「原価管理」の基本知識

手戻り工事が原価に与える影響とは?抑える方法も紹介


更新日: 2026/01/21
手戻り工事が原価に与える影響とは?抑える方法も紹介

この記事の要約

  • 手戻り工事が利益を削る仕組みと主な発生原因を網羅的に解説。
  • 原価管理を悪化させる直接コストと間接コストを具体的に可視化。
  • IT活用や計画見直しによる手戻り防止と原価率改善の策を提示。
目次
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手戻り工事が建設現場の「原価管理」に及ぼす致命的なリスク

手戻り工事とは、一度完了した作業を解体・修正し、再度施工するプロセスを指します。これは単なる時間のロスではなく、当初の実行予算を大幅に超過させる経営上の重大な脅威となります。適切な原価管理を行うためには、まず手戻りがどのように利益を侵食するのか、その構造的リスクを正しく理解する必要があります。

手戻り工事(やり直し)が発生する主な原因

建設現場において手戻りが発生する要因は多岐にわたりますが、管理体制を整えることでその多くは未然に防ぐことが可能です。主な原因は以下の通りです。

  • 設計ミス・図面の不備
    現場の実際の寸法と設計図面が整合していないことで、施工後に納まりがつかなくなるケース。

  • 指示の伝達ミス
    現場監督から協力会社への指示が曖昧であったり、古い図面に基づいて作業を進めてしまったりするケース。

  • 施工ミス
    技術不足や確認不足により、要求される品質基準や精度を満たせなかったケース。

  • 段取り不足
    先行する設備工事などが完了していないにもかかわらず後続の仕上げ工事を進めてしまい、後から解体が必要になるケース。

  • 施主の意向変更
    工事の途中で仕様や間取りの変更が入り、既設箇所のやり直しが発生するケース。

利益を圧迫する直接コストと間接コストの違い

手戻りが発生した際、原価管理において算出されるコストには、表面化しやすいものと潜在的なものの2種類が存在します。

手戻りによるコストの種類

・直接コスト:廃棄材料費、再発注のための材料費、解体・再施工に従事する作業員の人件費。
・間接コスト:現場監督の管理工数の増加、重機・備品の延長レンタル料、工期遅延による違約金。

これらのコストが重なることで、当初見込んでいた利益は容易に消失し、プロジェクト単体での赤字転落を招きます。

現場監督がタブレット端末を使用して建設現場の構造物と図面を照らし合わせ、施工ミスを確認している様子

原価管理の観点から見る手戻り工事の具体的な影響

手戻り工事の影響を数値化・可視化することは、現場の危機意識を高め、より厳密な原価管理を実行するために不可欠です。材料費の無駄だけでなく、目に見えにくい経費や損害賠償リスクまでを網羅的に考慮する必要があります。

【表で整理】手戻りによって膨らむ主なコスト項目

手戻りが発生した際、どの費目がどの程度影響を受けるかを整理しました。

費目 影響の内容 原価管理上のインパクト
材料費 撤去した材料の廃棄費用と再購入費用 二重の出費となり、利益を直接的に削る
労務費 解体、清掃、再構築にかかる追加の人工代 予算外の支出であり、原価率を急激に悪化させる
外注費 協力会社への追加発注や工期延長の補償 予算超過の主要因となり、利益幅を縮小させる
経費 現場事務所の光熱費や仮設機材のリース料 工期延長分だけ固定費が増大し、採算を悪化させる

[出典:一般財団法人建設物価調査会 建設工事の原価管理実務マニュアル]

労務費の重複発生と工期遅延による損害賠償リスク

手戻り作業には「解体」「清掃」「再施工」という3つの工程が追加されます。本来1回で済むはずの労務費が実質的に3倍近く膨らむ計算となり、これが原価管理における最大の赤字要因となります。また、手戻りによって全体の工期が1日でも遅れれば、契約上の遅延損害金が発生するリスクや、次案件への配員計画が狂うことによる機会損失も無視できません。

現場のモチベーション低下が招く二次的な生産性悪化

「一度作ったものを壊す」という行為は、職人や監督の士気を著しく低下させます。モチベーションの低下は、集中力の欠如からさらなる施工ミスを誘発し、負の連鎖を生む恐れがあります。このような精神的要因も、長期的な原価管理においては生産性を下げる大きなリスクとして認識すべきです。

