「会社設立」の基本知識

建設業の法人化でよくある3つの失敗とは?


更新日: 2026/01/14
建設業の法人化でよくある3つの失敗とは?

この記事の要約

  • 建設業の法人化で陥りやすい3つの失敗と対策を解説します。
  • 社会保険や許可要件など設立前に確認すべき財務と法務を整理。
  • 会社設立を成功させるための具体的な準備チェックリストを掲載。
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建設業の会社設立で後悔しないために!法人化の失敗リスクを知る重要性

建設業において個人事業主から法人化(法人なり)することは、社会的信用の向上や節税メリットなど、事業拡大に向けた大きなステップとなります。しかし、十分な準備なしに会社設立を強行すると、建設業法や社会保険制度の壁に突き当たり、経営を圧迫するリスクがあります。

読者が抱える「費用」と「手間」への不安

建設業の経営者が法人化を検討する際、最も大きな懸念点は「コストの増加」と「事務作業の複雑化」です。個人事業主時代とは異なり、法人では社会保険料の事業主負担や法人住民税の均等割など、売上の有無にかかわらず発生する固定費が増大します。また、複式簿記による会計処理や、毎年の決算申告といった事務負担も、現場作業と並行して行うには大きなハードルとなります。

法人化のタイミングを見誤るリスク

会社設立のタイミングは、単に所得金額だけで判断すべきではありません。建設業の場合、受注案件の規模や取引先からの要望、さらには建設業許可の更新時期などを総合的に考慮する必要があります。利益が十分に確保できていない段階で法人化すると、固定費負担に耐えられず資金繰りが悪化する恐れがある一方、遅すぎると所得税の負担が大きくなりすぎるため、適切な見極めが重要です。

デスクで書類と許可証を確認する建設会社経営者

建設業の会社設立でよくある3つの典型的な失敗パターン

建設業の会社設立において、多くの経営者が直面する失敗には共通のパターンがあります。これらの失敗は、最悪の場合、建設業者としての営業継続を不可能にするほどの影響を及ぼします。

建設業の法人化における重大な失敗要因
  • 社会保険料の事業主負担による利益の圧迫
    役員1名から強制加入となるため、固定費が大幅に増加します。

  • 建設業許可の承継手続きの失念
    個人許可は自動継続されず、認可申請なしでは無許可期間が発生します。

  • 資本金設定のミスによる許可要件の未達
    500万円の自己資本要件を満たせない設定は許可取得を阻害します。

【失敗1】社会保険料の負担増による資金繰りの悪化

法人を設立すると、従業員数にかかわらず、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられます。

  • 強制加入の法的義務
    社長一人の会社であっても、役員報酬を支払う以上は社会保険への加入が必須です。

  • コスト負担の急増
    社会保険料は労使折半であるため、会社は給与額の約15%を負担しなければなりません。個人事業主時代の国民健康保険料と比較して、支払額が数倍になるケースも珍しくありません。
事前のシミュレーションを怠ると、月々のキャッシュフローが瞬く間に悪化し、現場の仕入れ資金すら不足する事態に陥ります。

【失敗2】建設業許可の承継手続き漏れによる営業停止

個人で取得した建設業許可は、会社設立によって当然に引き継がれるわけではありません。

  • 認可申請(承継)の仕組み
    建設業法第17条の2に基づき、法人設立前に事前申請を行い「認可」を受けることで、許可番号を途絶えさせずに承継できます。

  • 無許可営業のリスク
    この手続きを知らずに法人を設立し、個人の許可を廃止してしまうと、新しい許可が下りるまでの間は「無許可状態」となります。この期間は500万円以上の工事を受注できず、事実上の営業停止状態となります。

【失敗3】資本金額の設定ミスによる許可要件の未達

会社設立時の資本金を安易に「1円」や「100万円」に設定すると、建設業許可の取得時に大きな障害となります。

  • 財産的基礎要件の壁
    一般建設業許可を取得するには、500万円以上の自己資本、または500万円以上の資金調達能力の証明が必要です。

  • 二度手間とコスト
    資本金が500万円未満の場合、銀行から残高証明書を取得する必要があります。もし残高が不足していれば、増資手続きが必要になり、登録免許税や司法書士費用が余計に発生します。

法人化の判断を下す前に、個人と法人で何が変わるのかを客観的なデータに基づいて把握しておく必要があります。特に建設業に関連する項目は、今後の営業戦略に直結します。

【表で整理:個人事業主と法人の経営環境の違い】

比較項目 個人事業主 法人(会社設立後)
社会的信用度 取引先が限定される場合がある ゼネコンや公共工事の入札が可能
税金 所得税(最大45%の累進課税) 法人税(約15~23%の一定割合)
社会保険 原則任意(5人未満の場合) 強制加入(役員のみでも必須)
建設業許可 経営者個人に帰属 法人に帰属(承継手続きが必要)
資金調達 本人の信用力に依存 法人としての融資・助成金活用が可能
決算期 12月固定 自由に設定可能

[出典:国土交通省 建設業許可事務ガイドライン]

