施工管理でNETIS製品を活用するには?方法と注意点を紹介

この記事の要約
- NETISの基本概要と施工管理者が知るメリット
- NETIS活用を4ステップで解説(検索・計画・導入・評価)
- NETIS導入のメリットと選定時の注意点を比較
- 目次
- 施工管理の効率化・品質向上に「NETIS」が注目される理由
- そもそもNETIS(ネティス)とは?
- NETISの概要と目的
- NETIS登録技術の種類
- 施工管理者がNETISを理解するメリット
- 施工管理でNETIS製品を活用する具体的な方法
- 1. NETISデータベースでの情報収集と検索のコツ
- 2. 工事計画・積算段階でのNETIS技術の組み込み
- 3. 現場でのNETIS製品の導入と運用
- 4. 活用効果の評価と報告(工事成績評定への加点)
- 施工管理にNETIS製品を導入するメリットと注意点
- NETIS導入の主なメリット
- NETIS導入時の注意点・デメリット
- 自社に合ったNETIS製品を選定するポイント
- 現場の課題とNETIS技術のマッチング
- コストパフォーマンスの比較検討
- メーカー・ベンダーのサポート体制の確認
- NETIS登録情報の確認
- まとめ:NETISを正しく活用し施工管理の質を高めよう
- NETIS活用に関するよくある質問
- Q. NETIS登録技術はすべて信頼できますか?
- Q. 登録期間が終了したNETIS技術は使えませんか?
- Q. 中小企業でもNETIS製品を導入できますか?
施工管理の効率化・品質向上に「NETIS」が注目される理由
施工管理業務は、品質確保、工期厳守、安全管理、コスト管理など多岐にわたり、常に効率化が求められています。特に近年は、人手不足や働き方改革への対応も喫緊の課題です。こうした背景から、国土交通省が運営するNETIS(新技術情報提供システム)に登録された新技術が、現場の課題を解決する手段として注目を集めています。この記事では、NETISの基本的な知識から、施工管理での具体的な活用方法、導入時のメリットと注意点までを網羅的に解説します。
そもそもNETIS(ネティス)とは?
NETIS(ネティス)とは、「New Technology Information System」の略称で、国土交通省が整備・運営する新技術情報提供システムのことです。公共工事などで活用できる有用な新技術の情報をデータベース化し、インターネットを通じて誰もが容易に入手・活用できるようにしています。施工管理者にとって、このデータベースを理解し活用することは、業務品質を向上させる上で非常に重要です。
[出典:国土交通省 新技術情報提供システム(NETIS)]
NETISの概要と目的
NETISは、民間企業などによって開発された新技術に関する情報を収集・整理し、提供することを目的としています。国土交通省の直轄工事や地方公共団体の工事において、これらの新技術の活用を促進することが主な狙いです。
具体的には、以下の目的を持っています。
- 新技術の活用促進: 優れた新技術を公共工事に積極的に導入し、品質の向上、コスト縮減、工期短縮、安全性の向上などを図ります。
- 情報共有: 新技術に関する情報を一元化し、発注者(国や地方公共団体)と受注者(建設会社)が容易にアクセスできるようにします。
- 技術開発の促進: 企業による新技術の開発意欲を刺激し、建設分野全体の技術水準の向上を目指します。
NETIS登録技術の種類
NETISに登録される技術は、その評価ステータスによっていくつかの種類に分類されます。特に重要な分類は以下の通りです。
- 新技術(登録番号-A, V, VRなど): 活用効果調査の対象となる技術です。公共工事などで活用された後、その効果に関する調査・評価が行われます。
- 活用促進技術(登録番号-KK): 活用効果調査の結果、有用性が確認され、国土交通省によって「活用促進技術」として指定された技術です。特に積極的な活用が推奨されます。
- 旧技術(登録番号-THなど): 原則として登録から10年が経過し、登録期間が終了した技術です。一般技術として普及したとみなされます。
