NETIS対応製品を選ぶ際のチェックポイントとは?3つの視点を解説

この記事の要約
- NETIS対応製品を選ぶ際の3つの重要な視点を解説
- 信頼性・課題解決・導入運用の観点からチェック
- NETISの評価(VE/VR)の見方や注意点も網羅
- 目次
- NETISとは? まず押さえたい基本知識
- NETIS(新技術情報提供システム)の概要と目的
- NETIS登録のメリット
- 【比較】NETIS登録製品とNETIS「対応」製品の違い
- NETIS対応製品を選ぶ際の基本的な考え方
- なぜNETIS対応製品が注目されるのか?
- 選定前に抱きがちな不安や疑問点(読者の不安)
- 【視点1】NETIS情報の「信頼性」を見極めるチェックポイント
- 1. 登録ステータス(技術区分)を確認する
- 2. 事後評価(活用効果評価)の内容を精査する
- 3. 登録情報の有効期限を確認する
- 【視点2】「自社の課題解決」に繋がるか判断するチェックポイント
- 1. 解決したい現場の課題を明確にする
- 2. NETIS技術の「適用範囲」と「適用条件」を確認する
- 3. 他の技術や従来工法との比較検討を行う
- 【視点3】「導入・運用」のスムーズさを確認するチェックポイント
- 1. コスト(イニシャル・ランニング)の妥当性を評価する
- 2. サポート体制や教育(研修)の有無を確認する
- 3. 導入に必要な準備や期間を把握する
- NETIS対応製品を選ぶ際の注意点
- 「NETIS登録=万能」ではないことを理解する
- メーカーの「NETIS対応」という言葉の精査
- 最新情報のキャッチアップ
- まとめ:3つの視点で最適なNETIS対応製品を選ぼう
- NETISに関するよくある質問(Q&A)
- Q. NETISデータベースは誰でも閲覧できますか?
- Q. 公共工事以外でNETIS対応製品を使うメリットはありますか?
- Q. 評価が「V(活用評価未実施)」の技術は選ばない方が良いですか?
NETISとは? まず押さえたい基本知識
NETIS(新技術情報提供システム)は、新技術の活用を促進するための国土交通省のデータベースです。公共工事の品質確保や生産性向上を目指す上で、このシステムの理解は欠かせません。まずは、NETIS対応製品を選ぶ上で知っておくべき基本的な仕組みと用語を正確に理解しましょう。
NETIS(新技術情報提供システム)の概要と目的
NETIS(New Technology Information System:ネティス)とは、国土交通省が運営する、公共工事などにおける新技術の活用を促進するためのデータベースシステムです。
その主な目的は以下の通りです。
・ 優れた新技術の情報を共有し、現場での積極的な活用を促す
・ 開発者、発注者、受注者間で新技術に関する情報を広く共有する
・ 新技術の導入により、公共工事の品質を確保・向上させる
・ 生産性向上に寄与する技術を活用し、コスト縮減や工期短縮を図る
このデータベースには、申請・登録された新技術の概要、特徴、適用範囲、評価情報などが集約されています。
[出典:NETIS(新技術情報提供システム)の概要(国土交通省)]
NETIS登録のメリット
NETISへの登録・活用は、関わる立場ごとに異なるメリットをもたらします。
・ 発注者(国や地方自治体など)のメリット
・ 公共工事の品質向上や信頼性の確保
・ 工期短縮やライフサイクルコストを含めたコスト縮減
・ 安全性の向上や環境負荷の低減
・ 受注者(施工業者など)のメリット
・ 公共工事の入札における技術提案での優位性
・ 工事成績評定での加点対象となる(活用効果調査表の提出など条件あり)
・ 企業の技術力をアピールでき、競争力が向上する
・ 施工の効率化、安全性向上による現場の負担軽減
・ 開発者(メーカーなど)のメリット
・ 開発した新技術の普及促進と認知度向上
・ データベースへの登録による技術的な信頼性の獲得
・ 活用実績や評価のフィードバックによる更なる技術改良
[出典:NETIS 活用マニュアル(令和6年4月版)P.5, P.13(国土交通省)]
【比較】NETIS登録製品とNETIS「対応」製品の違い
NETIS関連製品を選定する際、「登録製品」と「対応製品」という言葉が出てくることがあります。これらは似ているようで意味が異なる場合があるため、注意が必要です。
「対応」という表現は、メーカー独自の表現である可能性があり、必ずしもNETISの正式な登録・評価を受けた製品そのものを指すとは限りません。
以下の表は、両者の違いを整理したものです。
表:NETIS「登録」と「対応」の比較
| 比較項目 | NETIS登録製品 | NETIS「対応」製品(とされるもの) |
|---|---|---|
| 定義 | NETISデータベースに正式に登録され、登録番号(例:KT-XXXXXX-A)が付与された技術・製品。 | NETIS登録技術の一部を利用している製品や、登録技術と組み合わせて使用する製品など、メーカー独自の表現の場合がある。 |
| 確認方法 | NETISデータベースで登録番号や技術名称が検索可能。 | 登録番号の有無、どのNETIS技術に基づいているかをメーカーに確認する必要がある。 |
| 注意点 | 登録情報(評価、期限)の確認が必要。 | 「対応」の根拠が明確か、自社の求める技術水準を満たすか慎重な判断が必要。 |
選定時には、その根拠となるNETIS登録番号を必ず確認しましょう。
NETIS対応製品を選ぶ際の基本的な考え方
NETIS対応製品を選ぶことは、単に「新しい技術だから良い」「加点対象だから使う」という短絡的な判断で行うべきではありません。最も重要なのは、その技術が「自社の現場にとって本当に価値があるか」を見極める基本的なスタンスです。
なぜNETIS対応製品が注目されるのか?
