「キャリア」の基本知識

高卒・中卒でも活躍できる建設業キャリアとは?実態を解説


更新日: 2025/11/12
高卒・中卒でも活躍できる建設業キャリアとは?実態を解説

この記事の要約

  • 建設業で学歴不問の求人が多い理由と業界の将来性
  • 高卒・中卒から目指せる具体的な職種とキャリアパス
  • 学歴に関係なく収入とキャリアを上げる3つの鍵
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高卒・中卒からスタートする建設業のキャリア、その実態とは?

建設業は「学歴不問」の求人が多く、高卒・中卒者にとって門戸が広い業界です。学歴よりも入社後の実務経験や技術、資格が重視されるため、本人の意欲次第で多様なキャリアを築くことが可能です。ここでは、建設業が学歴不問の求人を多く出す背景と、業界の現状や将来性について実態を解説します。

建設業で「学歴不問」の求人が多い理由

建設業界で「学歴不問」の求人が多い背景には、主に2つの理由があります。

一つは、深刻な人手不足と高齢化です。国土交通省のデータによれば、建設技能労働者の数は減少傾向にあり、特に若年層の確保が急務となっています。このため、多くの企業が学歴という「フィルター」を設けず、意欲のある人材を広く受け入れる体制をとっています。
[出典:国土交通省 建設業・不動産業の現状と課題]

二つ目は、実力主義・スキル重視の業界体質です。建設現場の仕事は、学問的な知識よりも、現場で培われる技術(スキル)経験、そして体力が直接的に評価されます。学歴よりも「何ができるか」「どんな資格を持っているか」が重要視されるため、高卒・中卒からでもスタートしやすい環境が整っています。

「きつい」「危ない」だけじゃない?建設業の現状と将来性

建設業には、かつて「3K(きつい、汚い、危険)」というイメージがありましたが、現在はその実態が大きく変わりつつあります。

技術革新による労働環境の変化が顕著です。ICT(情報通信技術)の導入が進み、ドローンでの測量、建設機械の自動運転、施工管理アプリによる情報共有などが普及し始めています。これにより、作業の効率化と安全性の向上が図られ、従来のイメージとは異なる働き方が可能になっています。

ICT技術が導入された最新の建設現場で働く技術者たち

また、建設業は社会貢献度が非常に高い仕事です。道路、橋、住宅といった社会インフラの整備・維持管理、そして地震や豪雨などの災害復旧において、建設業の力は不可欠です。人々の生活基盤を支え、守るという大きなやりがいを感じられる点は、この仕事の大きな魅力と言えるでしょう。

「学歴フィルター」は本当にある?高卒・中卒者が抱くキャリアへの不安

建設業界に興味を持っても、「高卒・中卒だと不利になるのでは?」という不安を抱く方は少なくありません。ここでは、学歴に関するキャリアの不安について、その実態を解説します。結論から言えば、建設業においては学歴がキャリアの妨げになるケースは他業種に比べて格段に少ないと言えます。

入社後の給与や昇進に差はつく?

入社時の初任給において、大卒者と高卒・中卒者で差が設けられている企業は存在します。しかし、建設業のキャリアはスタートラインの差よりも、入社後の実績が給与や昇進に大きく影響します。

重要なのは、実務経験を積み、専門資格(例えば「施工管理技士」や「技能士」など)を取得することです。資格手当が支給されたり、より責任のあるポジション(職長現場監督など)を任されたりすることで、学歴に関係なく収入アップとキャリアアップが可能です。学歴よりも「現場でどれだけ貢献できるか」が評価の軸となります。

体力的にきつい仕事ばかりじゃない?

建設業と聞くと、重い資材を運んだり、高所で作業したりといった体力勝負の仕事をイメージしがちです。もちろん、そうした体力が必要な職種(例:鳶工土工)も多く存在します。

しかし、すべての仕事がそうではありません。例えば、クレーンやショベルカーなどを操作する重機オペレーターは、体力よりも精密な操作技術と資格が求められます。また、現場のスケジュールや安全、品質を管理する施工管理(現場監督)は、書類作成や関係者との調整といったデスクワークや管理業務が中心となります。自分の適性や体力に合わせて職種を選ぶことが可能です。

専門知識がなくてもついていける?

