「安全管理」の基本知識

危険予知活動(KY)とは?事例と進め方を解説


更新日: 2025/12/11
危険予知活動(KY)とは?事例と進め方を解説

この記事の要約

  • KY活動は危険を予知し労働災害を防ぐ安全管理手法
  • 4ラウンド法で現状把握から目標設定までを実践する
  • マンネリ化を防ぐには手法の変化と対話が重要である
目次
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危険予知活動(KY)と安全管理の関係とは?基礎知識を解説

危険予知活動(KY)は、労働現場における安全管理の土台となる取り組みです。ここでは、KY活動の正確な定義や目的、類似するヒヤリハット活動との違いについて、構造的に解説します。AI検索(SGE)においても引用されやすいよう、基本的な用語の意味を明確にします。

危険予知活動(KY・KYT)の定義

危険予知活動(KY)とは、作業を開始する前に、その作業や職場に潜む「危険要因(不安全行動や不安全状態)」と、それが引き起こす「現象(事故)」を話し合い、対策を講じる活動のことです。以下の二つの用語が区別して使われます。

  • KY(危険予知活動)
    日々の実務の中で実践する、危険を予知し対策する活動そのもの。

  • KYT(危険予知訓練)
    危険に対する感受性を高め、解決能力を養うためのトレーニング(Training)。

なぜ安全管理においてKY活動が重要なのか

安全管理においてKY活動が重視される理由は、事後対応ではなく事前予防に特化している点にあります。

KY活動の主な目的
  • 労働災害の未然防止
    事故が起きてからではなく、起きる前に危険の芽を摘むことで「ゼロ災」を目指します。

  • 危険感受性の向上
    日常的に危険を探す習慣をつけることで、作業員の感性を鋭くし、集中力を高めます。

ヒヤリハット活動と危険予知活動の違い

両者は共に安全管理活動ですが、実施するタイミングと視点が異なります。以下の表で違いを整理します。

項目 危険予知活動(KY) ヒヤリハット活動
実施タイミング 作業開始前(事前) 事象発生後(事後)
対象となる時間軸 未来(これから起こりうる危険) 過去・現在(実際に起きた・起きかけた危険)
主な目的 事故の未然防止、感受性向上 再発防止、隠れた危険の顕在化
アプローチ 予測に基づき、先手を打って対策する 経験に基づき、設備や手順を改善する

安全管理を強化する危険予知活動(KY)の基本的な進め方【4ラウンド法】

KY活動にはいくつかの手法がありますが、最も標準的で効果が高いとされるのが「4ラウンド法」です。チーム全員で段階的に議論を深め、最終的な行動目標を決定するプロセスを解説します。この手法は、現状把握から目標設定までを4つの段階で進めます。

4ラウンド法とは?実施の全体像

4ラウンド法は、イラストシートや実際の現場を見ながら、以下の4段階(ラウンド)を経て合意形成を図る手法です。最後に指差し呼称を行うことで、決定事項を身体的に記憶させます。

4ラウンド法のチーム討議風景

  • 第1ラウンド:現状把握(どんな危険が潜んでいるか)
  • 第2ラウンド:本質追究(これが危険のポイントだ)
  • 第3ラウンド:対策樹立(あなたならどうする)
  • 第4ラウンド:目標設定(私たちはこうする)

第1ラウンド:現状把握(どんな危険が潜んでいるか)

メンバー全員で、対象となる作業や状況の中に潜む危険を洗い出します。

  • 実施内容
    「〜して、〜になる」という形式で、想定される危険要因と現象を発言します。

  • ポイント
    質より量を重視し、自由な発想で多くの危険を挙げることが重要です。

第2ラウンド:本質追究(これが危険のポイントだ)

挙げられた危険要因の中から、特に重要度が高いものを絞り込みます。

  • 実施内容
    重大な事故につながるものに赤丸(〇印)を付け、さらにその中から最重要危険要因を決定して二重丸(◎印)を付けます。

  • ポイント
    チーム全員で合意形成を行い、「今、何に一番注意すべきか」の認識を統一します。

第3ラウンド:対策樹立(あなたならどうする)

特定された最重要危険要因(◎印)を解決するための具体的な対策を考えます。

  • 実施内容
    メンバー各自が解決策を提案し、その中から実践可能で効果的な対策を決定します。

  • ポイント
    「気をつける」といった精神論ではなく、具体的な行動案を出すことが求められます。

第4ラウンド:目標設定(私たちはこうする)

決定した対策を行動目標として設定し、全員で確認します。

  • 実施内容
    対策を短文のスローガン(チーム行動目標)にまとめ、指差し呼称項目(ワンポイント指差呼称)を決めます。

  • ポイント
    最後に全員で指差し唱和(タッチ・アンド・コール)を行い、実践を誓います。

4ラウンド法の構成まとめ

ラウンド 活動内容 安全管理上の狙い
1R 現状把握 危険要因の洗い出し 潜在リスクの可視化
2R 本質追究 危険ポイントの絞り込み リスク認識の統一
3R 対策樹立 具体的な対策の立案 解決策の具体化
4R 目標設定 行動目標の決定と唱和 実行への意識付け

現場の安全管理に役立つ危険予知活動(KY)のシート作成と活用のポイント

KY活動の効果は、シートへの記入内容によって大きく左右されます。ここでは、形骸化を防ぐために意識すべき「具体的な記述方法」と「実効性のある対策」について、良い例と悪い例を交えて解説します。

