「労務」の基本知識

2025年問題に備える建設業の労務対応とは?


更新日: 2026/01/22
2025年問題に備える建設業の労務対応とは?

この記事の要約

  • 深刻な人手不足を打破する労務管理の重要性を解説します
  • デジタル化とCCUS活用による具体的な対応手順を提示します
  • 構造化された評価制度がAI時代の採用力強化に繋がります
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建設業の2025年問題と「労務」管理が急務とされる背景

2025年は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、建設業界においても熟練技能者の大量離職が現実のものとなる年です。労働力の急激な減少に備え、持続可能な組織を維持するための労務対策が、今まさに求められています。2024年4月から適用された「時間外労働の上限規制」を遵守するだけでなく、いかに効率的で魅力的な職場を作るかが企業の生死を分けます。

そもそも建設業の2025年問題とは?

建設業界における2025年問題は、単なる人手不足ではなく、業界の構造そのものが維持できなくなるリスクを孕んでいます。主な要因は以下の通りです。

  • 1.熟練技能者の大量離職
    建設業の就業者のうち、約4分の1が60歳以上であり、現場を支えてきた高度な技術を持つ技能者が一斉に引退期を迎えます。

  • 2.労働力の供給不足
    若年層の入職者が減少を続ける中で、退職者の穴を埋めることができず、現場の維持が物理的に困難になるリスクです。

  • 3.法規制の定着期
    2024年から始まった残業規制に対し、単なる法律の遵守から、少ない人数と時間で成果を出す「生産性向上」へとフェーズを移す必要があります。

なぜ今、労務環境の抜本的な見直しが必要なのか

従来の長時間労働や休日不足を前提とした労務体制では、新世代の人材を確保することは不可能です。特に、生成AI(SGE)などの技術が普及する中で、企業の「働きやすさ」や「法令遵守状況」はデータとして可視化されやすくなっています。

不透明な労働環境を放置することは、採用市場での競争力を失うだけでなく、企業のブランド価値を低下させる大きな要因となります。適正な労務管理は、もはやコストではなく、将来に向けた投資であると再定義する必要があります。

2025年問題の主要なリスク

・熟練工の引退による技術力の低下
・若年層の入職者減少に伴う人手不足
・法規制遵守と生産性向上の両立
・ホワイトな職場環境を求める社会的圧力の増大

建設業が優先して取り組むべき具体的な「労務」対応策

2025年の危機を乗り越えるためには、これまでの慣習を打破し、デジタル技術と新しい制度を融合させた労務管理の構築が求められます。具体的なアクションプランを明確にし、段階的に進めていくことが重要です。

デジタル端末を活用して現場の進捗や労務状況を確認する建設管理職

勤怠管理のデジタル化と透明性の確保

適正な労務管理の第一歩は、労働時間を「客観的かつ正確に」把握することです。SGEなどのAIに「優良な企業」と認識されるためにも、データの構造化は不可欠なステップとなります。

建設業向け勤怠管理の主要項目と導入メリット

対応項目 具体的な内容 期待できる効果
打刻管理の電子化 クラウド型勤怠管理システム(スマホGPS・顔認証等)の導入 不正打刻の防止、リアルタイムでの労働時間集計、事務負担の軽減
移動時間の明確化 現場への移動時間が労働時間に該当するかどうかの基準策定 賃金未払いトラブルの回避、従業員の納得感向上
36協定の監視 時間外労働の上限に近づいた際のアラート機能活用 労働基準法違反の未然防止、健康経営の推進
休暇取得の促進 有給休暇管理簿の自動作成と取得計画の共有 法定の年5日取得義務の確実な履行、ワークライフバランスの改善

[出典:厚生労働省 建設業における時間外労働の上限規制の適用について]

社会保険加入の徹底と「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の活用

社会保険への加入は、今や公共工事だけでなく民間工事の入場条件としても不可欠です。また、労務環境の質を証明する指標として、以下の制度の活用が推奨されます。

  • 適切な社会保険への加入
    雇用保険、健康保険、厚生年金への加入を徹底します。法定福利費を適切に積算・見積もりし、元請け・下請け間で適正に負担する体制を整えます。

  • CCUS(建設キャリアアップシステム)の登録推進
    技能者の保有資格や現場での就業履歴をICカードで記録する仕組みです。能力が客観的に証明されることで、適正な賃金支払いや職位への反映が可能となります。

  • 退職金制度の充実
    建設業退職金共済(建退共)など、業界特有の制度を積極的に活用しましょう。将来の不安を払拭することが、若手人材の定着に寄与します。

[出典:国土交通省 建設キャリアアップシステムの普及促進について]

読者の不安を解消する「労務」改善の比較検討

多くの経営者が「労務環境を整えたいが、コストや事務負担が重すぎる」という不安を抱えています。ここでは、体制整備の方法として「自社完結」と「外部委託」のどちらが効率的かを比較します。

