NETIS登録後の更新審査とは?継続基準と対応方法を解説

この記事の要約
- NETIS掲載は原則5年だが事後評価で最大10年まで延長可能
- 更新審査では活用効果調査票に基づく現場での実績評価が最重要
- 継続掲載は入札加点の利点がある一方事務負担も考慮が必要
- 目次
- NETISの掲載期間に関する基本ルールと更新の仕組み
- 原則となる掲載期間と最大掲載期間
- NETISにおける「更新」と「事後評価」の違い
- NETISの継続掲載(期間延長)が認められるための審査基準
- 活用効果調査票に基づく評価の仕組み
- 掲載期間の延長が認められる具体的な要件
- NETIS更新(事後評価)の手続き手順と必要書類
- 申請に必要な書類とデータ作成のポイント
- 申請のタイミングとスケジュール感
- NETIS掲載を継続するメリットと維持にかかるコストの比較
- 掲載継続による公共工事へのメリット
- 更新手続きの負担とデメリット
- NETISの掲載が終了した後の技術情報の扱い
- 掲載期間終了後の「掲載終了技術」リストへの移行
- 新技術情報提供システム上での検索と表示の変化
- まとめ:NETIS更新は事前の実績作りと期限管理が重要
- よくある質問
- Q. NETISの更新審査に費用はかかりますか?
- Q. 活用実績が全くない場合でも期間延長は可能ですか?
- Q. 旧制度(VE・VRなど)で登録された技術の更新はどうなりますか?
NETISの掲載期間に関する基本ルールと更新の仕組み
NETIS(新技術情報提供システム)への登録は、技術が認められた証であると同時に、継続的な評価プロセスの始まりでもあります。多くの技術開発者が誤解しがちな点ですが、一度登録された技術が永久に掲載され続けるわけではありません。ここでは、制度上の原則的な掲載期間と、期間を延長するための仕組みについて解説します。
原則となる掲載期間と最大掲載期間
NETISにおける技術の掲載期間は、技術の陳腐化を防ぎ、常に新しい技術情報を流通させるために厳格に定められています。登録された技術は、原則として登録日の翌年度から起算して5年間公開されます。この期間内に所定の手続きを行うことで、掲載期間を延長することが可能です。
期間に関する主なルールは以下の通りです。
- 掲載期間の規定
- 当初の掲載期間
原則5年です(登録日の翌年度4月1日から起算)。この期間は、特別な手続きなしにNETIS上で技術情報が公開されます。 - 最大掲載期間
継続申請(事後評価)を経て認められた場合、最大で10年まで延長可能です。これがNETISにおける掲載の事実上の上限となります。 - 例外的な措置
有用な新技術として特定の推奨技術選定を受けた場合など、一部例外的に期間が延長されるケースもありますが、基本的には10年が一つの区切りとなります。
- 当初の掲載期間
掲載期間が終了した技術は、通常の検索結果からは非表示となり、「掲載終了技術」としてアーカイブされます。したがって、自社技術を現役の選択肢として提示し続けるためには、期限管理が非常に重要です。
NETISにおける「更新」と「事後評価」の違い
一般的に「NETISの更新」と呼ばれる手続きですが、行政上の正式名称や実務上の手続きでは「事後評価」という用語が使われます。単に期間を自動更新する手続きではなく、登録後の活用実績に基づいて技術を再評価するプロセスだからです。
この違いを理解することは重要です。「更新」というと事務的な手続きのみを想像しがちですが、「事後評価」は技術の実効性や現場への適合性を改めて審査される場です。
- 更新(一般的な呼称)
掲載期間を延ばすこと全般を指す言葉として使われます。 - 事後評価(正式な手続き)
活用効果調査票などのデータを基に、地方整備局等が技術の評価を確定させ、その結果として掲載期間の延長可否を決定するプロセスです。
つまり、期間を延長するためには、単なる申請書の提出だけでなく、「評価に値する実績データの提示」が必須条件となります。
NETISの継続掲載(期間延長)が認められるための審査基準
