「DX・IT」の基本知識

建設業のDXとは?IT導入の基本と進め方


更新日: 2025/10/14
建設業のDXとは?IT導入の基本と進め方

この記事の要約

  • 建設業のDX・IT導入で失敗しない5つの手順を解説
  • ITツールの費用や人材不足など、よくある悩みを解決
  • 会社の未来を変えるDX化の第一歩を具体的に紹介
『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに

建設業でDX・IT導入を進める5つのステップ

建設業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)やIT化を成功させるためには、計画的かつ段階的なアプローチが不可欠です。「何から手をつければ良いかわからない」という悩みを解消し、着実に成果を出すための具体的な5つのステップを解説します。この手順に沿って進めることで、自社の課題に合った最適なDXIT化を実現し、生産性向上や働き方改革へと繋げることができます。

タブレットでBIMデータを確認する建設技術者

ステップ1:目的と課題の明確化

DXIT化を成功させるための最初の、そして最も重要なステップが「目的と課題の明確化」です。単に「流行っているからツールを導入する」という考えでは、費用対効果が得られず失敗に終わる可能性が高くなります。

目的と課題を明確にするためのアクション

1. 目的の設定
・「何のためにDXIT化を行うのか」という根本的な目的を定めます。これは、会社の経営理念や事業戦略に沿ったものであるべきです。
・例:「長時間労働を是正し、従業員のワークライフバランスを向上させたい」「若手人材にとって魅力的な職場環境を作り、採用力を強化したい」など。

2. 課題のヒアリングと可視化
・経営層だけでなく、管理者、事務員、現場の職人など、様々な立場の従業員から具体的な課題をヒアリングします。
・「どの業務に最も時間がかかっているか」「情報共有のどこに問題があるか」などを洗い出し、リストアップします。

3. 優先順位の決定
・洗い出した課題の中から、設定した目的に対して最も影響が大きく、かつ解決しやすいものから優先順位をつけます。これがDX推進の羅針盤となります。

ステップ2:スモールスタートでITツールを導入

目的と課題が明確になったら、いよいよITツールの選定・導入に進みます。しかし、ここでいきなり全社的に大規模なシステムを導入しようとするのはリスクが伴います。従業員のアレルギー反応や予期せぬトラブルを避けるためにも、まずは「スモールスタート」を強く推奨します。

スモールスタートとは、特定の部署や特定の業務に範囲を絞ってITツールを試験的に導入し、効果を検証する手法です。

スモールスタートの主なメリット

低コスト・低リスク:限定的な導入なので、初期投資を抑えられます。万が一、選んだツールが自社に合わなかった場合のリスクも最小限です。
心理的ハードルの低下:変化に対する従業員の抵抗感を和らげることができます。「まずはこのチームで試してみよう」という形なら、受け入れられやすくなります。
成功体験の創出:小さな範囲でも「ツールを使ったら便利になった」という成功体験が生まれると、それが社内の良い雰囲気を作り出し、本格展開への強力な推進力となります。

例えば、「現場と事務所間の写真共有」という課題に対して、特定の現場のみで写真管理アプリを導入してみる、といった形です。この小さな成功体験が、DXIT化への前向きな文化を醸成する第一歩となります。

ステップ3:社内体制の整備と人材育成

ITツールは導入するだけでは機能しません。社内でスムーズに活用し、定着させるための体制づくりと人材育成が不可欠です。誰が責任を持って推進するのか、従業員が使い方を学ぶ機会はあるのかを事前に設計しておく必要があります。

1. 推進体制の構築
DXIT化を推進するための責任者または担当チームを明確に任命します。この責任者は、経営層と現場の橋渡し役となり、導入計画の進捗管理や課題解決の中心的な役割を担います。

2. 周知と研修の実施
・なぜこのツールを導入するのか、それによって業務がどう変わるのかを丁寧に説明し、従業員の理解と協力を得ます。
・ツールの提供ベンダーに協力を依頼し、ハンズオン形式の研修会を開くのが効果的です。

3. 外部リソースの活用
・社内にITに詳しい人材がいない場合は、無理に内製化せず、外部の専門家の力を借りることも有効な選択肢です。導入サポートが手厚いベンダーを選んだり、ITコンサルタントに相談したりすることを検討しましょう。

ステップ4:導入効果の測定と評価

ツールを導入してしばらく運用したら、必ずその効果を測定・評価するステップを踏みましょう。この評価がなければ、導入が成功だったのか失敗だったのか判断できず、次の改善アクションにも繋がりません。「なんとなく便利になった気がする」といった曖昧な感覚ではなく、客観的なデータに基づいた定量的な評価が重要です。

効果測定の指標(例)

時間:書類作成時間が平均〇時間削減された
コスト:現場への移動交通費が月〇円削減された
品質:図面の修正指示や手戻りの回数が〇%減少した
従業員満足度:ツール導入後の満足度アンケートで〇点が向上した

これらのデータを導入前後で比較することで、投資対効果(ROI)を明確に把握できます。もし期待した効果が出ていない場合は、その原因を分析し、改善策を検討します。このプロセスが、DXIT化を一過性のイベントで終わらせず、継続的な業務改善へと繋げる鍵となります。

ステップ5:本格展開とPDCAサイクルの実践

スモールスタートで導入したツールの有効性が確認でき、運用ノウハウも蓄積されたら、いよいよ本格展開のフェーズです。試験導入で得られた知見(成功した点、改善すべき点)をマニュアルや運用ルールに反映させ、対象となる部署や業務範囲を広げていきます。

そして最も重要なのは、DXIT化は「導入して終わり」ではないということです。一度導入した後も、継続的に改善を続けていくPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を回す文化を定着させることが、DX成功の本質です。