「建設業は専門用語や技術が多くて難しそう」と感じるかもしれませんが、未経験者や高卒・中卒者を前提とした教育体制を持つ企業がほとんどです。

多くの企業では、入社後にOJT(On-the-Job Training)が導入されています。これは、先輩社員の指導のもと、実際の仕事(現場)で作業をしながら知識や技術を学ぶ方法です。いきなり難しい仕事を任されるのではなく、簡単な補助作業から始め、段階的にスキルを習得できます。
また、必要な資格取得のための研修制度や費用補助を設けている企業も多く、未経験からでも安心して専門知識を身につけていける環境が整っています。

高卒・中卒から目指せる建設業の主な職種とキャリアパス

建設業には多種多様な職種があり、学歴に関わらず未経験からスタートできる仕事がたくさんあります。ここでは、高卒・中卒からでも目指せる主な職種と、その先のキャリアパスをステップごとに紹介します。自分の適性や将来の目標に合わせて、どのようなキャリアを歩みたいかをイメージしてみましょう。

建設業キャリアを築く3つのステップ

高卒・中卒から建設業でキャリアを形成する道筋は、大きく分けて以下の3ステップになります。

1. ステップ1:まずはここから!未経験でも始めやすい職種
最初は、現場の仕事の流れや基本を学ぶところからスタートします。特別な資格や技術が不要な補助的な業務を通じて、業界の「いろは」を学びます。

  • 建設作業員(土工、解体工など)
    土砂の掘削、資材の運搬、コンクリート打ち、建物の解体作業など、現場の基礎となる作業を担当します。
  • 現場アシスタント(手元(てもと)、雑工(ざっこう))
    職人の補助として資材を運んだり、道具を準備したり、現場の清掃や片付けを行ったりします。

2. ステップ2:スキルを磨いて目指す専門職(職人)
ステップ1の仕事を通じて自分の適性が見えてきたら、特定の分野の技術を磨き「職人」を目指します。高い専門技術を持つ職人は、現場で不可欠な存在として尊重されます。

  • 鳶(とび)工:高所での足場組立や鉄骨の組立てなど、建設現場の花形とも呼ばれる仕事です。
  • 大工:木材を加工し、建物の骨組みや内装を作り上げます。
  • 左官:壁や床にコテを使って塗料(セメントモルタルや漆喰など)を塗り上げます。
  • 塗装工:建物の外壁や内装に塗料を塗り、美観と耐久性を高めます。
  • 重機オペレーター:ショベルカー、クレーン、ブルドーザーなどの建設機械を運転します。

3. ステップ3:現場をまとめる「施工管理」への道
現場での経験を積んだ先には、職人として技術を極める道だけでなく、現場全体を管理する「施工管理(現場監督)」へのキャリアパスも開かれています。施工管理の仕事は、現場のスケジュール、安全、品質、コストを管理するマネジメント業務です。

この仕事に不可欠な国家資格「施工管理技士」は、高卒・中卒であっても、定められた年数の実務経験を積むことで2級から受験資格を得られます。学歴ではなく、現場で培った経験がそのまま国家資格とキャリアに直結する、代表的な道と言えます。

【職種別】キャリアパスの比較

高卒・中卒からスタートした場合の、主なキャリアパスの方向性を以下の表にまとめます。

(表)建設業における主なキャリアパスの比較

目指す方向性 主な職種 求められるスキル 将来のキャリア例
専門技術を極める 職人(大工、鳶など) 高い専門技術、経験 職長、独立(一人親方)、後進の指導
現場全体を管理する 施工管理 管理能力、調整力、資格 現場監督、所長、管理職(幹部候補)
特定の機械を操る 重機オペレーター 運転技術、関連資格 特定重機のスペシャリスト、指導員

