「安全管理」の基本知識

建設現場の熱中症対策とは?リスクと安全管理の工夫を紹介


更新日: 2025/11/04
建設現場の熱中症対策とは?リスクと安全管理の工夫を紹介

この記事の要約

  • 建設現場特有の熱中症リスク4つの要因
  • 法令で求められる安全配慮義務と具体的対策
  • WBGT値の活用から応急処置までの実践ガイド
目次

建設現場における熱中症のリスクと安全管理の重要性

建設現場における熱中症対策とは、高温多湿な環境下で作業する労働者の健康障害を防ぎ、安全を確保するために事業者が講じるべき一連の措置のことです。建設現場は他業種に比べて熱中症リスクが極めて高く、対策の実施は法令で求められる重要な安全管理義務です。この記事では、建設現場特A有のリスク要因を理解し、準備編から実践編、緊急時対応まで、具体的かつ効果的な熱中症対策と工夫を網羅的に解説します。

なぜ建設現場は熱中症リスクが特に高いのか?

建設現場の熱中症リスクは、複数の要因が複合的に絡み合うことで高まります。主な要因として以下の4点が挙げられます。

直射日光や高温多湿な環境
屋外作業が多く、日差しを遮るものがない場所での作業が中心です。また、アスファルトやコンクリートの照り返し、重機からの排熱も体感温度を上昇させます。梅雨明け後の高温多湿な環境は、汗が蒸発しにくく、体温調節機能を著しく妨げます。
身体負荷の高い作業
資材の運搬、掘削、高所での作業など、建設作業は常に高い身体的負荷を伴います。筋肉運動は体内で大量の熱を発生させるため、作業負荷が高いほど熱中症のリスクは比例して増加します。
通気性の低い作業服や防護具の着用
安全確保のために必須のヘルメット、安全靴、防塵マスク、長袖の作業服などは、体内の熱や汗を外に逃しにくくします。特に防護服や安全ベストは通気性を著しく損ない、熱がこもる原因となります。
作業スケジュールによる連続作業
工期を守るため、暑い日中であっても作業を中断しにくい場合があります。また、休憩時間が不十分であったり、連続して作業を行ったりすると、体温を十分に下げる時間が確保できず、リスクが蓄積します。

熱中症対策は法令でも求められる重要な安全管理

熱中症対策は、単なる努力目標ではなく、法令によって事業者に課せられた重要な安全管理義務の一つです。労働安全衛生法および関連する規則では、事業者が労働者の危険または健康障害を防止するための措置を講じることを義務付けています(安全配慮義務)。

具体的には、高温多湿な作業場所における熱中症予防対策(WBGT値の測定、休憩場所の確保、水分・塩分の補給など)が求められます。これらの対策を怠り、労働者が熱中症を発症した場合、事業者は安全配慮義務違反を問われる可能性があります。労災認定はもちろんのこと、民事上の損害賠償責任が発生するほか、企業の社会的信用の失墜にも繋がりかねない重大なリスクとなります。

まずは知っておきたい熱中症の基本知識

効果的な対策を講じるためには、まず熱中症がどのような状態であり、どのような症状が現れるのかを正確に理解しておくことが不可欠です。重症化すると命に関わるため、初期症状を見逃さず、重症度に応じた適切な判断ができる知識を現場全体で共有することが重要です。

熱中症とは?主な症状と重症度分類

熱中症は、高温多湿な環境下で、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体温調節機能がうまく働かなくなったりすることで生じる、さまざまな症状の総称です。体温の上昇、めまい、けいれん、意識障害など、多くの症状を引き起こします。

症状の重症度は主に3段階に分類されます。軽症(I度)であっても、放置すれば急速に悪化し、中等症(II度)、さらには命の危険がある重症(III度)に至る可能性があります。

熱中症の重症度分類と主な症状

重症度 分類 主な症状 危険度
I度 軽症 めまい、立ちくらみ、筋肉痛(こむら返り)、大量の発汗 現場での応急処置で対応可能
II度 中等症 頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感 医療機関での受診が必要
III度 重症 意識障害、けいれん、高体温、呼びかけへの反応が鈍い 命の危険あり。即座に救急搬送
[出典:厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト]

建設現場で特に注意すべき初期症状の見分け方

熱中症の恐ろしさは、本人が自覚症状を感じにくいまま重症化することがある点です。特に作業に集中していると、初期のサインを見逃しがちです。管理監督者や周囲の作業員が「いつもと違う様子」にいち早く気づくことが、重症化を防ぐ鍵となります。