掲載期間を延長するためには、国土交通省の各地方整備局等に設置された新技術活用評価会議による審査を通過する必要があります。この審査は形式的なものではなく、具体的な基準に基づいて行われます。ここでは、審査の核となる「活用効果調査票」の役割と、延長が認められるための具体的な要件について解説します。

活用効果調査票に基づく評価の仕組み
審査において最も重視されるのが、「活用効果調査票」の内容です。これは、実際にその新技術が使用された工事現場から得られた評価データの集合体です。
NETISに登録された技術が現場で活用されると、発注者や施工者によって「従来技術と比べてどうだったか」という評価が行われます。このデータが「活用効果調査票」として蓄積されます。審査員はこのデータを基に、以下の点を確認します。
- 経済性
コスト縮減効果が確認できるか(例:従来技術比で10%削減など) - 工程
工期短縮効果があるか(例:作業日数が〇日短縮されたか) - 品質・出来形
品質が向上しているか、または同等以上か - 安全性
施工時の安全性が高まっているか(例:高所作業の削減など) - 施工性
作業効率や環境への配慮は十分か
実績データが不足している場合や、評価内容(改善効果など)が曖昧な場合、十分な評価ができず、期間延長が認められないリスクが高まります。したがって、登録直後から積極的に現場導入を働きかけ、質の高い活用効果調査票を集めることが対策の基本となります。
掲載期間の延長が認められる具体的な要件
事後評価の結果、技術はいくつかの区分に判定され、それに応じて掲載期間が決定します。継続掲載(期間延長)を勝ち取るためには、以下の基準をクリアする必要があります。
以下の表は、事後評価の結果と継続掲載の要件を整理したものです。
| 判定区分 | 概要 | 必要な要件・基準 | 今後の扱い |
|---|---|---|---|
| 継続掲載(評価済み技術など) | 技術の有用性が確認され、掲載期間が延長される | ・十分な数の活用効果調査票が提出されていること ・経済性、安全性などの指標で従来技術と同等以上の評価を得ていること ・技術の安定性が確認されていること |
最大10年まで掲載継続。技術名称に「-V」などが付与される場合がある。 |
| 掲載終了 | 期間満了によりNETISでの公開を終了する | ・所定の期間内に十分な活用実績が得られなかった場合 ・評価の結果、従来技術に対する優位性が確認できなかった場合 ・申請者が継続を希望しない場合 |
「掲載終了技術リスト」へ移行。通常の検索では表示されにくくなる。 |
| 要改善 | 技術に課題があり、改善が求められる | ・活用実績において、安全性や品質に重大な問題が指摘された場合 | 指摘事項の改善が確認されるまで、または期間満了にて掲載終了となる可能性がある。 |
[出典:国土交通省「NETIS実施要領」等の規定に基づく一般的な分類]
重要なのは、単に「使われた」という実績だけでなく、「効果が確認された」という質的な評価が必要である点です。
NETIS更新(事後評価)の手続き手順と必要書類
NETISの更新(事後評価申請)は、しかるべきタイミングで適切な書類を提出する必要があります。手続きが遅れると、審査が間に合わずに掲載期間が終了してしまう恐れがあります。ここでは、実務担当者が押さえておくべき申請の手順と、準備すべき書類についてステップ形式で解説します。
申請に必要な書類とデータ作成のポイント
事後評価の申請には、当初の登録時とは異なる書類の準備が必要です。特に、技術の仕様に変更があった場合や、実績データの集計には注意が必要です。主な必要書類と作成のポイントは以下の通りです。
- 主な申請書類と作成ポイント
- 変更届出書
登録内容(会社所在地、連絡先、技術の細かな仕様など)に変更がある場合に提出します。特になくても提出を求められる場合があります。 - 活用効果調査票(実績データ)
これまで収集した現場ごとの評価シートです。これらをとりまとめ、指定の様式で提出します。
ポイント:数値データ(「○%の工期短縮」「○円のコストダウン」など)を明確にし、客観的な根拠を示すことが重要です。 - 技術概要説明資料の修正版
