「品質管理」の基本知識

品質監査とは?実施手順と対応の流れを解説


更新日: 2026/01/15
品質監査とは?実施手順と対応の流れを解説

この記事の要約

  • 品質監査の定義と目的および品質管理における役割を解説します
  • 準備から是正処置まで具体的な品質監査の手順を網羅しています
  • 現場の不安を解消する対応のコツと組織的なメリットを紹介します
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品質管理の基盤となる品質監査の基礎知識

品質監査は、組織の品質管理システムが適切に機能しているかを客観的に評価する仕組みです。本項では、品質管理(QC)や品質保証(QA)との役割の違いや、三種類の監査区分といった実務上の基礎知識を構造的に解説します。

品質監査とは?定義と主な目的

品質監査の定義

品質監査とは、組織の品質管理システムが、あらかじめ定められた基準やマニュアルに適合しているか、そしてその仕組みが有効に機能しているかを、客観的な証拠(エビデンス)に基づいて判定する体系的なプロセスを指します。

品質監査の最大の目的は、単にミスや欠陥を見つけることではありません。プロセスの健全性を検証し、継続的な改善の機会を特定することにあります。適切な監査によって、製品事故やリコールといった重大なリスクを未然に防ぎ、企業の社会的信頼を維持することが可能になります。

品質管理(QC)・品質保証(QA)との違い

品質監査を正しく理解するには、混同されやすい「品質管理(QC)」や「品質保証(QA)」との役割の違いを整理する必要があります。以下の表は、それぞれの主な視点と活動内容を比較したものです。

項目 品質管理(QC) 品質保証(QA) 品質監査
主な役割 製造現場での不良品防止 品質維持の仕組みづくり 仕組みが機能しているかの検証
評価の視点 現場・製品視点 顧客・プロセス視点 第三者・客観的視点
活動内容 検査、数値のモニタリング 規格の策定、工程の最適化 監査の実施、是正勧告
実施主体 製造・検査部門 品質保証部門 監査チーム(独立性が必要)

[出典:ISO 9000 品質マネジメントシステムー基本及び用語]

品質監査の3つの種類

品質監査は「誰が誰に対して実施するか」という主体によって、大きく以下の3つの形態に分類されます。

  • 1. 内部監査(第一者監査)
    組織自らが、自社の品質管理システムを点検するために実施します。自己改善を目的としており、最も頻繁に行われる監査です。

  • 2. 二者監査(外部監査)
    製品の購入者(顧客)が、供給者(サプライヤー)に対して実施する監査です。取引の継続判断や供給品質の安定化を目的とします。

  • 3. 三者監査(外部監査)
    ISO認証機関などの独立した第三者機関が実施します。国際規格への適合性を公的に証明し、対外的な信用を得るために行われます。

品質管理を強化する品質監査の具体的な実施手順

品質管理の実効性を高めるには、体系的なプロセスに基づいた監査が必要です。準備・実施・報告という3つのフェーズに分け、各ステップで取り組べき具体的なアクションを番号付きリストで詳しく説明します。

監査員と担当者が製造記録などの書類を照合しエビデンスを確認しているシーン

準備フェーズ:監査計画の策定

監査の成否は準備で決まります。以下のステップで漏れのない計画を立てます。

1. 監査目的の明確化:ISO更新、工程改善、あるいは特定トラブルの調査など、監査の目的を定めます。
2. 監査チームの編成:被監査部署から独立し、客観性を保てる専門スタッフを選定します。
3. スケジュール調整:被監査側の業務に配慮しつつ、実施日時を合意します。
4. チェックリストの作成:確認すべきプロセスや書類をリスト化し、判定基準を明確にします。

実施フェーズ:現場確認とヒアリング

計画に基づき、現場で客観的な事実(証拠)を収集します。

  • オープニングミーティング
    監査の目的、範囲、方法を被監査部署と再確認し、相互の理解を深めます。

  • 現地での証拠収集
    以下の3つの方法を組み合わせて、実態を把握します。
    ・現場巡回:作業が標準手順書通りに行われているかを目視で確認
    ・書類確認:検査記録、教育記録、設備点検簿などのエビデンスを照合
    ・ヒアリング:現場担当者への対話を通じ、ルールの浸透度や課題を抽出

報告・是正フェーズ:不適合の指摘と改善指示

収集した情報を評価し、監査の結果をまとめます。

1. クロージングミーティング:発見された事実を報告し、不適合箇所について被監査側と合意します。
2. 監査報告書の作成:結果を「適合」「不適合」「観察事項(改善の機会)」に分類し、文書化します。
3. 是正処置要求:不適合があった場合、被監査部署に対して根本原因の特定と対策を求めます。

[出典:ISO 19011 マネジメントシステム監査のための指針]

品質管理の現場でよくある不安と解決策

品質監査は現場に緊張感を与えるため、しばしば心理的な抵抗が生じます。しかし、監査は組織をより良くするためのツールです。現場の不安を解消し、前向きに監査に取り組むための考え方を整理します。

