NETIS登録に必要な提出書類とは?作成ポイントも紹介

この記事の要約
- NETIS登録には様式1~4と客観的な技術資料の提出が必須
- 審査通過の鍵は従来技術との定量的比較と第三者による実証
- 自社申請と外部委託のコストや手間を比較し計画的に準備を
- 目次
- NETIS登録の仕組みと申請の全体像
- NETIS(新技術情報提供システム)とは
- 申請から登録までの流れ
- NETIS登録申請に必要な提出書類一覧
- 必須となる申請様式と添付資料
- 技術資料に求められるエビデンス
- NETISの審査をスムーズに進めるための書類作成ポイント
- 従来技術との比較優位性を明確にする
- 新規性の論理的な説明
- 客観的データの収集と提示方法
- NETIS申請で書類不備や差し戻しを防ぐための注意点
- 記載内容の整合性と分かりやすさ
- 登録要件(対象外技術)の事前確認
- NETIS登録のメリットとコスト・手間の比較検討
- 公共工事入札における加点などのメリット
- 書類作成にかかる工数と外部委託の検討
- まとめ
- NETISに関するよくある質問
- Q. NETIS登録までにどのくらいの期間がかかりますか?
- Q. 登録にあたって費用は発生しますか?
- Q. 活用実績がなくても申請できますか?
NETIS登録の仕組みと申請の全体像
NETIS(新技術情報提供システム)への登録は、公共工事における技術評価を高める有効な手段ですが、その仕組みや登録までのプロセスは複雑です。ここでは、NETISの基本概念と、申請から登録に至るまでの全体的なフローを解説します。全体像を把握することで、どの段階でどのような書類が必要になるかを理解できます。
NETIS(新技術情報提供システム)とは
NETIS(New Technology Information System)とは、国土交通省が新技術の活用促進を目的に運用しているデータベースシステムです。民間企業等が開発した有用な新技術の情報をインターネット上で一般公開し、公共工事の発注者や施工者が共有・活用できるように整備されています。
- NETIS登録によって得られる主な恩恵
- 入札時の加点
総合評価落札方式において、技術提案にNETIS登録技術を活用することで評価点が加算される場合があります。 - 工事成績評定の向上
実際の工事で活用し、良好な結果が得られれば、工事成績評定での加点対象となります。 - 認知度向上と信頼性確保
国土交通省のデータベースに掲載されるため、技術の信頼性が高まり、全国的な周知が可能になります。
- 入札時の加点
申請から登録までの流れ
NETIS登録申請は、単に書類を送付するだけではなく、事前の相談やヒアリングを経て厳格な審査が行われます。一般的なフローは以下の通りです。

- 登録までのステップ
- 1. 事前相談(各地方整備局等)
技術開発者は、申請先となる各地方整備局等の技術事務所や新技術相談窓口へ連絡し、申請技術の内容について事前相談を行います。ここで登録対象となるかどうかの感触や、比較対象技術の選定についてアドバイスを受けます。 - 2. 申請書類の作成・提出
所定の様式および添付資料を作成し、窓口へ提出します。現在は電子申請システムを利用するケースが増えています。 - 3. ヒアリング・技術審査
提出された書類に基づき、新技術活用評価会議等の審査員によるヒアリングや技術審査が行われます。技術の新規性や信頼性が厳しくチェックされます。 - 4. 修正対応
審査員からの指摘事項に基づき、申請書類の修正や追加資料の提出を行います。このやり取りは複数回発生することが一般的です。 - 5. NETIS登録・公開
すべての審査をクリアすると登録番号が付与され、NETIS等のWebサイトで技術情報が公開されます。
- 1. 事前相談(各地方整備局等)
NETIS登録申請に必要な提出書類一覧
NETIS登録には、国土交通省が定める定型フォーマット(様式)と、技術の有効性を科学的・客観的に証明する添付資料の2つが不可欠です。審査の土台となる必要書類を網羅的に解説します。特に様式類は、すべての項目に整合性が求められるため、役割を正しく理解する必要があります。
必須となる申請様式と添付資料
申請に必要な書類は、大きく申請様式(様式1〜4)と添付資料に分類されます。それぞれの具体的な内容は以下の通りです。
| 書類区分 | 具体的な書類名 | 概要・役割 |
|---|---|---|
| 申請様式 | 様式-1(申請書) | 技術の基本情報 技術名称、申請者(法人名)、開発責任者の連絡先などを記載する表紙となる書類です。 |