手戻り工事を最小限に抑え、適切な原価管理を実現する5つの対策

手戻りを防ぐことは、不必要な支出を抑え、企業の利益を直接的に守ることに繋がります。以下の5つの対策を通じて、精度の高い原価管理体制を構築しましょう。

施工計画書の見直しと図面の整合性チェックの徹底

着工前の準備が、手戻りの8割を防ぐと言っても過言ではありません。以下の手順でチェックを徹底します。

  • 1.最新図面の同期:
    設計変更があった際、旧図面を物理的に回収・破棄し、現場に最新版のみが存在するフローを確立します。

  • 2.干渉チェックの実施:
    建築・設備・電気などの異なる工種間で、配管や部材が干渉しないか事前に照合します。

  • 3.チェックリストの運用:
    過去の失敗事例を基に、手戻りが起きやすい箇所の自主検査項目を作成し、確実に履行します。

ITツールを活用したリアルタイムな進捗確認と情報共有

デジタルツールの導入は、人的ミスによる手戻りを防ぐための最も効果的な手段の一つです。

導入すべきITツールの例

・写真管理アプリ:現場状況を即座に共有し、遠隔から施工ミスを早期発見。
・クラウド図面共有:全作業員が常に最新の図面をタブレットで確認。
・原価管理ソフト:予算と実績の乖離をリアルタイムで可視化。

コミュニケーション不足を解消する定例会議の質向上

情報の行き違いを防ぐため、コミュニケーションの仕組みを再構築します。

伝達ミスを防ぐポイント

・作業前のTBM(ツールボックスミーティング)でその日の目標と注意点を共有する。
・口頭指示を避け、必ずチャットや書面など「文字」として証拠を残す。
・決定事項は関係者全員に即座に周知されるフローを作る。

協力会社との適切な役割分担と責任の明確化

手戻りが発生した際の責任の所在を明確にしておくことも、実務上の原価管理では重要です。発注書や請書において、施工範囲を詳細に規定し、自主検査の結果報告を義務付けることで、協力会社側の品質意識も向上させることができます。

【比較表】アナログ管理とデジタルツールの防止効果の違い

従来の手法と最新の手法で、手戻り防止にどのような差が出るかを比較します。

管理項目 アナログ(紙・電話) デジタル(アプリ・クラウド) 原価管理への寄与度
情報共有の速さ 遅い(移動やFAXが必要) 即時(現場から直接送信) 高(ミスの早期発見)
図面の鮮度 古い図面が混在しやすい 常に最新版が自動同期される 極めて高(誤施工防止)
進捗の可視化 週報などによる事後報告 リアルタイムで現状を把握 高(予算超過の防止)
履歴の記録 紛失や形骸化のリスク 自動保存され検索も容易 中(再発防止の強化)

オフィスで原価管理システムのダッシュボードやグラフを分析し、予算の進捗を確認している様子

効率的な原価管理で読者が抱く「不安」を解消するポイント

新しい管理手法やツールの導入には、現場サイドからの反発や導入コストへの不安がつきものです。しかし、その多くは原価管理を構造化することのメリットを正しく理解することで解消できます。

「原価管理を強化すると現場の負担が増える」という誤解

多くの現場監督は「入力業務が増えて現場に出る時間がなくなる」と不安視します。しかし、実際には原価管理をデジタル化することで、手書きの書類作成や写真整理の時間が大幅に短縮されます。削減された時間を現場の巡回や品質管理に充てられるため、結果として手戻りが減り、全体の業務負担は軽減されます。

予算オーバーを未然に防ぐためのアラート機能の重要性

「気づいた時には手遅れだった」という事態が最も恐ろしいものです。近年の原価管理システムには、原価率が一定の閾値を超えた場合に自動でアラートを出す設定が備わっています。これにより、手戻りの影響が致命的になる前に早期のリカバリー策を講じることが可能になり、心理的な安心感にも繋がります。

まとめ:手戻りを防ぐ原価管理が企業の利益を守る

手戻り工事は、直接的な材料費・労務費の無駄だけでなく、工期遅延や現場の士気低下といった多大な悪影響を及ぼします。これらを防ぎ、健全な営業利益を確保するためには、事前の緻密な計画とITツールを活用した精度の高い原価管理が不可欠です。

手戻りを「建設業の宿命」と諦めるのではなく、構造的な対策を講じることで、現場の生産性と企業の競争力は飛躍的に向上します。適切な管理体制の構築こそが、企業の利益を守る最強の盾となります。

[出典:国土交通省 建設現場の生産性向上(i-Construction)に関するガイドライン]

Q1. 小規模な現場でも原価管理ソフトを導入すべきですか?

A:はい、小規模な現場こそ1つのミスが大きな赤字に直結するため、簡易的なものでも導入するメリットは非常に大きいです。投資対効果は十分に見込めます。

Q2. 手戻りが発生した際、追加費用を施主に請求できるケースはありますか?

A:施主側の明確な指示変更や、設計側の責任による図面不備が原因であれば、追加工事として請求可能です。ただし、施工側の確認不足が原因の場合は自己負担となるのが一般的です。

Q3. 現場の職人がITツールを使ってくれない場合はどうすればいいですか?

A:まずは「写真撮影と送信だけ」といった極めて簡単な操作から始め、手戻りが減ることで自分たちの手直し作業も減るという「現場側のメリット」を丁寧に伝えることが重要です。

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