施工管理者がNETISを理解するメリット
施工管理者がNETISを理解し、活用することには大きなメリットがあります。第一に、業務改善に直結します。例えば、NETISで工期短縮や省人化に繋がる技術を見つければ、現場の生産性を大幅に向上させることが可能です。
第二に、発注者に対する技術提案力が高まります。公共工事では、NETIS登録技術の活用が評価されるため、VE(バリュー・エンジニアリング)提案などに組み込むことで、受注の優位性や工事成績評定の向上に繋がります。
施工管理でNETIS製品を活用する具体的な方法
NETIS製品を施工管理業務に効果的に取り入れるには、単に情報を知るだけでなく、計画から実行、評価までの一連のプロセスが重要です。ここでは、NETIS製品を現場業務に落とし込むための具体的な4つのステップ(手順)を解説します。

1. NETISデータベースでの情報収集と検索のコツ
NETIS技術活用の第一歩は、国土交通省が運営するNETISの公式Webサイトでの情報収集です。膨大な登録技術の中から、自社の現場に最適な技術を見つけ出すためには、効果的な検索方法を知っておく必要があります。
キーワード検索(製品名や技術名)以外にも、以下のような検索方法があります。これらを組み合わせることで、効率的に情報を絞り込めます。
NETISの主な検索方法と活用シーン
| 検索方法 | 特徴 | 活用シーン |
|---|---|---|
| キーワード検索 | 製品名、技術名、企業名が分かっている場合に有効 | 特定の技術情報をピンポイントで探したい時 |
| 工種別検索 | 担当する工事の種類(例:土工、コンクリート工)から探せる | 担当工種で使える新技術を探したい時 |
| フリーワード検索 | 課題や目的(例:「騒音対策」「遠隔臨場」)で検索可能 | 現場の課題解決ニーズから探したい時 |
| 技術分類検索 | NETIS独自の分類から体系的に探せる | 幅広い技術を俯瞰的に比較したい時 |
2. 工事計画・積算段階でのNETIS技術の組み込み
有用な技術を見つけたら、それを実際の工事に組み込む計画を立てます。この段階は、発注者への提案やコスト算出において非常に重要です。
- 技術提案: 設計図書や仕様書を確認し、従来の工法と比較してNETIS技術が優位性を持つ箇所(工期短縮、コスト削減、安全性向上など)を特定します。公共工事の場合は、これをVE提案(バリュー・エンジニアリング提案:品質を維持しつつコストを低減する代替案の提案)や施工計画書に盛り込み、発注者に積極的に提案します。
- 積算への反映: NETIS技術の導入にはコストが伴います。選定した技術の導入費用(購入費、リース料、設置費など)を正確に把握し、積算に反映させます。従来の工法と比較してトータルコストがどう変動するか(直接工事費、間接工事費、将来的な維持管理費を含むライフサイクルコストへの影響)を明確にすることが重要です。
3. 現場でのNETIS製品の導入と運用
計画・積算段階を経て、実際に現場でNETIS製品を導入・運用します。施工管理者は、新技術がスムーズに機能し、所定の効果を発揮できるように管理する責任があります。
- 導入プロセス: メーカーやベンダーと詳細な打ち合わせを行い、搬入スケジュール、設置場所、必要なインフラ(電源、通信環境など)を確認します。
- 教育・周知: 新技術の操作方法や運用ルールについて、現場の作業員や関係者に十分な教育と周知徹底を行います。特に安全に関わる技術の場合は、取り扱いの注意点を明確にする必要があります。
- 施工中の管理と記録: 技術が計画通りに機能しているか日常的に確認し、運用状況や施工データを正確に記録します。問題が発生した場合は、速やかにメーカーと連携し対処します。
4. 活用効果の評価と報告(工事成績評定への加点)
NETIS技術の活用は、導入して終わりではありません。その効果を客観的に評価し、発注者に報告することが重要です。特に公共工事では、これが工事成績評定の加点に直結します。
[出典:国土交通省「公共工事における新技術活用システム」関連資料]
