「法律」の基本知識

電子契約導入に向けた建設業の法的準備とは?


更新日: 2026/01/15
電子契約導入に向けた建設業の法的準備とは?

この記事の要約

  • 建設業法や電帳法など電子化に不可欠な法的要件を網羅しました
  • 本人確認や改ざん防止の具体的な技術基準と手順を解説します
  • 印紙税削減や事務効率化を実現するコンプライアンス管理を提案
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建設業界において電子契約を導入する際、まず理解しておくべきは関連する法律の全体像です。2026年現在、建設DXの加速に伴い、従来の「書面主義」からの完全な脱却を支える法整備が整っています。ここでは、根幹となる3つの法律について、結論を整理して解説します。

建設業法における電子契約の規定

建設業法第19条では、請負契約の締結時に契約内容を記載した書面の交付が義務付けられています。かつては紙の書面が必須でしたが、現在は相手方の承諾を得た場合に限り、電磁的方法による契約締結が認められています。これは法律がデジタル化を公式に追認したものであり、現在の建設取引における標準的な選択肢となっています。

IT一括法とデジタル社会形成整備法による緩和

デジタル社会の形成を目的とした一連の法律改正により、これまで対面や書面が必須とされていた手続きの多くが電子化されました。これにより、建設業においても契約締結だけでなく、重要事項説明のオンライン化なども可能になり、業務全体のペーパーレス化を法的に後押ししています。

電子帳簿保存法への対応義務

電子契約を運用する上で、電子帳簿保存法という法律への準拠は不可欠です。2024年の完全義務化以降、電子的に授受した契約データは、一定の要件を満たした状態で保存しなければなりません。これには「真実性の確保(改ざん防止)」と「可視性の確保(検索機能の整備)」が含まれ、適切なシステム運用が法律によって求められています。

電子契約に関連する主要な法律用語の定義
  • 電磁的方法
    電子情報処理組織を使用する方法(インターネット等)や、磁気ディスク等を用いて情報を記録・伝達する手法のこと。

  • 電子署名
    電子文書に対して、作成者の本人確認と、内容が改ざんされていないことを証明するための技術的措置。

  • タイムスタンプ
    ある時刻にその電子データが存在し、それ以降に改ざんされていないことを第三者機関(時刻認証局)が証明する仕組み。

電子契約を有効に成立させるためには、法律が求める技術的な基準をクリアする必要があります。特に証拠能力の確保は、万が一の紛争時に自社を守るための重要な防衛策となります。

電子契約の有効性を担保する法的要件一覧

以下の表は、建設業法および電子署名法に基づき、電子契約が法的効力を持つために必要な要件をまとめたものです。

項目 法律上の要求事項 具体的な対応策
本人性の証明 契約が間違いなく当事者によって締結されたことの証明 電子署名の活用、二要素認証の導入
非改ざん性の証明 締結後に契約内容が書き換えられていないことの証明 認定タイムスタンプの付与、変更履歴の自動記録
相手方の承諾 電磁的方法によって契約することに対する相手方の同意 事前の承諾書の締結、またはシステム上での承諾フロー
見読性の確保 必要に応じて即座に内容を確認、出力できる状態の維持 検索機能(取引先・日付・金額)の保持、ディスプレイの常備

[出典:国土交通省 建設業法第19条第1項及び第2項の規定による情報通信の技術を利用する方法の技術的基準]

建設現場でヘルメットを被った管理者がタブレット端末で電子署名を行う様子

建設業法ガイドラインに沿った運用ルール

国土交通省のガイドラインでは、電子契約の技術的基準が具体的に示されています。単にメールでPDFを送るだけでは不十分であり、法律が定める「公開鍵暗号方式」などを用いた電子署名が必要です。また、相手方がファイルを自分の管理下にある端末にダウンロードして保存できる環境を整えることも、法準拠のための必須要件となっています。

建設業が法律に準拠して電子契約を導入するための準備ステップ

法的な不備なく電子契約をスタートさせるためには、体系的なプロセスが必要です。以下のステップに従って、法律上の要件と実務の整合性を確認してください。

導入するツールの法的適合性チェック(表で整理)

市場のツールには、利便性重視の「立会人型」と厳格な「当事者型」があります。契約のリスクに応じて適切なタイプを選択してください。

比較項目 認印タイプ(立会人型) 実印タイプ(当事者型)
法的証拠力の強さ 高い(一般的な取引に十分) 極めて高い(重要契約に推奨)
本人確認の手法 メールアドレス等による認証 電子証明書(マイナンバーカード等)による認証
導入のしやすさ 非常に容易(相手方の準備不要) 手間がかかる(相手方の証明書が必要)
主な利用シーン 注文書・請書、一般的な下請契約 大規模工事、JV契約、不動産売買等

[出典:電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)第3条の規定内容]