| 申請様式 | 様式-2(技術概要) | 技術の「中身」の説明 開発の背景、原理、施工方法、適用範囲などを詳細に記述します。審査員が技術内容を理解するための最も重要な書類です。 |
| 申請様式 | 様式-3(比較表) | 従来技術との対比 「従来技術」と「新技術」を並べ、経済性・工程・品質・安全性・施工性・環境の6項目等で比較し、優位性を数値で示します。 |
| 申請様式 | 様式-4(実績表) | 現場での適用実績 過去にその技術を使用した工事名、発注者、工期、施工数量などの実績データを記載します。 |
| 添付資料 | 技術資料 | 裏付けデータ カタログ、詳細図面、積算資料(歩掛表)、実験データ、論文など、様式内の記述を裏付ける資料群です。 |
| 添付資料 | 会社概要・定款 | 申請者の証明 申請者が法人として実在し、事業を行っていることを証明する公的書類です。 |
技術資料に求められるエビデンス
NETISの審査は「自己申告」だけでは通過しません。申請内容が事実であることを第三者が確認できるエビデンス(証拠資料)が最重要視されます。
- 第三者機関による性能証明
社内テストの結果だけでなく、JIS(日本産業規格)に基づく試験や、公的試験機関(建材試験センター等)が発行した成績書・証明書が必要です。 - 詳細な積算根拠(歩掛)
「コスト縮減」を謳う場合、単なる見積書の比較ではなく、作業員数や機械損料などを積み上げた「歩掛(ぶがかり)」レベルでの比較資料が求められます。 - 視覚的な説明資料
文字情報の補完として、施工手順写真、構造図、フローチャートなどを多用し、専門外の担当者でも直感的に理解できる資料構成にします。
NETISの審査をスムーズに進めるための書類作成ポイント
書類審査を通過し、早期登録を目指すための最大のポイントは従来技術との比較の精度にあります。審査員は「標準的な技術と比べて、具体的に何がどう良くなるのか」を厳しくチェックします。ここでは審査員が納得する論理構成のコツを紹介します。
従来技術との比較優位性を明確にする
様式-3(比較表)の作成において、抽象的な表現は評価されません。以下の4大項目を中心に、可能な限り定量的(数値)にメリットを提示してください。

- 比較表作成時のNG例とOK例
- 経済性(コスト)
NG:「安くなる」
OK:「従来工法(〇〇円/m²)に対し、新技術(〇〇円/m²)は約15%のコスト縮減となる」
※根拠として、標準歩掛と新技術歩掛の対比表を添付します。 - 工程(時間)
NG:「施工が早くなる」
OK:「養生期間が不要となるため、1サイクルあたりの日数が5日から3日に短縮され、全体工期を40%短縮できる」 - 品質
定量化のポイント:強度、耐久年数、平坦性などの数値を試験データに基づいて比較します。 - 安全性
定量化のポイント:高所作業の時間数削減、重量物の取り扱い頻度の低減など、リスク要因の減少を具体的に示します。
- 経済性(コスト)
新規性の論理的な説明
「新規性」とは、単に新しい商品であることではありません。従来の技術的課題を、どのような新しい原理・仕組みで解決したかという技術的なロジックが必要です。
- 原理の独自性
既存技術の欠点(例:騒音が大きい、工程が複雑)を指摘し、それを解決したメカニズム(例:吸音素材の採用、プレキャスト化による工程省略)を説明します。 - 特許との整合性
特許を取得している技術の場合、申請書類の技術説明文が特許公報の内容と矛盾していないか確認してください。
客観的データの収集と提示方法
審査の信頼性を高めるために、データの提示方法にも工夫が必要です。
- 公的機関での試験結果を優先
自社ラボのデータよりも、公的機関の印鑑がある試験成績書が圧倒的に有利です。 - 現場実証データの条件明記
現場での実測データを使用する場合は、測定時の気温、天候、地盤条件などを明記し、「特定の好条件下だけでなく、汎用的に効果が出る」ことを示唆する記述が望ましいです。
NETIS申請で書類不備や差し戻しを防ぐための注意点
申請後の差し戻しや不採択は、登録までの期間を大幅に遅らせる原因となります。よくある不備の傾向を知り、記載内容の整合性確保や対象外技術の事前確認を行うことで、リスクを最小限に抑えることが可能です。
記載内容の整合性と分かりやすさ
膨大な資料を作成していると、書類間で矛盾が生じることがあります。以下の点に注意して最終確認を行ってください。
- 数値や用語の統一
