建設業届出に必要な書類とは?チェックリスト付きで紹介

この記事の要約
- 建設業許可後は毎年の決算変更届と事由発生時の変更届が必須
- 届出を怠ると最大100万円以下の罰金や許可更新不可のリスク
- 決算変更届の提出期限は事業年度終了後4ヶ月以内で厳守が必要
- 目次
- 建設業許可取得後に義務付けられる「届出」とは
- 建設業の届出が必要になる主なタイミング
- 届出を怠った場合に生じる不利益と罰則
- 【目的別】建設業の各種届出に必要な書類チェックリスト
- 毎事業年度終了後に必要な「決算変更届」の書類
- 会社の基本情報に変更があった場合の届出書類
- 人員(経営業務の管理責任者・専任技術者)変更時の届出書類
- 【実務ガイド】建設業の届出書類を作成・提出する手順
- 1. 必要な用紙の入手方法と記入時の注意点
- 2. 届出書類の提出先と提出方法
- 3. 電子申請システム(JCIP)を利用するメリット
- 建設業の届出は自社で対応するか専門家に依頼するか
- 自社対応と行政書士依頼のメリット・デメリット
- 【比較表】自社対応と行政書士依頼のコスト・手間
- 記事のまとめ
- よくある質問
- Q1. 建設業の届出を忘れていた場合はどうすればよいですか?
- Q2. 決算変更届の提出期限はいつまでですか?
- Q3. 届出に必要な書類は全国共通ですか?
建設業許可取得後に義務付けられる「届出」とは
建設業許可は一度取得すれば永続するものではありません。許可の有効期間中(5年間)であっても、会社の経営状況に変化があった場合や、毎年の決算終了後には、管轄の行政庁への「届出」が建設業法で義務付けられています。これを怠ると、最悪の場合、許可の維持ができなくなるため注意が必要です。ここでは、許可業者が認識しておくべき届出の全体像について解説します。
- 建設業の届出に関する重要ポイント
- 許可取得後も継続的な報告義務がある
許可を取って終わりではなく、常に最新の情報を行政に報告する義務があります。 - 代表的な届出の種類
毎年の決算終了後に提出する「決算変更届(事業年度終了届)」や、商号・所在地・役員などが変わった際の「変更届」があります。 - 届出を怠った場合のリスク
罰則の適用や、次回の許可更新が認められない可能性があります。
- 許可取得後も継続的な報告義務がある
建設業の届出が必要になる主なタイミング
届出には、法律で定められた厳格な提出期限があります。事由発生後、速やかに対応しなければなりません。期限を過ぎてしまうと始末書の提出などが求められるため、以下のスケジュールを必ず把握しておきましょう。
- 事業年度終了後4ヶ月以内
決算変更届(決算報告)。毎年の決算確定後に必ず行います。 - 変更後30日以内
商号、所在地、資本金、役員の変更など、会社の基本情報が変わった場合。 - 変更後2週間以内
経営業務の管理責任者(経管)、専任技術者(専技)、令3条の使用人の変更。
特に「2週間以内」の期限は非常に短いため、人事異動や退職が予定されている場合は、事前の準備が不可欠です。
届出を怠った場合に生じる不利益と罰則
届出を提出しないまま放置すると、経営上の重大な不利益や法的な罰則が生じます。特に許可更新のタイミングで過去の未提出が発覚すると、更新手続きが進められず、許可が失効する恐れがあります。
- 許可の更新ができない
5年ごとの更新申請時に、過去の変更届や決算変更届がすべて提出されているか確認されます。未提出分がある場合、原則として更新は受理されません。 - 始末書の提出
期限を過ぎてから提出する場合、理由書(始末書)の添付を求められることが一般的です。 - 罰則(罰金等)
建設業法第50条に基づき、届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合は、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。 - 業種追加申請等の不可
新しい業種を追加したい場合も、過去の届出が完了していることが前提となります。
【目的別】建設業の各種届出に必要な書類チェックリスト
必要な届出書類は、変更の内容や申請する都道府県によって細部が異なります。ここでは、最も頻度が高い「決算変更届」と、会社の基本情報や人事に関する変更があった際に必要となる主要な書類を整理しました。提出漏れがないよう、以下のリストを活用して確認してください。

毎事業年度終了後に必要な「決算変更届」の書類
建設業許可業者が最も頻繁に行うのが、毎年の決算終了後4ヶ月以内に提出する決算変更届(正式名称:決算報告)です。この届出は、公共工事の入札参加資格審査(経審)を受ける際にも必ず確認されます。税務署への確定申告とは異なり、建設業法に基づいた形式での作成が必要です。
| 書類名(様式番号) | 内容・作成のポイント | 必須区分 |
