「電子納品」の基本知識

電子納品の提出期限・保存期間・再提出とは?注意点を解説


更新日: 2025/12/18
電子納品の提出期限・保存期間・再提出とは?注意点を解説

この記事の要約

  • 提出期限は原則として工事完成検査の前日または当日まで
  • 建設業法に基づき完成図書は引渡しから10年間の保存義務
  • 再提出回避には基準バージョンの確認とシステムチェックが必須
台帳を自動で作成できる『蔵衛門御用達DX』

建設現場事務所でパソコンを使用して電子納品データを確認する現場監督の様子

電子納品とは?制度の目的と対象となる工事

電子納品とは、調査・設計・工事などの各業務段階で発生する書類や図面、写真を電子データ化し、特定のルール(電子納品要領・基準)に従って整理して発注者に提出することを指します。従来の紙ベースでの納品から電子データへの移行は、業務効率化と長期的な維持管理の高度化を目的としています。本セクションでは、なぜ電子納品が求められているのか、その背景と対象範囲について解説します。

電子納品が導入された背景とメリット

公共工事において電子納品が推進される背景には、建設業界全体における生産性向上とコスト縮減、そして品質確保という大きな目的があります。国土交通省(CALS/EC)の取り組みをはじめ、電子納品を導入することで得られる具体的なメリットは以下の通りです。

電子納品の主な導入メリット
  • 省スペース化(紙媒体の保管場所削減)
    膨大な量の紙資料を保管するための物理的な倉庫や書庫が不要となり、保管コストを大幅に削減できます。

  • 検索性の向上(データ化による管理の効率化)
    必要な図面や書類をキーワード検索などで瞬時に探し出すことが可能になり、維持管理業務のスピードが向上します。

  • 資源の有効活用(ペーパーレス化)
    大量の紙を使用しないため、森林資源の保護や廃棄物の削減など、環境負荷の低減(SDGs)に貢献します。

  • 情報の共有・再利用の促進
    データ形式が標準化されることで、発注者や受注者、維持管理担当者間での情報共有がスムーズになり、将来の補修工事等でのデータ再利用が容易になります。

電子納品の対象となる主な工事・業務

電子納品の対象となるのは、主に国土交通省地方自治体特殊法人(NEXCO等)が発注する土木工事や設計業務です。

具体的には、直轄工事においては原則としてすべての工事・業務が対象となります。また、近年では都道府県や市町村発注の工事においても、一定規模以上の案件で電子納品が義務付けられるケースが増加しています。対象となるかどうかは、各発注機関の特記仕様書に明記されているため、入札時および契約時に必ず確認が必要です。適用される要領や基準案も発注者によって異なるため、それぞれのローカルルールを把握することが第一歩となります。

電子納品の提出期限はいつ?納品の流れとタイミング

電子納品を行う上で最も重要なのが「いつまでに提出すればよいか」というスケジュールの管理です。基本的には工事や業務の完了時に行いますが、提出期限に遅れると検査に影響を及ぼす可能性があります。ここでは、一般的な提出期限の考え方と、納品までの流れについて解説します。

建設現場でタブレット端末を用いて電子納品データの確認作業を行う作業員たち

工事完成から提出までの一般的なスケジュール

電子納品の正式な提出期限は、一般的に「工事完成検査(完了検査)」の前、もしくは検査当日までとされるケースが大半です。発注者によって異なる場合があるため、以下の標準的なフロー(手順)を参考に、余裕を持った計画を立ててください。

工事完成から納品までのステップ
  • STEP 1:工事完成(竣工)
    現場での作業がすべて終了した段階です。ここから最終的なデータの整理を加速させます。

  • STEP 2:電子成果品の作成・最終チェック
    完成図書や工事写真、施工計画書などのデータを整理し、電子納品データ(XMLファイル等)を作成します。この段階で、必ずチェックシステムを通し、エラーがないか確認します。

  • STEP 3:ドラフト版(案)の提出・確認
    正式提出の前に、発注者(監督職員)へ「ドラフト版」を提出し、内容の確認を受けます。このプロセスを経ることで、本番での差し戻しリスクを最小限に抑えます。

  • STEP 4:工事完成検査
    検査官による検査が行われます。検査時には、電子成果品が閲覧可能な状態(ノートPC等で表示できる状態)である必要があります。

