「キャリア」の基本知識

建設業界のキャリアとは?職種の種類や進路を解説


更新日: 2025/10/16
建設業界のキャリアとは?職種の種類や進路を解説

この記事の要約

  • 建設業界の平均年収549万円の根拠や将来性を解説。
  • 設計や施工管理など、多様な職種から適職が見つかる。
  • 未経験・文系からでも目指せる具体的なキャリアプランを紹介。

建設業界のキャリアパスとは?全体像を理解しよう

建設業界のキャリアは、単に建物を建てるだけではありません。プロジェクトの企画から設計、施工、そして維持管理まで、非常に幅広い専門性が求められます。この章では、建設業界で働くことの魅力や、テクノロジーの進化に伴う将来性、そして未経験からでも挑戦できる可能性など、キャリアを考える上での全体像を解説します。

建設業界で働く魅力とやりがい

建設業界で働く最大の魅力は、社会の基盤を創り、人々の生活を支える実感を得られる点にあります。自分が携わった橋や道路、学校、住宅などが形として残り、長年にわたって多くの人々に利用されるのを見ることは、他では得がたい大きなやりがいとなるでしょう。

また、プロジェクトは多くの専門家とのチームワークで進められます。設計者、施工管理者、職人など、異なる役割を持つ人々と協力し、一つの目標に向かっていく過程は、大きな達成感をもたらします。さらに、建築士や施工管理技士といった専門的なスキルや資格が直接評価されるため、「手に職をつけたい」と考える方にとって最適なキャリアを築ける業界です。

建設現場でチームとして協力し合う技術者たち

建設業界の将来性と今後の動向

「建設業界は人手不足」というイメージがあるかもしれませんが、それは裏を返せば、新しい技術と人材が活躍する大きなチャンスがあることを意味します。現在、業界では深刻な労働力不足や働き方改革への対応として、DX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいます。

建設業界で進む技術革新の例

BIM/CIM(ビム/シム):3次元モデルを活用して設計から施工、維持管理までを一元管理する手法。業務効率を飛躍的に向上させます。
ICT施工:ドローンによる測量や、GPSで自動制御される重機などを活用し、生産性と安全性を高めます。
AI・IoTの活用:AIによる工程管理の最適化や、センサーを用いた現場の安全監視など、最先端技術の導入が進んでいます。

これらの技術革新に加え、インフラの老朽化対策や、頻発する自然災害への備えとしての防災・減災工事など、社会からの需要は今後も安定的に続くと予測されており、建設業界の将来性は非常に高いと言えるでしょう。

[出典:国土交通省「i-Constructionの推進」]

キャリアパスの具体例(技術職・技能職)

建設業界では、経験とスキルの向上に応じて、段階的にキャリアアップしていくことが可能です。例えば、技術職であれば、若手社員として現場経験を積んだ後、資格を取得して主任、そして現場全体を統括する現場代理人(所長)へとステップアップしていくのが一般的なキャリアパスです。将来的には、複数の現場を管理するマネージャーや、経営層への道も開かれています。

未経験から建設業界へのキャリアチェンジは可能?

結論から言うと、未経験からでも建設業界へのキャリアチェンジは十分に可能です。多くの企業が若手人材の不足に悩んでおり、ポテンシャルを重視した採用を積極的に行っています。特に、充実した研修制度や、資格取得を全面的にバックアップする「資格取得支援制度」を設けている企業が多いため、入社後に専門知識を学びながら成長できます。

例えば、営業職や事務職で培ったコミュニケーション能力やPCスキルは、施工管理者が行う書類作成や関係者との調整業務に大いに役立ちます。異業種での経験が思わぬ形で活かせるのも、建設業界のキャリアの面白い点です。

【職種別】建設業界のキャリアの種類

建設業界の仕事は、一つのプロジェクトが完成するまでの流れに沿って、大きく「設計・計画」「施工・管理」「研究・開発・営業など」の3つのフェーズに分類できます。ここでは、各段階でどのような職種があり、それぞれがどのような役割を担っているのかを、仕事内容や求められるスキルとともに具体的に解説します。

設計・計画段階の職種

建物を建てるための、すべての始まりとなるのがこの段階です。顧客の要望をヒアリングし、法律や予算、安全性などを考慮しながら、建物のコンセプトやデザイン、構造を具体的な図面に落とし込んでいきます。創造性や専門知識が求められる職種が集まっています。