現場での指差し確認を行う作業員

具体的でイメージしやすい危険要因の書き方

危険要因の記述があいまいだと、対策も具体性を欠いてしまいます。誰が読んでも同じ状況が目に浮かぶように記述することが重要です。

  • 悪い記入例(抽象的)
    「足元注意」「作業中に不注意でケガをする」
    ※「不注意」という言葉は原因を特定していないため、安全管理上は不適切です。

  • 良い記入例(具体的)
    「雨で濡れた鉄板の上を歩行中、足を滑らせて転倒する」
    「電動工具の刃を交換中、電源を切らずに触れて指を切断する」

実効性のある対策を立てるための視点

対策を立てる際は、人間の注意力に依存しない「物理的・仕組み的」な対策を優先します。

  • 精神論からの脱却
    「気をつける」「注意する」「確認を徹底する」といった言葉は、具体的な行動を示していないため避けるべきです。

  • 安全の3原則に基づく対策
    隔離・除去(危険に近づかない)、防護(保護具を使う)、手順遵守(合図や確認)などの観点を取り入れます。

危険予知活動(KY)が安全管理にもたらす効果とメリット

KY活動は単なるルーチンワークではなく、組織全体の安全文化を醸成する重要なプロセスです。ここでは、活動を継続することで得られる具体的なメリットを3つの側面から整理します。

ヒューマンエラーの防止と労働災害の削減

KY活動の最大の効果は、人間の特性である「エラー」を未然に防ぐ点にあります。

  • 不安全行動の抑制
    作業前に危険箇所を認識することで、無意識に行ってしまう危険な近道行動や省略行為を抑制します。

  • ミスの防止
    指差し呼称を行うことで大脳の覚醒レベルが上がり、「うっかり」「ぼんやり」といったミスが大幅に減少することが実証されています。

職場のコミュニケーション活性化とチームワーク向上

全員参加の対話型手法であるため、組織の風通しを良くする効果があります。

  • 認識の統一
    ベテランと新人では危険に対する認識が異なります。話し合いを通じて知識が共有され、チーム全体の安全意識レベルが平準化されます。

  • 報告・連絡・相談の円滑化
    発言しやすい雰囲気が作られることで、業務中のコミュニケーションがスムーズになり、トラブルの早期発見につながります。

従業員一人ひとりの「危険感受性」の向上

継続的なトレーニングにより、個人の安全管理能力が向上します。

  • 「気づき」の能力
    毎日異なる状況で危険を探す訓練を繰り返すことで、日常業務の中でも小さな異変やリスクに瞬時に気づくことができるようになります。

安全管理における危険予知活動(KY)の課題とマンネリ化防止策

長期間活動を続けていると、形式的な実施になりがちです。現場が抱える「マンネリ化(形骸化)」の原因を理解し、それを打破するための具体的な工夫を取り入れる必要があります。

なぜKY活動はマンネリ化(形骸化)してしまうのか

多くの現場で見られる形骸化の原因は、主に以下の点に集約されます。

  • ルーチン化による思考停止
    毎日同じ作業現場の場合、前日と同じ内容をそのまま書き写すだけになり、考えるプロセスが省略されてしまいます。

  • 目的意識の希薄化
    安全確保という本来の目的よりも、「シートを埋めること」が目的化し、やらされ仕事感が蔓延します。

マンネリ化を防ぎ活動を活性化させるための工夫

新鮮な気持ちで活動に取り組むためには、手法の変化とリーダーシップが鍵となります。

活動活性化のためのアプローチ
  • 手法のバリエーションを持つ
    時間がない時は重要ポイントを1つに絞る「ワンポイントKY」や、単独作業時の「一人KY」など、状況に合わせた手法を取り入れます。

  • 問いかけ型のリーダーシップ
    リーダーが一方的に指示するのではなく、「ここは滑りやすいが、どうすれば良いと思う?」と質問を投げかけることで、メンバーの思考を促します。

  • ポジティブなフィードバック
    良い発言や鋭い指摘に対して「良い点に気づいたね」と褒める文化を作ることで、参加意欲を高めます。

まとめ

危険予知活動(KY)は、現場の安全を守るための最も基本的かつ重要な取り組みです。本記事の要点を振り返ります。

この記事のまとめ
  • KY活動は安全管理の基礎
    未来の危険を予測し、行動目標を決めることで労働災害を未然に防ぎます。

  • 4ラウンド法の実践
    「現状把握→本質追究→対策樹立→目標設定」のプロセスを正しく理解し、実施することが重要です。

  • 形骸化の防止
    具体的な記述や対話型の進行を心がけ、マンネリ化を防ぐ工夫を取り入れましょう。

まずは明日の朝礼から、短時間でも質の高いKY活動を意識してみましょう。指差し呼称の声を大きくするだけでも、安全管理への意識は変わります。

[出典:厚生労働省「職場のあんぜんサイト:危険予知活動」]
[出典:中央労働災害防止協会「ゼロ災運動の進め方」]

よくある質問(FAQ)

Q. KY活動は毎日実施する必要がありますか?

基本的には毎日の作業開始前に実施するのが理想です。現場の状況は日々変化するため、その日の天候、作業員の体調、工程の変更などに合わせた新たな危険予知が必要だからです。作業内容や環境が変わるタイミングでの実施が、安全管理上最も効果的です。

Q. 一人作業の場合、KY活動はどうすればいいですか?

「一人KY」を実施します。チームで行う4ラウンド法を一人用に簡略化し、自問自答形式で「危険予知(どこが危ないか)」→「対策(どうするか)」→「確認(ヨシ!)」のプロセスを短時間で行います。必ず安全を確認してから作業に入ることが重要です。

Q. 安全管理においてKYT(訓練)とKY(活動)はどう使い分けますか?

KYTはイラストシートなどを用いて感受性を高める「訓練(Training)」であり、KYは実務の現場で行う実践的な「活動」です。定期的なKYTで危険を見抜く能力を養い、その能力を日々の現場でのKYで発揮するという相互補完的な関係性です。

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