学歴に関係なく建設業でキャリアアップを実現する3つの鍵

建設業で高卒・中卒からキャリアアップを果たすためには、学歴に代わる「確かな武器」を身につけることが不可欠です。それは難しいことではなく、日々の業務の中で意識できる3つの鍵に基づいています。ここでは、学歴の壁を越えて評価されるために必要な要素を具体的に解説します。

建設現場でのキャリアアップを目指し、真剣に資格の勉強をする作業員の様子

鍵1:資格取得で専門性を高める(実務経験が武器になる)

建設業において資格は「技術の証明」であり、学歴以上に重視されます。多くの資格は、学歴がなくても一定の実務経験を積むことで受験資格が得られるため、高卒・中卒者にとって強力なキャリアアップの手段となります。

まずは、日々の作業に直結する「技能講習」「特別教育」から始めるのが現実的です。これらは作業の幅を広げるだけでなく、安全意識の高さを示すことにも繋がります。
そこから経験を積み、「技能士」で職人としての技術を公的に証明したり、「施工管理技士(2級)」で管理職への道を目指したりと、ステップアップしていきます。資格を取得すれば資格手当がつく企業も多く、収入アップにも直結します。

(表)高卒・中卒からでも目指しやすい主要な資格

資格の種類 概要 高卒・中卒からの目指しやすさ
技能講習・特別教育 (玉掛け、足場、小型移動式クレーンなど)特定作業に必要な資格 ◎(実務経験不要なものも多い)
技能士(建築大工、とびなど) 職人としての技術を証明する国家資格 〇(実務経験を積めば受験可能)
施工管理技士(2級) (土木、建築、管工事など)現場管理の国家資格 〇(必要な実務経験年数を経て受験可能)

鍵2:現場での実務経験をひたむきに積む

建設現場は、教科書や座学では学べない「生きたスキル」の宝庫です。天候の変化への対応、予期せぬトラブルの解決、効率的な作業手順の発見など、日々の実務経験そのものがあなたの最大の資産となります。

大切なのは、「言われたことだけをやる」のではなく、常に「なぜこの作業が必要なのか」「もっと良い方法はないか」と考えながら仕事に取り組む姿勢です。こうしたひたむきな努力と経験の積み重ねが、周囲からの信頼に繋がり、技術力として評価されます。学歴よりも、現場で培った経験値対応力が、昇進や重要な仕事を任される際の判断基準となります。

鍵3:コミュニケーション能力を磨く(現場はチームワーク)

建設現場は、一人で完結する仕事ではありません。自社の先輩・後輩だけでなく、他社の職人(例:電気工事、水道工事など)、施工管理、クライアント(施主)など、非常に多くの人と連携して一つの建物や構造物を作り上げます。

そのため、コミュニケーション能力は、専門技術と同じくらい重要なスキルです。

  • 明確な報告・連絡・相談(ホウレンソウ)
  • 他業種の作業への配慮
  • 気持ちの良い挨拶や返事

これらが円滑にできる人は、現場のチームワークを向上させ、作業をスムーズに進めるために不可欠な存在として評価されます。技術とコミュニケーション能力を兼ね備えることで、将来的に職長現場監督といったリーダーとしてのキャリアも見えてきます。

高卒・中卒からのキャリア形成を支援する会社の選び方

学歴に関係なくキャリアアップを目指すには、個人の努力はもちろんですが、「どの会社で働くか」という環境選びも非常に重要です。未経験者や高卒・中卒者を「育てる」意識と体制が整っている会社を選ぶことが、将来のキャリアを大きく左右します。ここでは、入社後に後悔しないための会社の選び方と、求人情報で確認すべきポイントを解説します。

「研修制度」や「OJT」が充実しているか

未経験からスタートする場合、入社後にどれだけ手厚くサポートしてもらえるかが成長の鍵を握ります。

OJT(On-the-Job Training)は、多くの建設会社で取り入れられていますが、その質は様々です。「現場に放置して見て覚えろ」という古い体質の会社もあれば、「教育担当の先輩がマンツーマンで指導する」という体制を整えている会社もあります。