様式-2で記載した数値と、様式-3の比較表の数値が完全に合致しているか確認します。また、部材の名称などは全書類で統一します。 - 平易な文章表現
審査員は必ずしもその特定分野の専門家ではありません。専門用語を多用せず、誰が読んでも理解できる論理的で平易な文章を心がけます。
登録要件(対象外技術)の事前確認
そもそもNETISの対象とならない技術で申請しようとして、却下されるケースがあります。以下の表で、却下リスクが高い技術を確認してください。
| 却下リスクが高い技術例 | 理由 |
|---|---|
| 一般化済み技術 | 既に業界で標準的に使われており、新規性がないもの。または、既にNETISに類似技術が多数登録されており、差異化できないもの。 |
| 商品単体・材料のみ | 単なる「材料」や「市販商品」であり、それを用いた「工法(施工方法)」として体系化されていないもの。 |
| 未検証の技術 | アイデア段階であり、実証データや試験結果がなく、実際に効果が発揮されるか確認できないもの。 |
NETIS登録のメリットとコスト・手間の比較検討
NETIS登録は強力な営業ツールになりますが、申請準備には多大な労力を要します。得られるメリットと発生するコストを天秤にかけ、自社で対応するか専門家に依頼するかを判断するための基準を提示します。
公共工事入札における加点などのメリット
NETIS登録技術を持つことは、建設業界において大きなアドバンテージとなります。
- 総合評価落札方式での評価
公共工事の入札時に技術提案を行う際、NETIS登録技術を活用することで、技術評価点が加算され、落札の可能性が高まります。 - 工事成績評定への影響
施工段階で登録技術を活用し、その効果が認められれば、工事成績評定点がアップし、次回の入札参加資格等に有利に働きます。
書類作成にかかる工数と外部委託の検討
申請には専門的な知識と膨大な作業時間が必要です。自社リソースと外部委託のバランスを検討してください。
表:自社申請と代行申請の比較
| 項目 | 自社で申請する場合 | 代行(コンサル)に依頼する場合 |
|---|---|---|
| コスト(金銭) | 人件費のみ(実費は低額) | 数十万円〜百万円程度(依頼範囲による) |
| 手間・工数 | 非常に多い(数百時間規模) | 少ない(データ提供と確認が主) |
| 登録の確度 | ノウハウがない場合、低い | 経験豊富なプロが行うため、高い |
| 社内への蓄積 | 申請ノウハウが蓄積される | ノウハウは蓄積されにくい |
まとめ
NETISへの登録は、技術の信頼性を高め、公共工事の入札において有利な立場を築くために非常に有効な手段です。しかし、その登録には様式1〜4をはじめとする膨大な書類と、技術の優位性を裏付ける客観的なエビデンスが不可欠です。
特に審査の要となるのは、従来技術との定量的な比較と第三者機関による証明です。これらを論理的に組み立て、審査員に分かりやすく伝える資料作成能力が求められます。申請作業は長期戦となるため、社内リソースだけで対応するか、外部の専門家を活用するか、自社の状況に合わせて計画的に準備を進めてください。
NETISに関するよくある質問
Q. NETIS登録までにどのくらいの期間がかかりますか?
準備開始から登録まで、平均して半年〜1年程度かかります。
書類作成に数ヶ月、申請後の審査・修正対応に数ヶ月を要するためです。地方整備局の混雑状況によっても変動します。余裕を持ったスケジュールが必要です。
Q. 登録にあたって費用は発生しますか?
国土交通省への申請審査料自体は無料です。
ただし、以下の費用が発生する可能性があります。
- 書類作成コスト:社内の人件費、または外部コンサルタントへの委託費用。
- 実証実験・試験費用:データの裏付けをとるための外部試験機関への依頼費用。
- 掲載料(登録後):掲載期間延長などに関連して、情報提供者(登録企業)に一部負担金が発生する仕組みが導入されています(詳細な運用は最新のガイドラインをご確認ください)。
Q. 活用実績がなくても申請できますか?
原則として、現場での活用実績データが必要です。
しかし、実績がない技術向けに「試行申請型」といった枠組みや、特定の条件下での登録制度が設けられている場合があります。実績がない場合は、まず各地方整備局の相談窓口へ「実績を作るための方法」を含めて相談することをお勧めします。
[出典:国土交通省 NETIS(新技術情報提供システム)公式ウェブサイト]
[出典:国土交通省 各地方整備局 新技術活用・NETIS申請ガイドライン]





