「NETIS」の基本知識

NETIS活用による加点・評価制度とは?公共工事での利点を解説


更新日: 2025/10/28
NETIS活用による加点・評価制度とは?公共工事での利点を解説

この記事の要約

  • NETISの加点・評価制度の仕組みを解説
  • 公共工事における発注者・受注者双方の利点
  • NETIS活用の具体的な流れと注意点を網羅

そもそもNETIS(ネティス)とは?

NETIS(ネティス)とは、New Technology Information System(新技術情報提供システム)の略称です。国土交通省が、公共工事などで活用が期待される有用な「新技術」の情報をデータベース化し、インターネットを通じて広く一般に提供しているシステムを指します。このシステムの目的は、新技術の開発者を支援するとともに、公共工事の品質向上やコスト縮減を促進することにあります。

NETISの目的と役割

NETISは、公共工事の効率化と品質向上という大きな目標を達成するため、以下のような多面的な役割を担っています。

新技術の活用促進:
データベースを通じて新技術の情報を全国の発注者(国や地方自治体)や受注者(建設会社)に共有し、現場での積極的な活用を促します。
公共工事の品質確保と向上:
従来技術よりも優れた工法や材料の導入を推進することで、インフラの耐久性や安全性の向上を図ります。
コスト縮減の実現:
工期短縮や省人化が可能な新技術の活用により、公共工事全体のトータルコストを削減します。
技術開発の促進:
開発された新技術がNETISに登録され、実際に活用・評価されることで、企業によるさらなる技術開発へのインセンティブ(動機付け)となります。

NETISは、これらの役割を通じて、建設分野におけるイノベーションを循環させるためのプラットフォームとして機能しています。

[出典:新技術情報提供システム NETIS | 国土交通省]

NETISに登録される技術の分類

NETISには、公共工事のあらゆるプロセスに関連する多種多様な新技術が登録されています。これらの技術は、主に以下のように分類されます。

工法・技術: 新しい施工方法、測量技術、解析技術など。
製品・材料: 高耐久性コンクリート、環境配慮型資材、新しい補修材など。
機械・設備: 施工の自動化・省人化に寄与する建設機械、安全管理設備など。
システム・ソフトウェア: 施工管理システム、CIM(Construction Information Modeling)、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連技術など。

これらの技術はデータベース上で検索可能であり、発注者や受注者は自身の工事ニーズに合った最適な新技術を選定することができます。

NETIS活用による「加点・評価制度」の仕組み

公共工事においてNETIS登録技術を活用する最大の動機付けが、この「加点・評価制度」です。これは、新技術を積極的に導入した受注者に対し、「総合評価落札方式」による入札時、および「工事成績評定」の完了時に、具体的なインセンティブを与える仕組みです。この制度により、発注者にはより良い技術が提案され、受注者には受注機会の拡大というメリットが生まれます。

公共工事の総合評価方式でNETIS活用を提案し加点評価を受ける様子

「加点制度」:総合評価落札方式での優位性

現在の公共工事の多くは、価格の安さだけで落札者を決定する「価格競争」ではなく、価格と技術力の両方を評価する「総合評価落札方式」が採用されています。

この方式において、受注者が工事の入札時に提出する「技術提案書」でNETIS登録技術の活用を具体的に提案すると、その内容に応じて技術評価点が加点されます。価格が同等であれば、NETIS活用を提案した企業の方が高く評価され、落札できる可能性が大幅に高まります。これは、受注競争において極めて大きな優位性となります。

[出典:国土交通省直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン]

「評価制度」:工事成績評定での評価

インセンティブは入札時だけではありません。受注者からの提案(施工者選定型)によりNETIS登録技術を工事で活用し、その効果(工期短縮、品質向上、コスト縮減など)が発注者によって確認された場合、工事完了後の「工事成績評定」において高く評価(加点)されます。

工事成績評定の点数は、企業の技術力を示す客観的な指標であり、この評定が高い企業は、将来の公共工事の入札参加資格審査(格付け)で優遇されます。つまり、NETISの活用実績を積むことは、企業の信頼性と将来の安定的な受注機会の確保に直結するのです。

[出典:公共工事等における 新技術活用システム パンフレット (P7参照)]
[出典:NETISについて(国土交通省 近畿地方整備局資料 P13参照)]

加点対象となる公共工事の範囲

この加点・評価制度は、主に国土交通省が発注する直轄工事で厳格に運用されています。また、多くの地方自治体(都道府県や市町村)が発注する公共工事においても、国交省の基準に準拠、または独自の制度を設けてNETIS活用を評価するケースが増えています。

ただし、注意点として、発注者側が技術を指定する「発注者指定型」の工事では、NETIS技術を使っても工事成績評定の加点対象外となるのが一般的です。加点対象となるのは、原則として受注者側が自ら技術を選定・提案する「施工者選定型」の場合です。