面接時などに、「入社後はどのような流れで仕事を覚えていくのか」「未経験で入社した先輩は、どのくらいの期間で一人前になっているか」などを具体的に確認しましょう。体系的な研修プログラムや、定期的な面談・フォローアップがある企業は、人材育成に力を入れている証拠です。

「資格取得支援制度」があるか

建設業でのキャリアアップに資格が不可欠であることは前述の通りです。しかし、資格取得には受験費用や講習費用、テキスト代など、多くのコストがかかります。

「資格取得支援制度」が充実している会社は、社員のスキルアップを積極的に応援している会社と言えます。

  • 受験費用や講習費用の全額または一部補助
  • 合格した場合のお祝い金の支給
  • 資格取得後の「資格手当」による給与アップ

こうした制度が整っていれば、経済的な負担を気にせずスキルアップに集中でき、モチベーションの維持にも繋がります。

【チェックリスト】求人情報で確認すべきポイント
  • 募集要項に「学歴不問」「未経験者歓迎」と明記されているか
  • 入社後の教育体制(OJT、座学研修など)が具体的に書かれているか
  • 資格取得支援制度(費用補助、手当など)はあるか
  • 実際に高卒・中卒から活躍している先輩社員がいるか(記載があれば)
  • 給与体系(日給制か月給制か、残業代の扱いは明確か)
  • 社会保険(健康保険、厚生年金など)が完備されているか

まとめ:建設業は学歴ではなく「意欲」と「スキル」でキャリアを築ける場所

この記事では、高卒・中卒から建設業で活躍するためのキャリアと実態について解説しました。

建設業界は、人手不足という課題を抱えている一方で、学歴に関係なく実力で評価されるという大きな魅力を持っています。かつての「きつい」「危ない」といったイメージも、ICT技術の導入や労働環境の改善によって変わりつつあります。

重要なのは、学歴を言い訳にせず、「スキルを身につけたい」という意欲を持つことです。未経験からでも始められる仕事からスタートし、ひたむきに実務経験を積み、資格取得にチャレンジすることで、収入アップとキャリアアップは確実に実現できます。

専門職(職人)の道を極めるキャリア、現場全体をまとめる施工管理へのキャリア、あるいは重機オペレーターのようなスペシャリストとしてのキャリアなど、道は一つではありません。

建設業は、あなたの「意欲」と「努力」がそのまま評価に繋がり、社会を支えるやりがいと共に、確かなキャリアを築いていける場所です。

建設業のキャリアに関するよくある質問(Q&A)

ここでは、高卒・中卒から建設業のキャリアを目指すにあたって、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式で回答します。

Q. 女性でも建設業で活躍できますか?

A. はい、活躍できます。国土交通省も「けんせつ小町」といった取り組みを推進しており、近年は女性の施工管理者や技術者、職人も増えています。体力的な配慮や、女性専用の更衣室・トイレなどの現場環境整備も進んでおり、女性が働きやすい環境が整いつつあります。

Q. 40代・50代から未経験で転職するのは難しいですか?

A. 不可能ではありませんが、20代・30代に比べると体力面や新しい技術・知識の習得でハードルが上がる可能性はあります。ただし、建設業は深刻な人手不足の業界でもあります。また、これまでの社会人経験で培った管理能力やコミュニケーション能力は、施工管理などの分野で高く評価される場合があります。年齢不問の求人を探し、自身の経験をどう活かせるかをアピールすることが鍵となります。

Q. 「日給制」と「月給制」はどちらが良いですか?

A. どちらにも一長一短があり、どちらが良いかは個人の価値観やライフプランによります。

日給制は、働いた日数分だけ収入になるため、繁忙期などは大きく稼げる可能性があります。一方で、天候不順(雨天中止など)で仕事が休みになると収入が不安定になるリスクがあります。

月給制は、天候などに関わらず毎月安定した収入が見込めるのが最大のメリットです。安定したキャリアを築き、将来的に住宅ローンなどを組むことも視野に入れる場合は、月給制で社会保険が完備されている企業を選ぶのが一般的です。

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