NETISの登録対象となる技術の判断基準とは?

この記事の要約
- NETIS登録には新規性・有用性・実用性の3要素が必須要件
- 既に標準化された技術や工事に関係ない物品は登録対象外
- 登録により公共工事の入札加点や企業評価向上が期待できる
- 目次
- NETISの登録対象となる「新技術」の基本定義
- 国土交通省が定める「新技術」とは
- NETIS登録が必要とされる背景と仕組み
- NETIS登録において重要視される3つの判断基準
- 1. 技術の新規性(従来技術との差異)
- 2. 技術の有用性(現場へのメリット)
- 3. 技術の実用性と信頼性
- NETISに登録できない技術・対象外となるケース
- 既に一般化している技術(標準技術)
- 建設工事に直接関係のない技術や物品
- NETIS登録を目指す際の懸念点と登録のメリット比較
- 登録にかかるコストや手間に対する不安
- NETIS登録によって得られる競争優位性
- まとめ:確実な登録に向けた準備のポイント
- よくある質問
- Q1. 特許を取得していない技術でもNETISに登録できますか?
- Q2. 開発中の技術はNETISの登録対象になりますか?
- Q3. NETIS登録の審査基準は公開されていますか?
NETISの登録対象となる「新技術」の基本定義
公共工事において品質向上やコスト削減を実現するために、国土交通省が運用しているのが「新技術活用システム(NETIS)」です。多くの建設関連企業が「自社で開発した技術は登録対象になるのか」と悩みますが、その判断基準は公的なガイドラインによって明確に定義されています。本セクションでは、NETISにおける「新技術」の定義と、登録が必要とされる背景について解説します。
国土交通省が定める「新技術」とは
国土交通省における「新技術」とは、「公共工事等において活用する、新しい技術全般」を指します。これは単に「開発されたばかりの技術」という意味ではなく、従来の標準的な技術と比較して、何らかの優位性を持つものが該当します。
具体的には、従来技術と比べて以下のような改善が見込めるものが「新技術」として扱われます。
- NETISにおける「新技術」の要件
- 品質の確保・向上
構造物の耐久性アップや初期欠陥の防止など、完成物の質を高める技術。 - コストの縮減
初期費用(イニシャルコスト)や維持管理費(ランニングコスト)の削減につながる技術。 - 施工の効率化
工期の短縮、省人化、施工手順の簡素化を実現する技術。 - 安全性の向上
作業員の事故リスク低減や、危険作業の無人化・ロボット化に資する技術。 - 環境保全
騒音・振動の抑制、リサイクル推進、CO2排出削減などに寄与する技術。
- 品質の確保・向上
これらはNETIS登録における最も基本的な概念です。技術がどれだけ革新的であっても、公共工事の現場課題を解決する要素がなければ、NETIS上の「新技術」とは認められません。
NETIS登録が必要とされる背景と仕組み
NETIS(New Technology Information System)は、有用な新技術の情報をインターネット上で公開・共有し、公共工事での活用を促進するためのデータベースシステムです。
民間企業にとっては、開発した技術を全国の発注者(国や自治体)や施工業者にアピールするための「公共工事への入り口」としての役割を果たしています。一方、発注者側にとっては、現場の課題を解決するための技術を効率よく検索・選定するためのツールとなります。
登録された技術は、申請情報に基づき審査され、NETIS番号が付与されて公開されます。これにより、技術の信頼性が担保され、現場導入のハードルが下がる仕組みとなっています。

NETIS登録において重要視される3つの判断基準
NETISへの登録可否を分けるのは、主に「新規性」「有用性」「実用性」という3つの柱です。これらは審査において厳密にチェックされるポイントであり、申請書類を作成する上での核となります。ここでは、それぞれの基準の定義と、審査においてどのような根拠資料が求められるかを解説します。
1. 技術の新規性(従来技術との差異)
新規性とは、既存の標準的な技術と比較して「何が新しいのか」という点です。単に「新しい製品である」というだけでは不十分で、技術的な観点からの差異を論理的に説明する必要があります。
- 新規性を証明するための4つの視点
- 1. 原理・理論
どのような科学的・工学的根拠に基づいているか。 - 2. 形状・構造
従来品と比べて形状や構造にどのような工夫があるか。 - 3. 材料・材質
使用している素材が従来とどう異なり、どう機能するか。 - 4. 施工方法
