工事写真台帳の様式第八号とは?記入ルールを解説

この記事の要約
- 工事写真台帳「様式第八号」の基本的な役割と他の様式との明確な違いを解説します。
- 様式第八号の項目別(工種、測点、寸法など)の具体的な記入ルールを詳解します。
- 写真撮影の注意点から、Excelやソフトを使った効率的な台帳作成方法まで網羅します。
- 目次
- 様式第八号の工事写真台帳が持つ役割と基本
- 様式第八号の目的と主な用途
- いつ、誰が作成し、どこへ提出するのか
- 他の工事写真台帳様式との違い
- 【項目別】様式第八号の工事写真台帳 記入ルールと書き方
- ① 表紙・ヘッダー部分の必須項目
- ② 各記入欄の詳細解説
- ③ 写真貼付欄のルール
- ④ 豆図(略図)の記載方法
- 工事写真台帳(様式第八号)作成時の注意点とよくある疑問
- 撮影段階で気をつけるべきこと
- 電子データ(Excel・PDF)で作成する場合
- よくある記入ミスと対処法
- 様式第八号の工事写真台帳を効率よく作成する方法
- Excelテンプレート活用のメリット・デメリット
- 工事写真台帳ソフト・アプリ導入のすすめ
- まとめ:正確な工事写真台帳(様式第八号)作成のために
- 工事写真台帳(様式第八号)に関するよくある質問
- Q. 様式第八号は必ず使わなければいけませんか?
- Q. 写真の枚数に制限はありますか?
- Q. 手書きでも受理されますか?
- Q. 設計寸法と実測寸法は、すべて記入する必要があるのですか?
様式第八号の工事写真台帳が持つ役割と基本
工事写真台帳は、施工プロセスと品質を視覚的に証明する不可欠な書類です。中でも「様式第八号」は、特に設計寸法と実測寸法の対比を重視する際に使用される特定の書式を指します。この様式は、図面通りの施工が行われたことを明確に示す必要がある検査や、品質管理基準が厳しい発注者から求められることが多い台帳です。
- 様式第八号とは?
様式第八号(またはそれに準ずる寸法対比型の様式)は、工事写真と「設計寸法」「実測寸法」を一つの様式内で明確に対比させることを目的とした工事写真台帳のフォーマットです。施工が設計図書の要求通りに行われたか、寸法精度が確保されているかを検査・証明するために使用されます。
様式第八号の目的と主な用途
様式第八号の最大の目的は、「設計通りの品質が確保されていること」を写真と実測値で明確に証明することです。具体的な用途は以下の通りです。
・ 工事の各段階における施工状況の記録: 施工前、施工中、施工後の各ステップを視覚的に記録します。
・ 品質管理の証拠(使用材料、施工方法の確認): 特に寸法管理が重要な箇所(例:鉄筋のかぶり厚さ、部材の設置位置)の証拠として使用されます。
・ 発注者(施主や官公庁)への提出・検査資料: 竣工検査や中間検査の際に、契約図書に基づいた施工が行われたことを示すための主要資料となります。
・ 竣工後の維持管理資料: 将来のメンテナンスや改修時に、施工当時の状況を把握するための資料として活用されます。
いつ、誰が作成し、どこへ提出するのか
様式第八号の台帳は、工事の進捗に合わせて継続的に作成されます。
・ 作成タイミング: 主に施工中に、各工程の完了段階(検査前など)で随時作成・整理されます。最終的には竣工時までに一つの台帳として完成させます。
・ 作成担当者: 多くの場合、施工を担当する企業の現場監督や施工管理者が、日々の写真撮影とデータ整理を行い、作成します。
・ 主な提出先: 発注者(官公庁、地方自治体、民間施主など)が最終的な提出先です。工事の契約形態によっては、元請業者が取りまとめて発注者に提出したり、監理者(設計事務所など)が検査のために確認したりします。

他の工事写真台帳様式との違い
様式第八号は、他の一般的な工事写真台帳の様式(例:様式第七号など、発注者によって呼称が異なる場合があります)と比較して、特に「寸法」に関する情報が詳細であることが特徴です。
