「入札」の基本知識

【2025年最新版】建設入札で押さえるべき制度変更点とは?


更新日: 2025/12/11
【2025年最新版】建設入札で押さえるべき制度変更点とは?

この記事の要約

  • 2025年は賃上げや働き方改革が入札評価の決定的要因になる
  • 安値受注から脱却しCCUS活用やDX対応が落札への必須条件
  • 制度変更を好機と捉え早期に対策することが受注拡大の鍵だ
『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに

2025年の建設入札を取り巻く環境と制度改正のポイント

建設業界は今、2024年問題の完全適用を経て、かつてない変革期にあります。2025年の入札制度においては、単なるコスト競争力だけでなく、企業の持続可能性や社会的責任が問われる構造へと変化しています。ここでは、なぜ今制度が変わるのかという背景と、具体的に何が変わるのかというポイントを整理し、最新トレンドを解説します。

建設業界の課題と入札制度への影響

現在、建設業界は深刻な人手不足資材価格の高騰、そして時間外労働の上限規制(2024年問題)という三重苦に直面しています。これらは個々の企業の努力だけでは解決しきれない構造的な課題です。そのため、発注機関である国や自治体は、入札制度を通じて業界全体の健全化を図ろうとしています。

具体的には、ダンピング(不当廉売)による「安売り」競争を排除し、適正な価格で受注できる環境を整える動きが加速しています。これは、適正な利益を確保しなければ、賃上げや労働環境の改善が実現できないためです。したがって、2025年の入札では、「いかに安く作るか」よりも「いかに質の高い施工体制を維持し、人を大切にしているか」が評価の主軸となります。

タブレットを活用して現場管理を行う建設技術者と作業員

2025年に注目すべき主な変更点一覧

2025年の制度変更は多岐にわたりますが、特に入札の合否に直結する重要な変更点は以下の通りです。これらの要素は相互に関連しており、複合的な対策が求められます。

表:2025年建設入札における主な制度変更点

変更カテゴリー 具体的な変更内容 入札への影響度
賃上げ対応 賃上げ実施企業の加点幅拡大
(給与総額や平均給与の引上げ表明)
極めて高い
(未対応の場合、競争で不利になる)
人材・キャリア CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用
(経審での加点、現場での利用義務化)
高い
(参加要件化する自治体も増加)
働き方改革 週休2日制工事の原則化・拡大
(4週8休の確保と経費補正)
高い
(技術提案や成績評定に直結)
DX・生産性 BIM/CIM原則適用の拡大
(3次元モデルの活用、ICT施工)
中~高
(規模の大きな工事から必須化)

[出典:国土交通省「入札契約適正化法等の改正について」]

総合評価落札方式における入札加点項目の変化

公共工事の入札において主流となっている「総合評価落札方式」では、価格以外の評価項目(技術点)が勝敗を大きく分けます。2025年は、改正品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)の趣旨がより色濃く反映され、技術提案の内容だけでなく、企業の基礎体力とも言える「経営姿勢」への評価ウェイトが高まっているのが特徴です。ここでは、特に重要視される3つの加点項目について、具体的な対策と合わせて詳述します。

賃上げ実施企業に対する評価の厳格化

政府が推進する「構造的な賃上げ」を実現するため、入札制度においても賃上げを実施した企業を優遇する措置が強化されています。これは単なる努力目標ではなく、落札を左右する決定的な要素になりつつあります。

  • 賃上げ表明枠の拡大と具体化
    従業員への給与引き上げ(例:大企業は3%、中小企業は1.5%以上の給与総額増加など)を表明した場合、技術評価点に加点されます。2025年以降は、この加点配分がさらに大きくなる傾向にあります。

  • 評価の厳格化とペナルティ
    「表明して落札したが、実際には賃上げしなかった」という事態を防ぐため、実績報告の確認が厳格化されています。もし未達成だった場合、次年度以降の入札で減点措置(ペナルティ)を受けるリスクがあります。そのため、経営層は「とりあえず表明する」のではなく、財務シミュレーションに基づいた実現可能な計画を立てる必要があります。

  • サプライチェーン全体への波及
    元請け企業だけでなく、一次下請け以下の企業に対する賃上げ要請や、労務費の適切な転嫁(見積もりへの反映)を行っているかも評価対象となります。「下請け叩き」をして利益を出している企業は、総合評価で点数が伸びない仕組みへと変わっています。

CCUS(建設キャリアアップシステム)導入と入札評価

CCUS(建設キャリアアップシステム)とは、技能者の保有資格や就業履歴をICカードを使って業界統一のルールで蓄積・見える化するシステムです。これまでは「導入推奨」レベルに留まる自治体もありましたが、2025年以降は事実上の「必須要件」へとシフトしています。

