「調達」の基本知識

建設業のグリーン調達とは?対応の進め方を解説


更新日: 2026/02/10
建設業のグリーン調達とは?対応の進め方を解説

この記事の要約

  • 建設業のグリーン調達の定義と必要性を詳しく解説
  • 導入の5ステップと資材選定の具体的な判断基準を紹介
  • 従来型との比較やコスト面の不安に対する解消法を提示
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1. 建設業界におけるグリーン調達の定義と必要性

建設業界におけるグリーン調達とは、資材やサービスを導入する際、品質や価格だけでなく環境負荷の少なさを優先的に考慮して選定することを指します。持続可能な社会の実現に向け、従来の調達基準に環境性能を組み込む重要性が急速に高まっています。

グリーン調達とグリーン購入の違い

一般的に「グリーン購入」は、消費者が製品を購入する際に環境に優しいものを選ぶという消費側の意識を指します。これに対し、建設業の「グリーン調達」は、設計段階から資材を選定し、製造・施工・運搬・廃棄に至るサプライチェーン全体を巻き込んだ戦略的な企業活動を指すのが特徴です。建設プロジェクトは規模が大きく、使用する資材量も膨大であるため、調達基準の変更が社会全体の環境負荷低減に与えるインパクトは極めて大きいと言えます。

なぜ今、建設現場で環境に配慮した調達が求められるのか

最大の要因は、世界的なカーボンニュートラル(脱炭素社会)への移行です。政府や自治体が発注する公共工事においては、グリーン購入法に基づく特定調達品目の使用が義務付けられており、企業の環境対応実績が入札時の評価点(総合評価落札方式)に直結するケースが増えています。また、民間工事においても、施主となる企業がESG経営を推進している場合、環境に配慮した調達を行っている施工会社が優先的に選ばれる傾向が強まっています。

環境配慮型の重機と太陽光発電システムを備えた最新の建設現場風景

2. 建設業がグリーン調達に取り組むメリットと直面する課題

グリーン調達への対応は、企業にとって新たな成長機会となる一方で、実務レベルではコストや選定の手間といった課題も存在します。導入を成功させるためには、これらのメリットとデメリットを客観的に把握し、バランスの取れた戦略を立てることが不可欠です。

企業価値の向上とESG投資への対応

環境に配慮した調達を継続することは、単なる法令遵守を超えて、企業のブランド価値を大きく高めます。特に、非財務情報を重視するESG投資の観点から、環境負荷低減に取り組む企業は金融機関からの評価が得やすく、資金調達において有利な条件を引き出せる可能性があります。また、クリーンな現場環境をアピールすることは、環境意識の高い若手人材の確保にも寄与します。

導入時に発生するコストと資材選定の難しさ

一方で、環境配慮型資材は従来の資材に比べて製造コストが高く、販売価格も高めに設定されていることが少なくありません。また、JIS規格などの品質基準を満たしつつ、かつ環境性能が高い代替品を探し出すためには、専門的な知識と膨大な選定時間が必要となります。地域によっては供給体制が整っておらず、安定した調達が困難な資材があることも現場が直面する大きな壁となっています。

建設業におけるグリーン調達のメリット・課題一覧
  • 経営面でのメリット
    公共工事の入札評価(加点)への貢献、ESG融資による資金調達の円滑化、企業ブランドの向上

  • 現場・社会面でのメリット
    廃棄物処理コストの削減、現場の騒音・排ガス抑制、脱炭素社会への直接的な貢献

  • 直面する主な課題
    初期導入コストの増加、資材選定にかかる工数増、供給業者の限定による納期リスク
項目 メリット 課題(リスク)
経営面 企業イメージ向上・受注機会の拡大 初期導入コストの増加
現場面 廃棄物処理費の削減・現場環境の改善 供給可能な業者の選定に手間がかかる
社会面 脱炭素社会への貢献・法規制への適合 性能保証(JIS等)との整合性確認

[出典:一般社団法人日本建設業連合会「建設業界における環境配慮型調達ガイドライン」]

3. グリーン調達を実施するための具体的な判断基準

何を基準に資材を選べば「グリーン」と言えるのか、その根拠となる客観的な指標を理解することが重要です。国が定めるガイドラインや、第三者機関による認証制度を活用することで、透明性の高い調達が可能になります。

グリーン購入法に基づく特定調達品目の理解

「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」では、建設工事に関して20品目以上の特定調達品目が定められています。これには、再生砕石、高炉セメントを使用したコンクリート、間伐材を用いた合板などが含まれます。それぞれの品目には「判断の基準」が数値等で明記されており、これに適合した製品を選ぶことが最も確実な調達基準となります。