実績を踏まえて、技術の特徴や適用範囲を見直した資料です。
ポイント:当初の想定と実際の現場での適用結果に乖離がある場合、より実態に即した内容に修正します。
- 変更届出書
これらの書類は、NETISのオンラインシステム等を通じて、または管轄の地方整備局技術事務所へ提出します。
申請のタイミングとスケジュール感
掲載期限ギリギリになってから準備を始めると、実績データの収集や資料作成が間に合いません。理想的なスケジュール感を持って動くことが不可欠です。
推奨される準備スケジュールは以下の通りです。
- 1. 掲載期限の1年前〜半年前
実績データの棚卸しを行います。不足している場合は、営業部門と連携して直近の現場からのデータ回収を急ぎます。 - 2. 掲載期限の6ヶ月前
管轄の地方整備局へ相談を行い、申請の意向を伝えます。具体的な提出期限を確認します。 - 3. 掲載期限の3ヶ月前
申請書類一式を提出します。修正指示が入る可能性があるため、余裕を持つことが大切です。 - 4. 掲載期限まで
審査(新技術活用評価会議など)が行われ、結果が通知されます。
特に年度末は審査機関が繁忙期となるため、早めのアクションが推奨されます。
NETIS掲載を継続するメリットと維持にかかるコストの比較
「手間をかけてまでNETISの掲載を更新すべきか?」と迷う企業も少なくありません。更新には事務的な負担がかかりますが、それに見合うメリットがあるかどうかが判断の分かれ目となります。ここでは、公共工事におけるメリットと、維持管理にかかるコストや負担を比較し、意思決定の材料を提供します。

掲載継続による公共工事へのメリット
NETIS掲載を継続する最大のメリットは、公共工事の入札および施工時における評価です。掲載が続いている技術は、発注者にとって「現在進行形で利用可能かつ、一定の評価を得ている技術」として認識されます。
- 総合評価落札方式での加点
企業の技術力を評価する項目において、NETIS登録技術の活用提案は加点対象となるケースが多くあります。掲載が継続していれば、提案の選択肢として使い続けることができます。 - 工事成績評定への反映
実際の工事でNETIS技術を活用し、良好な結果を出せば、工事成績評定で加点されます。これは次回の入札参加資格や等級格付けに影響する重要な要素です。 - 技術指定の継続
発注者指定型の技術として採用されている場合、掲載が終了すると指定から外れるリスクがあります。
更新手続きの負担とデメリット
一方で、継続にはコストもかかります。金銭的な費用(登録料など)だけでなく、人的なリソースも考慮する必要があります。
以下の表は、NETIS掲載継続のメリットと負担の比較を整理したものです。
| 比較軸 | 掲載を継続する場合(事後評価通過) | 掲載を終了する場合(更新せず) |
|---|---|---|
| 公共工事での評価 | ・入札時の技術提案で加点が見込める ・工事成績評定での加点対象となる ・発注者へのPR材料として有効 |
・NETIS活用の加点対象から外れる(※一部例外あり) ・「最新技術」としての提案力が低下する |
| 営業効果 | ・NETIS検索での露出が維持される ・顧客(建設会社・コンサル)からの信頼性が保たれる |
・NETIS上での検索順位や表示形式が不利になる ・カタログ等での「NETIS登録」の表記に注釈が必要になる |
| 事務負担 | ・定期的な活用実績の収集と報告が必要 ・事後評価資料の作成工数がかかる |
・更新手続きの事務負担はなくなる ・実績データの報告義務がなくなる |
| 費用対効果 | ・公共工事を主要ターゲットとするなら効果は大 ・実績が増えるほど「評価済み技術」としてブランド化できる |
・民間工事が主体であれば、終了しても影響は限定的 ・維持コストを削減できる |
この比較からわかるように、公共工事の受注拡大を目指すのであれば、事務負担を背負ってでも継続するメリットは大きいと言えます。
NETISの掲載が終了した後の技術情報の扱い