|---|---|---|
| 工事経歴書 (様式第2号) |
直前1年間の主な完成工事・未成工事を記載。 ※「経営事項審査」を受けるかどうかで記載方法が異なるため注意が必要です。 |
必須 |
| 直前3年の各事業年度における工事施工金額 (様式第3号) |
過去3年間の工事実績(元請・下請含む)の合計額を業種ごとに記載します。 ※実績がない年度も「0円」として作成が必要です。 |
必須 |
| 財務諸表類 (様式第15号〜第17号の3) |
貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表。 ※税務申告用の決算書をそのまま添付するのではなく、建設業会計の勘定科目に書き換えて作成する必要があります。 |
必須 |
| 事業報告書 (任意様式) |
株式会社のみ必要。事業の概況、工事高の推移などを記載します。 ※「特になし」は不可。具体的な事業活動の記載が求められます。 |
法人のみ |
| 納税証明書 (事業税) |
法人事業税(法人の場合)または個人事業税(個人の場合)の納税証明書。 ※消費税や法人税の証明書ではない点に注意してください。 |
必須 |
| 使用人数については変更届出書 (様式第4号) |
雇用保険・健康保険・厚生年金の加入状況や、従業員数に変更があった場合のみ添付します。 | 変更時のみ |
[出典:国土交通省 建設業許可事務ガイドライン]
- 決算変更届でよくある不備
- 工事経歴書の工期ミス
契約上の工期ではなく、実質的な着工・完成日を書く必要があります。 - 端数処理の不一致
千円単位での記載が求められますが、財務諸表内で数字が合わないケースが多発しています。 - 納税証明書の種類間違い
「その1」や「その2」など種類が指定されている場合があるため、手引きを必ず確認してください。
- 工事経歴書の工期ミス
会社の基本情報に変更があった場合の届出書類
商号(社名)や所在地、資本金、役員に変更があった場合は、変更後30日以内に届出が必要です。登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の変更手続き完了後に、建設業の届出を行います。
- 商号・名称の変更
変更届出書(第一号様式)、履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)など - 営業所の所在地の変更
変更届出書(第一号様式)、履歴事項全部証明書、営業所の確認資料(写真、地図、賃貸借契約書の写しなど※自治体による) - 資本金の変更
変更届出書(第一号様式)、履歴事項全部証明書、株主資本等変動計算書(増資の場合に必要なことがある) - 役員の変更(就任・辞任・代表者変更)
変更届出書(第一号様式)、履歴事項全部証明書、役員等の一覧表。
新任の場合はさらに「身分証明書」「登記されていないことの証明書」「誓約書」等が必要です。
人員(経営業務の管理責任者・専任技術者)変更時の届出書類
建設業許可の要件である「人」に関する変更は、審査が厳格であり、提出期限も2週間以内と極めて短いため特に注意が必要です。後任者が要件を満たしているか事前に確認しておくことが重要です。
- 経営業務の管理責任者(経管)の変更
変更届出書、経験を証明する書類(過去の確定申告書や契約書、辞令など)、常勤性を証明する書類(健康保険証の写しなど)、身分証明書、登記されていないことの証明書 - 専任技術者(専技)の変更
変更届出書、資格証明書(施工管理技士等の合格証)または実務経験証明書(10年の実務経験など)、常勤性を証明する書類(健康保険証の写しなど)。
※資格がない場合は実務経験証明書が必要です。
【実務ガイド】建設業の届出書類を作成・提出する手順
必要書類が把握できたら、実際に作成して提出するプロセスに移ります。手順は大きく分けて「用紙の入手」「作成」「提出」の3ステップです。最近では電子申請も普及してきています。

1. 必要な用紙の入手方法と記入時の注意点
まず、管轄する都道府県のホームページから、最新の様式(フォーマット)をダウンロードします。
- 1. 都道府県の建設業担当課のWebサイトへアクセス
「〇〇県 建設業 届出 様式」などで検索します。 - 2. 様式のダウンロード
ExcelやWord形式で提供されていることが一般的です。 - 3. 「手引き(記載要領)」の確認
多くの自治体では、記入例や注意点をまとめた「手引き」を公開しています。建設業特有の用語や記載ルール(千円単位での記載など)があるため、必ず手引きを見ながら作成してください。
2. 届出書類の提出先と提出方法
作成した書類は、主たる営業所を管轄する土木事務所や県庁の担当課へ提出します。提出方法には主に「窓口」「郵送」「電子申請」があり、それぞれ特徴が異なります。なお、提出の際は必ず「副本(控え)」を用意し、受付印をもらって保管してください。