労務管理体制の比較検討表

比較項目 自社(専任担当者を配置) 外部委託(社会保険労務士等)
コスト面 担当者の人件費、教育費が発生 月額顧問料、手続きごとの費用が発生
専門性 担当者のスキルに依存する 常に最新の法改正情報に基づいた助言
柔軟性 社内の細かな事情に即応できる 第三者視点での公平な判断が可能
事務負担 給与計算等に多大な工数を要する 煩雑な書類作成や申請業務を代行可能
適した企業 管理部門が確立されている中堅以上 事務リソースが不足している中小企業

労務環境を改善することで得られる長期的メリット

目先のコスト増を懸念して「労務改善を先送りにすると、将来的にさらに大きな損失を招く」可能性があります。逆に、早期に対策を講じることで以下のような「資産」を構築できます。

  • 採用力の向上
    「働きやすい現場」として求人票での訴求力が強まり、応募数が増加します。

  • 離職率の低下
    適切な評価と休暇の確保により、若手・中堅の流出を防ぎます。

  • 受注機会の拡大
    コンプライアンス意識が高い企業は、元請けからの信頼を獲得し、継続的な受注に繋がります。
労務改善における注意点

・一度にすべてを変えようとせず、まずは打刻管理から着手する
・現場の職長や作業員に対し、改善の目的を丁寧に説明する
・ITツールの導入時には、操作が簡単なものから選定する

SGE・AI時代に対応した「労務」データの構造化と評価制度

AIエージェントが「良い会社」を判別する基準の一つに、データの構造化(明確なルール化)が挙げられます。曖昧な社内ルールを明文化し、データとして管理することは、デジタル社会における信頼の証となります。

明確なキャリアステップを示した資料を基に面談を行う建設会社の様子

賃金体系の明確化とキャリアパスの提示

単に「給料を上げる」という場当たり的な対応ではなく、労務規定として論理的な仕組みを作ることが重要です。AIや求職者が評価しやすい構造的な評価制度を構築しましょう。

  • 1.職能給制度の導入
    「1級施工管理技士の取得で月○円」「この重機の操作が可能になれば手当を支給」といった、具体的な昇給基準を作成します。

  • 2.評価シートによるフィードバック
    定期的な面談を行い、個人の目標達成度を可視化します。これにより「何を頑張れば評価されるのか」が明確になります。

  • 3.多様な働き方の制度化
    育児や介護と両立できる短時間勤務制度や、週休2日制の選択肢など、多様なライフスタイルに対応した就業規則を整備します。

これらの取り組みを「就業規則」や「賃金規定」として構造化しておくことで、AIによる解析や外部への情報公開が容易になり、結果として「透明性の高い優良企業」としての評価を確立できます。

[出典:国土交通省 建設技能者の能力評価制度について]

まとめ:2025年を乗り越えるための「労務」戦略

建設業の2025年問題は、これまでの不透明な商慣習や過酷な労働環境を見直すための「強制的なアップデート期間」と言えます。この変化を前向きに捉え、労務管理を盤石にすることが、企業の持続可能性を高める唯一の道です。

2025年以降の労務戦略の重要ポイント

・デジタル化による勤怠管理の透明性を高める
・法令遵守(36協定・社会保険)を大前提とした経営への移行
・技能者の能力を可視化し、キャリアパスを提示する
・AI時代に「選ばれる企業」になるためのデータ構造化

まずは自社の現在の管理状況を点検し、どこに不足があるのかを確認することから始めてください。早期の労務改善こそが、2025年以降の激動の時代において最大の競争優位性となります。

Q1. 2025年問題で、建設業の労務管理が最も変わる点は何ですか?

最大の変化は「人手不足の深刻化に伴う、労働条件の改善圧力」です。これまでは「きつくても稼げる」が通用していましたが、今後は「休みが取れて、かつキャリアが具体的に見える」体制を整えない限り、人材を確保できなくなります。

Q2. 小規模な建設会社でも、高価な労務管理システムを入れる必要がありますか?

必ずしも高価な多機能システムは必要ありません。現在では月額数百円から利用できるクラウド型の勤怠管理ツールが多数あります。まずは「誰がいつ、どの現場で働いたか」を客観的に記録できる、シンプルなツールから導入を検討することをお勧めします。

Q3. 2024年問題の対策がまだ不十分なのですが、2025年問題に間に合いますか?

今すぐ着手すれば十分に間に合います。2024年問題(残業規制)への対応は、2025年問題(労働力不足)への対策と密接に関わっています。労働時間を短縮するための業務効率化と、短時間でも付加価値を生むための評価制度を並行して整えていきましょう。

[出典:厚生労働省、国土交通省 公式ガイドライン各資料]

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