「届出」の基本知識

建設業届出に使う様式とは?記入時の注意点もあわせて解説


更新日: 2025/12/11
建設業届出に使う様式とは?記入時の注意点もあわせて解説

この記事の要約

  • 変更事由ごとに異なる届出様式と必要書類を一覧で解説
  • 期限は2週間と30日の2種があり遅延時のリスクも紹介
  • 記入ミス防止のポイントと行政書士活用のメリットを比較
目次
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建設業許可における変更届出とは?提出が必要な理由

建設業許可を取得した後、事業所の状況に変更が生じた場合は、定められた期間内に許可行政庁へ届出を行う義務があります。このセクションでは、なぜ変更届出が法令で厳格に定められているのか、その定義と提出を怠った場合のリスクについて解説します。

変更届出の定義と義務

建設業法において、許可を受けた建設業者は、商号や所在地、役員、技術者などの重要事項に変更があった際、遅滞なくその旨を届け出なければならないと規定されています。これは、発注者や元請負人が、建設業者の現在の状況(施工能力や社会的信用など)を正確に把握できるようにするためです。

変更届出の重要性
  • 許可の有効性を維持するための必須要件
    変更届出は単なる報告ではなく、実態と許可内容が一致していることを担保するための手続きです。

届出を怠った場合の罰則やリスク

変更届出を提出しなかったり、虚偽の届出を行ったりした場合には、厳しい罰則が設けられています。法的なリスクだけでなく、事業継続そのものに関わる重大な影響があるため注意が必要です。

  • 建設業法に基づく罰則
    6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

  • 許可の取消処分
    悪質な場合や、欠格要件に該当する役員変更を隠していた場合などは、建設業許可そのものが取り消されるリスクがあります。

  • 更新申請への影響
    5年ごとの許可更新時に、過去の変更届が未提出であると更新手続きが進められず、許可が失効する原因となります。

建設業許可の変更届出に必要な書類と事務用品のイメージ

変更内容によって異なる届出の様式一覧

変更届出において最も重要なのは、変更事由に対応した正しい様式番号を選ぶことです。様式を間違えると受付自体がされません。ここでは実務で頻出する変更パターン別に、使用すべき様式とポイントを表形式で整理しました。なお、どの変更であっても表紙となる変更届出書(第一面)(様式第二十二号の二)は共通して必須となります。

商号・所在地・資本金の変更に必要な様式

会社の基本情報(登記情報)に変更があった場合に使用します。これらは法務局での変更登記が完了した後に、その事後報告として建設業課へ届け出ます。

表:会社基本情報の変更に伴う様式

変更事由 使用する様式 概要と注意点
商号(会社名)の変更 様式第二十二号の二 【概要】
変更届出書の第一面に新旧の商号を記載。
【注意】
読み仮名(フリガナ)の変更も届出が必要です。
営業所の所在地変更 様式第二十二号の二 【概要】
本店や支店の移転時に使用。
【注意】
移転先の電話番号や郵便番号も忘れずに更新してください。
資本金の変更 様式第二十二号の二 【概要】
増資や減資を行った場合。
【注意】
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の添付が必須です。

役員・令3条使用人の変更に必要な様式

「人」に関する変更は提出書類が多く、不備が起きやすい箇所です。特に「新しく就任する人」がいる場合は、欠格要件に該当しないことを誓約する書類がセットになります。

表:役員・使用人の変更に伴う様式

変更事由 使用する様式 概要と注意点
役員等の氏名変更・交代 様式第十一号の二 【概要】
「役員等の一覧表」を最新情報に更新します。
【注意】
常勤・非常勤の別も正確に記載する必要があります。
新任役員の誓約書 様式第六号 【概要】
欠格要件(反社会的勢力等)に該当しない旨の誓約書。
【注意】
新任者本人の署名または記名押印が必要です。
略歴書 様式第十二号 【概要】
新任役員の職務経歴書。
【注意】
履歴書の形式で、空白期間がないように記載します。
株主(出資者)の変更 様式第十四号 【概要】
総株数の5%以上または100分の5以上を出資する株主の変更。
【注意】
法人が株主の場合は、その法人の情報も必要です。

経営業務の管理責任者・専任技術者の変更に必要な様式

建設業許可の維持に直結する重要ポストの変更です。要件を満たしていることを証明するため、過去の工事実績や資格証の提示が求められます。

表:責任者・技術者の変更に伴う様式

変更事由 使用する様式 概要と注意点
経営業務の管理責任者の変更 様式第七号 【概要】
経営経験(5年以上等)を証明する書類。
【注意】
前任者の退任日と後任者の就任日に空白期間を作らないことが重要です。
専任技術者の変更 様式第八号 【概要】
国家資格や実務経験の内容を証明する書類。
【注意】
資格証の写しや、実務経験を証明する契約書・請求書等の裏付け資料が大量に必要になる場合があります。