タブレットを囲んで笑顔で話す建設作業員たち

PDCAサイクル

1. Plan(計画):次の課題を設定し、新たなツール導入や既存ツールの活用改善計画を立てる。
2. Do(実行):計画に沿って実行する。
3. Check(評価):実行した結果を定量的に評価する。
4. Action(改善):評価結果を基に、さらなる改善策を検討し、次の計画に繋げる。

このサイクルを回し続けることで、企業は変化に対応し続け、持続的な成長を遂げることができます。DXIT化は、一度きりのプロジェクトではなく、企業の成長と共に続く旅路なのです。

建設業のDX・IT導入におけるよくある不安と解決策

DXITの必要性は理解しつつも、導入には様々な不安がつきものです。特に「費用」「人材」「定着」に関する懸念は、多くの経営者や担当者が抱える共通の悩みと言えるでしょう。ここでは、それらのよくある不安に対して、具体的な解決策や考え方を提示し、DXIT化への第一歩を後押しします。

費用はどれくらいかかる?

ITツール導入にかかる費用は、ツールの種類や規模によって大きく異なります。自社の規模や解決したい課題に合わせて、適切なコスト感のツールを選ぶことが重要です。以下は、代表的なツールの種類ごとの費用目安と選び方のポイントをまとめた表です。

ツールの種類 費用の目安 選び方のポイント
クラウド型アプリ 月額数千円〜数万円/ID 必要な機能に絞り、無料トライアルを活用する
パッケージソフト 数十万円〜数百万円 業界特化型か、カスタマイズ性
基幹システム開発 数百万円〜 長期的な視点で費用対効果を慎重に検討

いきなり大規模なシステム開発に踏み切る必要はありません。まずは月額制のクラウド型アプリからスモールスタートし、費用対効果を実感しながら段階的に投資を増やしていくのが賢明な進め方です。

ITに詳しい従業員がいない

「社内に専任のIT担当者がいない」「パソコンが苦手な従業員が多い」といった人材面の不安は、DX推進の大きな障壁となりがちです。しかし、この問題はいくつかの工夫で乗り越えることができます。

サポートが手厚いベンダーを選ぶ:製品選定の際には、機能や価格だけでなく、導入後のサポート体制も重要な比較検討のポイントにしましょう。
社内研修を実施する:ベンダーの担当者を講師として招き、全従業員を対象とした研修会を実施するのが効果的です。
外部の専門家を活用する:何から手をつけて良いか全くわからない場合は、ITコンサルタントなど外部の専門家の力を借りるのが近道です。

自社だけで全てを解決しようとせず、外部の知見やサービスをうまく活用することが、人材不足を補う鍵となります。

従業員が使いこなせるか心配

新しいツールの導入に対して、現場の従業員から「操作が難しそう」「今のやり方を変えたくない」といった抵抗感が示されることは珍しくありません。従業員がスムーズにツールを受け入れ、活用してもらうためには、事前の配慮と準備が重要です。

1. 操作が直感的なツールを選ぶ
・多機能で複雑なツールよりも、誰でも直感的に使えるシンプルなインターフェースのツールの方が、現場に定着しやすい傾向があります。無料の試用期間を活用し、実際に従業員に触ってもらいましょう。

2. 丁寧な導入プロセスを踏む
・導入の目的やメリットを説明する会を設けたり、図やスクリーンショットを多用した分かりやすいマニュアルを整備したりすることで、導入へのハードルを下げることができます。

3. 社内の推進役を育てる
・各部署に、新しいツールに前向きな「キーマン」を立て、その人を中心に利用を広げていくのも有効な手法です。

丁寧なコミュニケーションと手厚いフォローアップを通じて、「やらされる」のではなく「使ってみたい」と思わせる雰囲気作りを心がけましょう。

まとめ:建設業の未来を切り拓くDX・IT化への第一歩

本記事では、建設業におけるDXIT化を成功に導くための具体的な5つのステップと、導入時に直面しがちな不安への解決策を解説しました。人手不足、長時間労働、生産性の伸び悩みといった建設業界が抱える構造的な課題を乗り越え、持続的に成長していくために、もはやDXIT化は避けては通れない道です。重要なのは、完璧を目指すのではなく、まずは自社の課題を正しく見極め、小さな一歩(スモールスタート)から着実に始めることです。その小さな成功体験の積み重ねが、やがては会社全体の文化を変え、企業の競争力を強化する大きな力となります。

よくある質問

Q. 補助金や助成金は利用できますか?
A. はい、国や地方自治体が提供するIT導入補助金などを活用できる場合があります。例えば、中小企業・小規模事業者を対象とした「IT導入補助金」は、ソフトウェア購入費やクラウド利用料、導入関連費用の一部を補助してくれる制度です。年度によって要件や申請期間が異なりますので、まずは公的な窓口や専門家に相談してみることをお勧めします。
[出典:中小企業庁「IT導入補助金2025」]

Q. 小規模な工務店でもDXは可能ですか?
A. もちろんです。むしろ、小規模な事業者の方が意思決定が早く、スピーディーにDXを進めやすいというメリットもあります。高額なシステム開発は不要です。まずは安価なクラウドサービスから試してみるのが良いでしょう。

Q. セキュリティ面が心配です。どのような対策が必要ですか?
A. 信頼できるベンダーが提供するセキュリティ対策が施されたツールを選ぶことが基本です。その上で、社内でパスワード管理のルールを徹底したり、定期的なセキュリティ研修を行ったりすることも重要です。

『蔵衛門クラウド』で情報伝達をスムーズに
NETIS
J-COMSIA信憑性確認
i-Construction
Pマーク
IMSM

株式会社ルクレは、建設業界のDX化を支援します