「何をチェックされるのか?」という不安への対策

被監査側が抱く「粗探しをされる」という不安は、評価基準が不明確な場合に強まります。

不安を解消するためのポイント

・監査の目的が「個人の評価」ではなく「プロセスの改善」であることを周知する
・事前にチェックリストや主要な確認事項を共有し、透明性を確保する
・一方的な指摘ではなく、現場の課題を聞き取る姿勢を監査員が示す

監査で不適合が出た際のリスクと捉え方

不適合を「恥」や「失敗」と捉えると、情報の隠蔽という重大な二次リスクを招きます。組織としては、不適合を「潜在的なリスクの発見」という成功体験として捉え直すことが重要です。

不適合が指摘された箇所は、将来的に大きなトラブルに発展する可能性があった場所です。監査で発見できたことにより、顧客に不利益を与える前に仕組みを修復できるため、結果として品質管理体制の強靭化に繋がります。

品質監査を成功させるための対応の流れとポイント

品質監査を形骸化させず、実利のあるものにするためには、監査後の対応こそが重要です。被監査側が準備すべき資料の整理や、再発防止に向けた是正処置(CAPA)の具体的な進め方を解説します。

工場内で作業員が監査員に対してデジタル端末を用いて作業手順の説明を行っている場面

被監査側が準備すべき資料リスト

スムーズな監査対応のために、一般的に求められる主要な資料を以下に整理しました。

資料カテゴリー 具体的な資料名 確認されるポイント
業務標準 品質マニュアル、標準手順書(SOP) ルールが最新かつ適切か
教育訓練 教育受講記録、スキルマップ 作業員が正しく教育されているか
製造・検査 検査成績書、工程管理図、日報 作業記録が漏れなく残っているか
設備管理 設備点検記録、計測器の校正証明書 使用機器の精度が保たれているか
改善履歴 過去の不適合報告書、是正回答書 前回の指摘が改善されているか

是正処置(CAPA)の進め方とフォローアップ

指摘を受けた後は、CAPA(是正処置・予防処置)のフレームワークを用いて、再発を確実に防ぎます。

  • 1. 修正(Correction)
    発生した不適合品への手直しや、直ちに実行可能な応急処置を行います。

  • 2. 是正処置(Corrective Action)
    不適合が発生した根本原因を分析(なぜなぜ分析など)し、仕組みの変更や手順書の改訂を行い、再発を防ぎます。

  • 3. 有効性の確認
    対策実施から一定期間後、同様の不適合が発生していないかを再確認します。これが完了して初めて、監査サイクルが終了します。

品質監査による品質管理体制のメリット

品質監査を継続的に実施することで、組織は単なる規格適合以上の大きなメリットを享受できます。経営層から現場まで、組織全体に波及する効果について詳しく見ていきます。

組織全体のコンプライアンス意識の向上

定期的な監査は、ルールの形骸化を防ぐ強力な抑止力となります。「定期的に外部(あるいは独立した部署)の視点が入る」という環境が適度な緊張感を生み、現場の規律維持と法令遵守(コンプライアンス)の徹底に寄与します。これは企業のガバナンスを強化する上での根幹となります。

業務プロセスの可視化とムダの削減

第三者の視点でプロセスを検証することで、当事者では気づかなかった非効率な手順や、過剰な確認作業が見つかることがあります。

効率化の視点

・形骸化した二重チェックの廃止
・複雑すぎる報告ルートの簡素化
・デジタル化による記録業務の省力化

これらの発見を品質管理の最適化に繋げることで、品質を維持しながらコスト削減やリードタイム短縮を実現することが可能になります。

まとめ:品質監査は品質管理を継続的に改善する仕組み

品質監査は、組織の品質管理を最新の状態に保ち、進化させ続けるための重要なエンジンです。

  • 客観的な証拠に基づき、仕組みの有効性を検証する
  • 不適合を改善のチャンスと捉え、再発防止を徹底する
  • PDCAサイクルを回し、組織全体の品質意識と信頼性を高める

この記事で解説した手順や対応のポイントを参考に、自社の品質管理システムをより強固なものへとアップデートしてください。形骸化しない実効性のある監査こそが、企業の持続的な成長を支える基盤となります。

[出典:日本品質管理学会(JSQC)品質管理用語定義]

Q1. 内部監査員は誰が務めるべきですか?

監査の公平性と客観性を保つため、自分自身の業務や所属部署を監査することはできません。他部署のスタッフや、専門のトレーニングを受けた社内認定監査員が担当します。小規模な組織で独立性の確保が難しい場合は、外部のコンサルタントなどに委託するケースもあります。

Q2. チェックリストにない項目を指摘してもよいですか?

はい、可能です。チェックリストはあくまで確認すべき最低限のガイドラインです。監査中に重大な品質リスクを発見した場合や、より効率的な手法(観察事項)を見つけた場合は、積極的に報告し、組織の品質向上に役立てるべきです。

Q3. 品質監査の頻度はどのくらいが適切ですか?

一般的には年に1回以上の定期監査が推奨されます。ただし、重大なクレームが発生した際や、生産ラインの変更、組織の大幅な再編などがあった場合には、臨時の「臨時監査」を適宜実施し、品質管理システムが新しい状況に対応できているかを確認する必要があります。

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