「電子納品」の基本知識

電子納品に必要な機材・ソフトとは?撮影環境のまとめを解説


更新日: 2025/12/03
電子納品に必要な機材・ソフトとは?撮影環境のまとめを解説

この記事の要約

  • 電子納品の必須機材PCとカメラの推奨スペックと選定理由を詳細解説
  • 業務効率化を実現する専用ソフトの機能比較と電子小黒板の導入手順
  • CALSモードやメディア保存、クラウド活用など提出時の注意点を網羅
目次
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電子納品とは何か?基本概要と導入のメリット

公共工事において標準化が進む電子納品ですが、従来の紙ベースの納品とは根本的に異なる業務フローが求められます。ここでは、電子納品の基本的な定義と、導入によって得られる具体的なメリットについて、その仕組みを整理して解説します。

電子納品の定義と紙媒体との違い

電子納品とは、調査・設計・工事などの各業務段階で作成される最終成果物を、国土交通省などが定める「電子納品要領・基準」に基づいて電子データ化し、納品することを指します。

従来の紙媒体による納品では、大量の図面や書類を印刷・製本してファイルに閉じる必要がありました。一方、電子納品では以下の形式でデータを整理・格納します。

電子納品の構成要素
  • XMLファイル
    管理情報(工事名、日付、図面の種類など)を記述したデータ。検索エンジンのタグのような役割を果たします。

  • オリジナルデータ
    Word、Excel、CADデータなど、作成に使用した元のファイル。

  • PDFデータ
    閲覧用として変換されたファイル。

  • 画像データ
    工事写真など(JPEG形式など)。

これらを特定のフォルダ構成(例:PLANフォルダ、PHOTOフォルダなど)に従って整理し、電子媒体(CD-RやDVD-Rなど)に格納して提出します。

業務効率化と保管スペース削減などのメリット

電子納品への移行は、発注者だけでなく受注者にとっても大きなメリットがあります。

  • 保管スペースの削減
    段ボール数箱分にもなる紙の資料が、わずか数枚のディスクに収まるため、物理的な保管場所(書庫など)を大幅に削減できます。

  • データの検索・再利用性の向上
    XMLデータにより管理情報が紐付けられているため、過去の工事データをキーワード検索で即座に呼び出すことが可能です。維持管理や補修工事の際に、迅速に情報を参照できます。

  • 省資源化
    ペーパーレス化により、紙資源の消費や印刷コスト、製本の手間を削減できます。

電子納品に必要なパソコン・カメラなどの機材

電子納品業務をスムーズに進めるためには、大容量のデータを快適に扱えるハードウェア環境が欠かせません。スペック不足の機材では、処理に時間がかかり業務効率が著しく低下したり、最悪の場合はソフトが動作しないリスクもあります。ここでは失敗しない機材選びの基準を解説します。

電子納品業務を快適に行うためのパソコンスペック

電子納品では、高画質の写真データ整理やCAD図面の編集、PDF変換など、パソコンに負荷のかかる作業が頻発します。一般的な事務用PCではなく、クリエイティブ作業に耐えうるスペックが推奨されます。

電子納品業務を行うオフィス環境

項目 推奨スペック 備考
OS Windows 10 / 11 Pro 64bit 多くの電子納品ソフトがWindows準拠のため
CPU Core i5 または i7 以上 図面データや大量の写真処理に必須
メモリ 16GB 以上 8GBだとCADやPDF編集時に動作が重くなる可能性あり
ストレージ SSD 512GB 以上 HDDよりもSSD推奨。データの読み書き速度を重視
モニター 1920×1080(フルHD)以上 デュアルモニターだと作業効率が格段に向上

現場撮影に適したデジタルカメラの選び方と画素数

工事写真の撮影に使用するデジタルカメラは、単に高画質であれば良いわけではありません。電子納品には特有の「画素数制限」「改ざん防止」の観点が必要です。

  • CALSモード(電子納品モード)の有無
    多くの工事用カメラには「CALSモード」が搭載されています。これは撮影画像の画素数を電子納品に適したサイズ(100万〜300万画素程度、1280×960ピクセル等)に自動設定する機能です。一般的なデジカメの高画素(2000万画素など)で撮影すると、ファイルサイズが巨大になり、納品時にリサイズ(縮小)の手間が発生します。