何らかの理由で更新審査に通らなかった場合、あるいは戦略的に更新を行わなかった場合、その技術情報はNETISから完全に消去されるわけではありません。しかし、情報の扱われ方は大きく変化します。ここでは、掲載期間終了後のステータスである「掲載終了技術」について解説します。
掲載期間終了後の「掲載終了技術」リストへの移行
掲載期間(原則5年、最大10年)を満了した技術、または更新手続きを行わなかった技術は、「掲載終了技術」という区分に移行します。
これは、技術そのものが否定されたわけではなく、「NETISによる積極的な情報提供期間を終えた」という位置付けです。データベース上には情報が残りますが、以下の点が変わります。
- リストへの移動
通常の検索結果とは別のアーカイブ的なリストで管理されます。 - 情報の固定化
原則として、技術情報の更新や追加ができなくなります。 - 評価の扱い
掲載終了技術であっても、過去の実績として参照することは可能ですが、入札時の加点対象としての扱いは発注者の判断により異なり、現役の登録技術に比べて不利になる場合が一般的です。
新技術情報提供システム上での検索と表示の変化
NETISのWebサイト上で技術検索を行う際、デフォルトの設定では「掲載期間中の技術」が優先的に表示される仕組みになっています。掲載終了技術を探すためには、検索条件で明示的に「掲載終了技術を含む」といったチェックを入れる必要があります。
このため、ユーザー(発注者や施工業者)の目に触れる機会は激減します。新しい顧客を開拓するためのツールとしての機能は、掲載終了とともに大幅に低下すると考えるべきです。ただし、すでにその技術を知っているリピーターが仕様を確認するために参照することは可能です。
まとめ:NETIS更新は事前の実績作りと期限管理が重要
NETIS登録技術の更新(事後評価による期間延長)について解説しました。ポイントを整理します。
- NETIS更新の重要ポイント
- 更新の本質は「評価」
単なる期間延長ではなく、現場での活用実績に基づく技術評価であることを理解する必要があります。 - 実績データの質と量
継続掲載を勝ち取るには、「活用効果調査票」による客観的な効果の実証が不可欠です。 - 早めの準備
掲載期限の半年〜1年前から実績の棚卸しと書類準備を開始し、期限切れを防ぐスケジュール管理が重要です。
- 更新の本質は「評価」
NETISは登録して終わりではなく、育てていくシステムです。継続的な掲載によって技術の信頼性を高め、公共工事での採用機会を最大化するために、計画的な更新対策を行いましょう。
よくある質問
NETISの更新審査に関する、技術担当者からのよくある質問をまとめました。
Q. NETISの更新審査に費用はかかりますか?
A. 基本的に、NETISの登録申請および事後評価(更新審査)の手続き自体に対して、国へ支払う審査料や登録料などの費用はかかりません。ただし、申請書類の作成にかかる人件費や、外部コンサルタントに依頼する場合の委託費、技術の性能試験などにかかる実費は申請者の負担となります。
Q. 活用実績が全くない場合でも期間延長は可能ですか?
A. 原則として、活用実績がない(活用効果調査票が提出されていない)場合、期間延長は認められません。NETISは有用な新技術の普及を目的としているため、現場での適用実績と評価が審査の必須条件となります。実績がないまま期限を迎えると、掲載終了となる可能性が高いため、早期に試験施工などで実績を作ることが重要です。
Q. 旧制度(VE・VRなど)で登録された技術の更新はどうなりますか?
A. 過去の運用において登録番号に「-VE」や「-VR」などが付与されていた技術についても、現在は新しい実施要領に基づいて評価・管理されています。掲載期間のルールも現行規定が適用されるため、所定の期間を経過していれば事後評価の対象、あるいは掲載終了の対象となります。個別の状況については、管轄の地方整備局等への確認が推奨されます。
[出典:国土交通省「公共工事等における新技術活用システムガイドライン」「NETIS実施要領」]