社内規定および運用マニュアルの整備

法律を遵守した運用を定着させるためには、社内ルールの明文化が不可欠です。以下の手順でマニュアルを整備します。

  • 1.対象範囲の選定
    電子化する契約書の種類(請負契約、秘密保持契約、発注書等)を決定します。

  • 2.権限規定の策定
    電子署名を付与できる役職者や承認フローを明確にし、内部統制を強化します。

  • 3.電子帳簿保存規定の作成
    データの管理責任者、保存期間、訂正削除の禁止に関する事務処理規定を定めます。

  • 4.取引先への案内準備
    電子契約への移行理由、安全性、法的な正当性を説明するための案内状を作成します。
法的トラブルを回避するための重要チェックポイント
  • 契約相手から「電磁的方法による利用承諾」を確実に得ているか
  • 使用するシステムが、電子帳簿保存法の「優良な電子帳簿」の要件を満たしているか
  • 社印(角印)の画像だけでなく、法的効力のある電子署名が付与されているか

電子契約への移行は、業務効率化だけでなく、企業のガバナンスを強化する手段となります。特に建設業界特有の法律リスクを低減する効果が期待できます。

印紙税法への対応とコスト削減

印紙税法という法律では、課税対象となる「文書」が作成された場合に納税義務が生じます。しかし、電子データは「文書」に該当しないというのが政府の公式見解です。そのため、高額な工事請負契約であっても収入印紙が不要となります。これは適法な節税であり、年間で数百万円規模のコスト削減に繋がる企業も少なくありません。

下請法および建設業法違反の防止

契約書の交付遅延やバックデート契約は重大な法律違反となりますが、電子契約はこのリスクを根本から解決します。システム上で契約締結日時が自動記録されるため、法律で義務付けられた「契約の即時交付」が容易になります。また、未締結のまま現場が稼働する「見切り発車」をシステム上で検知・抑制することも可能です。

オフィスで電子署名システムのダッシュボードを確認するコンサルタントと役員

読者のよくある不安:裁判時の証拠能力

デジタルデータは改ざんが容易で裁判に弱いという誤解がありますが、法律的な証拠力は担保されています。電子署名法第3条に基づき、適切な電子署名がなされたデータは、本人の意思による成立が法的に推定されます。システムによる証跡が残る分、紙よりも客観的な証拠として機能するケースも増えています。

まとめ:法的準備を整え、安全な建設DXの第一歩を

建設業における電子契約の導入は、法律に則った業務プロセスの再構築です。本記事で解説した法的準備のポイントを改めて整理します。

  • 建設業法および電子帳簿保存法の要件(本人確認・非改ざん性・見読性)を正しく理解し、システム選定の基準にすること。

  • 電子署名とタイムスタンプを活用し、書面と同等以上の証拠力を確保すること。

  • 社内規定の整備を通じて、コンプライアンスを遵守した運用体制を組織全体で構築すること。

これらの法的準備を整えることで、印紙代の削減や契約スピードの向上、法令遵守の強化という多大なメリットを享受できます。2026年の建設市場において、法的裏付けのある電子契約は、企業の信頼性と競争力を支える重要な基盤となるでしょう。

Q1. 電子契約を導入する際、下請業者の承諾は必ず必要ですか?

A. はい、建設業法において電子化する際は「相手方の承諾」を得ることが義務付けられています。

建設業法第19条第3項に基づき、電磁的方法を利用する場合、あらかじめ相手方の承諾を得なければなりません。承諾を得る方法は、書面での合意のほか、電子メールやシステム上の承諾プロセスも認められています。無断で電子契約を強要することは法律違反となる可能性があるため、事前の説明と同意取得を徹底してください。

Q2. すべての建設関連書類を電子化しても法律上問題ありませんか?

A. ほとんどの書類が電子化可能ですが、公共工事など一部の例外には注意が必要です。

現在の法律下では、民間工事の請負契約書、注文書、請書などはすべて電子化が可能です。ただし、公共工事においては発注者が指定するシステムを利用する必要がある場合や、独自の書面様式を求めている場合があります。自社の主要な取引先が求める要件を事前に確認することが、安全な導入のポイントです。

Q3. 電子契約を導入した後、過去の紙の契約書はどうすればよいですか?

A. 過去の紙の契約書は、法定保存期間が終了するまで原則としてそのまま保存する必要があります。

法律(法人税法や建設業法)で定められた保存期間内にある紙の契約書は、そのまま破棄することはできません。これらをデータ化して原本を破棄したい場合は、電子帳簿保存法の「スキャナ保存要件」を厳格に満たす必要があります。基本的には「新規分は電子契約、過去分は紙のまま保管」という並行運用が推奨されます。

[出典:国税庁 電子帳簿保存法一問一答]
[出典:総務省 電子署名法Q&A]
[出典:国土交通省 建設業法に基づく事務ガイドライン]

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