建設業届出の書類作成方法とは?提出までの流れも解説

この記事の要約
- 建設業許可維持には毎年の決算変更届と変更時の届出が必須
- 決算変更届は事業年度終了後4ヶ月以内の提出が法律上の義務
- 書類作成や提出は自社対応のほか行政書士への依頼も選択可能
- 目次
- 建設業許可の維持に必須となる「届出」とは何か
- 建設業における届出の種類と役割
- 届出を怠った場合に生じる許可取り消しのリスク
- 毎年提出が必要な「決算変更届(届出)」の書類作成
- 届出の提出期限と提出先
- 作成に必要な書類一覧と準備するもの
- 建設業特有の財務諸表への書き換えポイント
- 会社の情報が変わった際に行う「変更届出」の種類と期限
- 30日以内に提出が必要な届出事項
- 2週間以内に提出が必要な届出事項
- 建設業届出の書類作成から提出までの具体的な流れ
- ステップ1:最新の様式と情報の収集
- ステップ2:書類の作成と添付書類の取得
- ステップ3:窓口持参・郵送・電子申請による提出
- 自社で届出を行うか行政書士に依頼するかの比較検討
- 自社で作成・届出を行う場合の手間とコスト
- 専門家に届出を代行してもらうメリット
- 依頼先を選ぶ際のポイントと費用相場
- まとめ:建設業の届出は許可維持のための重要業務
- 建設業の届出に関するよくある質問
- Q1. 届出を数年間忘れていた場合、まとめて提出することはできますか?
- Q2. 変更届出を出さないまま更新時期が来てしまいましたが、どうすればよいですか?
- Q3. 届出の書類はどれくらいの期間保存しておくべきですか?
建設業許可の維持に必須となる「届出」とは何か
建設業許可を取得した事業者は、許可後も一定のルールに基づいて行政庁への報告義務を負います。この報告手続きが「届出」です。許可は一度取得すれば終わりではなく、有効期間である5年間の間に、事業年度ごとの報告や会社情報の変更報告を適切に行わなければなりません。ここでは、建設業法で定められた届出の種類と、それを怠った場合の重大なリスクについて解説します。
建設業における届出の種類と役割
建設業法に基づき提出が必要な届出は、大きく分けて以下の3種類に分類されます。それぞれの届出には明確な提出要件と期限が定められており、事業者はこれらを正確に把握し、期限内に手続きを行う必要があります。
- 主な届出の種類
- 決算変更届(事業年度終了届)
決算終了後、毎年必ず提出するものです。1年間の工事実績や財務状況を報告するために行います。 - 各種変更届
商号、営業所の所在地、役員、資本金などに変更があった場合に、その都度提出するものです。 - 廃業届
建設業の営業をやめた場合、または許可要件を満たさなくなった場合に提出するものです。
- 決算変更届(事業年度終了届)
届出を怠った場合に生じる許可取り消しのリスク
届出の提出は法律上の義務であり、これを怠ると建設業許可の維持に深刻な影響を及ぼします。最も注意すべき点は、5年ごとの許可更新申請ができなくなることです。更新時には、過去5年分(または更新期間分)の「決算変更届」が全て提出されているか厳格に確認されます。未提出の期間があると、原則として更新手続きを受け付けてもらえません。
さらに、建設業法第50条に基づき、届出を提出しなかったり虚偽の記載をして提出したりした場合には、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金という厳しい罰則が科される可能性があります。また、公共工事の入札参加資格審査(経営事項審査)を受けることもできなくなるため、事業継続におけるリスクは極めて高いといえます。
[出典:建設業法]
毎年提出が必要な「決算変更届(届出)」の書類作成
建設業許可業者が最も頻繁に行う手続きが、毎事業年度終了後に提出する「決算変更届(正式名称:決算変更届出書)」です。これは税務署への確定申告とは異なり、許可行政庁に対して行う建設業法独自の報告義務です。毎年発生するルーティン業務であるため、期限と必要書類を正確に把握し、計画的に準備を進めることが重要です。