  • STEP 5:正式納品(本提出)
    検査での指摘事項があればデータを修正し、最終的な成果品として納品媒体(CD-R、DVD-R等)を提出します。

多くの現場では、完成検査の際に電子データを用いて検査を行うため、検査日の1週間前までには事前確認用のデータを提出することが推奨されています。

事前協議と段階的な確認の重要性

電子納品において、「最後にまとめて作成する」という進め方は大きなリスクを伴います。膨大なデータを一度に処理するとミスが発生しやすく、修正に多大な時間を要するためです。そのため、以下の2つのタイミングでの確認が重要です。

  • 着手時協議(事前協議)
    工事開始直後に、使用する要領・基準の種類やバージョン、納品媒体の形式、ファイル命名規則などについて発注者と協議し、「事前協議チェックシート」等を用いて合意形成を行います。

  • 中間確認(段階確認)
    工事の進捗に合わせて、写真データや施工管理データを定期的に作成し、都度チェックシステムにかけるなどして不備がないか確認します。

早期に発注者との認識合わせを行うことで、手戻りを防ぎ、提出期限直前のトラブルを回避することができます。

電子納品の保存期間に関する法的義務とルール

作成した電子納品データや、その元となった書類は、提出して終わりではありません。法律や規定に基づき、一定期間保存する義務があります。ここでは、建設業法やe-文書法に基づく保存期間とルールについて解説します。

建設業法における資料の保存義務期間

建設業法では、建設業者が営業に関する図書を保存しなければならない期間が定められています。電子納品データもこれら「営業に関する図書」の一部とみなされる場合があり、適切な管理が必要です。主な保存期間は以下の表の通りです。

表:建設業法に基づく主な図書の保存期間

書類の種類 保存期間 根拠・備考
完成図書
(完成図、工事写真帳など、目的物の引き渡しに関する書類)
10年間 建設業法および施行規則第28条。
目的物の瑕疵担保責任期間等を考慮し、長期間の保存が義務付けられています。
発注者との協議記録
(打ち合わせ簿、指示書など)
5年間 建設業法および施行規則第28条。
その他、営業に関する図書として扱われます。
会計帳簿・契約書類 10年間 商法や会社法により、会計に関わる重要書類は10年の保存が原則です。

[出典:国土交通省 建設業法等の規定]

電子データと紙資料の保存期間の違い

近年は「e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)」や「電子帳簿保存法」により、紙で作成・受領した書類をスキャナ保存し、電子データとして原本保管することが認められるケースが増えています。

  • 原本性の確保
    電子データとして保存する場合、改ざん防止措置(タイムスタンプの付与など)や、見読性(ディスプレイ等で明瞭に確認できること)、検索性(日付や取引先で検索できること)の確保が必要です。

  • 紙の廃棄
    要件を満たした電子保存を行えば、紙の原本は廃棄可能な場合がありますが、契約書など一部の重要書類については、発注者との契約内容や社内規定により紙原本の保管が求められることもあります。

電子納品データそのものは最初からデジタルデータですが、バックアップを含め、保存義務期間中は確実にデータが読み出せる状態で管理する必要があります。

電子納品で再提出(修正)になるよくある原因

電子納品で最も避けたいのが、提出後の「再提出(差し戻し)」です。再提出になると、データの修正、再作成、再チェック、メディアへの書き込み、再提出という工程が発生し、工数を圧迫します。ここでは、よくあるミスの原因を解説します。

チェックシステムでのエラー検出

国土交通省や各自治体が提供している「電子納品チェックシステム」を通した際に、形式的なエラー(シンタックスエラー)が出ることが主な原因です。

  • ファイル名の命名規則違反
    全角文字の使用、文字数オーバー、区切り文字(アンダーバー等)の間違いなど、定められた命名ルールに従っていないケースです。

  • フォルダ階層の不備
    指定されたフォルダ構造(例:PLANフォルダの中に図面ファイルが入っていない等)になっていない、または余計なフォルダが含まれているケースです。

  • 禁則文字の使用
    ファイル名やフォルダ名に、システムで使用できない特殊文字(例:/ : * ? " < > |)やスペース、半角カタカナ、機種依存文字が含まれているとエラーになります。