注意すべき初期症状のサイン

・ 呼びかけへの反応が鈍い、返事がない
・ ろれつが回らない、会話がかみ合わない
・ 足元がふらついている、まっすぐ歩けない
・ 顔色(特に顔が赤すぎる、または青白い)
・ いつもより汗をかきすぎている、または逆に汗をかいていない

これらの症状が見られた場合、本人が「大丈夫」と主張しても、作業を中断させ、すぐに涼しい場所で休ませる判断が必要です。体調不良を言い出しやすい職場の雰囲気づくりも、初期対応の遅れを防ぐ上で重要です。

【準備編】建設現場で実践すべき熱中症対策と環境整備

熱中症予防は、作業当日の行動だけでなく、作業開始前の周到な準備と環境整備によってその効果が大きく左右されます。危険度を客観的に把握し、作業員が安全に休息・水分補給できる環境を整えることが、安全管理の第一歩となります。

危険度を「見える化」するWBGT値(暑さ指数)の把握と管理

体感的な「暑さ」だけでなく、客観的な指標を用いてリスクを評価することが不可欠です。そのために用いられるのがWBGT値(暑さ指数)です。WBGT値は、気温だけでなく、湿度、輻射熱(日差しなど)を総合的に評価した指標であり、熱中症リスクを予測する上で非常に有効です。

厚生労働省は、WBGT値に基づいた作業環境管理の基準を示しています。例えば、WBGT値が一定の基準(例:31℃以上)に達した場合は、原則として作業を中止する、または休憩時間を頻繁に設けるなどの対策が求められます。

対策のポイント:

  1. 計測器の設置: 作業場所(特に最も暑くなる場所)や休憩場所にWBGT計測器を設置します。
  2. 定期的な計測と周知: 少なくとも1日に数回(作業開始前、午前10時、午後1時など)計測し、その時点での危険度と対策を朝礼や掲示板で全作業員に周知徹底します。

建設現場で暑さ指数(WBGT)計測器を確認する現場監督

出典情報:
WBGT値の基準や具体的な管理方法については、厚生労働省が発行する最新のマニュアルに詳細が記載されています。
・ [厚生労働省:職場における熱中症予防対策マニュアル(令和6年4月改訂版)]

休憩場所(クールスペース)の設置と管理

作業中に上昇した体温を効果的に下げるため、専用の休憩場所(クールスペース)の設置が不可欠です。単なる日陰ではなく、積極的に体を冷やせる環境を整備する必要があります。

設置場所: 作業場所からアクセスしやすい近距離に設置します。
設備: 直射日光を遮る屋根やテントだけでなく、冷房設備(エアコン、スポットクーラー)、大型扇風機、ミストシャワーなどを設置し、気温・湿度を管理します。
備品: 冷たいおしぼり、送風機、横になれるベンチや簡易ベッドなども有効です。

水分・塩分の補給体制の構築

熱中症予防の基本は、汗で失われた水分と塩分(ナトリウム)を適切に補給することです。作業員が「いつでも」「誰でも」補給できる体制を構築します。

常備: 休憩場所や作業場所の近くに、スポーツドリンクや経口補水液、塩飴、塩タブレットなどを常備します。
推奨される飲料: 基本はスポーツドリンク(水分と適度な塩分・糖分)、大量に発汗した際や軽度の脱水症状が見られる場合は経口補水液が推奨されます。
補給のタイミング: 「喉が渇いた」と感じる前に、定期的かつこまめに(例:15〜20分ごとにコップ1〜2杯)補給することが重要です。「喉の渇き」は、すでに水分不足が始まっているサインです。

熱中症対策グッズ・空調服の準備と比較

近年の熱中症対策では、作業環境の整備に加え、個々の作業員が身につける対策グッズの活用が常識となっています。これらは作業効率の維持と安全確保に直結します。

主な対策グッズ:
空調服(ファン付き作業服): 体に風を送り、汗の気化を促進して体を冷やします。
水冷服(冷却ベスト): 内部に冷水を循環させて体を直接冷やします。
ヘルメット用送風機: ヘルメット内部の蒸れを軽減します。
ネッククーラー: 首元(太い血管)を直接冷やします。

特に空調服や水冷服は効果が高いとされていますが、それぞれ特性が異なります。どちらを導入すべきか、または併用すべきかは、作業環境やコストに応じて比較検討が必要です(詳細は後述の「【比較検討】」セクションで解説します)。

【実践編】作業中の工夫で徹底する熱中症の安全管理

どれだけ環境や物品を準備しても、実際の作業中に適切に運用されなければ意味がありません。作業スケジュールや健康状態のチェックなど、日々の運用における安全管理こそが、熱中症予防の成否を分けます。管理者による監視と、作業員一人ひとりの意識が求められます。