NETIS対応製品が多くの現場で注目され、活用が検討される理由は、主に以下の3点にあります。
- 公共工事における評価
前述の通り、公共工事の入札時や工事成績評定において、NETIS登録技術の活用が加点評価の対象となるため、受注者にとって直接的なメリットがあります。 - 信頼性と効果への期待
NETISに登録される技術は、申請時の審査や、活用後の事後評価(後述)が行われます。第三者による評価や実際の現場での活用実績があるため、一定の信頼性や効果が期待できます。 - 具体的な課題解決
多くのNETIS登録技術は、「工期短縮」「コスト削減」「安全性向上」「省人化」「環境負荷低減」など、建設現場が直面する具体的な課題を解決するために開発されています。
選定前に抱きがちな不安や疑問点(読者の不安)
一方で、NETIS対応製品の選定担当者からは、以下のような不安や疑問の声も聞かれます。この記事では、これらの不安を解消するための具体的なチェックポイントを解説します。
- 選定前に抱きがちな不安・疑問の例
・ 「NETISデータベースには技術が多すぎて、どれが自社に合うか分からない」
・ 「導入コストに見合う効果(費用対効果)が本当に出るのか不安」
・ 「NETISの評価にある『VE』や『VR』といった記号の意味がよく分からない」
・ 「メーカーが『NETIS対応』と言っているが、本当に信頼できる情報なのか」
【視点1】NETIS情報の「信頼性」を見極めるチェックポイント
NETIS対応製品を選ぶ最初のステップは、その技術情報が信頼に足るものかを確認することです。データベースには多くの技術が登録されていますが、全ての技術が同じ評価を受けているわけではありません。その「評価」と「ステータス」を確認することが信頼性を見極める第一歩です。
1. 登録ステータス(技術区分)を確認する
NETIS登録技術は、申請段階や評価状況によって技術区分(ステータス)が異なります。特に「VE(活用効果評価済み)」や「VR(活用評価実施・継続調査)」は、実際に活用された上で効果が評価された技術であり、信頼性の高い指標となります。
以下の表で、主な技術区分とその概要を確認しましょう。
表:NETISの主な技術区分
| 技術区分 | 名称 | 概要 | 選定時のポイント |
|---|---|---|---|
| A | 申請中 | 申請書類が受理され、掲載が開始された技術。 | 新しい技術だが、まだ第三者評価は行われていない。 |
| V | 活用評価未実施 | 登録後、一定期間経過したが、まだ活用効果評価が行われていない技術。 | - |
| VR | 活用評価実施・継続調査 | 活用効果評価が実施され、有用性が認められたが、さらなる調査が必要な技術。 | 一定の評価があるが、適用条件などに注意が必要。 |
| VE | 活用効果評価済み | 活用効果評価により、有用性が明確に認められた技術。 | 最も信頼性が高い区分の一つ。積極的に検討したい。 |
| (旧) | 旧登録 | 掲載期間が終了した技術(参考情報)。 | 原則として選定対象外だが、後継技術の参考になる場合も。 |
選定時は、まずこの技術区分を確認し、特に「VE」評価の技術を優先的に検討することが推奨されます。
2. 事後評価(活用効果評価)の内容を精査する
「VE」や「VR」の評価を受けた技術は、その根拠となる「事後評価(活用効果評価)」の内容がNETISデータベース上で公開されている場合があります。この内容を精査することで、技術の信頼性をより深く確認できます。
・ 確認ポイント1:どのような現場で使われたか
自社の現場と類似の条件(地盤、規模、工法など)で使われた実績があるかを確認します。
・ 確認ポイント2:どのような効果があったか
「工期が〇%短縮」「コストが〇円削減」といった定量的な効果と、「安全性が向上した」「作業負荷が軽減した」といった定性的な効果の両方を確認します。
・ 確認ポイント3:課題はなかったか
逆に、適用する上での課題や留意点(特定の条件下では効果が出にくいなど)が記載されていないかを確認します。
3. 登録情報の有効期限を確認する
NETISの登録情報には有効期限があります。原則として掲載期間は5年間であり、一定の条件を満たせば更新(最大10年)も可能ですが、期限が切れた技術は「(旧)」区分となり、公共工事での加点対象外となる可能性があります。
製品を選定する際は、その技術の登録ステータスが現在有効であるか、有効期限がいつまでかを必ず確認してください。
【視点2】「自社の課題解決」に繋がるか判断するチェックポイント
