「品質管理」の基本知識

品質保証・品質管理・検査の違いとは?それぞれの役割を解説


更新日: 2025/10/22
品質保証・品質管理・検査の違いとは?それぞれの役割を解説

この記事の要約

  • 品質保証(QA)は、顧客の信頼を得るための「仕組み作り」です。
  • 品質管理(QC)は、製造工程の品質を安定させる「管理活動」です。
  • 検査は、不良品の流出を防ぐための具体的な「判定行為」です。

【比較表】品質保証・品質管理・検査の違いを30秒で理解する

「品質保証」「品質管理」「検査」は、しばしば混同されがちな言葉ですが、その目的や活動のタイミングは明確に異なります。まずは、それぞれの違いを一覧で比較し、全体像を把握しましょう。この表は、3つの活動の役割分担を明確にするための比較一覧です。

観点 品質保証 (QA) 品質管理 (QC) 検査
目的 顧客の信頼を得ること(未来志向) 製品の品質を一定に保つこと(現在志向) 良品と不良品を判別すること(事後対応)
タイミング 企画・開発から販売後まで(プロセス全体) 製造工程の最中(プロセスの一部) 製造工程の特定時点または完成後
焦点 プロセス、仕組みの構築・改善 工程の監視、データの統計的分析 個々の製品、ロット
考え方 欠陥を「作らない」仕組み作り(予防) 欠陥を「出さない」工程管理(発見・是正) 欠陥を「流出させない」選別(判定)

品質保証・品質管理・検査の『関係性』を図で理解する

3つの活動は独立しているわけではなく、互いに深く関連しています。「品質保証」という大きな枠組みの中に「品質管理」があり、その具体的な手段の一つとして「検査」が存在する、という包含関係で捉えると理解しやすくなります。戦略から戦術、そして具体的なチェックへと落とし込まれていくイメージです。

3つの活動の包含関係
  • 品質保証 (QA)【戦略】 顧客満足と信頼獲得のため、製品ライフサイクル全体にわたる品質マネジメントの仕組みを構築する。

  • 品質管理 (QC)【戦術】 品質保証の仕組みの中で、主に製造工程が安定した状態にあるかを管理し、不良の発生を未然に防ぐ。

  • 検査【チェック】 品質管理活動の一環として、製品が規格を満たしているかを判定し、不良品の流出を阻止する。

① 品質保証(QA):顧客の信頼を築く『仕組み作り』の活動

品質保証(Quality Assurance:QA)とは、製品やサービスが顧客の要求品質を十分に満たしている状態を保証するための、計画的かつ体系的な活動全般を指します。単に不良品を出さないことだけでなく、顧客が安心して使用できるための「仕組み作り」が活動の中心です。これは、品質を根本から作り込むための未来志向のアプローチと言えます。

製品の企画設計段階で品質について議論するエンジニアたち

プロセス全体を対象とする継続的な改善

品質保証の対象範囲は非常に広く、特定の工程に限定されません。具体的には、市場調査や製品の企画・設計段階から、製造、出荷、そして顧客が使用した後のアフターサービスまで、製品のライフサイクルすべてに関わります。

例えば、市場からのクレーム情報や顧客からのフィードバックを分析し、それを次の製品開発や既存プロセスの改善に活かすといった活動は、品質保証の重要な役割です。このようにPDCAサイクルを回し続けることで、継続的に品質レベルを高めていきます。

目的は「欠陥の予防」と「信頼の獲得」

品質保証の最大の目的は、そもそも欠陥が発生しないようなプロセスや体制を構築し、「予防」することにあります。設計段階で潜在的なリスクを洗い出したり、作業手順を標準化したりすることで、製造現場でのミスやバラツキを未然に防ぎます。

これにより、最終的に顧客へ「この企業の製品なら、いつでも安心して使える」という信頼感を与え、企業のブランド価値や市場競争力を高めることにつながります。

公的な定義

JIS Q 9000:2015(品質マネジメントシステム−基本及び用語)では、品質保証は「品質要求事項が満たされるという信頼を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部」と定義されています。これは国際規格であるISO 9000に基づいています。

出典:日本産業標準調査会ウェブサイト JIS検索

② 品質管理(QC):製造現場で『安定した品質』を保つ要の活動

品質管理(Quality Control:QC)とは、製品が一定の品質基準を満たし続けるよう、製造工程を安定した状態に維持・改善していく活動です。品質保証という全社的な「戦略」に基づき、製造現場で実行される具体的な「戦術」と位置づけられます。高品質な製品を継続的に生み出すための、いわば現場の司令塔です。

