「電子納品」の基本知識

電子納品をチームで進めるには?運用ルール構築法を解説


更新日: 2026/01/15
電子納品をチームで進めるには?運用ルール構築法を解説

この記事の要約

  • チームでの電子納品を成功させるための具体的なルール構築法を解説
  • 命名規則やフォルダ構成の標準化により属人化とミスを徹底排除
  • 効率的な役割分担とダブルチェック体制で品質を担保する手順を紹介
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チームでの電子納品が難航する原因とルール化の重要性

電子納品は、単なるデータの提出作業ではなく、工事の全工程をデジタル記録として集約する高度な事務作業です。チームで取り組む際、明確な基準がないと作業の重複や形式エラーが頻発し、最終的な検査で多大な手戻りが発生するリスクがあります。

個人のスキルに依存した「属人化」のリスク

電子納品の実務には、CADソフトの操作、要領・基準(ガイドライン)の読解、管理ファイル(XML)の作成スキルなど、専門的な知識が求められます。そのため、特定の担当者に作業が集中し、他のメンバーが内容を把握できない「属人化」が起こりやすい傾向にあります。

  • 情報共有の欠如による停滞
    担当者が不在の際、データの保存場所や最新の修正版がどれであるかが判別できず、チーム全体の作業がストップしてしまうリスクがあります。

  • 成果物の品質のバラつき
    各メンバーが「自分のやり方」でデータを作成すると、図面のレイヤー設定や写真の属性情報に不整合が生じ、最終的な統合段階で膨大な修正時間が必要となります。

納品直前の作業負担増大を防ぐために

多くの現場では、工事の最終段階でまとめて電子納品作業を行う傾向がありますが、これは最もリスクの高い運用です。日頃からデータ整理を共通ルール化することで、工期末の負担を劇的に軽減できます。

早期ルール化による主なメリット

・不備の早期発見による手戻りコストの削減
・作業の平準化による特定の時期・個人への負荷集中回避
・発注者への迅速なデータ提出による信頼性向上
・後任者や別部署へのスムーズな技術継承

日々の業務の中で「発生したデータはその日のうちにルールに従って格納する」仕組みを作ることが、チーム運営の鍵となります。

建設コンサルタントや工事会社のオフィスで、チームメンバーが電子納品のデータ管理ルールについて議論している様子

電子納品を効率化するための共通運用ルールの作り方

効率的なチーム運営のためには、抽象的な指示ではなく、誰が見ても一意に解釈できる「具体的かつ客観的なルール」を明文化する必要があります。ここでは、特に重要となる3つのルール構築手順を解説します。

ファイル命名規則とフォルダ構造の統一

各自が自由な名前でファイルを保存すると、最終的な管理ファイル作成(XML変換)時にエラーの原因となります。以下の表のように、管理しやすい命名ルールと構造をあらかじめ定義しておくことが重要です。

表:電子納品データ管理の標準ルール案

管理項目 ルールの内容 具体的な記述例
ファイル命名規則 半角英数字のみ、日付+内容をアンダーバーで繋ぐ 20260115_zumen01.dwg
フォルダ階層構造 工事写真、図面、書類の3階層を基本とする /01_Photo, /02_Drawing, /03_Document
禁止事項 全角文字、機種依存文字、スペースの使用を禁止 「(株)」「①」などは使用不可
拡張子の統一 指定された形式(P21, SFC, PDF/A等)のみを使用 変換前の元データは別フォルダで管理

使用ソフトとバージョンのすり合わせ

複数のメンバーで作業する場合、使用ツールの互換性が問題となります。特にCADデータのレイアウト崩れやPDFのフォント埋め込みエラーは、バージョンの違いから発生することが多いため、以下の環境を統一します。

  • CADソフトのバージョンと出力設定
    納品形式であるSXF(P21/SFC)へ変換する際、文字化けや線種の欠落を防ぐため、チーム内で使用するソフトと変換用設定ファイル(テンプレート)を共有します。

  • PDF作成ツールの標準化
    発注者から指定されることが多い「PDF/A(長期保存用形式)」に対応したソフトを使用し、解像度やしおり設定の基準を統一します。

進捗状況の可視化と共有方法

「誰がどの作業を終えたか」をリアルタイムで把握することは、チームのボトルネックを解消するために不可欠です。

進捗管理の具体的手法

・共有ストレージ(クラウド等)を活用した最新データの一元管理
・チェックリスト形式の進捗管理表(共有スプレッドシート等)の運用
・週次または工程ごとの「データ整理完了」のセルフチェック報告

[出典:国土交通省 電子納品に関する要領・基準]

電子納品のチーム運用で定めるべき5つのチェックポイント

納品物の品質を担保し、検査時の手戻りを防ぐためにチーム内で徹底すべき項目を解説します。これらをルーチン化することで、ミスは最小限に抑えられます。

図面・書類のデジタル化基準

発注者が求める基準(要領・基準)に適合しているか、以下の項目をチーム内標準として設定します。

  • CADデータのレイヤー構造
    各CAD製図基準に基づき、正しいレイヤー名と色・線種が適用されているかを確認します。

  • PDFの検索性担保
    原則として文字検索が可能な「テキスト埋め込み型PDF」を作成し、スキャンデータの場合はOCR処理を行うルールを徹底します。

管理項目の入力担当の明確化

電子納品の核となる管理ファイル(XML)には、多くの属性情報(メタデータ)の入力が必要です。

役割分担の例

・現場担当者:工事写真の撮影日、工種、位置情報の入力
・設計・図面担当者:図面番号、図面名称、縮尺の入力
・事務・管理担当者:工事基本情報(工期、発注者名など)の入力と最終統合