手順や使用機械において、どのような変更点があるか。
- 1. 原理・理論
なお、特許の取得は必須条件ではありません。特許がなくても、従来技術との差異が明確であり、その技術情報が公開可能であれば、新規性は認められます。重要なのは「独自性」と「他技術との差別化」です。
2. 技術の有用性(現場へのメリット)
有用性とは、その技術を公共工事に適用することで得られる「具体的なメリット」のことです。新規性があっても、現場にとってプラスの効果がなければ登録の意義はありません。
有用性は、主に以下の5つの指標に基づいて評価されます。申請時には、これらの指標について、定量的(数値)または定性的(文章)な根拠を示す必要があります。
以下の表は、有用性の評価項目と、それを証明するために有効なデータ例をまとめたものです。
| 評価項目 | 期待される効果 | 証明のためのデータ例 |
|---|---|---|
| 経済性 | コスト削減、LCCの低減 | 従来工法との詳細な見積比較表(歩掛含む)、ライフサイクルコスト計算書 |
| 工程 | 工期短縮、施工能力向上 | 単位時間あたりの施工量データ、工程表の比較シミュレーション |
| 品質 | 耐久性向上、品質確保 | 公的機関による強度試験成績書、成分分析結果、促進耐候性試験データ |
| 安全性 | 事故防止、作業員負担軽減 | 騒音・振動の測定データ、粉塵量測定結果、作業員の心拍数や負荷計測データ |
| 施工性 | 手順簡素化、省人化 | 施工手順比較図、現場での作業時間計測データ、技能資格の要不要比較 |
例えば、「経済性」をアピールする場合、「従来工法と比較して材料費を20%削減可能」といった具体的な数値データが強力な根拠となります。これらのデータは、自社試験だけでなく、第三者機関による試験結果があるとより信頼性が高まります。
3. 技術の実用性と信頼性
実用性とは、その技術が「実際の現場で問題なく使用できるレベルに達しているか」という判断基準です。NETISは実験場ではなく、実現場での活用を目的としているため、以下の点が厳しく問われます。
- 積算根拠の有無
施工にかかる費用(歩掛)が明確に算出できるか。見積もりがどんぶり勘定ではなく、材料費、労務費、機械損料などが体系化されている必要があります。 - 施工要領書の整備
特定の熟練工でなくとも、一定の品質が保てる手順書があるか。安全管理や品質管理のポイントが明記されていることが求められます。 - 実績データの裏付け
過去の試験施工や民間工事での実績データがあるか。机上の計算だけでなく、実際の土や構造物に対して機能したという事実が必要です。
不確定要素が多く、現場での挙動が予測できない「実験段階」の技術は対象外となります。あくまで、公共工事の発注者が安心して採用できるだけの信頼性と完成度が求められます。
NETISに登録できない技術・対象外となるケース
すべての技術がNETISに登録できるわけではありません。基準を満たしていないものや、制度の趣旨に合わないものは登録対象外となります。申請準備を無駄にしないためにも、あらかじめ「登録できないケース」を把握しておくことが重要です。
既に一般化している技術(標準技術)
NETISはあくまで「新技術」を普及させるためのシステムです。したがって、既に公共工事の共通仕様書などで「標準」とされている技術は登録できません。
例えば、数十年前には新技術だったものでも、現在では当たり前に使われている工法は「標準技術」とみなされます。また、かつてNETISに登録されていた技術であっても、所定の掲載期間(通常は最大10年程度)を経て評価が定着し、NETIS掲載が終了したものも、再度の新規登録はできません。
建設工事に直接関係のない技術や物品
NETISの対象は「公共工事の施工等に資する技術」です。工事現場で使用するものであっても、施工そのものに直接寄与しないものは対象外となる可能性が高いです。
以下の表で、登録対象となるものと、対象外となる可能性が高いものを比較します。
| 比較項目 | 登録対象となる可能性が高いもの | 登録対象外となる可能性が高いもの |
|---|---|---|
| 技術の完成度 | 現場での実証データ・施工実績がある | 机上の空論のみで、実証データがない |
| 適用範囲 | 公共工事の施工・調査・設計に活用できる | 工事とは無関係な事務作業や福利厚生関連(単なる事務用品など) |
| 従来技術との差 | 性能向上やコスト削減の根拠が明確 | 従来品と機能が変わらず、名前を変えただけ |
| 権利関係 | 技術内容が公開可能で権利関係が整理済み | 特許係争中や、技術詳細を一切公開できない(ブラックボックス化) |