| 提出方法 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|
| 窓口持参 | その場で担当者がチェックするため、軽微な不備なら即座に修正・完了できる。 | 平日の日中に役所へ行く移動時間と待ち時間が発生する。 |
| 郵送 | 移動時間がかからず、遠方でも対応しやすい。 | 不備があった場合、書類の返送や電話確認などやり取りが煩雑になる。到着確認のため簡易書留等が推奨される。 |
| 電子申請 | 24時間提出可能(※対応している自治体システムによる)。ペーパーレス化できる。 | マイナンバーカードやICカードリーダーの準備、事前のシステム利用者登録が必要。 |
3. 電子申請システム(JCIP)を利用するメリット
国土交通省は、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP:ジェイシップ)の利用を推進しています。対応している自治体であれば、自宅やオフィスからオンラインで手続きが可能です。
- 移動コストの削減
役所へ行く必要がなく、郵送代もかかりません。 - 過去データの活用
一度入力したデータは次回以降も活用できるため、毎年の決算変更届の作成負担が軽減されます。
建設業の届出は自社で対応するか専門家に依頼するか
届出業務は「自社で行う」か「行政書士に依頼するか」の判断が必要です。会社の規模や事務担当者のリソース、コスト感に応じて最適な方法を選択してください。
自社対応と行政書士依頼のメリット・デメリット
- 自社で書類作成・届出を行う場合
- メリット
かかる費用は、各種証明書(登記簿謄本や納税証明書)の実費(数百円〜数千円)のみで済みます。また、自社の経営状況や許可内容を深く把握する機会になります。 - デメリット
建設業法や財務諸表の書き方を調べるのに多大な時間がかかります(学習コスト)。不備があった場合の修正対応で、本業の時間が奪われるリスクがあります。
- メリット
- 行政書士に届出を代行してもらう場合
- メリット
建設業法に精通したプロが作成するため、不備のリスクがほぼありません。面倒な書類作成や提出作業をすべて丸投げできるため、社員はコア業務に集中できます。 - デメリット
実費に加え、数万円程度の報酬(代行手数料)がかかります。
- メリット
【比較表】自社対応と行政書士依頼のコスト・手間
判断に迷う場合は、以下の基準を参考にしてください。時間に余裕がありコストを抑えたい場合は自社対応、確実性を重視し時間を買いたい場合は行政書士への依頼が推奨されます。
| 項目 | 自社で対応する場合 | 行政書士に依頼する場合 |
|---|---|---|
| 費用(金銭的コスト) | 実費(数千円程度)のみ | 実費 + 報酬(3万円〜5万円程度が相場) |
| 所要時間(人的コスト) | 手引きを調べ、作成・提出する時間が長い(数日〜数週間) | 依頼・押印・確認の時間のみで短い |
| 正確性・安心感 | 専門知識がないと不備や記載ミスのリスクが高い | プロが対応するため確実性が高く、許可維持の安心感がある |
記事のまとめ
建設業許可を維持するためには、適切な時期に適切な「届出」を行うことが不可欠です。必要な手続きを後回しにすると、許可の取り消しや更新不可といった重大なリスクにつながります。
- 建設業の届出に関する重要アクション
- 毎年の決算変更届を忘れない
事業年度終了後4ヶ月以内に必ず提出する。 - 変更時はすぐに手続き
役員変更や移転があったら、30日以内(人は2週間以内)に届出を行う。 - チェックリストの活用
必要書類に漏れがないよう、本記事のリストや自治体の手引きを確認する。 - リソースに応じた対応
自社の事務負担を考慮し、無理があれば行政書士への依頼を検討する。
- 毎年の決算変更届を忘れない
よくある質問
Q1. 建設業の届出を忘れていた場合はどうすればよいですか?
気づいた時点ですぐに管轄の行政庁へ提出してください。提出期限を過ぎている場合、なぜ遅れたのかを説明する「始末書(理由書)」の添付を求められることが一般的です。数年分まとめて提出することも可能ですが、悪質な場合は罰則の対象となるため、早急な対応が必要です。
Q2. 決算変更届の提出期限はいつまでですか?
事業年度終了後(決算日)から4ヶ月以内です。例えば、3月31日が決算日の会社の場合、7月31日までに提出する必要があります。税務署への確定申告(2ヶ月以内)とは期限が異なるため注意してください。
Q3. 届出に必要な書類は全国共通ですか?
基本的な法定書類は共通ですが、表紙の様式、独自の確認資料、綴じ方、提出部数などは都道府県によって異なります。必ず管轄する土木事務所や都道府県庁のホームページで最新の「手引き」を確認するか、窓口へ問い合わせてください。