設計・計画段階の主な職種

職種 主な仕事内容 必要なスキル・資格の例
意匠設計 建物の外観デザインや間取り、内装などを計画する、いわば建物の「デザイナー」。 一級・二級建築士、デザインスキル、発想力、コミュニケーション能力
構造設計 地震や風などの力に対し、建物が安全性を保てるように骨組み(構造)を計算・設計する。 一級建築士(構造設計一級建築士)、構造計算の専門知識、数学的思考力
設備設計 電気、ガス、水道、空調といった、建物に不可欠なライフラインの配線・配管を設計する。 建築設備士、管工事施工管理技士、電気工事施工管理技士、各設備の専門知識
積算 設計図を基に、工事に必要な材料や人件費などを算出し、工事全体の費用を見積もる。 建築積算士、建築コスト管理士、建築知識、緻密な計算能力
CADオペレーター 設計者が作成した図案を基に、CADという専用ソフトを使って正確な設計図面を作成する。 CAD操作スキル、図面の読解力、正確性

オフィスでBIM/CIMを操作する女性技術者

施工・管理段階の職種

設計図を現実の形にする、建設プロジェクトの中核を担う段階です。現場で実際に作業を行う技能職(職人)と、工事全体がスムーズに進むように管理する管理職に分かれます。多くの人が関わる現場をまとめ上げるリーダーシップや、専門的な技能が求められます。

施工・管理段階の主な職種

職種 主な仕事内容 必要なスキル・資格の例
施工管理 工事現場の責任者として、「四大管理(安全・品質・工程・原価)」を管理する。 建築施工管理技士、土木施工管理技士、リーダーシップ、問題解決能力
大工 木材を加工し、建物の骨組みや床、壁などの内装を組み立てる木工事の専門家。 建築大工技能士、手先の器用さ、図面読解力
とび職 工事現場で高所作業を専門に行い、足場の組立・解体や鉄骨の組立などを行う。 とび技能士、高所作業の適性、体力、バランス感覚
電気工事士 設計図に基づき、建物の電気配線やコンセント、照明器具などの設置を行う。 第一種・第二種電気工事士、電気に関する専門知識
重機オペレーター クレーン車、ショベルカーなどの建設重機を運転・操作する。 各種車両系建設機械運転技能講習、移動式クレーン運転士免許、操作技術

研究・開発・営業などの職種

直接的な建設作業以外にも、建設業界を支えるキャリアは多岐にわたります。技術の進化を支える研究職や、プロジェクトを受注する営業職、そして会社組織を円滑に運営する事務職など、多様なスキルを活かせるフィールドがあります。

技術開発・研究
耐震性に優れた新しい建材や、環境に配慮した省エネ工法など、建設業界の未来を創るための研究・開発を行います。大学や研究機関で学んだ専門知識や、探求心が求められるキャリアです。

営業
官公庁や民間企業などの顧客に対し、自社の技術力や実績をアピールして建設工事の受注を目指します。顧客のニーズを的確に把握し、最適な提案を行う、高いコミュニケーション能力が重要です。

事務
総務、経理、人事、法務といったバックオフィス部門で、会社全体の運営を支える仕事です。契約書の管理や資材の発注、従業員の労務管理など、他業種で培った事務スキルをそのまま活かすことが可能です。

3ステップで発見!あなたに合った建設業界のキャリア

多種多様な職種が存在する建設業界で、自分に最適なキャリアを築くためには、自身の適性や興味の方向性を理解することが重要です。ここでは、自分に合ったキャリアを見つけるための具体的な3つのステップをご紹介します。この手順に沿って自己分析を進めることで、キャリアプランが明確になるはずです。

STEP1. 自分の適性を知る(ものづくり or マネジメント)

まずは、あなたが仕事に何を求めるのか、興味の方向性を自己分析しましょう。キャリア選択の大きな軸は「ものづくり」と「マネジメント」のどちらに興味が強いかです。

「ものづくり」への興味が強い場合:自分の手で何かを創り出すことに喜びを感じる方は、大工CADオペレーター意匠設計といった、創造性や技術力が活かせる職種が向いています。
「マネジメント」への興味が強い場合:プロジェクト全体を動かし、人をまとめて目標を達成することにやりがいを感じる方は、現場の司令塔である施工管理や、プロジェクトを受注する営業といった職種が適しています。

STEP2. 働き方の希望から職種を比較検討する(文系・理系別)

次に、自身の学問的背景や得意分野から、具体的な職種を絞り込んでいきます。

理系出身者の場合:建築学や土木工学で学んだ専門知識を直接活かせる、設計職施工管理職技術開発職などが主な選択肢となります。
文系出身者の場合:コミュニケーション能力や管理能力を活かせる営業職や、会社組織を支える人事・総務といった事務職で活躍の場が多くあります。