| 普及状況 | まだ標準化されていない新しい技術 | 既に仕様書で指定されている一般的な技術 |
特に、「販売のみを目的とするもの」で、技術的な付加価値(工数削減など)が証明できない単なる物品販売は登録が難しいため注意が必要です。
NETIS登録を目指す際の懸念点と登録のメリット比較
NETIS登録を検討する際、多くの企業がコストや手間について懸念を抱きます。しかし、公共工事市場におけるメリットは非常に大きいため、コストと効果を天秤にかけて判断する必要があります。ここでは、よくある懸念点と具体的なメリットを対比します。
登録にかかるコストや手間に対する不安
NETISの登録審査自体には費用はかかりません(国への手数料は無料)。しかし、登録に至るまでの準備には相応の社内リソースが必要です。
- 申請書類の作成工数
様式に従った詳細な技術説明資料を作成する必要があります。 - データ収集の手間
従来技術との比較データの測定・集計や、場合によっては追加の試験施工が必要です。 - 審査期間
申請から登録まで数ヶ月〜半年程度の期間を要します。
NETIS登録によって得られる競争優位性
登録によって得られるメリットは、単なる知名度向上にとどまりません。入札制度や企業評価に直結する実利があります。
- NETIS登録の3大メリット
- 1. 入札時の加点評価
総合評価落札方式において、NETIS登録技術の活用を提案することで、技術評価点に加点がなされる場合があります。価格競争だけでなく技術力での受注が可能になります。 - 2. 工事成績評定へのプラス影響
実際に現場でNETIS技術を活用し、その効果が認められれば、工事完了後の成績評定点がアップします。これは次回の入札参加資格ランクにも好影響を与えます。 - 3. プロモーション効果
国土交通省のデータベースに掲載されることで、全国のコンサルタントや建設会社が技術を検索できるようになり、営業活動の自動化・効率化につながります。
- 1. 入札時の加点評価
まとめ:確実な登録に向けた準備のポイント
NETISの登録対象となる技術の判断基準は、主に「新規性(従来との違い)」「有用性(メリット)」「実用性(信頼性)」の3点に集約されます。単に新しい技術であるだけでなく、公共工事が抱える課題(コスト縮減、安全性向上、環境保全など)を解決する具体的な効果が求められます。
- NETIS登録に向けた重要ポイント
- 判断基準の3要素を網羅する
「新規性」「有用性」「実用性」のすべてにおいて、客観的な説明ができるかを確認する。 - 対象外ケースを避ける
既に標準化された技術や、工事に直接寄与しない物品ではないか見直す。 - 証明データを揃える
数値データ、試験成績書、現場比較写真など、第三者が納得できる根拠を用意する。
- 判断基準の3要素を網羅する
NETIS登録は準備に手間がかかりますが、公共工事市場における競争力を高めるための強力な手段です。まずは自社技術の強みを棚卸しし、登録要件に合致するかどうかを確認することから始めましょう。
よくある質問
最後に、NETIS登録に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。申請前の最終確認としてご活用ください。
Q1. 特許を取得していない技術でもNETISに登録できますか?
可能です。特許の有無はNETIS登録の必須条件ではありません。ただし、技術の内容を一般に公開する必要があるため、ノウハウの流出を防ぎたい場合は、事前に特許出願等で権利保護をしておくことが望ましい場合もあります。重要なのは、技術の権利関係が整理されており、第三者が利用可能な状態であることです。
Q2. 開発中の技術はNETISの登録対象になりますか?
原則として、まだ実用段階に達していない開発中の技術は登録できません。NETISは「公共工事ですぐに活用できる技術」を対象としています。したがって、現場での適用が可能であり、積算基準(コスト計算の根拠)や施工要領書(作業手順)が整備されている必要があります。
Q3. NETIS登録の審査基準は公開されていますか?
はい、公開されています。国土交通省や各地方整備局のWebサイト等で、「新技術活用システム実施要領」や「申請の手引き」といった公式資料がダウンロード可能です。これらの資料には、審査の流れや評価項目、申請書の書き方が詳細に記載されていますので、申請前には必ず一次情報として確認することをお勧めします。
[出典:国土交通省「公共工事等における新技術活用システム」]
[出典:国土交通省「新技術活用システム実施要領」]
[出典:国土交通省「新技術活用システム申請の手引き」]