届出の提出期限と提出先
決算変更届の提出期限は、事業年度終了後(決算日)から4ヶ月以内と定められています。例えば、3月31日が決算日の会社であれば、7月31日が提出期限となります。
提出先は、保有している許可の種類によって異なります。
- 都道府県知事許可の場合
主たる営業所を管轄する都道府県庁の建設業担当課、または土木事務所など。 - 国土交通大臣許可の場合
本店の所在地を管轄する国土交通省の地方整備局。
期限を過ぎても提出自体は受け付けてもらえることが一般的ですが、始末書の提出を求められたり、行政指導の対象となったりする場合があるため、必ず期限内に提出しましょう。
作成に必要な書類一覧と準備するもの
決算変更届の作成には、工事の実績データや税理士が作成した決算書などが必要です。以下に主な必要書類を整理しました。
| 書類名 | 内容・備考 | 入手元 |
|---|---|---|
| 工事経歴書 | 直前1年間の主な工事実績(注文者、工期、金額など)を業種ごとに記載します。 | 都道府県等のHPより様式ダウンロード |
| 直前3年の各事業年度における工事施工金額 | 年度ごとの請負代金の合計額を記載します。 | 都道府県等のHPより様式ダウンロード |
| 財務諸表(貸借対照表・損益計算書など) | 建設業会計の形式に修正して記載する必要があります(詳細は後述)。 | 税理士作成の決算書を基に転記 |
| 事業報告書 | 株式会社のみ必要です。事業の概況などを記載します。 | 自社作成(任意の形式または様式あり) |
| 納税証明書 | 知事許可は「事業税」、大臣許可は「法人税」の納税証明書が必要です。 | 県税事務所・税務署 |
建設業特有の財務諸表への書き換えポイント
決算変更届の作成において最大の難関となるのが、税務申告用の決算書(商業簿記)から、建設業法で定められた様式(建設業会計)への「書き換え」作業です。
一般的な会計ソフトで作成された決算書をそのまま転記することはできません。建設業特有の勘定科目に振り分け直す必要があります。この分類を誤ると、経営事項審査(経審)の評点に悪影響を及ぼしたり、修正申告を求められたりする可能性があります。
以下に、間違いやすい主要な勘定科目の読み替えを整理しました。
【商業簿記から建設業会計への勘定科目・読み替え一覧】
| 商業簿記(一般的な決算書) | 建設業会計(届出様式) | 内容・注意点 |
|---|---|---|
| 売上高 | 完成工事高 | 建設業に関連する売上のみを抽出します。兼業事業(不動産販売など)の売上は「兼業事業売上高」として区別します。 |
| 売掛金 | 完成工事未収入金 | 工事は完了して引き渡したが、まだ入金されていない代金です。 |
| 仕掛品・未成工事支出金 | 未成工事支出金 | 決算日時点でまだ完成していない工事にかかった原価(材料費、外注費など)です。 |
| 前受金 | 未成工事受入金 | 完成前の工事に関して、発注者から前もって受け取った代金(手付金など)です。 |
| 買掛金 | 工事未払金 | 工事に関して発生した未払いの材料費や外注費です。工事以外の未払金と明確に分けます。 |
| 売上原価 | 完成工事原価 | 材料費、労務費、外注費、経費の4つに区分して記載する必要があります。 |
- 審査で指摘されやすい「よくある不備」
- 千円単位の処理ミス
様式によっては「千円単位」での記載が求められます。原則として千円未満切り捨てが多いですが、自治体の手引きを確認してください。 - 端数処理による合計のズレ
千円単位にした結果、貸借対照表の「資産の部」と「負債・純資産の部」の合計が合わなくなることがあります。その場合は、固定資産などの項目で調整が必要です。
- 千円単位の処理ミス
会社の情報が変わった際に行う「変更届出」の種類と期限
毎年の決算変更届以外にも、会社の基本情報や許可要件に関わる事項に変更が生じた場合は、速やかに「変更届出書」を提出しなければなりません。変更事項によって提出期限が「30日以内」のものと「2週間以内」のものに分かれているため、注意が必要です。変更登記が完了した後すぐに手続きを行うのが一般的です。