複数人での最終チェック・エラー修正体制

一人でチェックを行うと見落としが発生しやすいため、相互チェック(ダブルチェック)の体制を整えます。

表:電子納品チーム内チェックリスト

チェック項目 内容の詳細 担当者
リンク切れ確認 XMLファイルから各データへ正しくリンクされているか チームリーダー
要領適合性 適用された最新の要領・基準に準拠しているか 担当者A(相互)
ファイル形式 指定の拡張子、解像度、カラーモードになっているか 担当者B(相互)
メディア検査 納品媒体(CD-R/DVD-R等)にウィルスが混入していないか 全員

スケジュール管理とマイルストーンの設定

工事完了日にいきなり納品するのではなく、中間目標(マイルストーン)を設けて段階的に進めます。

1.準備期:工事着手後1ヶ月以内にフォルダ構造と命名ルールを確定させる
2.実行期:月末ごとにその月の写真・書類データをルールに従って整理・格納する
3.仮納品期:工事完了の2週間前に「電子納品チェックシステム」による仮検査を行う

セキュリティとデータのバックアップ体制

チームで大容量データを扱う際、データの紛失や漏洩は致命的な問題となります。

  • バックアップの自動化
    物理的なHDD故障に備え、クラウドストレージや社内サーバーへ日次で自動バックアップを取る体制を構築します。

  • アクセス権限の管理
    誤消去を防ぐため、最終納品フォルダへの「書き込み権限」を限定するなど、管理体制を明確にします。

工事現場で現場監督がタブレットを活用して整理された電子納品用データを確認している様子

読者が抱く電子納品チーム運用の不安と解消法

運用体制を変更する際には、現場から様々な不安の声が上がります。それらに対し、客観的な事実に基づいた解消法を提示します。

「ITが苦手なメンバーがいても大丈夫?」

全てのメンバーが電子納品のエキスパートになる必要はありません。チーム全体でスキルを補完し合う体制を作ることが重要です。

  • 作業の単純化(タスク分割)
    「ITが苦手なメンバーは、撮影した写真をルール通りの名前のフォルダにドラッグ&ドロップするまで」を担当し、XMLの作成やCAD変換は得意なメンバーがまとめて行うといった分業体制を敷きます。

  • マニュアルの視覚化
    文字主体の厚いマニュアルではなく、操作画面のキャプチャに矢印を書き込んだ「クイックガイド」を作成し、誰でも直感的に作業できるようにします。

「外注(協力会社)との連携はどうすべき?」

自社のルールを協力会社にも事前に共有し、納品物のフォーマットを揃えてもらうことが、取りまとめの工数を削減する唯一の方法です。

協力会社への指示ポイント

・契約段階で「自社の電子納品運用ルール」を仕様書の一部として渡す
・写真や図面の提出時に、指定の命名規則が守られているか初回に厳格にチェックする
・無料のチェックソフトを活用し、エラーがない状態で提出するよう義務付ける

[出典:一般財団法人 日本建設情報総合センター(JACIC) 電子納品支援]

自社で行うか外注するか?電子納品の運用体制比較

チーム内での運用(内製化)が困難な場合や、大規模プロジェクトでリソースが不足している場合は、外部委託も有力な選択肢となります。

社内内製化と外部委託のメリット・デメリット比較

自社の状況に合わせて、最適な運用体制を選択してください。

表:電子納品体制の比較表

比較項目 社内でのチーム運用(内製化) 外部委託(アウトソーシング)
コスト 固定の人件費として処理 プロジェクト単位の外注費が発生
ノウハウ 社内に知見が蓄積され、次回に活かせる 社内に知識が残りにくい
柔軟性 現場の急な変更や追加に即座に対応可能 依頼・確認のやり取りに時間がかかる
品質 メンバーの習熟度に依存する 専門業者による安定した高品質
セキュリティ 社外へのデータ持ち出しが不要 秘密保持契約(NDA)の締結が必須

内製化を目指す場合は、まず「標準的な小規模工事」でルールをテスト運用し、徐々に適用範囲を広げていくスモールスタートが推奨されます。

まとめ

本記事では、電子納品をチームで円滑に進めるための運用ルール構築法について解説しました。
電子納品の成功には、個人のスキルに頼らない「標準化」と、作業を後回しにしない「仕組み作り」が不可欠です。

命名規則の統一、役割分担の明確化、そして相互チェック体制の構築を事前に行うことで、納期直前の混乱を避け、高品質な成果物を納めることが可能になります。まずは、チーム内で現在の作業工程を棚卸しし、共通のフォルダ名やファイル名のルールを決めるところから始めてみてください。組織的な対応こそが、電子納品という複雑な実務を攻略するための最も確実な道です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 電子納品のルールは毎年変わりますか?

発注者(国交省や各自治体)によって、数年おきに要領・基準の改訂が行われます。適用される要領の年度は、通常「契約時」の基準となります。作業開始前に、必ず発注図書や最新の公式サイトで最新版を確認してください。

Q2. チームで共有するストレージは何がおすすめですか?

セキュリティレベルが高い法人向けのクラウドストレージ(Google Drive, OneDrive, Dropbox Businessなど)が一般的です。ただし、公共工事等で発注者指定の情報共有システム(ASP)がある場合は、そのシステム内での運用が原則となります。

Q3. チェックソフトは何を使えばいいですか?

各発注機関が配布している「電子納品チェックシステム(無料)」を必ず使用してください。さらに、市販の「電子納品支援ソフト」を導入すると、エラー箇所の自動特定やXML作成が効率化されるため、チーム運用には非常に有効です。

[出典:国土交通省 デジタル化・電子納品推進ページ]

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