製造ラインで製品の品質を精密にチェックする作業員

製造工程に焦点を当てた統計的な管理手法

品質管理の主な舞台は、製造現場の各工程です。ここでは、勘や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータを活用した統計的品質管理(SQC)が中心となります。具体的には、QC七つ道具と呼ばれる分析手法で工程を「見える化」し、管理します。

QC七つ道具(代表例)
  • 管理図:工程が安定しているか、異常が発生していないかを時系列で監視します。
  • ヒストグラム:製品の寸法や重量といった品質特性のバラツキ度合いを把握します。
  • パレート図:発生している不良のうち、どの項目が大きな原因を占めているかを特定し、改善の優先順位をつけます。

これらの手法を用いて工程を管理し、異常の兆候をいち早く掴んで対策を打つことで、不良品の発生を未然に防ぎます。

主な担当部署と役割

品質管理は、主に「品質管理部」や「製造部」が担当します。彼らの役割は、作業標準書を作成して現場の作業を標準化したり、工程データを日々収集・分析して異常がないかを監視したりすることです。問題が発生した際には、関連部署と連携して迅速に原因を究明し、再発防止策を講じる責任を担います。

③ 検査:不良品の流出を防ぐ最後の『砦』

検査とは、完成した製品や部品、材料などが、定められた品質基準(仕様書や図面、規格など)を満たしているかどうかを測定・試験し、「良品」か「不良品」かを判定する活動です。多くの企業では、受け入れ検査、工程内検査、最終検査など、プロセスの要所で実施されます。これは、品質を保証・管理するための一つの具体的な手段です。

品質管理の一部として行われる具体的な「判定行為」

検査は、多くの場合、品質管理の活動プロセスの中に明確に位置づけられます。製造工程の途中(中間検査)や最終段階(最終検査)で実施され、基準を満たさないものが後工程や市場へ流出することを防ぐ「関所」のような役割を果たします。

ただし、検査はあくまで選別行為であり、検査自体が製品の品質を良くするわけではない、という点が非常に重要です。検査に頼りすぎると、検査コストが増大するだけでなく、不良品を作り続ける根本原因が見過ごされがちになります。

まとめ:3つの連携で企業の品質は向上する

この記事では、「品質保証」「品質管理」「検査」のそれぞれの役割と違い、そしてその密接な関係性について解説しました。3つの活動が三位一体で機能して初めて、企業の品質レベルは継続的に向上し、顧客からの信頼を獲得できます。自社の現状を把握し、どの部分を強化すべきか検討する際の参考にしてください。

本記事の要点
  • 品質保証 (QA):顧客の信頼を得るため、欠陥を「作らない」仕組みを構築する包括的な活動。

  • 品質管理 (QC):製造工程で品質を維持し、欠陥を「出さない」ようにデータを活用して管理する活動。

  • 検査:完成品や部品を基準に基づき判定し、欠陥を「流出させない」ための具体的な選別活動。

よくある質問

品質保証・品質管理・検査に関して、特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1. 品質管理と品質保証は、どちらが重要ですか?

A1. どちらも等しく重要であり、優劣はありません。品質保証は「不良を作らない仕組み作り(攻めの品質活動)」、品質管理は「不良を出さない工程管理(守りの品質活動)」と考えると分かりやすいでしょう。両者は車の両輪のような関係であり、バランス良く機能して初めて企業の品質レベルが向上します。

Q2. 小さな会社でも品質保証は必要ですか?

A2. はい、必要です。企業の規模に関わらず、顧客に信頼される製品・サービスを提供するためには品質保証の考え方が不可欠です。大規模な専門部署がなくても、以下の活動から始めることが重要です。
・顧客の要求を明確にする
・作業手順を標準化し文書化する
・万が一の不具合に備えて記録を残す

Q3. ISO9001は、品質保証と品質管理のどちらに関係しますか?

A3. ISO9001は「品質マネジメントシステム」に関する国際規格であり、主に「品質保証」の領域に深く関係します。これは、顧客満足を向上させるための仕組み(システム)を組織内に構築し、継続的に改善していくことを要求するものです。その仕組みの中に、具体的な「品質管理」や「検査」の手法が含まれる構成となっています。

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