一般的な様式が「写真」と「状況説明」を主体とするのに対し、様式第八号は「設計寸法」と「実測寸法」を並べて記入する欄が設けられている点が異なります。これにより、設計値と実測値の差異(管理許容値内であるか)が一目でわかります。
以下は、様式の違いを簡易的に比較した表です。
表:工事写真台帳の様式比較(一例)
| 比較項目 | 様式第八号(寸法対比型) | 一般的な様式(状況説明型) |
|---|---|---|
| 主な用途 | 設計寸法と実測寸法の対比・証明が重要な場合 | 施工状況や工程の一般的な記録・報告 |
| 必須項目 | 設計寸法、実測寸法、状況説明、豆図 | 状況説明、豆図(測点) |
| レイアウト | 写真と寸法記入欄が明確に分かれている | 写真と説明文のスペースが主体 |
【項目別】様式第八号の工事写真台帳 記入ルールと書き方
様式第八号の工事写真台帳を正確に作成するためには、定められた各項目への記入ルールを遵守することが不可欠です。このセクションを読めば、様式第八号の正しい作成手順(HowTo)が明確に理解できます。これらのルールは、国土交通省の「デジタル写真管理情報基準」などの公的基準に準拠することが基本となります。
① 表紙・ヘッダー部分の必須項目
台帳の「顔」となる表紙(または全ページ共通のヘッダー)には、工事を特定するための基本情報を正確に記載します。契約書や設計図書と情報が一致している必要があります。
・ 工事件名: 契約書に記載されている正式な工事件名を省略せずに記入します。
・ 工事場所: 工事の施工地(住所や地番)を記載します。
・ 請負業者名(会社名): 施工を担当する会社名を記載します。
・ 現場代理人名: 現場の責任者である現場代理人の氏名を記入します。
・ 作成年月日: 台帳を最終的に作成した日付、または発注者の指示に従った日付(例:竣工日)を記入します。
- 補足
発注者によっては、契約番号、工事番号、発注者名などの追記を求められる場合があります。必ず仕様書や特記仕様書を確認してください。
② 各記入欄の詳細解説
様式第八号の核となる、写真ごとの詳細情報欄です。特に「設計寸法」と「実測寸法」の取り扱いが重要です。
表:様式第八号の主要記入項目と書き方
| 項目名 | 記入内容 | 書き方のポイント・注意点 |
|---|---|---|
| 工種 | 該当する工事の種類(例:基礎工事、鉄筋工事) | 発注者の指定や共通仕様書、積算基準の工種区分に準拠します。 |
| 測点(箇所) | 工事の具体的な場所や位置(例:No.1+10.0) | 図面と完全に整合性が取れていることが重要です。第三者が見ても場所を特定できるように記載します。 |
| 設計寸法 | 設計図書(図面、仕様書)に記載されている寸法 | 単位(mm、mなど)を明記します。該当する設計値がない場合は発注者の指示に従います。 |
| 実測寸法 | 実際に施工した箇所の測定寸法 | 必ず実測した数値を記入します。設計寸法と同一であっても省略せず記載します。単位も必須です。 |
| 状況説明(規格) | 写真の内容、施工状況、使用材料の規格などを簡潔に記載 | 「何を」「どのように」施工したかが伝わるように書きます。(例:「A部 鉄筋組立完了(D13@150)」) |
③ 写真貼付欄のルール
写真は台帳の最も重要な証拠です。以下のルールを守り、明確な写真を添付します。
- 写真の順序: 原則として「1. 施工前」→「2. 施工中」→「3. 施工後(完了)」の順序で貼付します。これにより、作業のプロセスが明確に伝わります。
- 写真の鮮明さ: ピントが合っており、白飛びや黒つぶれがなく、対象物がはっきりと確認できる写真を使用します。
- 黒板(工事黒板)の写し方:
・ 必須項目: 工事件名、工種、測点(箇所)、日付、実測寸法(必要な場合)が判読できるように写します。