30日以内に提出が必要な届出事項
会社の登記事項や資本金などに変更があった場合、原則として変更日から30日以内に届出を行います。
| 変更事項 | 提出期限 | 必要な添付書類の例 |
|---|---|---|
| 商号・名称の変更 | 30日以内 | 履歴事項全部証明書(登記簿謄本) |
| 営業所の所在地変更 | 30日以内 | 履歴事項全部証明書、賃貸借契約書の写し、付近見取図、営業所の写真 |
| 資本金の変更 | 30日以内 | 履歴事項全部証明書、株主資本等変動計算書 |
| 役員の就任・辞任 | 30日以内 | 履歴事項全部証明書、新役員の身分証明書、登記されていないことの証明書 |
2週間以内に提出が必要な届出事項
建設業許可の要件の根幹に関わる重要な役割を持つ人物に変更があった場合、期限はさらに短く「2週間以内」となります。これらの担当者が退職や異動で不在になると許可要件を満たさなくなる可能性があるため、後任者を速やかに選任し、行政庁へ届け出る必要があります。
- 経営業務の管理責任者(経管)の変更
- 専任技術者(専技)の変更
- 建設業法施行令第3条に規定する使用人(支店長など)の変更
建設業届出の書類作成から提出までの具体的な流れ
届出の準備から完了までは、情報の収集、書類作成、そして提出という3つのステップで進みます。自治体によって様式や細かいルールが異なる場合があるため、最新情報を確認しながら進めることが成功の鍵です。ここでは標準的な流れを解説します。

ステップ1:最新の様式と情報の収集
まず、管轄する都道府県または地方整備局のホームページにアクセスし、最新の「建設業許可申請・届出の手引き」と「様式」をダウンロードします。様式は法改正により変更されることがあるため、必ず最新のものを使用してください。
- 管轄行政庁のウェブサイト検索
「〇〇県 建設業課 届出」などで検索し、公式ページへアクセスします。 - 手引きの確認
必要書類リストや記載例(マニュアル)を確認し、自社の状況に合わせて必要なものを洗い出します。 - 様式のダウンロード
ExcelやWord形式で提供されているものを保存します。
ステップ2:書類の作成と添付書類の取得
手引きに従って届出書を作成し、並行して役所から証明書類を取得します。
- 添付書類の取得
法務局で「履歴事項全部証明書(登記簿謄本)」、税務署や県税事務所で「納税証明書」、本籍地の役所で「身分証明書」などを取得します。これらは原則として発行から3ヶ月以内のものが必要です。 - データの転記・入力
決算書や工事台帳を見ながら、工事経歴書や財務諸表を作成します。数字の転記ミスがないか、合計金額が合っているかを入念にチェックします。 - 押印・製本
必要な箇所に押印し(現在は押印不要な自治体も増えています)、正本(役所提出用)と副本(自社控え用)を用意します。
ステップ3:窓口持参・郵送・電子申請による提出
書類が整ったら提出を行います。近年ではオンラインでの提出も普及してきましたが、それぞれの方法にメリット・デメリットがあります。自社の状況に合わせて最適な方法を選択してください。
| 提出方法 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 窓口持参 | その場で担当者が形式審査を行うため、不備があれば即座に修正・確認が可能です。 | 移動時間や待ち時間が発生します。また、予約が必要な場合があります。 |
| 郵送 | 役所に行く移動時間と手間が省けます。遠方の行政庁への提出に便利です。 | 書類に不備があった場合、返送や電話でのやり取りに時間がかかり、受理が遅れるリスクがあります。 |
| 電子申請(JCIP) | 建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)を利用し、24時間オフィスから提出可能です。 | パソコンの環境設定、GビズIDの取得、システム操作への習熟が必要です。 |
