品質検査とは?種別と手順をわかりやすく解説

この記事の要約
- 品質検査と品質管理の違いや目的を明確に定義して解説
- 全数検査や抜取検査など各種検査方法の特徴と選び方
- 正確な検査手順と自動化導入による効率化のポイント
- 目次
- 品質検査と品質管理の違いとは?基礎知識を解説
- 品質検査の定義
- 品質管理における品質検査の位置づけ
- 品質管理に欠かせない品質検査の主な種類
- 工程・タイミングによる分類
- 検査数量による分類(全数検査と抜取検査)
- 検査の性質による分類(破壊検査と非破壊検査)
- 品質管理を強化する品質検査の具体的な手順
- Step1:品質基準(規格)の策定
- Step2:検査方法と項目の決定
- Step3:検査の実施と合否判定
- Step4:検査データの記録と活用
- 品質管理の現場でよくある課題と品質検査の注意点
- 検査コストと精度のバランス
- ヒューマンエラー(見逃し・誤判定)の防止
- 検査員の教育とスキルの標準化
- 品質管理の効率化:目視検査と自動検査の比較
- 目視検査(人手)のメリット・デメリット
- 自動検査(画像処理システム等)のメリット・デメリット
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
- Q1. 品質検査と工程管理はどう違いますか?
- Q2. 品質管理検定(QC検定)は実務に役立ちますか?
- Q3. 検査基準書はなぜ必要なのですか?
品質検査と品質管理の違いとは?基礎知識を解説
品質検査は製造業における「品質管理」という広範な活動の一部であり、両者は明確に役割が異なります。このセクションでは、混同されやすい「品質検査」と「品質管理」の定義を整理し、それぞれの目的と関係性を構造的に解説します。両者の違いを正しく理解することが、適切な品質保証体制構築の第一歩です。
品質検査の定義
品質検査
とは、製造された製品や部品が、あらかじめ定められた品質基準(規格)を満たしているかどうかを判定する行為を指します。具体的には、測定器や目視によって製品の特性を調べ、良品か不良品かを選別します。品質検査の最大の役割は、不良品を次工程や顧客へ流出させないための「フィルター(選別)」としての機能です。
品質管理における品質検査の位置づけ
品質管理(Quality Control)
とは、顧客が求める品質の製品を経済的に作り出すための、製造プロセス全体を含む管理活動のことです。品質検査が「結果の確認(選別)」であるのに対し、品質管理は「プロセスの改善(予防)」を含みます。品質検査の結果から得られたデータを分析し、不良が発生しない仕組みを作ることこそが品質管理の本質であり、品質検査はそのためのデータ収集手段の一つとして位置づけられます。
- 品質管理と品質検査の違いまとめ
- 主な目的の違い
品質検査は「良品と不良品の選別(流出防止)」が目的であるのに対し、品質管理は「品質の維持・向上と不良発生の予防」を目的とします。 - 対象範囲の違い
品質検査は「製品そのもの(出来栄え)」を対象としますが、品質管理は「製造プロセス全体(人、設備、方法)」を対象とします。 - アクションの違い
品質検査は「合格・不合格の決定」を行いますが、品質管理はそれに基づいた「原因究明、工程改善、標準化」を行います。
- 主な目的の違い

品質管理に欠かせない品質検査の主な種類
品質検査には、実施するタイミングや数量、検査手法によって多種多様な種類が存在します。製造する製品の特性やコスト、リスク許容度に応じて最適な検査方式を選択する必要があります。ここでは、代表的な検査の分類について解説します。
工程・タイミングによる分類
製造フローのどの段階で実施するかによって、大きく3つに分類されます。それぞれの段階で「何を見極めるか」が異なります。
- 受入検査(受入時)
原材料や部品が外部から納入された段階で行う検査です。不良材料が製造ラインに投入されるのを防ぐ「水際対策」として機能します。納品書の型番照合、外観の破損、材質証明書(ミルシート)の確認などが行われます。 - 工程検査(製造途中)
製造プロセスの途中段階で行う検査(中間検査)です。次工程への不良流出を防ぐとともに、設備の異常を早期に検知して大量不良を防ぎます。センサーによる自動計測や作業者による自主確認が一般的です。 - 出荷検査(最終時)