  • 経営事項審査(経審)での加点ウエイト増
    CCUSの導入状況(技能者の登録率やレベル判定結果)が、企業の客観的な評価点(P点)に大きく影響します。特に「レベル4(ゴールドカード)」などの熟練技能者を多く抱える企業は、技術力があるとみなされ高く評価されます。

  • 入札参加要件化(足切り)
    一部の自治体や大規模案件では、CCUSの事業者登録および現場での運用が入札参加資格(足切り条件)となるケースが増えています。未登録のままでは、入札説明書すら受け取れない可能性があるのです。

  • 現場運用の徹底
    「カードリーダーを設置しているか」「就業履歴が正しく蓄積されているか」もチェックされます。システムを導入しているだけでなく、現場で実際に稼働させているかどうかが問われるため、現場監督や職人への教育も重要な入札対策の一つと言えます。

防災・減災対策と環境配慮(GX)の視点

頻発する自然災害や脱炭素社会への対応も、入札における重要な評価軸です。

  • 防災対応力
    災害時の緊急出動体制や、BCP(事業継続計画)の策定有無が加点対象となります。地域への貢献度が具体的な点数として反映されます。

  • GX(グリーントランスフォーメーション)
    建設機械の低燃費化、再生材の利用、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の提案など、環境負荷低減への取り組みが技術提案として高く評価されます。

建設入札の効率化に欠かせないDXの推進

建設業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は、もはや「先進的な取り組み」ではなく「入札に参加するためのインフラ」となりつつあります。手続きのデジタル化や施工管理の高度化に対応できなければ、入札の土俵に上がることさえ難しくなるのが2025年の現実です。

建設入札におけるBIM/CIM活用とDX推進による効率化イメージ

入札手続きの完全電子化とデジタル対応

国土交通省直轄工事はすでに電子入札が基本ですが、地方自治体においても小規模工事を含めた完全電子化が急速に進んでいます。

  • 紙入札の廃止
    従来の紙による持参や郵送入札は廃止され、システム上での応札に一本化されています。

  • バックオフィスのDX
    インボイス制度への対応や電子契約の導入など、入札前後の事務処理もデジタル化が進んでいます。これにより、事務負担の軽減と透明性の確保が図られています。

  • セキュリティ対策
    電子入札システムの利用には、適切な認証環境やセキュリティ対策が必須となります。

BIM/CIM活用による入札競争力の強化

BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)とは、3次元モデルを活用して設計・施工・維持管理を一元化する手法です。

  • 原則適用の拡大
    国交省の直轄工事ではBIM/CIM活用が原則適用となっており、その流れは地方自治体や中規模工事にも波及しています。

  • 加点から要件へ
    これまではBIM/CIMを活用提案することで加点されていましたが、今後は「活用できること」が前提(参加要件)となり、その活用深度や効果が入札時の評価対象となります。

  • フロントローディング
    工事着手前に3次元上で施工計画を検討することで、手戻りの防止や安全性の向上が図れるため、発注者側からの期待値も高まっています。

従来の入札対策とこれからの対策の比較

入札制度の変更に伴い、受注するための戦略もアップデートが必要です。過去の成功体験に固執せず、新しいルールに適応した企業が生き残ります。ここでは、従来型の入札対策と、2025年以降に求められる新しい対策を比較し、意識変革のポイントを整理します。

価格競争から総合評価への完全シフト

かつては「最低制限価格を予測し、1円でも安く入札する」ことが最大の対策でした。しかし、現在は価格競争だけで勝つことはほぼ不可能です。

総合評価方式では、価格点と技術点の合計で落札者が決まります。特に賃上げやCCUSなどの政策的な加点項目は点数差がつきやすく、これを無視して価格だけで勝負しようとすると、結果的にダンピング判定を受けたり、採算割れのリスクを負うことになります。「適正価格で入札し、技術点(加点)で勝ち切る」戦略への転換が不可欠です。

従来の対策と2025年以降の対策の違い

以下の表は、従来の対策とこれから求められる対策を対比させたものです。自社の現状と照らし合わせ、不足している部分を確認してください。

表:従来の入札対策と2025年以降の入札対策の比較

項目 従来の入札対策(~2023年頃) これからの入札対策(2025年~)
価格戦略 ダンピングに近い安値受注
(薄利多売モデル)
適正利益を確保した見積もり
(賃上げ原資の確保)
人材評価 監理技術者などの資格保有者数のみ重視 CCUSレベルや賃上げ実績も重視
(若手育成・処遇改善)
技術提案 過去の流用や定型的な施工計画 ICT活用や週休2日確保の具体案
(i-Construction対応)
社内体制 入札担当者の個人的スキル・経験に依存 組織的なDX・情報共有
(データに基づく入札管理)
安全対策 事故ゼロの実績(結果評価) 現場の安全性向上技術の導入
(プロセス評価)

