されています。
29種類の許可業種
建設業許可は、専門性に応じて29の業種に分類されています。営業を行いたい(請け負いたい)工事の種類に対応する業種の許可を取得する必要があります。
29業種は、大きく「土木一式工事」と「建築一式工事」の2つの一式工事と、27の専門工事に分けられます。
・土木一式工事業
・建築一式工事業
・大工工事業
・とび・土工工事業
・電気工事業
・管工事業
・塗装工事業
・内装仕上工事業
・解体工事業
[出典:国土交通省 業種区分、建設工事の内容、例示]
建設業許可の取得要件:法律で定められた基準
建設業許可を取得するためには、建設業法という法律で定められた複数の要件をすべて満たす必要があります。これらは事業者が建設業を適正に営むための「経営体制」「技術力」「財産」「誠実性」を証明するものであり、どれか一つでも欠けていれば許可は下りません。ここでは、クリアすべき4つの主要な基準を解説します。

経営体制の要件(経営業務の管理責任者の配置)
許可を受けようとする事業者に、適正な経営体制が備わっていることが求められます。具体的には、常勤の役員(法人の場合)または事業主本人(個人の場合)のうち1名が、以下のいずれかの経営経験を持つ「経営業務の管理責任者(経管)」として常勤している必要があります。
・許可を受けようとする業種に関し、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験
・許可を受けようとする業種以外の業種に関し、6年以上の経営業務の管理責任者としての経験
・経営業務を補佐した経験(業種問わず)が6年以上あること
(注:要件は法改正により変更される場合があるため、最新の情報を管轄行政庁にご確認ください)
技術力の要件(専任技術者の配置)
建設工事に関する専門知識や技術力を担保するため、許可を受けようとする全ての営業所に、該当する業種について一定の資格または実務経験を持つ「専任技術者(専技)」を常勤で配置する必要があります。
・必要な資格の例: 1級・2級国家資格(建築士、施工管理技士など)、特定の技能検定
・実務経験の場合: 許可を受けようとする業種に関して、大卒(指定学科)で3年以上、高卒(指定学科)で5年以上、または学歴問わず10年以上の実務経験
財産的基礎・金銭的信用の要件
工事の請負契約を履行するために必要な財産的基礎や金銭的信用があることを証明する必要があります。この要件は「一般建設業」と「特定建設業」で大きく異なります。
・一般建設業の場合(以下のいずれかを満たすこと)
・自己資本の額が500万円以上
・500万円以上の資金を調達する能力があること(金融機関の残高証明書などで証明)
・許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること(更新の場合)
・特定建設業の場合(以下のすべてを満たすこと)
・欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
・流動比率が75%以上であること
・資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること
誠実性・欠格要件の非該当
申請者(法人の場合はその役員等、個人の場合は事業主本人)が、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが求められます(誠実性の要件)。
また、申請者や役員等が、法律で定められた以下の「欠格要件」に該当する場合は、許可を受けることができません。
・破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
・許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
・建設業法やその他特定の法律(暴力団対策法、刑法など)に違反し、罰金以上の刑に処せられ、その執行が終わってから5年を経過しない者
・暴力団員等であること
建設業許可の申請手続きと法律上の注意点
許可要件をすべて満たしていることを確認したら、申請手続きに進みます。手続きは複雑で多くの書類を要するため、法律上のルール(提出先、期限など)を正確に把握しておくことが重要です。ここでは、申請先、手続きの基本的な流れ、そして許可取得後の注意点について解説します。
申請先:「知事許可」と「大臣許可」
建設業許可の申請先(許可行政庁)は、営業所の設置状況によって異なります。
・知事許可: 営業所が1つの都道府県内のみに設置されている場合。
(例:東京都内に本店と支店を設置 → 東京都知事許可)
・大臣許可: 営業所が2つ以上の都道府県にまたがって設置されている場合。
(例:東京都に本店、大阪府に支店を設置 → 国土交通大臣許可)
「大臣許可」の方が「知事許可」よりも格上というわけではなく、あくまで営業所の設置場所に基づく法律上の区分です。
[出典:国土交通省 許可行政庁一覧]
申請手続きの基本的な流れ(HowTo)
建設業許可の申請は、多くの証明書類を収集・作成し、管轄の行政庁窓口に提出して行います。
1. 要件の確認と準備:
上記の「経営体制」「技術力」「財産的基礎」「欠格要件」をすべて満たしているかを確認し、証明書類(経営経験の裏付け資料、資格証、残高証明書など)を準備します。
2. 申請書類の作成:
法律で定められた様式の申請書、役員等の一覧表、専任技術者証明書、工事経歴書などを作成します。