  • 必須項目の入力漏れ
    管理ファイル(XMLファイル)において、工事名、図面名、作成日などの必須情報が入力されていないケースです。

目視確認で発覚する不備

チェックシステムでは「データの形式」はチェックできますが、「中身の正しさ」までは判断できません。そのため、発注者の目視確認で不備が指摘されることがあります。

  • PDFの画質不良や文字化け
    図面や書類をPDF化した際に、解像度が低すぎて文字が読めない、または変換ミスで文字化けしている場合です。

  • 図面の縮尺間違い
    CADデータの縮尺設定が誤っており、印刷時や計測時に正しい寸法にならないケースです。

  • 写真と説明文の不一致
    工事写真において、写真データと付随する黒板情報や管理項目の内容が食い違っている場合です。

電子納品をスムーズに進めるための注意点と準備

電子納品を失敗なく、効率的に進めるためには、事前の準備と適切なツールの活用が不可欠です。ここでは、作業を円滑に進めるための具体的な注意点と準備について解説します。

適用される要領・基準(ガイドライン)のバージョン確認

電子納品を行う際は、「どの要領・基準案に基づいてデータを作成するか」を特定することが最も重要です。国土交通省や各自治体の基準は数年ごとに改定されており、契約した時期(発注年度)によって適用されるバージョンが異なります。

古いバージョンの基準で作成してしまうと、すべてのデータを修正し直すことになります。必ず工事着手時の事前協議で、発注担当者と適用基準(例:「工事完成図書の電子納品等要領 令和○年○月版」など)を書面で確認してください。

ウイルスチェックとセキュリティ対策の徹底

納品する電子媒体(CD-R、DVD-R、HDDなど)を通じて、発注者のサーバーにウイルスを感染させることは絶対にあってはなりません。

  • 最新の定義ファイルでのチェック
    納品媒体を作成する直前に、最新のウイルス対策ソフトで全ファイルのスキャンを行います。

  • ウイルスチェック結果の提出
    多くの発注機関では、電子納品データと共に「ウイルスチェック実施証明書」や、チェックソフトのログ画面のコピーの提出を求めています。

電子納品支援ソフトの活用と選び方

電子納品のフォルダ構成やXMLファイルの作成を手動(エクスプローラー等)で行うことは非常に複雑で、ミスが多発するため現実的ではありません。一般的には専用の「電子納品支援ソフト」を使用します。自社に合ったソフトを選ぶ際のポイントは以下の通りです。

表:電子納品支援ソフト選びの比較検討ポイント

検討項目 内容・チェックポイント
対応基準の広さ 国土交通省だけでなく、受注予定の自治体(都道府県・市町村)やNEXCO、農林水産省などの独自基準に対応しているか。
操作性 直感的に操作できるか。写真管理ソフトやCADソフトとの連携機能があるか(データの自動取り込み等)。
サポート体制 頻繁な基準改定に合わせて迅速にアップデートされるか。操作に関する問い合わせ窓口やマニュアルが充実しているか。
価格体系 買い切り型かサブスクリプション(月額・年額)か。インストール可能な台数(ライセンス数)は自社の規模に合っているか。

まとめ

本記事では、電子納品の提出期限、保存期間、再提出の原因、そして実施時の注意点について解説しました。

電子納品は、単にデータを提出するだけでなく、将来的な社会資本の維持管理や情報の利活用を目的とした重要な業務です。適切なガイドラインのバージョンを早期に確認し、期限に余裕を持って段階的に準備を進めることで、再提出のリスクを減らし、円滑な納品が可能になります。また、建設業法等のルールに基づき、納品後も適切にデータを保存・管理することが求められます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 電子納品の提出期限に遅れるとどうなりますか?

提出期限(一般的には完成検査日またはその直前)に遅れると、検査が予定通り実施できず、工事の引き渡しが遅れる可能性があります。また、工期の遅延として扱われる場合や、工事成績評定(工事の点数)の減点対象となり、次回の入札参加資格等に悪影響を及ぼすリスクがあります。

Q2. 保存期間を過ぎた電子データはどうすればよいですか?

法律で定められた保存期間(完成図書なら10年など)を経過したデータは、保存義務がなくなります。しかし、データには重要な機密情報や個人情報が含まれている場合が多いため、廃棄する際は単に削除するだけでなく、データ消去ソフトを使用するなどして復元不可能な状態で適切に廃棄する必要があります。

Q3. 電子納品は自社で行うべきですか?外注すべきですか?

社内に電子納品に詳しい担当者がおり、専用ソフトも導入済みの場合は自社で行うことでコストを抑え、ノウハウを蓄積できます。一方、不慣れな場合や、繁忙期でリソースが不足している場合は、専門の代行業者に外注する方が、結果的にコストと時間を節約でき、品質も担保されるケースがあります。自社の状況に合わせて判断することをおすすめします。

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