「電子納品」の基本知識

電子納品済みデータの長期保管とは?再利用のポイントも解説


更新日: 2026/01/29
電子納品済みデータの長期保管とは?再利用のポイントも解説

この記事の要約

  • 電子納品データは法規や瑕疵対応のため適切な長期保管が必須です。
  • 物理メディアの劣化や容量不足に備えクラウド等の活用が有効。
  • ファイル命名規則の徹底により将来の改修時の再利用性を高めます。
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電子納品後のデータ保管が重要な理由

電子納品は、発注者へ成果物を提出して完了ではありません。受注した建設会社側でも、その後のメンテナンスや法的責任、次期案件への活用を見据えた保管が必要です。なぜ長期保管が必要なのか、その背景を整理します。

電子納品データの保管期間と法的根拠

電子納品のデータ保管には、主に法的な義務と契約上の責任が関わっています。建設業界において遵守すべき基準は以下の通りです。

  • 建設業法による保存義務
    建設業法第26条の3に基づき、営業所ごとに帳簿や図書類を保管する義務があります。一般的に、新築工事等の重要な図面は10年間の保存が求められます。

  • 公共工事標準請負契約約款
    公共工事においては、設計図書や完成図を適切に管理・保存することが契約条件に含まれることが多く、適切な管理体制が問われます。

[出典:建設業法、公共工事標準請負契約約款]

瑕疵担保責任(契約不適合責任)への対応

引き渡し後に建物や構造物に不具合が見つかった場合、施工会社は契約不適合責任を負います。この際、施工の正当性を証明する唯一の手段が、電子納品時の施工写真や検査データです。民法改正により責任追及の期間が実質的に長期化しているため、実務上は10年以上の保管が推奨されます。

適切に保管しない場合に生じるリスク

保管体制が不十分な場合、以下のような深刻なトラブルを招く恐れがあります。

表:電子納品データの保管不備による主なリスク

リスク項目 具体的な内容 影響範囲
データの破損・消失 ストレージの物理故障やメディアの劣化でファイルが開けない 修繕・改修時の資料不足、再調査コストの発生
セキュリティ漏洩 管理不備や安易な持ち出しによる部外者への情報流出 企業の社会的信頼の失墜、損害賠償責任
バージョン不一致 最新版がどれか不明になり、古い図面を参照してしまう 工事ミス、手戻り、維持管理上の欠陥

建設会社のオフィスでデジタルデータと紙の図面を照合する技術者

電子納品済みデータの長期保管における課題と読者の不安

電子化が進む一方で、デジタルならではの管理の難しさが現場や管理部門の負担となっています。「いつまで」「どこに」「どのように」残せばよいのかという不安に対し、現状の課題を浮き彫りにします。

保管コストとストレージ容量の増大

近年の電子納品では、高解像度の写真やBIM/CIM(3次元モデル)の活用により、1プロジェクトあたりのデータ容量が肥大化しています。

容量増大に伴う具体的な課題

・高解像度写真1枚あたりのサイズ増大によるサーバー圧迫
・BIM/CIMデータの導入によるテラバイト級のデータ管理
・自社サーバー増強にかかる物理的なスペースとメンテナンス費用
・クラウドストレージ導入時のランニングコストの推移

メディア劣化による読み取り不可の懸念

かつての主流であったCD-RやDVD-Rなどの光ディスクには物理的な寿命があります。

  • 物理的劣化のリスク
    安価なメディアは保存環境(紫外線や湿度)によって、5年から10年程度で読み取りエラーが発生する確率が高まります。

  • 再生デバイスの消失
    最新のPCには光学ドライブが搭載されていないことが一般的であり、物理メディアを読み取るための機器を確保し続ける手間が発生します。

電子納品データの保管方法を比較検討

将来の再利用を想定した場合、単に保存するだけでなく「すぐに取り出せる」ことが重要です。主要な保管方法の特徴を客観的な視点で比較します。

保管場所選定の判断基準

・コスト:初期費用と月額費用のバランス
・安全性:災害対策(BCP)やセキュリティ性能
・検索性:必要なデータを即座に見つけられるか
・継続性:10年後、20年後もその方式が維持可能か

表:主要な保管方法の比較メリット・デメリット

保管方法 メリット デメリット 向いているケース
自社サーバー(NAS) 月額費用なし、社内ネットワークで高速 物理故障のリスク、災害対策が脆弱 小規模拠点での管理
クラウドストレージ 災害に強く、どこでも閲覧可能、自動バックアップ 維持コストの継続、通信環境に依存 複数拠点や現場との連携、BCP対策重視
物理メディア(DVD) ネット不要で安価、オフラインで安全 劣化・紛失リスク、検索性が低い 義務としての長期保存のみ