信頼性とコスト負担のバランスをどう考えるか

法人化の最大のメリットは「信頼性」です。大手企業や公共事業の現場では、「社会保険完備の法人であること」が取引の絶対条件となっているケースが少なくありません。増加する社会保険料を「単なるコスト」と捉えるのではなく、より単価の高い案件を受注するための「投資」として捉える視点が、会社設立後の成長には不可欠です。

建設業特有の「資本金」と「許可要件」の壁

建設業許可制度において、資本金は企業の「体力」を示す指標として扱われます。

  • 特定建設業許可の要件
    将来的に元請として大規模な下請発注を行う「特定建設業許可」を目指す場合、資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上という非常に高い壁があります。

  • 長期的な視点での設定
    設立時の資本金設定は、単に「今、許可が取れるか」だけでなく、数年後の事業計画を見据えて決定すべき事項です。

建設業の会社設立を円滑に進めるための準備チェックリスト

失敗を未然に防ぎ、スムーズに法人としての営業を開始するためには、登記前から戦略的な準備を行う必要があります。

【表で整理:法人化に向けた必須準備ステップ】

準備項目 内容の詳細 確認のポイント
財務シミュレーション 増加コストの算出 社会保険料と税理士報酬を利益で賄えるか
資本金の確保 500万円以上の準備 許可要件を確実に満たすための自己資金
定款の目的欄策定 許可業種の正確な記載 建設業許可を取得する業種名が含まれているか
人的要件の確認 経管・専技の確保 法人でも引き続き要件を満たせる体制か
許可承継の相談 行政書士等への相談 認可申請のタイミングとスケジュール管理

設立前に必ず確認すべき財務状況

会社設立はゴールではなく、新しい経営のスタートです。特に、個人の財布と会社の経理が明確に分かれるため、役員報酬の設定には細心の注意を払わなければなりません。

  • 役員報酬と社会保険料
    報酬を高く設定しすぎると社会保険料が跳ね上がり、低すぎると生活が成り立ちません。

  • 納税準備金の確保
    法人税や消費税、住民税など、個人時代よりも納税タイミングが多様化するため、納税用の資金を別途プールしておく必要があります。

専門家(行政書士・税理士)へ依頼するメリット

建設業の法人化は、法務・税務・建設業法の3分野が密接に関わります。

  • 手続きの正確性
    行政書士は、建設業許可の承継認可申請を正確に行い、無許可期間の発生を防ぎます。

  • 税務の最適化
    税理士は、適切な役員報酬の決定や節税対策、融資を受けやすい決算書の作成を支援します。
自分一人で手続きを行うことは不可能ではありませんが、ミスによる営業停止のリスクを考えれば、専門家を活用するメリットは極めて高いと言えます。

行政書士と打ち合わせを行う経営者

建設業の会社設立における成功とは、単に法人格を得ることではなく、法人化によって社会的信用と利益を同時に高めていくことにあります。本記事で解説した「社会保険」「許可承継」「資本金」という3つのポイントは、いずれも建設業者が直面する典型的な落とし穴です。

まずは自社の財務状況を冷静に分析し、建設業許可の要件を確実に満たせるスケジュールを組むことが、持続可能な経営への第一歩となります。「攻め」の営業を支えるのは、万全な「守り」の体制であることを忘れずに、計画的な法人化を進めてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 資本金は1円でも会社設立できると聞きましたが、建設業でも大丈夫ですか?

A:法律上は可能ですが、建設業の実務上は全くおすすめできません。
建設業許可(一般)の取得には「500万円以上の自己資本」が要件となります。資本金を500万円未満にすると、許可申請のたびに銀行から「500万円以上の残高証明書」を取得しなければならず、手続きの負担が増大します。また、取引先や銀行からの信用面でも、建設業においては500万円以上の資本金があることが一つのステータスとなっています。

Q2. 法人化したらすぐに社会保険に入らなければなりませんか?

A:はい、法人は設立と同時に社会保険の強制適用事業所となります。
従業員を雇わず社長一人だけの法人であっても、役員報酬が発生する限り加入義務があります。社会保険料は会社と個人の合計で、額面給与の約3割という大きな負担になります。このコストをあらかじめ原価や見積もりに反映させておくことが、会社設立後の資金繰りを安定させる秘訣です。

Q3. 個人で持っていた建設業許可は、法人化してもそのまま使えますか?

A:そのままでは使えません。原則として承継の手続きが必要です。
個人の許可は、法人の設立に伴って効力を失います。現在は建設業法の改正により、事前に「認可」を受けることで、許可の番号をそのまま法人へ引き継ぐ「事業承継」の手続きが可能です。ただし、登記のタイミングと申請のタイミングを合わせる必要があるため、必ず事前に専門家へ相談してください。

[出典:日本年金機構 健康保険・厚生年金保険の適用]
[出典:国土交通省 建設業許可の承継手続き]


次に行うべきこと:
具体的な「社会保険料のシミュレーション」や、あなたの地域の「建設業許可承継スケジュール」を作成することも可能です。どちらの詳細を詳しく知りたいですか?

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