- 効果の評価: 導入した技術によって、具体的にどのような効果が得られたか(例:作業時間が◯時間短縮、騒音レベルが◯dB低減、ヒヤリハットが◯件減少)を定量的・定性的に評価します。
- 工事成績評定への加点: 公共工事において、NETISの「新技術(-V, -VRなど)」や「活用促進技術(-KK)」を活用した場合、発注者の審査を経て工事成績評定で加点(「新技術活用」項目など)の対象となります。
- 活用効果調査票の提出: 特に「新技術(-V, -VRなど)」を活用した場合、施工後に「活用効果調査票」を作成し、発注者を通じて提出する必要があります。このデータが、その技術の有用性を評価する材料となります。
施工管理にNETIS製品を導入するメリットと注意点
NETIS製品の導入は、施工管理業務に多くの利点をもたらす可能性がありますが、一方で考慮すべき注意点も存在します。ここでは、導入を検討する上で重要なメリットとデメリット(注意点)を整理して比較解説します。

NETIS導入の主なメリット
NETISに登録された新技術を活用することで、以下のような多岐にわたるメリットが期待できます。
- 品質の向上: ICT建機や高精度な計測機器などの活用により、施工精度が向上し、構造物の耐久性や品質の均一化が図れます。
- 工期の短縮: 施工プロセスの一部自動化、プレハブ化、または効率的な管理ツールの導入により、作業時間が削減され、工期全体の短縮に寄与します。
- コストの削減: 省人化による人件費の削減や、工期短縮に伴う間接費の削減が期待できます。また、耐久性の高い技術を選ぶことで、将来的な維持管理コスト(ライフサイクルコスト)の低減にも繋がります。
- 安全性の向上: 遠隔操作技術による危険作業の代替、作業員の健康状態をモニタリングするウェアラブルデバイスの導入などにより、現場の労働災害リスクを低減できます。
- 環境負荷の低減: 低騒音・低振動の工法、建設廃棄物を削減する技術、CO2排出量を抑える資材などを活用することで、周辺環境への配慮や環境規制への対応が可能になります。
- 工事成績評定の加点: 公共工事においてNETIS技術を適切に活用し報告することで、発注者からの評価が向上し、工事成績評定の加点対象となるため、企業の技術力評価や将来の受注活動に有利に働きます。
NETIS導入時の注意点・デメリット
多くのメリットがある一方、NETIS製品の導入には以下のような課題や注意点があり、事前の検討が必要です。
- 導入コスト: 新技術の導入には、機器の購入費やリース料といった初期費用がかかります。また、運用に必要な消耗品やメンテナンス費用などのランニングコストも考慮する必要があります。
- 技術選定の難しさ: NETISには数千件以上の技術が登録されており、その中から自社の現場の課題や条件に真に適合するものを選び出すには、専門的な知識と時間が必要です。
- 現場への適合性: 選定した技術が、実際の現場の地形、地質、天候、周辺環境、既存設備と適合しない場合があります。カタログスペックだけでは判断できない部分も多く、事前の調査が不可欠です。
- 運用・管理の負担: 新技術を使いこなすためには、施工管理者や作業員への操作教育が必要です。また、従来の工法とは異なる管理体制やデータ処理のプロセスが必要になる場合があり、一時的に業務負担が増加する可能性もあります。
- 登録情報の確認: 公共工事で加点対象として活用する場合、その技術の登録期間が有効であるか(登録期間が終了していないか)を必ず確認する必要があります。
自社に合ったNETIS製品を選定するポイント
「NETISに多くの技術があるのは分かったが、どれを選べばいいか分からない」というのは、多くの施工管理者が抱える不安です。ここでは、無数にある選択肢の中から、自社の現場に本当に役立つNETIS製品を選定するための4つの重要なポイントを解説します。
現場の課題とNETIS技術のマッチング
選定の第一歩は、技術(シーズ)から探すのではなく、現場の課題(ニーズ)から始めることです。
まず、自社の現場が現在抱えている最も大きな課題を明確にします。例えば、「特定工種での人手不足が深刻」「安全管理でヒヤリハットが多い」「工期遅延が常態化している」など、具体的な課題をリストアップします。