定期的な休憩と水分補給のルール化

「各自で適宜休憩をとる」といった曖昧な指示では、作業員は工期や周囲への遠慮から休憩を取り損ねがちです。明確なルール化と、それを実行させる管理体制が不可欠です。

具体的な目安の設定: WBGT値のレベルに応じて、「作業〇分ごとに〇分の休憩」といった具体的な基準を設けます。
管理方法: 現場にタイムキーパーを指名する、または決まった時間にアラームやサイレンを鳴らし、一斉に休憩と水分補給を促します。
声かけの徹底: 管理監督者は「水分とったか?」「塩分とったか?」と積極的に声かけを行い、補給を「義務」として意識させます。

作業スケジュールの調整

最も気温が高くなる時間帯の作業負荷をいかに減らすかが、安全管理上の重要なポイントです。

高温時間帯の回避: 最も暑くなる時間帯(一般的に午前11時〜午後3時頃)は、身体負荷の高い作業(重量物の運搬、掘削など)を極力避け、軽作業や屋内作業に切り替えます。
作業シフトの検討: 可能であれば、作業時間を早朝や夕方の涼しい時間帯にシフトする「サマータイム制」の導入も有効です。
連続作業時間の短縮: 一度の作業時間を短く区切り、休憩の頻度を増やすことで、体温の過度な上昇を防ぎます。

安全管理の要:作業員の健康状態チェック体制

熱中症の発症リスクは、その日の体調に大きく左右されます。作業員個々の健康状態を把握することは、事故を未然に防ぐための安全管理の要です。

健康状態チェック体制のポイント

朝礼時: 作業開始前の朝礼や点呼時に、顔色や表情、声の張りを確認します。「睡眠は十分か」「朝食は食べたか」「深酒していないか」「体調不良はないか」などを具体的に申告させます。
作業中: 管理監督者は現場を定期的に巡回し、作業員の様子に異変がないか(ふらつき、反応の鈍さなど)を注意深く観察し、積極的に声かけを行います。
セルフチェックの周知: 作業員自身にも、自分の体調変化(めまい、吐き気など)に注意を払い、異常を感じたらすぐに報告するよう指導を徹底します。

2人1組(バディシステム)など監視体制の工夫

万が一の事態に備え、作業員が孤立しない体制づくりが重要です。

1人作業の回避: 高温環境下では、極力1人での作業を避け、2人1組(バディシステム)を組ませます。これにより、お互いの体調変化に気づきやすくなります。
報告しやすい環境: 体調不良を感じた際に、作業員が「工期に迷惑がかかる」「根性がないと思われる」といった理由で我慢してしまうことを防がなければなりません。管理者が「体調不良の申告は当然の権利であり義務である」という姿勢を明確に示し、報告しやすい職場環境を醸成することが不可欠です。

もし熱中症が発生したら?迅速な応急処置と安全管理体制

予防策を徹底していても、当日の天候や個人の体調によっては熱中症が発生する可能性があります。その際に重要なのは、パニックにならず、あらかじめ定められた手順に従って迅速に応急処置を行うことです。これは安全管理体制の重要な機能の一つです。

現場でできる応急処置の基本手順

熱中症が疑われる作業員を発見した場合、以下の手順で直ちに応急処置を開始します。

応急処置の基本手順(HowTo)
  1. 意識の確認
    まず、呼びかけに対して反応があるか、意識がはっきりしているかを確認します。意識がない、または朦朧としている場合は、即座に救急車(119番通報)を要請します。
  2. 涼しい場所への避難
    意識の有無に関わらず、直ちに作業を中断させ、日陰や冷房の効いた休憩場所(クールスペース)など、涼しい場所へ避難させます。
  3. 衣服をゆるめ、体を冷やす
    作業服やベルトを緩めて風通しを良くします。特に、首筋、脇の下、足の付け根(股関節)など、太い血管が通っている場所を、濡らしたタオル、氷のう(アイスパック)、ミストなどで集中的に冷やし、体温を下げます。
  4. 水分・塩分の補給

意識がはっきりしている場合に限り、冷やしたスポーツドリンクや経口補水液、または食塩水(水1リットルに対し食塩1〜2g)を、本人のペースでゆっくりと飲ませます。吐き気がある場合は無理に飲ませてはいけません。

