是正・予防処置とは?記録と報告の基本フローを解説

この記事の要約
- 是正処置と予防処置の違いを明確にし品質管理の基本を解説します
- 不適合の特定から有効性の確認までCAPAの標準フローを紹介
- 正確な記録と報告のポイントを学び組織の継続的改善を促します
- 目次
- 品質管理における是正処置・予防処置の定義と重要性
- 是正処置と予防処置の違い
- 品質管理体制を支える「CAPA」の考え方
- 品質管理の現場で実践する是正・予防処置の基本フロー
- ステップ1:不適合の特定と記録
- ステップ2:原因分析(なぜなぜ分析など)
- ステップ3:処置の計画と実施
- ステップ4:有効性の確認
- 品質管理を形骸化させないための記録・報告のポイント
- 報告書に必要な必須項目
- わかりやすい報告書を作成するコツ
- 品質管理担当者が抱く不安と是正・予防処置の注意点
- 「処置が増えると現場の負担になる」という不安への対策
- 修正(Correction)と是正(Corrective Action)の混同
- まとめ:品質管理の質を高める継続的な仕組みづくり
- Q1. 予防処置は必ず実施しなければならないのですか?
- Q2. 是正処置の「有効性の確認」はいつ行えばよいですか?
- Q3. 小さなミスでもすべて報告書が必要ですか?
品質管理における是正処置・予防処置の定義と重要性
品質管理の根幹を成す是正処置と予防処置は、単なるミスへの対応ではなく、組織の継続的改善を実現するための仕組みです。まずはそれぞれの定義と、なぜこれらが重要視されるのかを構造的に整理します。
是正処置と予防処置の違い
不適合(問題)が既に発生しているか、あるいは発生する恐れがあるのかによって、とるべきアプローチが明確に異なります。以下の表で、それぞれの役割を比較します。
| 項目 | 是正処置(Corrective Action) | 予防処置(Preventive Action) |
|---|---|---|
| 対象 | 既に発生した不適合・問題 | まだ発生していない潜在的な問題 |
| 目的 | 原因を排除し、再発を防止する | リスクを特定し、発生を未然に防ぐ |
| きっかけ | クレーム、不良の発生、監査指摘 | リスク分析、他部署の事例、傾向分析 |
| 重要度 | 直接的な損害を最小限に抑える | 長期的なコスト削減と品質の安定 |
[出典:日本産業規格 JIS Q 9001:2015 品質マネジメントシステム要求事項]
品質管理体制を支える「CAPA」の考え方
是正処置と予防処置を合わせてCAPA(Corrective and Preventive Action)と呼びます。これはISO 9001などの国際規格でも重視されており、PDCAサイクルを回して品質管理の精度を高めるために不可欠な要素です。
- CAPAの主な役割
- 負の連鎖の遮断
一度起きた不適合を二度と起こさない仕組みを作ります。 - リスクの先回り
過去のデータからトラブルの芽を摘み取り、損失を回避します。 - ナレッジの共有
個人の気づきを組織のルール(標準)に昇華させます。
- 負の連鎖の遮断
品質管理の現場で実践する是正・予防処置の基本フロー
効果的な品質管理を行うためには、場当たり的な対応ではなく、標準化されたプロセスに沿って処置を進める必要があります。再現性のあるフローを構築することで、誰が担当しても同じ精度の改善が可能になります。

ステップ1:不適合の特定と記録
問題が発生した際、あるいはリスクを察知した際、まずは客観的な事実を正確に把握し、迅速に記録することが第一歩です。
| 項目 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 事象の確認 | 「いつ」「どこで」「何が」を特定 | 事実関係の正確な把握 |
| 応急処置 | 影響拡大を防ぐ即時対応 | 被害の最小化 |
| 記録の作成 | 不適合報告書への記入 | 情報の共有と証跡管理 |
ステップ2:原因分析(なぜなぜ分析など)
表面的な現象だけを見るのではなく、真の根本原因(Root Cause)を突き止めます。以下の3つの視点で深掘りすることが推奨されます。
- 1. 直接原因
なぜその不適合が起きたのか?(例:作業ミス、設備故障など) - 2. システム上の原因
なぜその不適合を防げなかったのか?(例:チェック体制の不備) - 3. 検知上の原因
なぜその不適合に気づけなかったのか?(例:検査項目の漏れ)
ステップ3:処置の計画と実施
原因を排除するための具体的な対策を立案し、リソースを割り当てて実施します。ここでは個人の注意力に頼るのではなく、仕組み(ハード・ソフト両面)の改善を重視します。
- 実施すべき具体的な対策案
- 再発防止策の策定
物理的な誤投入防止ジグの作成や、ソフトウェアによる自動チェックの導入。 - 手順書(SOP)の改訂
決定した対策を標準作業手順書に反映させ、誰が作業しても同じ結果になるように更新。 - 教育・トレーニングの実施
改訂された手順を関係者全員に周知し、スキルの平準化を図る。
- 再発防止策の策定
ステップ4:有効性の確認
実施した処置が本当に効果があったのかを評価します。一定期間後に同様のトラブルが発生していないかを確認し、効果が不十分な場合は再度フローを見直します。
品質管理を形骸化させないための記録・報告のポイント
品質管理において「記録がないことは、実施していないことと同じ」とみなされます。後から第三者が客観的に経緯を追跡できるような、質の高い記録の残し方を徹底することが重要です。