評価されるNETIS技術の区分(推奨技術など)

すべてのNETIS登録技術が一律に高く評価されるわけではありません。NETIS技術は、活用実績や効果の検証状況に応じて、以下のように区分されています。

推奨技術・準推奨技術:
活用効果が実証され、有用性が高いと認められた技術。総合評価や工事成績評定において、特に高く評価される対象となります。
活用促進技術:
活用効果が期待され、さらなる普及促進を図る技術。
設計比較対象技術(VE)/ 活用効果評価済技術(VR):
従来技術との比較データが蓄積され、評価が完了した技術。
申請情報(試行申請型など):
登録されたばかりで、まだ十分な活用実績や評価データがない技術。

入札に参加する際は、その工事の発注者がどの技術区分をどの程度評価するか(例:「推奨技術の提案に限り2点加点」など)、入札公告や特記仕様書で事前に確認することが不可欠です。

公共工事でNETISを活用する具体的な利点(メリット)

NETISの活用は、単に入札で有利になる(加点)だけでなく、公共工事に関わる発注者と受注者の双方に、実務的なメリットをもたらします。これは、新技術の導入によって工事全体の質と効率が向上するためであり、Win-Winの関係を構築する制度と言えます。

発注者側(行政・自治体)のメリット

公共工事を発注する行政や自治体にとって、NETISの活用は社会インフラの整備をより高度化・効率化する手段となります。

工事品質の向上:
耐久性や機能性に優れた新技術・新材料の導入により、より高品質で長寿命なインフラ(道路、橋、トンネルなど)を整備できます。
工期の短縮やコスト縮減の実現:
効率的な新工法や自動化技術の活用により、従来よりも短い期間、または低いコストで工事を完了させることが可能になり、税金の効率的な執行につながります。
最新技術の導入による効率化:
発注者自身が最新の技術動向を把握し、行政サービスや維持管理業務の効率化を図るきっかけにもなります。

受注者側(建設会社・施工業者)のメリット

工事を受注・施工する建設会社にとって、NETIS活用は競争力強化と経営安定化のための重要な戦略です。

入札時の競争力強化(総合評価での加点):
前述の通り、総合評価落札方式での加点により、受注機会が大幅に拡大します。
工事成績評定の向上(将来の受注機会増加):
良好な工事成績を収めることで企業の格付けが上がり、より規模の大きな工事や条件の良い工事の入札に参加しやすくなります。
施工の効率化・安全性向上:
新技術の導入は、現場作業の生産性向上や、危険作業の自動化による安全性の確保に直結します。
技術力のPR:
NETIS技術を積極的に活用している実績は、「技術力の高い企業」として対外的にPRする強力な材料となります。

発注者・受注者それぞれのNETIS活用メリット
以下の表は、NETIS活用によって発注者と受注者が享受できる主なメリットをまとめたものです。

対象者 メリットの具体例
発注者 ・より高品質なインフラ整備が期待できる
・新技術によるコスト縮減・工期短縮
・行政サービスの効率化
受注者 ・総合評価落札方式での加点による受注機会の拡大
・工事成績評定の向上による企業の信頼性アップ
・現場作業の安全性や効率の向上

NETIS活用を検討する際の注意点(デメリット)

NETISの活用は多くのメリットをもたらしますが、導入にあたっては事前に理解し、対策を講じるべき注意点も存在します。これらの課題を軽視すると、期待した効果が得られないばかりか、かえって業務負担が増加する可能性もあります。

導入コストと手続きの手間

新技術の導入には、コストが伴います。

初期コスト:
新しい機械の購入費やリース料、専用ソフトウェアのライセンス料、技術指導料など、初期投資が必要となる場合があります。
事務手続き:
NETIS活用で評価を受けるためには、単に技術を使うだけでは不十分です。「活用計画書」の作成・提出や、施工後の「活用効果調査・報告書」の作成など、通常業務に加えて煩雑な事務手続きが発生します。

これらのコストや手間を考慮しても、加点や工事成績向上に見合うメリットがあるかを事前に試算する必要があります。

NETIS登録=効果の絶対的保証ではない

NETISに登録されている技術は、あくまで「有用である」と情報提供されているものであり、あらゆる現場で100%の効果を保証するものではありません。

現場の土壌条件、気象条件、周辺環境、あるいは施工方法との相性によっては、期待したほどの品質向上やコスト縮減効果が得られないリスクもあります。データベースの情報を鵜呑みにせず、自社の工事内容や現場条件に適しているかを技術的に十分検討することが重要です。