  • 耐久性と防水・防塵性能
    現場の過酷な環境に耐えるため、耐衝撃・防水・防塵性能を備えた「工事用カメラ」を選ぶのが一般的です。

データの保存・提出に必要な記録媒体(CD/DVD/SSD)

最終成果物を提出するためのメディアや、作業中のバックアップについても注意が必要です。

提出用メディアの注意点
  • 発注者の指定を確認
    発注者(役所・自治体)によって指定メディア(CD-RかDVD-Rか)が異なるため要確認。

  • 長期保存に耐えうる高品質なメディアを選ぶ
    エラー率の低い国産ブランドや業務用ディスクを推奨。

  • バックアップ体制の構築
    社内バックアップ用には外付けSSDやクラウドストレージを活用し、データ消失リスクに備える。

電子納品業務を効率化するソフトの選び方

ハードウェアと同様に重要なのが、業務を支えるソフトウェアの選定です。電子納品には複数の専用ソフトが必要となり、それぞれ役割が異なります。ここでは各ソフトの機能と選定ポイントを整理します。

電子納品支援ソフトの役割と主な機能

電子納品支援ソフトは、納品データの要となるソフトです。主な機能は以下の通りです。

  • フォルダ構成の自動作成
    基準に応じた複雑なフォルダ階層を自動で生成します。

  • 管理情報の入力支援
    工事名や図面番号などの情報を入力し、XMLファイルを生成します。

  • エラーチェック機能
    ファイル名の文字数制限や禁則文字、必須項目の入力漏れなどを自動でチェックし、納品前のミスを防ぎます。

写真管理ソフトと電子小黒板対応アプリ

大量の工事写真を整理するためのソフトです。電子小黒板アプリ(スマホ・タブレット用)と連携できるものを選ぶと、撮影時に工種や測点などの情報を埋め込めるため、事務所に戻ってからの整理作業が自動化されます。

CADソフトとSXF形式への対応について

電子納品では、CAD図面の納品形式としてSXF形式(P21, SFC)が標準的に採用されています。普段使用しているCADソフト(AutoCADやJw_cadなど)が、SXF形式への変換・出力に完全に対応しているか、あるいは文字化けや線種のズレが起きないかを確認する必要があります。

PDF作成・編集ソフトとウィルス対策ソフトの重要性

各種書類をPDF化するソフトに加え、提出データの安全性を担保するウィルス対策ソフトは必須です。

ソフトの種類 役割・用途 選定のポイント
電子納品支援ソフト フォルダ構成の自動作成、XML記述 納品したい基準(国交省・県・市など)に対応しているか
写真管理ソフト 写真の整理、アルバム作成、電子小黒板連携 仕分けの自動化機能があるか
CADソフト 図面の作成・修正 SXF(P21, SFC)形式の出力が可能か
ウィルス対策ソフト 提出データの安全性確保 最新のウィルス定義ファイルに更新されているか(提出時に必須)

電子納品における撮影環境と黒板の活用

電子納品の品質と効率を大きく左右するのが「撮影環境」です。特に近年普及が進む「電子小黒板」の導入は、現場作業の負担軽減に直結します。

従来の木製黒板と電子小黒板の比較

従来のチョークで書く木製黒板と、デジタル技術を活用した電子小黒板には大きな違いがあります。

建設現場でタブレット端末の電子小黒板機能を使用して写真撮影を行う作業員

比較項目 従来の木製黒板 電子小黒板
撮影の手間 黒板を持つ補助者が必要な場合がある 一人で撮影可能(スマホ・タブレット上で合成)
文字の視認性 手書きのため癖や天候で見にくい場合あり デジタル文字のため明瞭
写真整理 撮影後に手動で整理が必要 撮影と同時に自動仕分けが可能
導入コスト 安価 タブレット端末やアプリ費用が必要

電子納品に適した撮影設定(CALSモード)

撮影時はカメラやアプリの設定をCALSモード(または電子納品モード)に設定します。

  • 適正な画素数
    提出要領で推奨される120万画素〜300万画素程度で撮影され、容量オーバーを防ぎます。

  • 撮影情報の保持
    Exif情報(撮影日時など)が確実に記録され、管理ソフトでの読み込みがスムーズになります。

悪天候や暗所での撮影環境の工夫

電子納品写真は「視認性」が重要です。暗所や悪天候下では以下の工夫が求められます。

  • 適切な照明
    トンネル内や夕方の撮影では、強力なLEDライトを使用し、黒板の文字と被写体の両方が鮮明に写るようにします。

  • フラッシュの活用と反射防止
    フラッシュを使用する際は、黒板が光って文字が飛んでしまわないよう、角度を調整するか、電子小黒板(画面が発光するため暗所に強い)を活用します。

