「CCUS」の基本知識

CCUSと建退共の連携は?併用メリットもわかりやすく解説


更新日: 2025/11/27
CCUSと建退共の連携は?併用メリットもわかりやすく解説

この記事の要約

  • CCUS連携と建退共の電子申請で現場事務を大幅に効率化
  • 就業履歴データ活用で退職金掛金の申請漏れを防ぎ適正化
  • 従来の証紙管理や貼付作業を廃止しコストと手間を削減
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CCUS(建設キャリアアップシステム)と建退共の基本と関係性

建設業界のDX化に伴い、CCUS(建設キャリアアップシステム)建退共(建設業退職金共済制度)のデータ連携が急速に進んでいます。これらを連携させることで、従来の手作業による「証紙管理」が不要になり、電子申請による大幅な業務効率化が可能になります。ここでは、それぞれの制度の定義と、連携が可能になった背景について解説します。

CCUSと建退共それぞれの役割

両制度は目的が異なりますが、連携することで相互補完的な役割を果たします。それぞれの定義は以下の通りです。

制度の定義
  • CCUS(建設キャリアアップシステム)
    技能者の資格、社会保険加入状況、現場での就業履歴を業界統一のルールで登録・蓄積するシステムです。技能者の能力評価や処遇改善、現場管理の効率化を目的としています。

  • 建退共(建設業退職金共済制度)
    建設現場で働く労働者のために国が設けた退職金制度です。現場を移動しても退職金が通算される仕組みで、従来は「証紙」を用いて積み立てを行っていました。

これまでは完全に別のシステムとして管理されていましたが、デジタル化の流れにより、CCUSに蓄積された客観的な就業履歴データを建退共の「掛金実績」として活用(連携)することが可能になりました。

CCUSを活用した「建退共の電子申請方式」とは

電子申請方式とは、従来の物理的な証紙を使わず、データ上で退職金の積み立てを行う新しい仕組みです。CCUSに登録された就業実績に基づき、退職金ポイント(掛金)を充当します。

この仕組みにより、元請事業者は「証紙を買う・配る」手間から解放され、下請事業者は「証紙をもらう・貼る」手間がなくなります。データはシステム間で連携されるため、人為的なミスも大幅に削減されます。

従来の証紙貼付方式との違い

最大の違いは「現物の証紙」を扱うか、「デジタルデータ」で処理するかという点です。電子申請方式では、物理的な作業が一切不要になります。

以下の表に、従来方式と電子申請方式の主な違いを整理しました。

表:証紙貼付方式と電子申請方式の比較

項目 証紙貼付方式(従来) 電子申請方式(CCUS連携)
証紙の購入 金融機関の窓口で購入 不要(口座振替で納付)
日々の管理 証紙の在庫管理・配布 データ管理(在庫管理不要)
掛金の納付方法 手帳に物理的に貼付・消印 システム上で自動引落し
実績の確認 共済手帳を目視で確認 WEBサイト(マイページ)で確認

[出典:建設業退職金共済事業本部「電子申請方式について」]

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CCUSと建退共を連携する3つの大きなメリット

CCUSと建退共を連携させ、電子申請方式へ切り替えることには、元請事業者、下請事業者、そして技能者の三方にとって明確なメリットが存在します。事務作業の効率化だけでなく、コンプライアンス遵守の観点からも推奨されます。ここでは主要な3つのメリットについて詳述します。

メリット1:事務作業の大幅な効率化

最も大きなメリットは、事務負担の軽減です。物理的な証紙を扱わないため、以下の業務プロセスそのものが消滅または簡素化されます。

削減される主な事務作業
  • 現物管理リスクの解消
    証紙の紛失、盗難、あるいは貼り忘れや貼り間違いといったヒューマンエラーが物理的になくなります。金券としての管理責任から解放されます。