その上で、NETISデータベースを検索し、これらの課題を直接的に解決できる技術(例:「省人化」「安全対策」「工期短縮」)を優先的に絞り込みます。
コストパフォーマンスの比較検討
導入コストは重要な選定基準ですが、初期費用だけで判断してはいけません。
注目すべきはトータルコスト(ライフサイクルコスト)です。初期費用が高くても、それ以上に工期短縮による経費削減効果や、品質向上による将来的な補修費用の削減効果が大きければ、採用価値は高いと言えます。
複数の類似技術をリストアップし、「導入コスト」と「導入によって得られる効果(コスト削減額、品質向上、安全性向上)」を比較検討する視点が不可欠です。
メーカー・ベンダーのサポート体制の確認
新技術の導入には、トラブルがつきものです。特に初めて使用する技術の場合、メーカーやベンダーのサポート体制が運用を左右します。
以下の点を確認しましょう。
- 導入時の設置や設定に関するサポートは充実しているか。
- 運用中にトラブルが発生した際の対応(電話、メール、現地訪問)は迅速か。
- 施工管理者や作業員に対する操作説明会や研修を実施してくれるか。
NETIS登録情報の確認
NETISデータベースに登録されている情報を詳細に確認することも重要です。
- 活用効果評価書: すでにその技術を活用した他の工事での評価(活用効果評価書)が登録されている場合は、必ず内容を確認します。どのような現場で、どのような効果が出たのか、あるいは問題点はなかったのか、客観的なデータを参考にします。
- 登録期間: 特に公共工事で工事成績評定の加点を目指す場合は、検討している技術の登録期間が有効であることを必ず確認してください。登録期間が終了した技術(旧技術)は、原則として加点対象外となります。
まとめ:NETISを正しく活用し施工管理の質を高めよう
NETIS(新技術情報提供システム)は、施工管理者が直面する人手不足、品質確保、工期短縮といった様々な課題を解決するための強力なツールです。データベースに登録された新技術は、建設現場の生産性、安全性、品質を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
しかし、重要なのは、単に新技術を「導入」することではなく、自社の現場の課題や条件に合わせて最適な技術を選定し、計画から運用、評価までの一連のプロセスを適切に管理して「活用」することです。
本記事で解説したNETISの検索方法、具体的な活用ステップ、そしてメリットと注意点を理解し、自社に合った技術を選定することが、施工管理の質を高める第一歩となります。情報収集を継続し、新技術を積極的に取り入れる姿勢こそが、これからの施工管理業務において不可欠な要素と言えるでしょう。
NETIS活用に関するよくある質問
Q. NETIS登録技術はすべて信頼できますか?
A. いいえ、登録自体が性能を保証するものではありません。 NETISは「新技術の情報提供」が主目的です。ただし、「活用促進技術(-KK)」のように、活用効果調査の結果、有用性が確認された技術もあります。技術を選定する際は、登録ステータスを確認するとともに、「活用効果評価書」やメーカーが提供する資料をよく確認し、自社の現場で適用可能か慎重に判断することが重要です。
Q. 登録期間が終了したNETIS技術は使えませんか?
A. いいえ、使えます。 登録期間が終了した技術(旧技術)は、一般的に普及した技術とみなされるだけで、技術としての有用性が変わるわけではありません。現場のニーズに合致すれば継続して使用可能です。ただし、公共工事の工事成績評定における「新技術活用」としての加点対象からは外れる場合がほとんどですので注意が必要です。
Q. 中小企業でもNETIS製品を導入できますか?
A. はい、可能です。 NETISには、大規模な建設機械や高額なシステムだけでなく、比較的安価なソフトウェア、計測機器、安全用品、作業効率化ツールなども多数登録されています。企業の規模に関わらず、まずは自社の抱える課題を解決できる技術を探すことが重要です。また、機器によってはリースやレンタルで導入コストを抑える方法もあります。





