作業手順書の作成ポイントとは?安全確保との関係を解説

この記事の要約
- 手順書は安全管理の基盤であり、行動の標準化により事故を防ぐ
- 具体的な数値や図解を用いた5W1Hの記述が作成の鍵となる
- 現場の声を反映した定期的な見直しがルールの形骸化を防止する
- 目次
- 安全管理における作業手順書の重要性と役割
- なぜ作業手順書が安全確保に欠かせないのか
- 労働災害を未然に防ぐ安全管理の仕組み
- 安全管理を徹底するための作業手順書作成の5つのポイント
- 「誰が読んでもわかる」言葉の具体性と平易さ
- 危険箇所(リスク)の可視化と対策の明文化
- 写真や図解を活用した直感的な理解の促進
- 5W1Hを意識した動作の細分化
- 定期的な見直しとフィードバックの仕組み化
- 【実践】安全管理に強い手順書を作る5ステップ
- 安全管理の質を高める作業手順書とマニュアルの違い
- 【表で整理】手順書とマニュアルの使い分け
- 安全管理が形骸化する原因と読者が抱く不安への対策
- 手順書を作っても守られないのはなぜか
- 作成コストと現場の負担を最小限に抑えるコツ
- まとめ:作業手順書は安全管理の要
- よくある質問
- Q1. 手順書はどのくらいの細かさで書くべきですか?
- Q2. ベテラン作業員が手順書を守ってくれない場合はどうすればいいですか?
- Q3. 動画マニュアルがあれば、紙の手順書は不要ですか?
安全管理における作業手順書の重要性と役割
作業手順書は、現場における安全管理を形にするための最も基本的なツールです。単なる業務の流れを記した備忘録ではなく、労働災害を未然に防ぐための強力な「防護策」としての役割を担っています。
なぜ作業手順書が安全確保に欠かせないのか
作業手順書が存在しない、あるいは不十分な現場では、作業内容が個人の経験や勘に依存する「属人化」が起こります。属人化した現場では、その日の体調や思い込みによって不安全行動が誘発されやすく、重大な事故につながるリスクが極めて高い状態です。
作業手順書によって手順を標準化することには、以下のメリットがあります。
- 判断のばらつきを排除する
誰が作業しても同じ手順で、同じ安全確認を行うことで、属人的なミスを物理的に防ぎます。 - 教育の質を均一化する
新人教育において、熟練者が持つ「安全へのこだわり」を漏れなく伝えることができます。 - 異常の早期発見
「正しい手順」が決まっているからこそ、手順から外れた際の「異常」に誰もが気づけるようになります。
労働災害を未然に防ぐ安全管理の仕組み
労働災害の多くは、手順の省略や誤認、あるいは「これくらいなら大丈夫だろう」という慢心から発生します。これらを防ぐ安全管理の仕組みとして、手順書の中に「安全の急所」を埋め込むことが重要です。
具体的には、作業工程ごとに潜む「挟まれ」「巻き込まれ」「転落」などの具体的な危険源を特定し、その回避方法を手順の直前に記載します。これにより、作業者は常にリスクを意識した状態で行動できるようになります。

安全管理を徹底するための作業手順書作成の5つのポイント
実効性の高い手順書を作成するには、現場の作業者が「守りやすい」と感じる工夫が欠かせません。安全管理の質を飛躍的に向上させるための5つの作成ポイントを解説します。
「誰が読んでもわかる」言葉の具体性と平易さ
曖昧な表現は、現場での誤解を生み、事故の引き金となります。「適度に」「しっかり」「慎重に」といった言葉を排除し、客観的な数値や動作に置き換える必要があります。
- 具体的表現への言い換え例
- 「ネジをしっかり締める」 → 「トルクレンチを使い20N・mで締める」
- 「加熱しすぎないように」 → 「温度計が60度に達したらヒーターを切る」
- 「足元に注意する」 → 「点字ブロックの右側を歩く」
危険箇所(リスク)の可視化と対策の明文化
各作業ステップにおいて「何が危ないのか」と「どうすれば安全か」をセットで記載します。これをリスクアセスメントに基づいた記述と呼びます。
- 潜在的危険の明示
「このスイッチを操作する際、背後の可動部が動くため、指を挟む恐れがある」といった具体的なリスクを記します。 - 防護措置の強制
「作業開始前に必ず電源を遮断(ロックアウト)し、タグを掲示すること」など、事故を物理的に防ぐ行動を指示します。
写真や図解を活用した直感的な理解の促進
文字情報だけの長い手順書は、現場で読まれる確率が低くなります。視覚的に一瞬で理解できる構成は、安全管理において非常に有効です。
特に「正しい手元の位置」や「立ち入り禁止範囲」などは、写真の上に矢印や×印を合成して示すことで、言語の壁を越えた正確な伝達が可能になります。
5W1Hを意識した動作の細分化
手順を細分化し、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を明確にします。特に重要なのがWhy(なぜ、その手順が必要か)です。
「なぜ保護メガネをかけるのか(破片が飛んで失明する恐れがあるから)」という理由を納得させることで、作業者の手順遵守に対する安全意識が向上します。
定期的な見直しとフィードバックの仕組み化
作成した手順書を「完成品」と見なしてはいけません。現場の設備が変わったり、より安全な手法が見つかったりした場合には、速やかに更新する必要があります。
現場の作業員から「この手順は守りにくい」「実際にはこうしている」というフィードバックを吸い上げ、常に実態に即した最新の手順書を維持することが、形骸化を防ぐ最大の対策です。