  • 配布・貼付の手間削減
    元請が下請けに証紙を配布したり、事務担当者が手帳に一枚ずつ切手のように貼る作業が不要になります。

  • 集計作業の自動化
    就業日数を手作業で集計する必要がなく、CCUSのデータを基に自動計算されるため、月末の事務処理時間が劇的に短縮されます。

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メリット2:掛金充当の適正化と漏れの防止

CCUSのカードリーダーや顔認証による入退場記録は、改ざんの難しい客観的なデータです。これを基に掛金を算出するため、適正かつ透明性の高い運用が可能になります。

  • 申請漏れの防止
    「証紙をもらい忘れた」「貼り忘れた」という事態を防げます。データがある限り、確実に申請の対象となります。

  • 信頼性の向上
    技能者にとっては、「自分が働いた分が確実に退職金として積み立てられている」という安心感につながり、事業者への信頼感が増します。これは人材定着にも寄与する要素です。

メリット3:掛金納付状況の見える化

電子化されることで、いつでもWEB上で状況を確認できるようになります。これは従来の「手帳を見ないとわからない」状態からの大きな進歩です。

  • リアルタイム確認
    技能者はスマートフォンやPCから、自分専用のサイト(建退共マイページ等)で、いつ、どの現場で、何日分が積み立てられたかを確認できます。

  • モチベーション向上
    将来の退職金が可視化されることで、日々の業務へのモチベーション維持や、建設業界でのキャリア継続の意欲向上に寄与します。

CCUSを利用して建退共の手続きを行う手順

CCUSと建退共を連携させ、実際に「電子申請方式」で運用を開始するための具体的な手順を解説します。導入は大きく分けて「事前準備」「現場運用」「月次処理」の3ステップで進行します。それぞれのフェーズで必要なアクションを確認してください。

事前準備:両方の制度への加入とID紐付け

システムが自動で連携するわけではないため、以下の手順で初期設定を行う必要があります。

初期設定のステップ
  • 1.CCUSおよび建退共への加入完了
    まず、CCUSへの「事業者登録」と「技能者登録」が完了していることが大前提です。同様に、建退共の「共済契約」も締結済みである必要があります。

  • 2.建退共での「電子申請方式」利用申込み
    建退共の窓口またはWEBサイトにて、従来の証紙方式から電子申請方式への切り替え(または併用)を申し込みます。

  • 3.システム連携設定(関連付け)
    CCUSの事業者用管理画面にて、建退共の共済契約者番号を入力し、データを紐付ける設定を行います。これにより、CCUSに蓄積されたデータが建退共側へ流れるパイプラインが完成します。

現場での運用フロー:就業履歴の蓄積

電子申請の根拠となるデータは、日々の現場から生まれます。この工程が最も重要であり、現場監督や職長の管理が鍵となります。

  • カードリーダーへのタッチ徹底
    現場に入場する際、技能者は必ずCCUSカードをカードリーダーにタッチします。これが掛金充当の原資データとなります。

  • 生体認証の活用
    カード忘れを防ぐため、顔認証システムなどを導入している現場では、カメラによる認証で入場記録をつけます。

  • 運用の徹底と啓蒙
    「就業履歴=退職金の掛金」となるため、現場監督や職長によるタッチの呼びかけが非常に重要です。朝礼などで繰り返し周知する必要があります。

毎月の処理フロー:就業実績の報告と掛金納付

現場で蓄積されたデータは、月に一度、元請事業者が処理を行います。手作業での計算は不要で、データの確認と送信が主な作業です。

  • 1.就業履歴データの締め処理
    元請事業者は、月末などにCCUS上の就業履歴データを確認し、確定させます。誤りがないかチェックします。

  • 2.建退共サイトへのデータ送信
    確定したデータを、システムを通じて建退共に送信(申請)します。クリック操作で完了します。

  • 3.掛金の口座振替
    申請データに基づき、事前に登録した口座から掛金が自動的に引き落とされます。

  • 4.実績の反映
    納付が完了すると、各技能者の退職金積立実績としてデータが反映されます。

CCUSと建退共の連携にかかる費用について

システム導入において気になるコスト面について解説します。基本的に連携自体による追加コストは発生しませんが、それぞれの制度利用料が必要です。また、見えない管理コストの削減効果も考慮すべきです。