自社で届出を行うか行政書士に依頼するかの比較検討
建設業の届出は自社で総務や経理担当者が行うことも可能ですが、専門家である行政書士に依頼するケースも多く見られます。どちらが自社にとって最適か、コストと手間のバランスを考慮して判断することが大切です。
自社で作成・届出を行う場合の手間とコスト
自社対応の最大のメリットは、外部への委託費用がかからないことです。しかし、以下のような事務負担が発生するため、人件費との兼ね合いを考える必要があります。
- 専門知識の習得コスト
建設業会計や許可要件の専門知識を理解し、最新の法改正を追う必要があります。 - 業務時間の圧迫
添付書類の取得や窓口への提出は、基本的に平日の日中に行わなければならず、本業を圧迫する可能性があります。 - 修正対応の手間
不備があった場合、何度も書き直しや役所への往復が発生し、完了までに予想以上の時間がかかることがあります。
専門家に届出を代行してもらうメリット
行政書士に依頼する場合、費用はかかりますが、それに見合う大きなメリットがあります。
- 本業への集中
複雑な書類作成や役所対応をすべて任せられるため、経営者や担当者は本業に専念できます。 - 期限管理の徹底
毎年の決算変更届の時期を行政書士が管理してくれるため、提出忘れによるリスクを回避できます。 - 更新時の安心
日々の変更届を適切に処理してくれるため、5年後の許可更新や経営事項審査(経審)をスムーズに進められます。
依頼先を選ぶ際のポイントと費用相場
依頼する際は、建設業許可を専門に扱っている行政書士を選ぶことが重要です。ホームページなどで実績を確認しましょう。費用の目安は以下の通りです。
【行政書士への依頼費用相場(目安)】
| 業務内容 | 費用相場(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 決算変更届 | 3万円 〜 5万円 | 工事件数や経審の有無により変動します。 |
| 各種変更届 | 2万円 〜 4万円 | 役員変更、本店移転など内容により異なります。 |
| 廃業届 | 2万円 〜 4万円 | - |
※上記に加え、証紙代や証明書取得の実費が別途かかります。
まとめ:建設業の届出は許可維持のための重要業務
建設業の「届出」は、単なる事務手続きではなく、建設業許可を維持し事業を継続するための生命線です。毎年の決算変更届と、変化があった際の変更届を確実に履行することは、5年後の許可更新をスムーズにするだけでなく、取引先や金融機関からの社会的信用を守ることにもつながります。
自社で対応する場合も専門家に依頼する場合も、「いつまでに」「何を」すべきかを把握し、期限遅れや未提出がないよう管理体制を整えておくことが、安定した建設業経営の基盤となります。
建設業の届出に関するよくある質問
Q1. 届出を数年間忘れていた場合、まとめて提出することはできますか?
はい、可能です。提出を忘れていた過去の分も含めて、速やかにまとめて提出してください。ただし、長期間放置していたことに対する始末書の提出を求められる場合があります。また、更新申請の直前にまとめて出すと審査に時間がかかり、許可の有効期限に間に合わなくなるリスクがあるため、早めの対応が望まれます。
Q2. 変更届出を出さないまま更新時期が来てしまいましたが、どうすればよいですか?
更新申請を行う前に、未提出の変更届をすべて提出する必要があります。現状と許可内容が一致していない状態では更新は認められません。まずは変更届を提出して情報を修正し、その後に更新申請を行う流れになります。順番を間違えないよう注意してください。
Q3. 届出の書類はどれくらいの期間保存しておくべきですか?
建設業法では、許可に係る書類(申請書や届出書の副本)の保存期間は特に定められていませんが、帳簿類の保存義務(5年間または10年間)に準じて管理するのが一般的です。次回の更新時や経営事項審査で過去の書類を確認する必要があるため、少なくとも許可の有効期間である5年以上は大切に保管することをおすすめします。





