「CIM」の基本知識

CIM導入の手順とは?成功のための3ステップを解説


更新日: 2025/11/27
CIM導入の手順とは?成功のための3ステップを解説

この記事の要約

  • CIM導入は建設生産システムの効率化に不可欠な手段
  • 成功の鍵は目的の明確化とスモールスタートな運用
  • 適切なPC環境とソフト選定がDX推進の土台となる
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CIMとは?建設業界で重要視される理由

CIM(Construction Information Modeling)は、建設現場の生産性向上と業務効率化を実現するための重要な手法です。2023年度からのBIM/CIM原則適用に伴い、その重要性は急速に高まっています。ここでは、CIMの定義や混同されやすいBIMとの違い、国土交通省が推進する背景について解説します。

CIM(Construction Information Modeling)の定義

CIMとは、調査・測量・設計・施工・維持管理という建設生産システムの全フェーズにおいて、3次元モデルとそれに付随する属性情報(材質、強度、コストなど)を連携・活用する取り組みを指します。
従来の2次元図面では情報の分断が起きやすく、合意形成や施工管理に時間を要していました。CIMは情報をモデル化して一元管理することで、関係者間のスムーズな連携やミスの未然防止、維持管理の高度化を図ることを目的としています。単に3Dモデルを作成することではなく、情報のライフサイクル全体を最適化するプロセスそのものを指します。

BIMとCIMの違い

「BIM/CIM」と併記されることが多い両者ですが、適用される分野と重視されるデータに明確な違いがあります。**BIM(Building Information Modeling)**は主にビルや住宅などの「建築分野」を対象とし、CIMは橋梁、ダム、トンネルなどの「土木分野」を対象としています。

項目 BIM (Building Information Modeling) CIM (Construction Information Modeling)
対象分野 建築(ビル、住宅、商業施設など) 土木(橋梁、ダム、道路、トンネルなど)
主な管轄 建築業界、設計事務所 土木業界、建設コンサルタント
地形データ 相対的に重要度は低い(敷地内が主) 極めて重要(広域な地形・地質データが必要)
特徴 部材の標準化が進みやすい 現地ごとの一品生産性が高い(地形依存)

[出典:国土交通省 BIM/CIMポータルサイト等の情報を基に作成]

国土交通省が推進する「BIM/CIM」原則化の背景

国土交通省は、建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させる「i-Construction」の中核としてCIMを推進しています。背景には、少子高齢化による熟練技術者の不足や、働き方改革への対応が急務であるという事情があります。
2023年度からは、直轄工事(詳細設計・工事)におけるBIM/CIMの原則適用が開始されました。これにより、CIM活用は推奨事項から「必須の要件」へとシフトしており、公共工事を受注するためには対応能力が不可欠となっています。

CIMを導入するメリットとデメリット

CIM導入は業務フローを大きく変革するため、メリットだけでなく課題も存在します。導入判断を適切に行うためには、組織が得られる利益と直面する可能性のあるコストや労力を公平に理解しておくことが重要です。ここでは主なメリットとデメリットを整理します。

CIM導入で得られる3つのメリット

CIMを導入することで、視覚的な情報共有が可能になり、以下のような具体的なメリットが期待できます。

CIM導入の主要メリット
  • 合意形成の迅速化
    3Dモデルによる完成イメージの共有により、専門知識のない発注者や地域住民への説明が容易になり、合意形成までの時間を短縮できます。

  • 手戻りの削減と干渉チェック
    施工前に構造物同士や埋設管の干渉、施工手順をシミュレーションできるため、現場でのトラブルや設計変更による手戻りを大幅に削減できます。

  • 維持管理の効率化
    設計・施工時の情報を属性データとして引き継ぐことで、将来の補修や点検業務において図面を探す手間を省き、履歴管理が容易になります。

CIM導入における課題・デメリット

一方で、導入初期にはいくつかのハードルがあります。
まず、高性能なPCや専用ソフトウェアの購入による**初期コスト(イニシャルコスト)**が発生します。また、従来の2次元図面とは異なる操作スキルが求められるため、人材育成や学習コストも必要です。導入直後は、慣れない作業により一時的に業務効率が低下する可能性があることも考慮し、長期的な視点で計画を進める必要があります。

CIM導入の手順とは?成功のための3ステップ

CIM導入を成功させるためには、いきなり高額なソフトを全社導入するのではなく、段階を踏んで進めることが重要です。失敗リスクを抑え、確実に定着させるための導入プロセスを3つのステップで解説します。

ステップ1:導入目的の明確化と体制づくり

最初のステップは、「何のためにCIMを導入するのか」という目的(KGI/KPI)を明確にすることです。

  • 発注者要件を満たすため
  • 施工ミスを減らすため
  • 積算業務を効率化するため

上記のように、自社の課題に合わせたゴールを設定します。同時に、CIM推進のための専門チームや担当者を選定します。現場の負担を考慮し、トップダウンでの指示だけでなく、現場の意見を吸い上げる体制を構築することが定着の鍵となります。まずは現状の業務フローを洗い出し、どこにCIMを適用すれば効果が高いかを分析してください。

ステップ2:ハードウェア・ソフトウェアの選定と環境構築

目的が決まったら、それに適したツールを選定します。土木工事の工種(土工、構造物など)によって最適なソフトは異なります。
また、3Dモデルを扱うためには、一般的な事務用PCではスペック不足です。ソフトウェアの推奨動作環境を確認し、ストレスなく作業できるワークステーションや高性能PCを整備します。データの容量が大きくなるため、共有サーバーやクラウドストレージなどのネットワーク環境の整備も同時に行う必要があります。