活用効果の評価方法

加点や評価を受けるためには、新技術を使ったという「事実」だけでなく、それによってどのような「効果」が得られたかを客観的に証明(立証)する必要があります。

例えば、「従来工法より工期が3日短縮できた」「コンクリートの強度が10%向上した」といった具体的なデータを計測し、発注者に報告しなければなりません。この「効果測定の方法」や「評価基準」について、事前に発注者側と受注者側で綿密にすり合わせておかないと、施工後に「期待した効果とは認められない」と評価されてしまう恐れがあります。

NETISを活用する基本的な流れ

実際に公共工事でNETIS技術を活用し、加点・評価を受けるまでのプロセスは、一定の手順に沿って進められます。ここでは、その基本的な流れをステップごとに解説します。

1. 技術の検索・選定
目的: 自社の工事内容(工種、現場条件、課題)に最適な新技術を見つける。
実施内容: NETISの公式データベース(Webサイト)にアクセスし、キーワードや工種分類から関連技術を検索します。各技術の概要、効果、制約条件などを比較検討し、候補を選定します。

2. 発注者との協議
目的: 選定した技術の活用について、発注者の合意を得る。
実施内容: 入札前または契約後(施工前)の段階で、発注者(監督職員など)に対し、使用したいNETIS技術とその理由、期待される効果を説明し、協議します。この段階で合意を得ておくことが非常に重要です。

3. 活用計画書の作成・提出
目的: 技術の具体的な活用方法と効果目標を文書化し、発注者に提出する。
実施内容: 「どの技術を」「どの工程で」「どのように活用し」「どのような効果(品質、コスト、工期、安全性)を見込むか」を明記した活用計画書を作成し、提出します。

4. 技術の活用(施工)
目的: 計画書に基づき、現場で新技術を正しく施工する。
実施内容: 活用計画書に沿って、現場で新技術を適用します。この際、従来工法との比較データを収集するため、施工状況の写真撮影や各種計測を正確に行うことが求められます。

5. 活用効果の調査・報告
目的: 施工結果を分析し、活用効果を客観的に証明する報告書を作成する。
実施内容: 施工中および施工後に収集したデータを分析し、計画通りの効果が得られたかを検証します。「活用効果調査・報告書」として取りまとめ、発注者に提出します。

6. 評価の実施
目的: 発注者が報告書を審査し、最終的な評価を決定する。
実施内容: 発注者は提出された報告書に基づき、活用効果を審査します。効果が良好と認められれば、工事成績評定への加点などの評価が行われます。

まとめ:NETIS活用は公共工事の品質と競争力を高める鍵

NETIS(新技術情報提供システム)は、単なる技術データベースではなく、公共工事の品質と効率性を高めるための重要な「制度」です。

受注者(建設会社)にとって、NETIS登録技術の活用は、総合評価落札方式での加点工事成績評定の向上という、経営に直結する強力なメリットをもたらします。これは、企業の競争力を高め、将来の安定的な受注機会を確保するための鍵となります。

同時に、発注者(行政)にとっても、工事品質の向上コスト縮減を実現し、より良い社会インフラを効率的に整備できるという大きな利点があります。

NETIS活用制度の核心

受注者メリット: 「総合評価での加点」と「工事成績評定の向上」により競争力がアップする。
発注者メリット: 「工事品質の向上」と「コスト縮減」により、効率的なインフラ整備が可能になる。
活用の鍵: 導入コストや手続きの手間といった注意点を理解し、発注者と協議の上で計画的に活用することが成功につながる。

公共工事に関わるすべての事業者は、このNETISの仕組みを深く理解し、自社の技術力向上と事業発展のために、その活用を積極的に検討すべきでしょう。

NETIS活用に関するよくある質問(FAQ)

NETISの活用に関して、現場の担当者や経営者から寄せられる一般的な質問とその回答をまとめました。

Q. すべての公共工事でNETIS加点の対象になりますか?
A. 対象となる工事は、発注機関(国、都道府県、市町村など)や工事の規模・種類によって異なります。多くの場合、総合評価落札方式を採用している工事が対象となりますが、発注機関がNETIS活用を評価項目として設定しているかによります。詳細は、必ず各発注機関の入札公告や仕様書(特記仕様書など)を確認する必要があります。

Q. NETISに登録されていない新技術は評価されませんか?
A. 発注機関によっては、NETIS未登録であっても、学術的な根拠や他での実績が明確な新技術については、個別に審査の上で活用を評価する場合があります。ただし、NETIS登録技術の方が、技術の信頼性や評価プロセスが確立されているため、手続きの透明性や客観的評価の面でスムーズに進むケースが一般的です。

Q. NETISの登録情報は誰でも閲覧できますか?
A. はい、NETISの公式ウェブサイト(データベース)は一般に公開されており、企業や個人を問わず、誰でも無料で登録技術の情報を検索・閲覧することができます。工事の発注者や受注者だけでなく、技術開発者や研究者にとっても貴重な情報源となっています。

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