システム利用料や登録料の整理

電子申請方式を利用すること自体に、建退共側への特別な手数料はかかりません。ただし、CCUSを利用するための費用は別途必要です。

表:連携に関わるコスト構造

項目 内容・金額の目安 備考
CCUS登録料 事業者登録料、技能者登録料、管理者ID利用料など CCUS規定の料金
建退共掛金 日額 320円(2021年10月改定以降) 労働者1人1日あたり
システム連携費用 無料 連携自体に費用は発生しない

[出典:建設業退職金共済事業本部 公表資料]

従来の証紙購入費用との比較

コスト面での比較を行う際、単なる掛金の額だけでなく、「管理コスト」の削減も考慮すべきです。

  • 証紙代の実費は変わらない
    証紙を購入しても、電子申請で引き落としになっても、1日320円という掛金の額は変わりません。

  • 管理コストの大幅削減
    証紙を買いに行く交通費、管理する事務員の人件費、郵送費などが削減されます。トータルで見れば、電子申請方式の方がコストパフォーマンスが高いと言えます。

CCUS連携導入前に知っておくべき注意点とよくある不安

メリットの多い連携ですが、導入にあたってはいくつかの注意点や、現場でよくある懸念事項があります。これらを事前に把握しておくことでスムーズな導入が可能になります。

カードリーダーの設置とタッチの徹底が必要

システムが機能するための最大の前提は「現場でのタッチ」です。ここが崩れると制度全体が機能しません。

  • 機材の準備コスト
    元請事業者は、現場にカードリーダー等の読み取り機材を設置する必要があります。これには一定のコストがかかります。

  • 履歴の欠落リスク
    タッチを忘れると、その日の分の退職金が積み立てられない可能性があります。「事後登録」などの救済措置もシステム上にありますが、手間がかかるため、基本は毎日のタッチを徹底する教育が必要です。

元請・下請間での合意形成

この仕組みは、元請だけが導入しても機能しません。サプライチェーン全体での協力が不可欠です。

  • 下請事業者の協力
    下請事業者の技能者がCCUSカードを持っていなければなりません。

  • 就業履歴蓄積への同意
    技能者側で「就業履歴の蓄積」に同意している必要があります。現場全体で制度の趣旨を理解し、普及させる努力が求められます。

既存の証紙が残っている場合の対応

電子申請に切り替える際、手元に残っている紙の証紙をどうするかという問題です。

  • 併用期間の活用
    完全に切り替わるまでの間、在庫の証紙を使い切るために証紙貼付方式を併用することが認められる場合があります。

  • 適切な消化計画
    電子申請対象外の現場で使用するなど、無駄にならないよう計画的に消化する方法を検討します。詳細は建退共の支部へ相談することが推奨されます。

まとめ

CCUSと建退共の連携は、建設業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要な第一歩であり、業務効率化と労働環境改善を同時に実現する施策です。

連携のポイント
  • 事務効率化
    証紙管理の手間をゼロにし、バックオフィスの負担を軽減します。

  • 処遇改善
    技能者の退職金を正確に積み立て、将来の不安を解消します。

  • 信頼性向上
    透明性の高い運用により、元請・下請・技能者の信頼関係が強化されます。

導入初期にはカードリーダーの設置や周知などのハードルを感じるかもしれませんが、長期的に見れば双方に大きなメリットがあります。早めの移行と定着を図ることをお勧めします。

よくある質問(FAQ)

Q. CCUSに登録していれば、自動的に建退共も電子申請になりますか?

いいえ、自動ではありません。CCUSの登録とは別に、建退共への加入申し込みと、システム上での「建退共利用申し込み(連携設定)」が必要です。意図的に連携の操作を行わない限り、データは連動しません。

Q. すべての現場で電子申請が使えますか?

元請事業者が対応している現場に限られます。その現場の元請事業者がCCUSを導入し、かつ建退共の電子申請方式を選択・運用している必要があります。

Q. 1日だけ働いた場合でも電子申請できますか?

はい、可能です。CCUSの就業履歴として記録されていれば、1日単位で正確に申請し、掛金を納付することができます。短期の現場であっても漏れなく積み立てられるのが電子申請の強みです。

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