電子納品導入時によくある不安と解消法

初めて電子納品を行う際には、基準の複雑さやコスト面での不安がつきものです。ここではよくある懸念点とその解決策を提示します。

「要領・基準」の改定への対応はどうすべきか

国土交通省や各自治体の「電子納品要領・基準」は数年ごとに改定されます。古い基準のまま作成すると納品時にエラーとなり、手戻りが発生します。

解消法:保守サポートの活用

保守サポート付きの有料ソフトを導入することで、メーカーが基準改定に合わせてソフトをアップデートしてくれるため、常に最新の基準に対応できます。

フリーソフトだけで電子納品は完結できるか?

「コストを抑えるためにフリーソフトで対応したい」という声もありますが、業務利用にはリスクが伴います。

  • フリーソフトのリスク
    サポートがないためトラブル時に自己解決が必要。最新の基準への対応が遅れる、または対応しない場合がある。XMLの記述ミスなどのエラーチェック機能が弱い。

  • 有料ソフトのメリット
    強力なエラーチェック機能、電話やリモートによるサポート、基準改定への迅速な対応。

小規模で単発の案件であればフリーソフトで可能な場合もありますが、継続的に公共工事を受注する場合や、信頼性を重視する場合は、有料の専用ソフト導入が推奨されます。

データ破損や提出時のエラーを防ぐチェック体制

提出直前になって「メディアが読み込めない」「ウィルス検知された」というトラブルは避けなければなりません。

  • ウィルスチェック
    提出メディアにデータを書き込んだ後、必ずウィルスチェックを行い、安全であることを確認します。

  • 納品チェックシステム
    発注者側が公開している「電子納品チェックシステム」を自社でも利用し、事前にエラーがないかシミュレーションを行います。

まとめ:適切な機材とソフトで電子納品をスムーズに進めよう

本記事では、電子納品に必要な機材やソフト、撮影環境について解説しました。電子納品は、適切なスペックのパソコンと、基準に対応した専用ソフト、そして現場の負担を減らす電子小黒板などのツールを組み合わせることで、大幅な業務効率化が可能です。

電子納品導入の準備チェックリスト
  • 仕様書の確認
    発注者の指定する「要領・基準」と「提出メディア」を確認する。

  • 機材チェック
    PCスペック(メモリ16GB以上等)とカメラ(CALSモード等)が基準を満たすか確認する。

  • ソフト選定
    基準に対応し、サポート体制のある電子納品支援ソフト・写真管理ソフトを導入する。

  • 環境整備
    現場での撮影効率を上げるため、電子小黒板アプリの設定を行う。

まずは自社に不足している機材やソフトがないかリストアップすることから始めましょう。準備を万全にして、スムーズな納品を目指してください。

電子納品に関するよくある質問(FAQ)

電子納品の実務において、担当者が疑問を持ちやすいポイントをQ&A形式で解説します。

Q1. 電子納品に使用する写真はスマホで撮影しても良いですか?

はい、可能です。ただし、国土交通省の基準に対応した「電子小黒板アプリ」を使用して撮影することをおすすめします。通常のカメラアプリで撮影した場合、画素数が大きすぎてリサイズの手間が発生したり、改ざん検知機能(信憑性確認)に対応していなかったりする場合があります。

Q2. 提出用のCD/DVDにラベルを印刷するプリンターは必要ですか?

はい、必要です。電子納品要領では、メディアの盤面に工事名や作成年月などを記載することが定められています。手書きは不可とされるケースが多いため、レーベル印刷に対応したインクジェットプリンターを用意しておくと安心です。

Q3. 電子納品支援ソフトは毎年買い換える必要がありますか?

毎年買い換える必要はありませんが、「保守契約(サポート)」への加入を強く推奨します。国土交通省や各自治体の「電子納品要領・基準」は頻繁に改定されます。ソフトを最新の基準に対応させる(アップデートする)ために、保守サポートの継続が重要です。

[出典:国土交通省 電子納品要領・基準]

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