完成品が出荷される直前に行う検査です。顧客に製品を届ける前の「最後の砦」として品質を保証します。完成品の機能動作、外観品位、付属品の欠品がないかなどを最終確認します。
検査数量による分類(全数検査と抜取検査)
検査対象の数量をどう設定するかによって、手法が異なります。製品のリスクと検査コストのバランスで決定します。
- 数量による検査方式の違い
- 全数検査
製造したすべての製品を一つひとつ検査する方法です。自動車のブレーキ部品や医薬品など、人命に関わる製品や高価な製品に適用されます。 - 抜取検査
製造ロット(集団)から一部をサンプルとして抜き出し、その結果でロット全体の合否を判定する方法です。ボルトやナットなどの大量生産品や、検査によって製品が破壊される場合に適用されます。
- 全数検査
以下の表は、全数検査と抜取検査のメリット・デメリットを比較したものです。
| 項目 | 全数検査 | 抜取検査 |
|---|---|---|
| 保証の範囲 | 個々の製品すべての品質を保証 | ロット(集団)としての平均的な品質を保証 |
| コスト・時間 | 非常に高い(自動化で低減可能) | 低い(検査数が少ないため) |
| 検査のリスク | 検査員の疲労による見逃しが増える | 統計的な判断リスク(不良品が混じる可能性) |
| 製品への影響 | ハンドリングによる汚れ・傷のリスク増 | 最小限に抑えられる |
検査の性質による分類(破壊検査と非破壊検査)
製品の状態を変化させるかどうかによる分類です。
- 破壊検査
製品を実際に壊したり、化学反応させたりして強度や成分を調べる方法です。検査後の製品は使用できなくなるため、必ず抜取検査となります。 (例:引張試験、シャルピー衝撃試験、断面マクロ試験など) - 非破壊検査
製品を傷つけずに内部の欠陥や構造を調べる方法です。全数検査への適用も可能です。 (例:超音波探傷試験、放射線透過試験、浸透探傷試験など)
品質管理を強化する品質検査の具体的な手順
品質検査を効果的に実施するためには、体系的な手順を踏むことが重要です。ここでは標準的な検査プロセスをステップ形式で解説するとともに、各ステップで現場担当者が陥りやすい「注意点」も合わせて紹介します。
Step1:品質基準(規格)の策定
まず、何を「良品」とし、何を「不良品」とするかの明確な基準(スペック)を決定します。
- 実施内容
顧客の図面、JIS規格、社内設計基準を元に許容範囲の数値を設定します。 - 現場のポイント
「キズがないこと」といった曖昧な表現は避け、「長さ1mm以上の線キズ不可」のように数値化・定量化することがトラブル防止の鍵です。
Step2:検査方法と項目の決定
基準を満たしているか確認するための具体的な手段と道具を決めます。
- 実施内容
ノギス、三次元測定機、画像処理カメラなどの選定と、誰がやっても同じ結果になるよう「検査手順書」を作成します。 - 現場のポイント
測定器には定期的な「校正(メンテナンス)」が必要です。狂った定規で測っても意味がないため、測定器自体の管理体制も同時に整えましょう。
Step3:検査の実施と合否判定
手順書に基づき、実際に検査を行います。
- 実施内容
測定と判定を行い、合格品は次工程へ、不合格品は隔離します。 - 現場のポイント
不合格品が出た場合、「現品票(赤札)」などを貼って物理的に区別してください。良品と混ざって出荷される事故(混入)は絶対に防ぐ必要があります。
Step4:検査データの記録と活用
検査は実施して終わりではありません。検査結果を記録し、品質管理へ活かします。
- 実施内容
検査成績書(チェックシート)への記入とデータベース化を行います。 - 現場のポイント
手書きの記録は集計に時間がかかります。タブレット入力やIoT連携を進め、「リアルタイムで不良傾向がわかる」仕組みを作ると、改善スピードが劇的に上がります。
品質管理の現場でよくある課題と品質検査の注意点
品質検査を運用する上では、コストバランスや人的ミスなど、多くの現場が共通して抱える課題があります。ここでは、実務において直面しやすい問題点と、それに対する具体的な対策や注意点を解説します。これらを事前に把握することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
検査コストと精度のバランス