報告書に必要な必須項目
適切な報告書には、最低限以下の項目が含まれている必要があります。これらを網羅することで、情報の抜け漏れを防ぎ、外部監査時の信頼性も高まります。
- 発生の基本情報
発生日時、場所、発見者、対象製品のロット番号。 - 不適合の内容
具体的な数値や状態、正常な状態との差異。 - 応急処置の内容
実施した処置、在庫への影響範囲、判断基準。 - 根本原因の分析結果
分析に使用した手法(なぜなぜ分析等)と、特定された真因。 - 是正・予防処置の内容
具体的な対策内容、実施担当者、完了予定日。 - 有効性確認の結果
確認方法、確認予定日、判定結果、承認印。
わかりやすい報告書を作成するコツ
報告書は作成者以外の人間が読むものです。客観性と論理性を担保するために、以下の3点を意識して執筆しましょう。
- 報告書作成の3原則
- 定量的データの活用
「不良が多い」といった曖昧な表現を避け、「1000個中15個の不良、発生率1.5%」のように具体的に記述します。 - 5W1Hの徹底
主観や感情を排除し、事実(Fact)のみを簡潔な文章で構成します。 - 論理的なつながり
特定された「原因」に対して、その「対策」が直接的に機能していることを論理的に示します。
- 定量的データの活用
品質管理担当者が抱く不安と是正・予防処置の注意点
是正・予防処置の導入や運用にあたって、現場で共通して抱かれる不安や陥りやすい罠があります。これらを事前に理解し、柔軟な運用を心掛けることで、品質管理の形骸化を防げます。
「処置が増えると現場の負担になる」という不安への対策
すべての不適合に重厚な是正処置を行うと、現場は報告業務で疲弊します。品質管理を継続させるには、リスクの大きさ(重大性と発生頻度)に基づいて、優先順位を付けることが重要です。
- 高リスク案件
即座に根本原因分析と組織的な是正処置を実施し、再発を徹底的に防ぐ。 - 低リスク案件
傾向監視(トレンド分析)に留め、頻発する場合のみ是正処置へ移行する運用を検討する。
修正(Correction)と是正(Corrective Action)の混同
多くの現場で混同されがちなのが「修正」と「是正」です。この違いを明確に認識していないと、対症療法に終始し、同じミスを何度も繰り返すことになります。
- 修正(対症療法)
目の前にある不良品を直す、または廃棄すること。不適合そのものを除去する活動。 - 策定(根本療法)
二度と不良品が出ない「仕組みや手順、設備」に更新すること。不適合の原因を除去する活動。
まとめ:品質管理の質を高める継続的な仕組みづくり
是正処置・予防処置は、単なるトラブルの後始末ではありません。発生した問題を組織の資産に変え、次の失敗を未然に防ぐための、非常に前向きな改善活動です。本記事で解説した以下のポイントを意識して運用しましょう。
- 1. 事実に基づく正確な記録からすべてを開始する。
- 2. なぜなぜ分析等で根本原因を深く掘り下げる。
- 3. 個人の注意ではなく仕組み(ルール・設備)を改善する。
- 4. 実施後の有効性を客観的な数値で必ず評価する。
このサイクルを愚直に回し続けることで、組織の品質管理レベルは確実に向上し、顧客からの揺るぎない信頼獲得へとつながります。
Q1. 予防処置は必ず実施しなければならないのですか?
A. 全てのリスクに対して実施する必要はありません。コストと効果のバランス、および発生した際の影響度を考慮し、組織にとって重要なリスクから優先的に実施するのが一般的です。ISOのガイドラインでも、リスクの大きさに応じた適切な対応が求められています。
Q2. 是正処置の「有効性の確認」はいつ行えばよいですか?
A. 処置実施後、すぐに判断するのは避けましょう。新しい手順が現場に定着するまでの期間(例:数ヶ月間、あるいは次回の製造サイクル時)をあけて、再発がないことを確認した上で完了判定を行います。あらかじめ確認計画を立てておくことが重要です。
Q3. 小さなミスでもすべて報告書が必要ですか?
A. 組織の運用ルールによりますが、全ての軽微なミスに重厚な報告書を求めると現場が停滞します。小さなミスは「ヒヤリハット記録」として簡易的に蓄積し、同じパターンが一定回数を超えた場合に「是正処置」へ移行する運用にすることで、現場の負担と管理の質を両立できます。
[出典:厚生労働省 GMP/QMS適合性調査に関する基本的考え方]