その他の変更(廃業等)に必要な様式

事業を継続できなくなった場合や、許可を受けている業種の一部をやめる場合の手続きです。

廃業届(様式第二十二号の四)
  • 提出のタイミング
    建設業を廃業した日、または合併等で消滅した日から30日以内に提出します。

  • リスク
    これを怠ると、将来的に再取得を目指す際に「過去に無断で廃業した」という履歴が残り、審査が不利になる可能性があります。

届出に必要な様式の入手方法と提出先

変更届出に必要な様式は、全国一律のフォーマットが基本ですが、都道府県によって独自の運用ルールや微細な様式の違い(押印の要不要など)がある場合があります。必ず管轄の最新情報を入手してください。

都道府県庁のホームページからのダウンロード

最も確実な入手方法は、管轄する都道府県庁の公式Webサイトにある「建設業課」や「土木管理課」のページからダウンロードすることです。

  • 手順1:公式サイトへのアクセス
    都道府県の公式サイトにアクセスし、「建設業許可」「様式ダウンロード」などのキーワードで検索します。

  • 手順2:ファイルの選択
    「変更届出」に関するセクションから、Word形式またはPDF形式のファイルをダウンロードします。

  • 手順3:手引きの確認
    あわせて「記載要領」や「手引き」もダウンロードし、記入ルールを確認します。

管轄の土木事務所や建設業課への提出ルート

書類の作成が完了したら、管轄の行政庁へ提出します。提出先は、本店所在地を管轄する「土木事務所」または都道府県庁の「建設業担当課」となります。

提出方法の比較
  • 窓口持参
    その場で形式的な不備チェックを受けられるメリットがあります。

  • 郵送提出
    移動の手間が省けますが、副本返信用の封筒同封が必要です。また、到達確認ができる簡易書留などが推奨されます。

建設業許可の変更届出における提出期限のルール

変更届出には法律で定められた厳格な期限があります。変更内容によって変更後30日以内変更後2週間以内の2パターンに分かれるため、遅延しないよう注意が必要です。

変更後30日以内に届出が必要なケース

法人の基礎情報や資本関係など、比較的広範囲の変更がこれに該当します。この期間は、登記変更の手続き期間(原則2週間)を考慮して設定されています。

  • 商号・名称の変更
  • 営業所の名称・所在地の変更
  • 営業所の新設・廃止
  • 資本金・出資金の変更
  • 役員等の氏名変更・就退任(代表者含む)
  • 支配人の変更

変更後2週間以内に届出が必要なケース

建設業許可の要件に関わる「人」に関する変更は、より緊急度が高く、期限が短く設定されています。

  • 経営業務の管理責任者の変更(交代・氏名変更など)
  • 専任技術者の変更(交代・氏名変更など)
  • 令3条使用人(支店長など)の変更
  • 欠格要件に該当した場合

届出様式を記入する際の主な注意点と不備対策

書類に不備があると、修正のために窓口へ再訪問したり、再送付したりする手間が発生します。スムーズな受理を目指すためのポイントを解説します。

記載内容と添付書類の整合性チェック

最も多い不備は、届出書に記入した内容と、添付する公的書類(登記簿謄本など)の内容が一致していないケースです。

  • 商号や住所の表記
    「一丁目1番地1」と「1-1-1」の違いなど、登記簿謄本や住民票の記載通りに正確に転記してください。

  • 日付の正確性
    就任日、辞任日、移転日などは、株主総会議事録や登記簿上の日付と完全に一致させる必要があります。

記入ミスがあった場合の訂正方法

記入を間違えた場合、修正液や修正テープの使用は認められていません。公文書としての訂正ルールに従う必要があります。

  • 手順1:二重線による抹消
    間違えた箇所に二重線を引きます。

  • 手順2:正しい内容の記載
    その近く(上部や横)に正しい内容を記載します。

  • 手順3:訂正印の押印
    二重線の上、または近くに届出印(実印等)と同じ印鑑で訂正印を押します(捨て印で対応可能な場合もあります)。

新旧対照表の作成が必要なケース

定款の変更などが伴う場合、何がどう変わったのかを分かりやすく示すために「新旧対照表」の添付を求められることがあります。変更前の条文と変更後の条文を左右に対照させて記載し、変更箇所を明確にします。