信頼性が確認できたNETIS対応製品であっても、それが自社の現場の課題とマッチしなければ、導入する意味はありません。優れた技術も「適材適所」でなければ効果を発揮できません。現場のニーズと技術の特性を正確に照らし合わせる視点が不可欠です。

1. 解決したい現場の課題を明確にする
まず、自社の現場が現在抱えている課題、あるいは今回の工事で特に重視する項目を明確にリストアップします。課題が具体的であるほど、技術選定の精度は高まります。
- 現場の課題(例)
・ 工期を短縮したい(特にこの工程)
・ 熟練工不足に対応するため、作業を省人化・省力化したい
・ 狭隘な場所での作業であり、安全性を最優先で向上させたい
・ 特定の工法による騒音や振動、環境負荷を低減したい
・ トータルコスト(人件費、材料費、工期全体)を削減したい
2. NETIS技術の「適用範囲」と「適用条件」を確認する
次に、検討しているNETIS技術が、明確にした課題を解決できるか、そして自社の現場に適用可能かを精査します。NETISデータベースやメーカーの技術資料には、必ず「適用範囲」や「適用条件」が記載されています。
・ 適用範囲の確認:
その技術が想定している工法、規模、用途に合っているか。
・ 適用条件の確認:
自社の現場の状況(例:地盤の種類、気象条件、周辺環境)で問題なく使用できるか。
・ 制約条件(使えない条件)の確認:
技術仕様書やメーカー資料を読み込み、「こういう条件下では使用不可」「この機材とは併用不可」といった制約がないかを確認します。
3. 他の技術や従来工法との比較検討を行う
NETIS対応製品の導入を検討する際は、必ず従来工法や他の類似技術(他のNETIS技術も含む)と比較検討を行います。その際、以下のような比較表を作成してメリット・デメリットを可視化すると、客観的な判断がしやすくなります。
表:技術・工法の比較検討(例)
| 比較項目 | 従来工法 | A技術(NETIS: VE) | B技術(NETIS: A) |
|---|---|---|---|
| コスト(イニシャル) | 低 | 高 | 中 |
| コスト(ランニング) | 高(人件費) | 低 | 中 |
| 工期 | 10日 | 7日(30%短縮) | 8日(20%短縮) |
| 品質・仕上がり | 標準 | 高 | 標準 |
| 安全性 | 要注意 | 高(遠隔操作) | 標準 |
| 課題・懸念点 | 熟練工が必要 | 初期費用、専用機材 | 新規技術で実績少 |
このように多角的に比較することで、コストが多少高くても工期短縮や安全性のメリットが大きい、といった戦略的な判断が可能になります。
【視点3】「導入・運用」のスムーズさを確認するチェックポイント
技術の信頼性を確認し、自社の課題にもマッチすると判断しても、最後の関門が「導入・運用」です。優れた技術でも、現場での導入や日々の運用に支障があれば、期待した効果は得られません。現実的に導入・運用できるかを具体的にチェックします。
1. コスト(イニシャル・ランニング)の妥当性を評価する
コストの検討は、導入時にかかる初期費用(イニシャルコスト)だけでは不十分です。
・ イニシャルコスト: 製品購入費、専用機材費、初期設定費、導入時研修費など。
・ ランニングコスト: 運用・維持管理費、消耗品費、ソフトウェアのライセンス料、保守サポート費など。
これらの総コストと、NETIS導入によって得られるコスト削減効果(工期短縮による人件費削減、材料費の削減、事故防止による損失回避など)を天秤にかけ、費用対効果を冷静に判断する必要があります。
2. サポート体制や教育(研修)の有無を確認する
新しい技術や製品を導入する際、メーカーや代理店のサポート体制は非常に重要です。サポートが手薄だと、導入したものの現場で使いこなせず、期待した効果が得られないリスクがあります。
・ 導入時サポート:
現場での設置指導や、スムーズな運用開始のための技術的なサポートが受けられるか。
・ トラブル時サポート:
万が一の不具合や操作ミスが発生した際、迅速に対応(電話、メール、現場訪問など)してくれるか。
・ 教育・研修:
実際に機材やソフトウェアを操作する作業員が、技術を正しく習得するための研修プログラムや分かりやすいマニュアルが用意されているか。
3. 導入に必要な準備や期間を把握する
選定したNETIS対応製品を実際に現場で使い始めるまでに、どのような準備がどれくらい必要かも確認します。これらを把握しておかないと、「使いたい時期に間に合わない」といった事態になりかねません。