3. 申請窓口への提出・受付:
管轄の行政庁(都道府県の担当課や地方整備局)の窓口に、作成した書類一式を提出します。(郵送不可の場合が多い)
4. 行政庁による審査:
提出された書類に基づき、許可要件を満たしているかどうかの審査が行われます。
5. 許可の通知・許可証の交付:
審査を通過すると、許可通知書が送付され、後日、許可証が交付されます。
許可取得にかかる期間と費用
申請書類が受理されてから許可が下りるまでの標準処理期間は、法律で定められていませんが、行政庁の目安として以下のように設定されているのが一般的です。
・知事許可: 約30日~45日程度
・大臣許可: 約90日~120日程度
(注:これはあくまで目安であり、審査状況や補正の有無によって変動します)
また、申請時には法定の手数料(登録免許税または許可手数料)が必要です。
・新規(知事許可): 9万円
・新規(大臣許可): 15万円(登録免許税)
許可取得後の注意点(更新・変更届)
建設業許可は取得して終わりではありません。法律で定められた管理義務が発生します。
- 許可取得後の主な法的義務
・許可の更新:
許可の有効期間は5年間です。引き続き建設業を営む場合は、有効期間が満了する日の30日前までに更新手続きを行う必要があります。これを怠ると許可は失効します。・変更届の提出:
以下の事項に変更があった場合は、法律で定められた期間内(変更後30日以内、または2週間以内など内容による)に変更届を提出する義務があります。
・商号、名称、所在地
・役員、経営業務の管理責任者
・専任技術者
・資本金額 など
無許可営業の罰則:法律違反のリスク
もし建設業許可が必要な規模の工事(500万円以上など)を許可なく請け負った場合(無許可営業)、または許可申請で虚偽の記載をした場合、それは重大な法律違反(建設業法違反)となります。コンプライアン違反であるだけでなく、厳しい罰則や行政処分の対象となり、事業の存続自体が危ぶまれる可能性があります。
無許可営業に対する罰則
建設業法では、無許可営業や不正な手段による許可取得に対して、刑事罰が定められています。許可が必要であるにもかかわらず許可を取得しないで建設業を営んだ者、または不正な手段で許可を受けた者は、以下の罰則が科せられる可能性があります。
- 建設業法 第四十七条(抜粋参考)
「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」
(併科される場合もあります)
これは非常に重い罰則であり、法律が建設業許可制度をいかに重要視しているかがわかります。
[出典:e-Gov法令検索 建設業法]
その他の法律違反と行政処分
無許可営業以外にも、建設業法に違反した場合には、罰則の対象となるほか、行政庁による監督処分(行政処分)を受けることがあります。
・主な違反行為の例:
・一括下請負の禁止(丸投げ)違反
・主任技術者または監理技術者の不設置
・許可取得後の変更届の未提出や虚偽記載
・施工体制台帳の不作成
・行政処分の種類:
・指示処分: 違反行為の是正を指示されます。
・営業停止処分: 一定期間(例:7日間~1年間)の営業停止を命じられます。
・許可取消処分: 最も重い処分で、建設業許可が取り消されます。
これらの処分を受けると、公共工事の入札参加資格を失うなど、経営に深刻なダメージを与えます。
まとめ:建設業許可は適正な事業運営のための重要な法律ルール
この記事では、建設業許可の概要、必要性、取得するための4つの要件、申請手続きの流れ、そして法律違反時の重い罰則について網羅的に解説しました。
建設業許可は、一定規模以上の工事を請け負う事業者にとって必須の資格であると同時に、建設業法という法律に基づく事業運営の根幹をなすルールです。許可を取得し維持することは、単に大規模な工事を受注できるというメリットだけでなく、発注者や取引先、金融機関からの社会的な信用を得て、適正に事業を運営している証となります。
許可取得の要件確認や膨大な申請書類の作成は複雑であり、専門的な知識が求められます。自社の事業内容が許可を必要とするかを正確に判断し、法律を遵守した上で、確実な許可取得と適正な事業運営を目指しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q:個人事業主でも建設業許可は必要ですか?
A:はい、必要です。建設業許可の必要性は、法人・個人事業主の事業形態に関わらず、請け負う工事1件の請負代金額によって決まります。請負金額が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事を請け負う場合は、個人事業主であっても法律(建設業法)に基づき許可が必要です。
Q:下請けとして工事を請け負うだけの場合も許可は必要ですか?
A:はい、元請・下請の関係なく、請け負う工事の金額が法律で定められた基準(500万円以上など)を超える場合は許可が必要です。ただし、下請専門であれば、下請発注の制限がない「一般建設業許可」を取得すれば問題ありません。
Q:許可の有効期間はどれくらいですか? 更新は必要ですか?
A:建設業許可の有効期間は5年間です。許可を維持するためには、5年ごとに更新手続きを行わなければ、許可は自動的に失効してしまいます。更新手続きは、法律上、有効期間が満了する日の30日前までに完了させる必要があります(申請自体は数ヶ月前から受け付けられます)。