【実践】安全管理に強い手順書を作る5ステップ
効率的かつ網羅的に手順書を作成するためのステップを紹介します。この流れに沿うことで、抜け漏れのない安全管理体制を構築できます。
- 手順書作成の標準ステップ
- 1. 作業の洗い出し:対象となる作業を細かな要素作業に分解する。
- 2. リスクの特定:分解した各作業に潜む危険(ケガのリスク)を書き出す。
- 3. 熟練者へのヒアリング:ベテランが密かに行っている安全のための工夫を抽出する。
- 4. 暫定版の作成:写真や図解、具体的な数値を盛り込んで下書きを作る。
- 5. 現場検証と修正:作成した手順書を見ながら新人に作業してもらい、不明点がないか確認する。
[出典:中央労働災害防止協会「安全作業手順書の作成と活用」]
安全管理の質を高める作業手順書とマニュアルの違い
マニュアルと手順書は混同されがちですが、安全管理を適切に行うためには、その役割を明確に使い分ける必要があります。
【表で整理】手順書とマニュアルの使い分け
以下の表は、それぞれの目的と特徴を比較したものです。
| 比較項目 | 作業手順書 | 業務マニュアル |
|---|---|---|
| 主な目的 | 特定作業の正確な遂行・安全確保 | 業務全体の流れ・判断基準の理解 |
| 対象範囲 | 一つの具体的な作業工程(ミクロ) | 組織全体の業務プロセス(マクロ) |
| 記載内容 | 具体的な動作、防具、注意点、禁止事項 | 業務の背景、目的、方針、全体フロー |
| 安全管理への寄与 | 事故・災害の直接的な防止 | 品質維持と組織運営の標準化 |
| 更新の頻度 | 高い(現場の変化に即応) | 低い(方針変更時に対応) |
[出典:厚生労働省「安全衛生マネジメントシステムに関する指針」]
安全管理が形骸化する原因と読者が抱く不安への対策
「手順書を作っても誰も見ない」「作成自体が負担」という不安は、多くの安全担当者が抱える課題です。これらの問題を解決するための具体的なアプローチを提示します。
手順書を作っても守られないのはなぜか
ルールが守られない背景には、必ず理由があります。
- 効率とのジレンマ
安全手順を守ると作業時間が倍かかるような設定では、現場は密かに手順を省略します。効率と安全を両立できる現実的な手順を現場と一緒に模索する必要があります。 - 心理的ハードルの高さ
文字が多すぎる手順書は、心理的に読む気を削ぎます。箇条書きやピクトグラム(視覚記号)を多用し、「読み物」ではなく「道具」としての使い勝手を高めてください。
作成コストと現場の負担を最小限に抑えるコツ
すべての作業手順書を一気に作ろうとすると、挫折の原因になります。
- 作成負担を軽減する3つの工夫
- 優先順位をつける:労働災害のリスクが高い作業(高所、重量物、回転体など)から着手する。
- 動画を活用する:まずは熟練者の作業を動画で撮り、それをキャプチャして手順書に活用する。
- テンプレート化:書式を統一し、作成者が「何を書けばいいか」迷わない仕組みを作る。
まとめ:作業手順書は安全管理の要
作業手順書の作成は、従業員の命を守るための「安全装置」を設計するプロセスそのものです。形式的な書類作成で終わらせるのではなく、現場の実態に即した「生きている文書」にすることが重要です。
- 具体性・視覚性・簡潔さを徹底し、新人が一人でも安全に作業できるレベルを目指す。
- 危険箇所(リスク)を明文化し、なぜその手順が必要なのかという根拠を伝える。
- 現場の声を反映し、PDCAを回して常に最新の情報へアップデートする。
これらを徹底することで、現場の安全管理レベルは確実に向上し、労働災害のない安心な職場環境を築くことができます。
よくある質問
Q1. 手順書はどのくらいの細かさで書くべきですか?
基本的には「その作業を初めて行う人が、他人に聞かずに安全に完結できるレベル」が目安です。ただし、情報量が多すぎると敬遠されるため、重要な安全上の急所以外は簡潔な箇条書きにまとめるバランスが重要です。
Q2. ベテラン作業員が手順書を守ってくれない場合はどうすればいいですか?
ベテラン作業員を「手順書の作成者」や「監修者」として巻き込むのが効果的です。自分のノウハウが後進の安全を守るために不可欠だと認識してもらうことで、自らルールを守る文化が生まれます。
Q3. 動画マニュアルがあれば、紙の手順書は不要ですか?
動画は動きのイメージを掴むには最適ですが、現場でパッと確認する際には紙やデジタル端末のテキストと静止画の方が視認性に優れています。導入教育は動画、現場でのクイック確認は手順書というように、併用することで安全管理の精度が高まります。
[出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく指針」]