建設現場の日陰で熱中症の応急処置を受ける作業員

医療機関への連絡・搬送の判断基準

応急処置と並行して、医療機関へ連絡するか、救急車を呼ぶかの判断を迅速に行う必要があります。

直ちに救急車を呼ぶべき症状(重症度III度の疑い):
・ 呼びかけに応えない、意識障害がある
・ 全身のけいれんを起こしている
・ 体が異常に熱い(高体温)
・ 自力で水分補給ができない
医療機関を受診すべき症状(重症度II度の疑い):
・ 頭痛、吐き気、嘔吐、強い倦怠感がある
・ 応急処置(水分補給、冷却)を行っても、症状が改善しない

判断に迷う場合は、ためらわずに救急車を要請することが重要です。

発生後の報告と再発防止策の検討

熱中症の発生は、現場の安全管理体制に見直すべき点があったというシグナルです。応急処置が完了した後、必ず詳細な報告書を作成し、再発防止策を検討しなければなりません。

原因の究明: なぜ熱中症が発生したのか(当日のWBGT値、休憩の頻度、作業内容、本人の体調、水分補給の状況など)を客観的に分析します。
体制の見直し: 分析結果に基づき、「作業環境(休憩場所の設備など)」「管理体制(休憩のルール、監視体制など)」「作業員の意識(安全教育)」の各側面から、具体的な改善策を策定し、現場全体で共有します。

【比較検討】どの対策が効果的?主要な熱中症対策グッズ

建設現場の熱中症対策として、空調服や特定の飲料の導入を検討する管理者は多いでしょう。しかし、それぞれに特性があり、現場の状況やコストに応じて最適な選択は異なります。ここでは、導入の判断材料となるよう、主要な対策グッズと飲料を客観的に比較検討します。

空調服 vs 水冷服 メリット・デメリット比較

作業服によって体温上昇を抑えるグッズとして、主流の「空調服」と「水冷服」について、その仕組みと特性を比較します。

空調服と水冷服の比較表

項目 空調服(ファン付き作業服) 水冷服(冷却ベスト)
仕組み ファンの力で外気を取り込み、汗を気化させて冷やす(気化熱利用) 内部のチューブに冷水や冷却液を循環させて体を直接冷やす
メリット 比較的安価、製品ラインナップが豊富、動きやすい、バッテリーの持ちが良い製品が多い 湿度が高い場所でも冷却効果が低下しにくい、即効性が高い
デメリット 湿度が高いと汗が蒸発しにくく効果が薄れる、粉塵が多い場所ではファンが目詰まりする、外気が高温すぎると熱風を送ることになる バッテリーや水(氷)の管理が必要、やや重い、コストが高めになる傾向がある
適した環境 一般的な屋外作業、比較的湿度が低い環境、動き回る作業 高温多湿の環境(日本の夏)、空調服が使えない環境(防護服内部、粉塵現場)

飲料の種類と選び方(スポーツドリンク vs 経口補水液)

水分補給は重要ですが、「何を飲むか」も同様に重要です。目的とタイミングに応じて、適切な飲料を選ぶ必要があります。

主な飲料の比較と適切な摂取タイミング

種類 主な目的 糖分 塩分(ナトリウム) 適したタイミング
スポーツドリンク 水分・エネルギー補給 多い やや少なめ 作業前、作業中の定期的補給(大量発汗前)
経口補水液 脱水症状の改善・予防 少ない 多い(電解質濃度が高い) 大量に汗をかいた後、軽度の脱水症状(めまい、こむら返り)が見られる時
麦茶など(ノンカフェイン) 日常の水分補給 なし ほぼなし(※) 休憩時(ただし、塩分は塩飴などで別途補給が必要)

(※)ミネラル入り麦茶など、製品によってはナトリウムを含むものもありますが、大量発汗時の補給には不十分な場合があります。基本的には塩分との併用が推奨されます。

「これだけで大丈夫?」建設現場の熱中症対策に関する不安解消

対策を講じても、現場の管理者は「急な天候変化に対応できるか」「作業員個人の管理はどうするか」「コストがかかりすぎる」といった具体的な不安を抱えがちです。ここでは、そうした実践的な疑問に対する解決策を示します。

天候が急変して気温が上がった場合の対応は?

天気予報は絶対ではありません。作業中に急激に気温や湿度が上昇した場合、事前の計画に固執せず、安全管理体制を柔軟に変更する必要があります。

WBGT値の再計測: 現場のWBGT値を直ちに再計測し、危険度レベルを再評価します。
作業計画の即時見直し: 危険度レベルが上がった場合、作業計画を即座に見直します。
具体的な措置: 臨時の休憩を追加する、休憩時間を延長する、作業負荷の高い作業を中断する、場合によってはその日の作業全体を中止するといった判断基準をあらかじめ明確にしておくことが重要です。

作業員個人の体調管理、何を指導すべきか?