・ 付随する機材・環境:
その製品を使うために、専用の重機、特殊な計測器、高性能なPC、特定のソフトウェア、安定した通信環境などが別途必要にならないか。
・ リードタイム:
メーカーに発注してから納品されるまでの期間はどれくらいか。
・ 準備期間:
納品後、現場でセットアップし、作業員が研修を受け、実際に運用開始できるまでにどれくらいの準備期間を見込むべきか。
NETIS対応製品を選ぶ際の注意点
これまで3つの視点(信頼性、課題解決、導入・運用)でチェックポイントを解説しましたが、それでも見落としがちな注意点があります。最終判断の前に、以下の点も確認してください。

「NETIS登録=万能」ではないことを理解する
NETISに登録されていること、特に「VE」評価であることは、信頼性の高い指標です。しかし、それが「あらゆる現場で万能な技術」であることを意味するわけではありません。
最も重要なのは、あくまで「自社の課題解決に合致するか」です。たとえVE評価であっても、自社の現場がその技術の「適用条件」から外れていれば、期待した効果は得られません。登録情報や評価は参考情報とし、最終的には自社の目で判断することが重要です。
メーカーの「NETIS対応」という言葉の精査
序盤の比較表でも触れましたが、メーカーが謳う「NETIS対応」という言葉には注意が必要です。
「対応」という表現が、正式な登録技術そのものを指しているのか、それとも登録技術の一部(例:ソフトウェアの一部機能、構成部品)に過ぎないのかを明確にする必要があります。必ず、根拠となるNETIS登録番号を確認し、データベース上でその技術内容を直接確認するようにしてください。
最新情報のキャッチアップ
NETISデータベースは、新しい技術が日々申請・登録され、既存の技術も評価やステータスが更新されています。
一度選定した技術が最適であり続けるとは限りません。より優れた新技術が登場していないか、あるいは検討中の技術の評価が変更(例:「A」から「VE」へ、または期限切れ)になっていないか、定期的に最新情報をキャッチアップする姿勢が求められます。
まとめ:3つの視点で最適なNETIS対応製品を選ぼう
NETIS対応製品を選定する際は、単に「登録されているか」「加点対象か」といった表面的な情報だけで判断するのではなく、本記事で解説した3つの視点から多角的かつ慎重にチェックすることが不可欠です。
- NETIS対応製品選定 3つの視点(まとめ)
- 【視点1】信頼性の視点:
登録ステータス(特にVE/VR)や事後評価の内容、有効期限を確認し、その情報が信頼できるかを見極める。 - 【視点2】課題解決の視点:
自社の現場の課題を明確にし、その技術の適用範囲や条件が、課題解決と現場の状況に本当にマッチするかを見極める。 - 【視点3】導入・運用の視点:
コスト(イニシャル・ランニング)、サポート体制、必要な準備期間など、現実的に導入・運用が可能かを見極める。
- 【視点1】信頼性の視点:
これらのチェックポイントを一つひとつクリアにしていくことで、単なる「新技術の導入」に終わらず、自社の生産性向上、品質確保、安全性向上に真に貢献する最適なNETIS対応製品を選定できるはずです。
NETISに関するよくある質問(Q&A)
NETIS対応製品の選定に関して寄せられる、よくある質問とその回答をまとめました。
Q. NETISデータベースは誰でも閲覧できますか?
A. はい、NETISの公式ウェブサイトは、利用登録なども不要で、誰でも無料で閲覧・検索が可能です。技術の概要、評価情報、メーカー情報などを確認できます。
Q. 公共工事以外でNETIS対応製品を使うメリットはありますか?
A. メリットはあります。NETISに登録されている技術は、新技術としての有用性や信頼性が一定レベルで確認されている(あるいは審査中である)ためです。民間工事においても、工期短縮、コスト削減、安全性向上、省人化といった課題解決の手段として、NETIS登録技術は非常に有効な選択肢となります。
Q. 評価が「V(活用評価未実施)」の技術は選ばない方が良いですか?
A. 一概にそうとは言えません。「V」は、まだ活用効果評価が行われていない段階(登録されたばかりの新しい技術など)を示します。「VE」や「VR」の方が活用実績に基づく信頼性は高いですが、「V」の技術でも自社の課題に非常にマッチする革新的な技術である可能性もあります。重要なのは、評価区分だけで判断せず、技術内容や適用条件をしっかり精査して判断することです。