環境ラベル(エコマーク等)の活用と見極め方

資材選定を効率化するためには、環境ラベルの確認が有効です。

  • エコマーク
    公益財団法人日本環境協会が認定する、ライフサイクル全体で環境負荷が低い製品の証です。

  • 森林認証(FSC/PEFC)
    適切に管理された森林から産出された木材であることを証明する国際的な制度です。

  • EPD(環境宣言)
    製品の環境影響をISO規格に基づいて定量的に開示したデータであり、透明性の高い選定に役立ちます。

現場に搬入されたFSC認証木材と環境配慮型コンクリート資材のクローズアップ

4. 建設現場でグリーン調達をスムーズに進める5ステップ

グリーン調達を組織として定着させるには、体系的なプロセスが必要です。以下の5つのステップに従って進めることで、無理なく実務に組み込むことができます。

グリーン調達導入の5ステップ

1.現状の調達フローの把握と目標設定
まずは自社が現在どのような基準で資材を選んでいるかを可視化し、「今年度は主要資材の10%をグリーン化する」といった具体的な数値を設定します。


2.サプライヤー(協力会社)への評価基準の策定
自社だけで完結しないのが建設業の特徴です。協力会社に対し、環境への取り組み状況を調査し、共通の目標を持てるパートナーを選定します。


3.環境配慮型資材・サービスの選定
設計部門と連携し、工期や予算に影響を与えない範囲で最適な資材をピックアップします。カタログや環境ラベルを活用して候補を絞り込みます。


4.運用ルールの社内徹底と教育
現場監督や購買担当者が「なぜこの資材を使うのか」を理解していなければ形骸化します。社内マニュアルの整備や研修を通じて意義を周知します。


5.定期的な見直しと効果測定(PDCA)
実際にどれだけCO2排出量を削減できたか、コストにどう響いたかを検証し、次回のプロジェクトや翌年度の調達計画に反映させます。

5. 従来型調達とグリーン調達の比較検討

現場での意思決定において、従来の「安さ・速さ」を追求する手法と、環境を重視する手法の違いを整理しておくことは非常に重要です。この比較を通じて、長期的なリスクと機会を正しく評価することができます。

従来型の調達は、目先の利益率確保には優れていますが、環境規制が強化される将来においては、受注機会の減少や炭素税などの追加コストを負うリスクがあります。一方、グリーン調達は初期の調整コストはかかるものの、法適合性の確保やステークホルダーからの信頼獲得により、企業の持続可能性を強固にします。

比較項目 従来型の調達 グリーン調達
優先順位 価格 > 納期 > 品質 環境負荷 = 品質 ≧ 価格
選定基準 経済合理性・過去の慣習 環境配慮(再生材・省エネ性能)
サプライヤーとの関係 単発の価格交渉・売買関係 長期的なパートナーシップ・情報共有
長期的な影響 規制強化による受注制限リスク コンプライアンス強化・将来への備え

[出典:環境省「グリーン購入の調達基準」]

6. 読者が抱くグリーン調達に関する不安と解消法

「グリーン調達を始めたいが、現場の負担や品質が心配だ」という声は少なくありません。ここでは、実務担当者が抱きやすい代表的な不安に対する客観的な回答を提示します。

「コスト高で利益を圧迫しないか?」への回答

短期的には資材単価が上昇する可能性がありますが、トータルコストで見ることが重要です。環境配慮型資材の採用により、産業廃棄物の排出量が減り、処理費用を削減できるケースは多々あります。また、公共工事での加点による受注成功率の向上や、グリーン案件に特化した低利融資の活用により、経営全体で見ればプラスに働く構造が整いつつあります。

「品質や強度が落ちるのではないか?」への回答

現在のグリーン資材は、JIS規格や国土交通省の技術基準をクリアしているものが一般的です。例えば、高炉セメントを使用したコンクリートは、長期強度の増進や化学抵抗性の向上など、従来品よりも優れた特性を持つ場合もあります。「環境に優しい=品質が低い」という認識は誤りであり、適切な選定を行えば品質維持と環境配慮は十分に両立可能です。

まとめ:グリーン調達を成長のチャンスに変える

建設業におけるグリーン調達は、もはや単なる環境保護活動ではなく、「選ばれる会社」になるための経営戦略そのものです。

  1. グリーン購入法やエコマークを基準に客観的な選定を行う
  2. サプライヤーとの連携を深め、透明性の高いサプライチェーンを築く
  3. 社内の教育とPDCAを回し、小さなステップから着実に実行する

まずは、身近な資材の1つを環境配慮型に切り替えることから検討を始めてみてください。脱炭素社会という時代の変化を、コスト増のリスクとしてではなく、新たな市場を開拓する成長のチャンスへと変えていきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. グリーン調達に対応しないと、公共工事の入札で不利になりますか?

はい、不利になる可能性が非常に高いです。現在、多くの自治体や国交省の入札において、環境マネジメントシステムの認証取得や、環境配慮型資材の使用実績が「総合評価落札方式」の加点対象となっています。

Q2. 中小の建設会社でもグリーン調達は可能ですか?

可能です。全ての資材をいきなり変える必要はありません。まずは事務用品や、現場で使用するLED照明、ハイブリッド型建設機械のレンタルなど、取り組みやすい範囲から実績を積み上げることが重要です。

Q3. どの資材から優先的に切り替えるべきですか?

使用量が多く、環境負荷低減のインパクトが大きい「コンクリート(高炉セメント等)」「鉄鋼(電炉材)」「木材(森林認証材)」の3つが、一般的に優先順位が高いとされています。

[出典:環境省「グリーン購入法」および各省庁の「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」]

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