品質を追求するあまり検査を厳しくしすぎると、コストが増大し、生産効率が低下します(過剰品質)。逆にコストを削減しすぎれば、不良品流出によるクレームリスクが高まります。このジレンマを解消するためには、製品のリスクに応じた適切なAQL(合格品質水準)
を設定し、統計的に許容できる不良率とコストのバランス点を見極める経営的な判断が必要です。
ヒューマンエラー(見逃し・誤判定)の防止
人が行う検査(官能検査・目視検査)では、以下のエラーが避けられません。
- 見逃し
不良品を良品としてしまうエラーです。 - 過検出
良品を不良品としてしまうエラーです。
これらは、検査員の疲労、照明環境、視力、心理状態に影響されます。対策としては、作業環境(照度など)の改善、適度な休憩、ダブルチェック体制の導入などが有効です。
検査員の教育とスキルの標準化
検査スキルが属人化すると、担当者によって合否判定が変わるという致命的な問題が発生します。
- 限度見本の活用
良品・不良品のボーダーラインを示すサンプルを現場に配置します。 - 認定制度の導入
定期的なスキル評価や教育訓練を行い、合格した者だけが検査に従事できるようにします。
品質管理の効率化:目視検査と自動検査の比較
近年、人手不足や品質要求の高度化に伴い、従来の目視検査から画像処理システムなどを活用した自動検査への移行が進んでいます。しかし、すべての検査が自動化できるわけではありません。それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、自社の工程に最適な方式を選ぶことが重要です。
目視検査(人手)のメリット・デメリット
- メリット
初期投資が少なく、多品種少量生産や複雑な形状にも柔軟に対応できます。人間の感覚による微妙な違和感(五感)での判断が可能です。 - デメリット
検査員によるバラつきが出やすいほか、長時間作業による疲労で見逃しが発生します。また、継続的な人件費がかかります。
自動検査(画像処理システム等)のメリット・デメリット
- メリット
高速かつ定量的でバラつきのない判定が可能です。24時間稼働ができ、データ記録も容易です。 - デメリット
導入時の初期投資が高額です。また、設定や調整に専門知識が必要であり、過検出(良品をハネてしまう)が起きやすく、閾値調整が難しい場合があります。
以下の表は、目視検査と自動検査の特徴を比較したものです。
| 比較項目 | 目視検査(人) | 自動検査(機械・AI) |
|---|---|---|
| コスト | 初期投資:低 ランニング:高(人件費) |
初期投資:高 ランニング:低(電気代・保守) |
| 判定精度 | 柔軟性が高いがバラつきあり | 再現性が高く安定的 |
| スピード | 遅い(限界がある) | 非常に速い |
| 導入難易度 | 容易(教育のみですぐ開始可) | 困難(選定・設置・調整が必要) |

まとめ
品質検査は、単なる「不良品除け」ではなく、製品の信頼性を保証し、企業のブランドを守るための重要な品質管理手段です。適切な検査方式(全数/抜取、自動/手動)を製品のリスクやコストに応じて使い分け、検査データを製造工程へフィードバックすることで、真の品質向上とコストダウンにつなげることができます。
よくある質問(FAQ)
品質検査に関して、現場や実務担当者から寄せられることの多い疑問に回答します。
Q1. 品質検査と工程管理はどう違いますか?
品質検査は製品ができあがった後に、その出来栄えを確認する「結果のチェック」です。一方、工程管理は良品を作るために、温度・圧力・速度などの製造条件を管理・監視する「プロセスの管理」を指します。工程管理を徹底することで、検査での不良発見を減らすことができます。
Q2. 品質管理検定(QC検定)は実務に役立ちますか?
非常に役立ちます。QC検定を学ぶことで、品質管理の用語や考え方、パレート図や管理図といった統計的な手法(QC七つ道具)を体系的に習得できます。これにより、現場での問題解決能力が向上し、論理的な改善活動を推進できるようになります。
Q3. 検査基準書はなぜ必要なのですか?
検査員の「主観」や「カン」による判定のバラつきをなくすためです。検査基準書がないと、Aさんは合格にしたものをBさんは不合格にする、といった事態が起きます。いつ、誰が検査しても同じ品質基準で判定できるように(標準化)、明確な基準書が不可欠です。