現場での対策と同時に、作業員一人ひとりが前日や当日の朝にできる「セルフケア」も熱中症予防には不可欠です。安全教育や朝礼を通じて、以下の点を徹底するよう指導します。

前日の十分な睡眠: 睡眠不足は体温調節機能を低下させます。
バランスの取れた食事(特に朝食の重要性): 朝食を抜くと、エネルギー不足や塩分不足で熱中症になりやすくなります。
深酒を避ける: アルコールには利尿作用があり、脱水状態を引き起こしやすくなります。前日の飲酒は控えるか、適量にとどめるよう指導します。
持病の確認: 高血圧、糖尿病、心疾患などの持病がある人や、服薬中の人は熱中症のリスクが高いことを自覚させ、特に注意深く体調を観察するよう促します。

コストを抑えつつ効果的な対策を行うには?

熱中症対策には設備投資が伴いますが、コストを理由に対策が不十分になってはなりません。コストを抑えつつ効果を上げる工夫も可能です。

助成金・補助金の活用: 国や自治体、関連団体が、熱中症対策を含む労働環境改善のための制度を設けている場合があります。(詳細は「よくある質問」参照)
レンタルの活用: 空調服やスポットクーラーなど、高価な設備は購入するだけでなく、夏季限定でレンタルサービスを活用することも有効な手段です。
配置の工夫: スポットクーラーや大型扇風機は、単に設置するだけでなく、風の流れ(空気の入口と出口)を考慮して最も効果的な場所に配置します。日陰を作るための遮光ネットの活用も低コストで効果的です。

まとめ:計画的な安全管理で建設現場の熱中症ゼロを目指そう

建設現場における熱中症は、予測不可能な天災ではなく、適切な予防策によって防ぐことができる「労働災害」です。その予防には、WBGT値に基づく客観的な環境整備、空調服などの対策グッズの準備、そして作業中のこまめな休憩や水分補給といった多角的なアプローチが不可欠です。

特に重要なのは、作業員任せにするのではなく、会社・現場管理者が主導して「安全管理体制」を構築し、それを確実に運用することです。作業員の健康状態の把握、緊急時の応急処置体制の確立、そして体調不良を申告しやすい職場風土づくり。これらすべてが安全管理の一環です。

熱中症対策は、作業員の貴重な命と健康を守るための最重要課題の一つです。本記事で紹介した対策を参考に、自社の安全管理体制を常に見直し、改善を続けることで、熱中症ゼロの安全な現場を目指しましょう。

建設現場の熱中症対策に関するよくある質問

Q. WBGT値はどこで確認できますか?

A. 最も正確なのは、現場に専用のWBGT計測器を設置し、実測することです。これにより、その場所固有の輻射熱なども含めた正確なリスク評価が可能です。参考値としては、環境省が運営する「熱中症予防情報サイト」などで、地域ごとの予測値や実況値を確認することもできます。
(参考:[環境省 熱中症予防情報サイト])

Q. 熱中症対策の安全教育では何を伝えればよいですか?

A. 以下の点を中心に、具体的かつ実践的な内容を伝えることが重要です。

  1. 危険性の認識: 熱中症のメカニズムと、重症化すると命に関わる危険性。
  2. 症状の理解: 重症度ごとの具体的な症状と、特に見逃しやすい初期サイン(ふらつき、反応の鈍さなど)。
  3. 現場のルール: WBGT値に応じた休憩時間、水分・塩分補給のタイミングと量、休憩場所の利用方法。
  4. 自己管理の重要性: 前日の睡眠、朝食の摂取、飲酒の制限など、セルフケアの必要性。
  5. 緊急時の対応: 体調不良時の報告義務(我慢しないこと)と、応急処置の具体的な手順。

Q. 建設業向けの熱中症対策に関する助成金はありますか?

A. はい、国(厚生労働省)や自治体、関連団体が、熱中症対策を含む労働環境改善のための助成金や補助金制度を設けている場合があります。

例えば、厚生労働省では(年度によって名称や内容が変わる可能性がありますが)「既存特定建設工事作業場における熱中症対策のための設備改修に係る実証事業」といった関連事業を行うことがあります。また、中小企業向けには「業務改善助成金」などが熱中症対策設備の導入に活用できるケースもあります。

これらの制度は年度ごとに公募時期や要件が大きく異なるため、厚生労働省のウェブサイトや、最寄りの都道府県労働局、建設業労働災害防止協会の支部などで常に最新の情報を確認することをお勧めします。

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