入札制度の変更に伴い生じる不安と対策

制度変更は企業にとって負担となる側面も否めません。特に中小建設業者からは、コスト増や事務負担に対する不安の声が多く聞かれます。しかし、これらの不安に対してはすでに解決策や支援制度が存在します。ここでは、よくある不安とその対策について解説します。

中小企業が抱えるコスト増への不安と対応策

「賃上げやDX機器の導入にお金がかかり、入札価格が高くなって落札できないのではないか」という懸念はもっともです。

コスト増に対する具体的な解決策
  • 予定価格の上昇
    発注者側も市場の実勢価格に合わせて予定価格(労務単価や資材単価)を引き上げています。適正な見積もりであれば、以前より高い価格でも落札可能です。

  • スライド条項の活用
    工期中に資材価格が急騰した場合、契約金額を変更できる「スライド条項」の適用要件が緩和されています。

  • 助成金の活用
    IT導入補助金や業務改善助成金など、DX投資や賃上げを支援する国の制度を積極的に活用することで、持ち出しコストを抑制できます。

複雑化する入札書類作成への負担軽減

評価項目が増えることで、申請書類や技術提案書の作成にかかる時間は増加傾向にあります。人手不足の中で事務負担が増えることは大きなリスクです。

  • 生成AIの活用
    文章作成や構成案の作成にChatGPTなどの生成AIを活用することで、技術提案書の作成時間を大幅に短縮できます(ただし、機密情報の取り扱いには注意が必要です)。

  • 入札支援サービスの利用
    入札情報の検索や、競合他社の落札傾向分析を自動化するツールを導入し、リサーチ業務を効率化します。

  • テンプレート化
    社内で評価の高かった提案書をデータベース化し、ノウハウを属人化させずに共有する仕組みを作ります。

まとめ

2025年の建設入札における制度変更は、大きく分けて「労働環境の改善(賃上げ・働き方改革)」「生産性向上(DX)」の2つが軸となっています。これらは一時的なトレンドではなく、建設業界が持続的に発展するための必須条件です。

制度変更を単なる「負担」や「規制強化」と捉えるのではなく、「会社を強くし、人材を惹きつけるための好機」と捉えることが重要です。加点項目への対応は、そのまま自社の経営力強化につながります。

落札率向上のための3つの重要アクション
  • 賃上げとCCUSへの対応を急ぐ
  • DXによる業務効率化を進める
  • 総合評価方式に特化した戦略へ転換する

これらを着実に実行することで、入札での落札率は確実に向上します。変化を恐れず、早めの対策を行うことが、2025年の建設市場で勝ち残る最短ルートと言えるでしょう。

入札に関するよくある質問

入札制度の変更に関して、建設事業者から寄せられる代表的な疑問に回答します。

Q. 小規模な建設会社でも制度変更の影響はありますか?

A. はい、規模に関わらず大きな影響があります。

大手や準大手だけでなく、地方自治体の小規模な発注案件でも総合評価落札方式の適用が進んでいます。特にCCUS(建設キャリアアップシステム)の登録や社会保険への加入は、規模を問わず必須条件(または重要な加点要素)になりつつあります。小規模だからこそ、加点で差をつけることが受注への近道となります。

Q. 2025年の変更に対応しないと入札に参加できなくなりますか?

A. 即座に参加資格を失うわけではありませんが、落札は極めて困難になります。

制度変更に対応していない場合、「参加資格はあるが、技術点が低すぎて勝負にならない」という状況に陥ります。特に賃上げ表明や週休2日対応などは加点幅が大きいため、これらに未対応だと価格競争で無理をするしかなくなり、経営を圧迫するリスクが高まります。

Q. 賃上げ表明を行わない場合、入札で減点されますか?

A. 発注機関によりますが、「加点が得られない」ことが最大のリスクです。

現状では「減点」措置をとる自治体と、「加点がない」だけの自治体の両方があります。しかし、競合他社の多くが加点を取りに来る中で、自社だけ加点がない状態は、実質的に「減点されている」のと同じくらい不利になります。また、表明したにも関わらず実行しなかった場合は、将来的な減点ペナルティを受ける可能性があるため注意が必要です。

『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに
NETIS
J-COMSIA信憑性確認
i-Construction
Pマーク
IMSM

株式会社ルクレは、建設業界のDX化を支援します