ステップ3:パイロット運用と人材育成

環境が整ったら、いきなり全ての案件で運用するのではなく、パイロット(試験)運用から始めます。比較的小規模な案件や、難易度の低い工種からCIMを適用し、ノウハウを蓄積します。

大型モニターで3次元橋梁モデルを確認しながら議論する建設技術者たち

並行して人材育成を行います。社内勉強会の開催や、ソフトウェアベンダーが提供する講習会、外部のCIMトレーニングの活用が有効です。成功事例を社内で共有し、「CIMを使うと便利だ」という実感を広げていくことが、全社展開への近道です。

CIM導入に必要な環境とツール

CIMを円滑に運用するためには、ハードウェアとソフトウェアの両面で適切な投資が必要です。ここでは、読者が具体的に何を準備すべきか、推奨スペックやツールの種類について解説します。

CIM活用に必要なPCスペックと周辺機器

3次元モデルのレンダリングや点群データの処理には、高い処理能力が求められます。スペック不足は作業効率の著しい低下を招くため、以下の基準を目安に選定してください。

推奨PCスペックの目安
  • CPU:Core i7 または i9、Ryzen 7 以上の高性能プロセッサ
  • メモリ:最低でも16GB、快適な動作には32GB以上を推奨
  • GPU (グラフィックボード):NVIDIA RTXシリーズなど、3D CAD向けの専用グラボが必須
  • ストレージ:高速なデータの読み書きが可能なNVMe SSD (512GB以上)

また、作業効率を高めるために、デュアルモニター環境や、3D操作に適した多ボタンマウスの導入も推奨されます。

代表的なCIMソフトウェアの種類と選び方

CIMソフトウェアは多岐にわたりますが、大きく分けて「モデル作成」「統合・干渉チェック」「点群処理」などのカテゴリがあります。自社の業務範囲に合わせて選定しましょう。

カテゴリ 主な用途 特徴・選び方のポイント
3次元CAD(モデリング) 設計、詳細形状の作成 最も基本的かつ重要。AutoCAD Civil 3Dなどが代表的。操作性と互換性を重視して選ぶ。
統合モデル作成・ビューア 複数モデルの統合、干渉チェック 土木、構造、設備のモデルを重ね合わせて確認する。Navisworksなどが該当。
点群処理ソフト 測量データの処理、現況モデル化 ドローンやレーザースキャナで取得した点群データを扱う。データ軽量化機能などが重要。
施工シミュレーション 重機の配置、工程の可視化 時間軸(4D)を含めたシミュレーションが可能。施工計画のプレゼンに有効。

CIM導入前に解消しておきたい「よくある不安」

導入を検討する企業担当者が抱きがちな「操作への不安」や「コストへの懸念」について、解決策と視点を提示します。心理的なハードルを下げ、前向きな検討につなげてください。

「操作が難しく定着しないのではないか」という不安

CIMソフトは高機能である分、操作が複雑です。しかし、近年では直感的な操作が可能なUIを採用したソフトも増えています。
対策としては、ベンダーのサポートサービスをフル活用することや、初期のモデル作成だけを専門の協力会社に**外注(アウトソーシング)**し、社内ではビューアでの確認から始めるという方法もあります。すべてを自社で完結させようとせず、段階的にスキルを習得していく姿勢が大切です。

「費用対効果が見合わないのではないか」という不安

初期投資の大きさから、導入を躊躇するケースも少なくありません。しかし、短期的にはコスト増に見えても、以下のような「見えないコスト」の削減効果を考慮する必要があります。

  • 手戻り工事の削減による損失回避
  • 正確な数量算出による積算精度の向上
  • 発注者評価(工事成績評定)の向上による受注機会拡大

将来的な競争力を維持するための投資として、長期的な視点で費用対効果を捉えることが重要です。

まとめ

CIM導入は、建設業界のDXを実現し、将来にわたって競争力を維持するために不可欠なステップです。いきなり完全な運用を目指すのではなく、以下のポイントを意識して進めましょう。

  • 目的を明確にし、体制を整える
  • 適切なハード・ソフト環境を構築する
  • スモールスタートで実績を作り、人材を育てる

まずは自社にできる範囲から一歩を踏み出し、デジタルデータを活用した新しい建設生産プロセスへの転換を図ってください。

CIMに関するよくある質問

Q. CIM導入は義務ですか?

A. 2023年度より、国土交通省の直轄工事(詳細設計・工事)においては原則適用となっています。地方自治体の発注工事でも導入が推奨されており、適用範囲は年々拡大傾向にあります。公共工事を主力とする場合、対応は事実上の義務となりつつあります。

Q. 中小企業でもCIM導入は可能ですか?

A. 可能です。すべての機能を備えた高額なソフトでなくとも、必要な機能に絞った安価なツール(LT版など)を選択できます。また、IT導入補助金などの公的支援制度を活用することで、コスト負担を軽減して導入することが可能です。

Q. CIM導入にかかる費用の目安は?

A. 導入規模によりますが、PC1台あたり20〜40万円、ソフトウェアのライセンス料が年間数十万円程度が目安です。これに加え、講習費などの教育コストが発生します。初期投資を抑えるために、サブスクリプション(月額・年額制)のライセンスを活用するのが一般的です。

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