・ 電子黒板: 近年推奨されている電子黒板を使用する場合も、これらの情報が写真内に改ざんできない形で含まれている必要があります。 - 写真のサイズと向き: 台帳の様式で指定された枠内に収まるように調整します。向き(縦横)も統一感を持たせ、見やすいレイアウトを心がけます。
④ 豆図(略図)の記載方法
豆図(まめず)は、写真が工事全体のどの部分を撮影したものかを示すための、簡単な見取り図です。
・ 豆図の役割: 広範囲の工事において、写真だけでは特定しにくい撮影箇所の位置関係や範囲を補足します。
・ 記載すべき内容:
・ 撮影箇所の位置(通り芯や測点番号)
・ 方位(通常は北を上にする)
・ 写真の撮影方向(矢印などで示す)
工事写真台帳(様式第八号)作成時の注意点とよくある疑問
様式第八号のルールを理解していても、実際の作成現場では迷う点やミスが発生しがちです。品質の高い台帳を作成するためには、撮影段階からデータ作成までの注意点を把握し、よくある疑問を解消しておくことが重要です。
撮影段階で気をつけるべきこと
台帳作成は写真撮影の段階から始まっています。後で修正が効かないため、撮影時の注意が最も重要です。
・ ピントずれや白飛び、暗すぎないか: 対象物や黒板の文字が不鮮明な写真は証拠として認められない場合があります。
・ 黒板の文字が判読できるか: 特に寸法や測点は重要です。反射で見えなくならないよう、黒板の角度にも注意します。
・ 整理整頓され、不要なものが写り込んでいないか: 安全管理や品質管理の観点からも、現場は整理整頓されている必要があります。工具やゴミが散乱した状態での撮影は避けます。
・ 撮影箇所の「施工前・中・後」の撮り忘れがないか: 特にコンクリート打設後など、一度隠れてしまうと再撮影が不可能な箇所の撮り忘れは致命的です。撮影リストを作成し、確実に記録します。

電子データ(Excel・PDF)で作成する場合
現在は電子データでの提出が主流です。国土交通省の「電子納品に関する要領・基準」などに準拠する必要があります。
・ ファイルの命名規則: 発注者の指定(例:「工事番号_工種_日付.pdf」)に従います。ファイル管理が煩雑にならないよう、一貫したルールで命名します。
・ データ改ざん防止の措置:
・ 提出時は原則としてPDF形式に変換します。
・ 発注者によっては、電子署名やタイムスタンプを求められる場合があります。
・ フォントサイズやレイアウトの統一性: 台帳全体でフォントの種類、サイズ、セルの幅などを統一し、見やすい書類を作成します。
- 出典情報
工事写真の電子データ作成に関する詳細なルールは、発注者の規定に加え、国土交通省が定める基準を参照してください。
[出典:国土交通省「電子納品に関する要領・基準」]
[出典:国土交通省「デジタル写真管理情報基準(令和5年3月)」]
よくある記入ミスと対処法
・ 寸法や測点の記載間違い: 図面と写真(黒板)と台帳の数値がすべて一致しているか、ダブルチェックを徹底します。
・ 写真の貼り付け順序ミス: 「施工前→中→後」の時系列が逆になると、施工プロセスが正しく伝わりません。
・ 修正が必要になった場合の対処法:
・ 紙の場合: 原則として二重線を引き、訂正印(担当者印)を押します。修正液や修正テープの使用は、証拠書類の信憑性を損なうため避けるべきです。(ただし、発注者の許可がある場合は除く)
・ データの場合: 元データを修正し、再度PDFなどで出力し直します。
様式第八号の工事写真台帳を効率よく作成する方法
様式第八号の工事写真台帳は、項目が多く寸法管理も必要なため、作成に多大な工数がかかります。日々の業務負担を軽減し、かつ正確な台帳を作成するための効率化の方法を紹介します。
Excelテンプレート活用のメリット・デメリット
多くの企業でまず導入されるのがExcelテンプレートの活用です。
・ メリット:
・ 追加の導入コストがかからない(既にExcelが導入されている場合)。
・ 自社の運用や発注者の細かい要求に合わせて、様式を自由にカスタマイズしやすい。
・ デメリット:
・ 写真の挿入、リサイズ、配置を手作業で行う必要があり、写真点数が多いと非常に手間がかかる。
・ 手入力による転記ミス(寸法、測点)が発生しやすい。
・ ファイルが重くなりやすく、データの管理(バージョン管理)が煩雑になりがち。
工事写真台帳ソフト・アプリ導入のすすめ
近年は、工事写真管理に特化したソフトウェアやクラウドサービス、スマートフォンアプリの導入が進んでいます。
・ ソフト・アプリでできること(主な機能):
・ 撮影した写真の自動取り込みと、工種や測点ごとの自動振り分け。
・ 黒板情報の自動認識(OCR)による台帳へのテキスト自動入力。
・ 様式第八号を含む、各種発注者指定の様式でのワンクリック出力。
・ 電子納品基準に準拠したデータの同時生成。
・ ソフト・アプリを選ぶ際のポイント:
・ 様式第八号に対応しているか: 自社がよく使う様式、特に寸法対比型の様式に対応しているかは必須です。
・ 操作は直感的で簡単か: 現場の誰もが簡単に使えるUI(ユーザーインターフェース)であるか重要です。
・ 他の業務(図面管理、黒板作成)と連携できるか: 図面アプリと連携して撮影位置を記録できたり、電子黒板機能が内蔵されていたりすると、業務全体が効率化します。
・ コストと機能のバランス: 必要な機能が揃っており、費用対効果が見合うか(月額制、買い切り型など)を検討します。
まとめ:正確な工事写真台帳(様式第八号)作成のために
本記事では、工事写真台帳の「様式第八号」について、その基本的な役割から詳細な記入ルール、作成時の注意点までを解説しました。様式第八号は、設計寸法と実測寸法を対比させ、施工品質を厳格に証明するために用いられる重要な台帳です。
- 正確な台帳作成のための重要ポイント
各項目の記入ルールを正しく理解する:
特に設計寸法と実測寸法の正確な記入が求められます。施工状況が明確に伝わる写真を撮影・添付する:
「施工前・中・後」の時系列と、黒板情報(特に寸法)の鮮明さが不可欠です。図面や仕様書との整合性を常に確認する:
測点、工種、寸法など、すべての情報が設計図書と一致している必要があります。
日々の業務で正確な記録を積み重ねることが、最終的に工事全体の品質保証に繋がります。必要に応じてテンプレートや専用ソフトを活用し、効率的かつ正確な工事写真台帳(様式第八号)の作成を心がけましょう。
工事写真台帳(様式第八号)に関するよくある質問
このセクションでは、工事写真台帳の様式第八号に関して、現場の担当者から寄せられることの多い質問と、それに対する一般的な回答をまとめます。
Q. 様式第八号は必ず使わなければいけませんか?
A. 必ずしもそうとは限りません。使用する様式は、発注者(官公庁や元請企業)の指定や、契約図書、共通仕様書によって定められています。工事着手前に、どの様式(または電子納品の基準)で提出する必要があるか、必ず発注者に確認してください。
Q. 写真の枚数に制限はありますか?
A. 様式自体に厳密な枚数制限はありませんが、1ページに貼付できる枚数(通常2〜3枚程度)は決まっています。施工状況を説明するために必要な枚数を、順序立てて(施工前・中・後)複数ページにわたり作成するのが一般的です。不要に多すぎても検査の手間を増やすため、要点を押さえた写真選定が重要です。
Q. 手書きでも受理されますか?
A. 発注者の規定によります。近年は公共工事を中心に電子納品が義務化されており、電子データ(ExcelやPDF)での提出が主流です。しかし、小規模な工事や特定の民間工事、発注者の指示がある場合は、手書きの台帳が認められることもあります。提出先に確認するのが最も確実です。
Q. 設計寸法と実測寸法は、すべて記入する必要があるのですか?
A. はい、様式第八号の最大の特徴がこの「設計寸法」と「実測寸法」の対比欄です。設計図通りの品質で施工されているか(管理許容値に収まっているか)を確認するための項目であるため、原則として両方の数値を正確に記入する必要があります。