届出様式とあわせて提出が必要な添付書類

様式(申込書)への記入だけでは手続きは完了しません。記載された事実を裏付けるための「証明書類(添付書類)」がセットで必要になります。

法定書類(登記簿謄本・納税証明書など)

公的機関が発行する書類です。発行から3ヶ月以内の原本が求められることが一般的です。

  • 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
    商号、所在地、役員、資本金などの変更事実を確認するために不可欠です。

  • 身分証明書・登記されていないことの証明書
    新任役員がいる場合に、欠格要件に該当しないことを証明するために必要です。

実務経験や資格を証明する書類

技術者や管理責任者の変更時に必要となります。

  • 資格者証・免許証の写し
    施工管理技士や建築士などの資格証コピー。

  • 実務経験証明書
    資格がない場合、10年以上の実務経験などを証明するために、過去の注文書や請求書の控えを整理して提出します。

  • 常勤性の確認資料
    健康保険証の写しや標準報酬決定通知書など、その会社に常勤していることを証明する書類。

営業所の確認資料(写真・地図など)

営業所を移転・新設した場合に必要です。

  • 営業所の案内図
    最寄駅からの地図。

  • 写真
    建物の全景、看板(商号が掲示されているもの)、執務スペース、電話機などが写った写真。実態のある営業所であることを証明します。

届出は自分で作成するか専門家に依頼するか

変更届出は自社で行うことも可能ですが、内容によっては専門知識が必要です。自社対応と専門家依頼の比較検討材料を提示します。

建設業許可の変更届出を行政書士に相談している様子

自社で届出を行うメリットとデメリット

  • メリット
    外部への依頼費用がかからないため、コスト(実費の手数料や証明書取得費のみ)を最小限に抑えられます。

  • デメリット
    様式の調査、記入、証明書の収集、窓口への提出に多くの時間を取られます。特に技術者の実務経験証明が必要な場合、書類作成の難易度が高く、何度も補正を指示されるリスクがあります。

行政書士に依頼するメリットと費用相場

建設業許可を専門とする行政書士に依頼する場合の特徴です。

表:自社対応と専門家依頼の比較

項目 自社対応の場合 専門家(行政書士)依頼の場合
コスト 安い(数千円程度の実費のみ) 数万円〜(報酬+実費)
手間・時間 多い(調査・作成・提出の全て) 少ない(押印と一部資料の準備のみ)
確実性 不備による差戻しリスクあり 専門知識により不備リスクが極めて低い
スピード 慣れていないと時間がかかる 最短ルートで迅速に対応可能

まとめ

建設業許可の変更届出は、許可を維持するために欠かせない手続きです。以下のポイントを再確認し、漏れのない対応を心がけてください。

記事の重要ポイント
  • 様式の選定
    変更事由(商号、役員、技術者など)に対応した正しい様式番号を選び、都道府県の最新フォーマットを使用すること。

  • 厳格な期限
    経営業務の管理責任者や専任技術者の変更は2週間以内、その他の商号や役員変更などは30日以内に提出すること。

  • 添付書類の準備
    登記簿謄本や常勤確認資料など、様式以外の裏付け資料の収集にも時間を要するため、早めに着手すること。

  • 不備対策
    登記情報との整合性を確認し、不安がある場合は専門家への依頼を検討すること。

よくある質問

Q1. 決算変更届(決算報告)も同じ様式ですか?

いいえ、異なります。毎事業年度終了後に提出する「決算変更届(事業年度終了届)」は、財務諸表や工事経歴書を報告するものであり、主に様式第十一号(工事経歴書)や財務諸表様式を使用します。今回の記事で解説した「変更届出書」とは別の手続きとなります。

Q2. 届出は郵送でも受け付けてもらえますか?

多くの都道府県で郵送による提出を受け付けています。ただし、受付印を押した副本の返送が必要となるため、切手を貼った返信用封筒の同封が必須です。また、紛失防止のために簡易書留やレターパックなど、追跡可能な方法で送付することが推奨されます。

Q3. 変更届出の様式は全国共通ですか?

建設業法施行規則に基づく様式番号(例:様式第二十二号の二)は全国共通ですが、レイアウトや記入要領、添付が必要な独自書類などは都道府県ごとに異なる場合があります。必ず本店所在地を管轄する都道府県庁のホームページから最新の様式を入手してください。

[出典:国土交通省「建設業許可制度の概要」]
[出典:各都道府県 建設業課 公開マニュアル]

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