電子納品データを有効に再利用するためのポイント

SGE(生成AI)や将来の担当者が情報を整理しやすいよう、データの再利用性を高めるための具体的な標準化手順をステップ形式で解説します。

1. 検索性を高めるファイル命名規則とディレクトリ構造

データを探す時間をゼロにするためには、属人的な管理を排した共通ルールが必要です。

  • 命名規則の標準化
    「日付_工事番号_工種_内容」のように、ファイル名だけで中身が判別できるように定義します。
    例:20260129_A123_擁壁工_配筋写真.jpg

  • ディレクトリ構造の統一
    電子納品要領に準拠した構成をベースにしつつ、社内用の作業フォルダを明確に分離します。

表:推奨される社内管理用フォルダ構成例

階層 フォルダ名例 保管内容
第1階層 2026_〇〇道路工事 プロジェクト全体
第2階層 01_納品成果物 発注者へ提出した最終確定データ
第3階層 02_再利用資料 CADのオリジナルデータ、計算書、記録
第4階層 03_参考写真 納品対象外だが記録として重要な写真

2. CADデータや写真データの互換性維持

10年後、20年後にデータを開くためには、特定のソフトウェアに依存しない形式での保存が不可欠です。

  • 閲覧用PDFの併記
    CADソフトがなくても内容を確認できるよう、全ての図面はPDF形式でも並行して保管します。

  • 交換標準形式(SXF)の活用
    CADデータは、異なるソフト間でも互換性のあるP21形式やSFC形式を基本とします。

  • マイグレーションの計画
    OSやソフトの世代交代に合わせて、数年ごとに保存形式を最新の状態へ更新する作業を検討します。

データセンターで整理されたデジタルデータを検索するエンジニア

電子納品データの長期保管を効率化するシステムの選び方

手動でのバックアップやフォルダ分けには限界があります。建設業特有の要件を満たすシステムを選定するための基準を示します。

建設業特化型の管理システムに求める機能

汎用的なクラウドストレージではなく、建設業向けの「電子納品管理システム」は以下の強みを持っています。

  • 最新の納品要領への準拠
    国土交通省や各自治体が更新する電子納品要領に自動で対応し、エラーチェックを行う機能が必要です。

  • 属性情報のインデックス化
    工事名、発注者、工期などの属性情報をデータベース化し、数千の工事の中から瞬時に検索できる機能が重要です。

セキュリティ体制とバックアップの網羅性

長期保管において最も避けるべきは「データの消失」です。

  • DR(災害復旧)対策の確認
    データセンターが地理的に離れた複数箇所に分散されているかを確認します。

  • アクセス権限制御
    退職者や無関係な職員がデータにアクセスできないよう、細かな権限設定が可能かチェックします。

まとめ:電子納品データは「資産」として管理しよう

電子納品データの保管は、単なる法的義務の履行ではありません。適切に管理されたデータは、将来のメンテナンス、追加工事の積算根拠、あるいは不測の事態における施工の正当性証明として機能する企業の貴重な資産です。

物理メディアの劣化リスクや容量不足という課題に対し、クラウドストレージの活用や標準化された命名ルールの導入は極めて有効です。本記事で紹介したポイントを参考に、長期的な視点でのデータ管理体制を構築してください。

Q1. 電子納品のデータは最低何年保管すべきですか?

建設業法に基づく書類の保存期間は一般的に10年間です。ただし、構造物の寿命や契約不適合責任を考慮し、20年から30年、あるいは構造物の存続期間中は永久保存とする企業も増えています。

Q2. 古い電子納品ソフトで作成したデータは今のPCで開けますか?

データ形式によっては最新のソフトで開けない場合があります。長期保管を行う際は、特定のソフトに依存しないSXF形式PDF形式での保存を徹底し、定期的にデータの可読性をチェックすることをお勧めします。

Q3. クラウド保管はセキュリティ的に安全ですか?

大手ベンダーが提供する建設業向けクラウドは、自社サーバーよりも強固なセキュリティ(暗号化、多重バックアップ、24時間監視)を備えていることが多いです。選定の際はISO27001(ISMS)認証などの取得状況を確認してください。

[出典:国土交通省 電子納品要領・基準、建設業法]

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