STEP3. キャリアプランから逆算して必要な資格を選ぶ

最後に、目指すキャリアパスから逆算し、キャリアアップに不可欠な資格をリストアップします。計画的な資格取得は、建設業界での成功の鍵となります。

キャリアプラン別・目指すべき主要資格

1. 設計のプロを目指すなら
建築士(一級・二級):建物の設計や工事監理を行うための国家資格。設計職を目指す上での中核資格です。

2. 現場の責任者を目指すなら
施工管理技士(建築・土木など):工事現場の主任技術者や監理技術者になるための国家資格。施工管理職のキャリアに必須です。

3. 企画や開発で幅を広げるなら
宅地建物取引士:不動産取引の専門家であることを証明する国家資格。建設と不動産の両方の知識を持つことでキャリアの選択肢が広がります。

建設業界でのキャリアに関する読者のよくある不安

建設業界へのキャリアチェンジを考える際、「労働環境は厳しいのでは?」「給与は安定しているのか?」といった不安を感じる方は少なくありません。ここでは、そうした建設業界のキャリアに関するよくある疑問や不安について、現在の実情を基に客観的なデータや情報を用いてお答えします。

「きつい」「危険」というイメージは本当?

かつて建設業界には「3K(きつい、汚い、危険)」というイメージがありましたが、その状況は技術革新と制度改革によって大きく変わりつつあります。安全管理は最優先事項として徹底されており、危険な作業をロボットが代替する技術も導入され始めています。

また、夏の猛暑対策として空調服(ファン付き作業着)が広く普及し、熱中症のリスクが大幅に軽減されるなど、労働環境の快適性も向上しています。ICT建機の導入による作業の効率化も進んでおり、かつてのイメージは過去のものとなりつつあるのが現状です。

給与や年収はどのくらい?

建設業界の給与水準は、他産業と比較して高い傾向にあります。国税庁が発表した最新の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、建設業の平均給与は549万円でした。これは、全産業の平均給与である457万円を大きく上回る金額です。

特に、施工管理技士や建築士といった国家資格を持つ技術者や、大規模プロジェクトを管理できる経験豊富な人材は、さらに高い年収を得ることが可能です。経験とスキルを積むことで着実に収入を増やしていける点は、建設業界でキャリアを築く大きな魅力の一つと言えるでしょう。

[出典:国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」]

労働時間や休日はどうなっている?

長時間労働のイメージが強い建設業界ですが、現在、国を挙げて「働き方改革」が強力に推進されています。その中心となっているのが、週休2日制の普及です。公共工事を中心に週休2日を確保するモデル工事が増加しており、その流れは民間工事にも広がっています。

2024年4月からは、時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、業界全体で労働時間の削減や休日の確保に向けた意識が飛躍的に高まっています。今後は、ワークライフバランスを保ちながら長期的なキャリアを築きやすい環境へと、さらに改善が進んでいくでしょう。

まとめ

本記事では、建設業界のキャリアについて、その全体像から多様な職種、自分に合ったキャリアの見つけ方、そして業界の将来性や実情までを網羅的に解説しました。

建設業界は、人々の生活に不可欠な社会基盤を創るという大きなやりがいを感じられる仕事です。DXやAIといった最先端技術の導入が急速に進んでおり、非常に将来性が高い分野でもあります。また、研修制度や資格取得支援が充実している企業が多く、未経験からでも挑戦し、専門性を高めながらキャリアアップを目指せる環境が整っています。

この記事が、あなたの建設業界でのキャリアを考える上での一助となれば幸いです。ぜひ、あなたらしいキャリアを見つけ、未来を創る仕事への第一歩を踏み出してみてください。

よくある質問

Q1. 女性でも建設業界で活躍できますか?
A1. もちろんです。近年は「けんせつ小町」という愛称のもと、多くの女性技術者・技能者が業界の第一線で活躍しています。国土交通省も女性の活躍を推進しており、女性専用の更衣室やトイレといった現場設備の整備が進んでいます。設計やCADオペレーター、きめ細やかな配慮が求められる施工管理など、性別に関係なく能力を発揮できる職種は数多くあります。

Q2. どんな人が建設業界に向いていますか?
A2. 以下のような志向を持つ人に向いていると言えます。
・ものづくりが好きで、成果が形に残る仕事に喜びを感じる人
・多様な専門家と協力するチームワークを大切にできる人
・社会の役に立ち、人々の生活を支える仕事に貢献したい人
また、現場では天候や予期せぬトラブルなど、計画通りに進まないこともあります。そのため、臨機応変に対応できる柔軟性や、困難な状況でも粘り強く物事に取り組める責任感も重要な資質です。

Q3. 必要な学歴はありますか?
A3. 職種によって異なります。例えば、建築士を目指す設計職や、最先端技術を扱う研究開発職などでは、大学や専門学校で建築・土木系の専門知識を学んでいることが応募の条件となる場合があります。一方で、施工管理職や技能職、営業職、事務職などでは学歴不問の求人も非常に多く、入社後の実務経験や研修、資格取得を通じてキャリアを築いていくことが一般的です。

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