「キャリア」の基本知識

【2025年最新版】建設業の働き方とキャリア形成の最新動向とは?


更新日: 2025/10/28
【2025年最新版】建設業の働き方とキャリア形成の最新動向とは?

この記事の要約

  • 2025年最新の建設業の働き方改革(週休2日・残業規制)を解説
  • DX化が拓くBIM/CIMオペレーターなど新しいキャリアパスを紹介
  • 建設業でのキャリア形成の不安(3K・将来性)への実態と対策を解説

建設業界は今、大きな変革期を迎えています。いわゆる「2024年問題」(時間外労働の上限規制適用)を機に、業界全体の働き方が見直されています。ここでは、2025年現在の建設業における働き方の最新トレンドを解説します。

週休2日制の浸透と長時間労働の是正

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されたことを受け、業界全体で労働環境の改善が急速に進んでいます。かつては公共工事中心だった週休2日制も、現在では民間工事へと急速に拡大しています。

国土交通省は「建設業働き方改革加速化プログラム」に基づき、適正な工期設定や労務費の適切な見積もりを推進しており、無理なスケジュールによる長時間労働は是正傾向にあります。
[出典:国土交通省「建設業働き方改革加速化プログラム」]

また、ICT技術(情報通信技術)の導入も鍵となっています。例えば、ドローンによる測量や遠隔臨場(リモートでの現場確認)は、移動時間や単純作業の時間を大幅に削減し、効率的な業務遂行と残業削減に貢献しています。

給与・待遇の改善状況

深刻な人手不足に対応するため、建設業界では給与水準と待遇の改善が顕著です。厚生労働省の統計調査においても、建設業の賃金は他産業と比較しても上昇傾向を示しています。
[出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」]

2025年現在、多くの企業が若手や中堅技術者の確保・定着を目指し、基本給のベースアップや賞与の増額を実施しています。

特に、技能や経験を正当に評価する仕組みとして「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の活用が進んでおり、保有資格や現場経験に応じた処遇改善が図られています。

社会保険への加入は現在では徹底されており、法定福利厚生はもちろんのこと、企業独自の福利厚生(法定外福利)も充実傾向にあります。

企業における福利厚生の具体例

家賃補助・住宅手当:若手従業員の生活基盤をサポート
資格手当・資格取得支援:施工管理技士などの高度資格取得を金銭面でバックアップ
家族手当:扶養家族に応じた手当
現場手当:現場勤務の負担を考慮した手当

多様化する現場:女性・若手・外国人人材の活躍

従来の「男性中心の職場」というイメージも大きく変わりつつあります。国土交通省や業界団体が推進する「けんせつ小町」(建設業で活躍する女性の愛称)の活動に象徴されるように、女性技術者や技能者が働きやすい環境整備が進んでいます。女性専用の更衣室や「快適トイレ」の設置、育児休業後の復職支援などが具体例です。

また、若手入職者向けの研修制度も強化されています。入社後のOJT(On-the-Job Training)だけでなく、専門知識を学ぶOff-JT(Off-the-Job Training)や、メンター制度を導入し、早期離職を防ぎながら着実なスキルアップを支援する企業が増えています。

さらに、労働力確保の観点から外国人人材の存在感も増しています。従来の技能実習制度に加え、一定の専門性を持つ人材を受け入れる「特定技能」制度により、多様な国籍の人材が現場の重要な戦力として活躍しています。

建設現場でタブレットを見ながら打ち合わせをする多様な技術者たち

建設業における「キャリア」形成の現在地と未来

働き方の変化に伴い、建設業でのキャリアパスも多様化しています。従来の「現場たたき上げ」以外の道も広がっており、個々の適性や希望に合わせたキャリア設計が可能になりつつあります。

建設DX・ICT化が拓く新しいキャリア

建設業界のデジタルトランスフォーメーション(建設DX)は、新しい職種や役割を生み出しています。これらの職種は、従来の現場作業とは異なり、情報技術を駆使して生産性向上に貢献するもので、新しいキャリアの選択肢として注目されています。

BIM/CIMオペレーター/マネージャー

役割: BIM(Building Information Modeling)CIM(Construction Information Modeling)と呼ばれる3次元モデルを活用し、設計・施工・維持管理の全プロセスを効率化します。単なる図面作成に留まらず、コスト計算や工程シミュレーション、関係者間の合意形成を担います。
求められるスキル: CADソフトの操作スキル、建築・土木の基礎知識、データ管理能力。

ICT施工担当者

役割: ドローンによる3次元測量、MG(マシンガイダンス)MC(マシンコントロール)といった自動化重機の運用・管理を行います。これにより、精度の高い施工を少人数で実現します。
求められるスキル: ドローン操縦技術、測量知識、ICT建機の操作・管理スキル。

建設DX推進担当

役割: 社内のIT化全般をリードする役割です。現場管理用のSaaS(クラウドサービス)の導入支援、業務プロセスの見直し、蓄積された施工データの分析などを担当し、組織全体の生産性向上を図ります。
求められるスキル: ITに関する広範な知識、プロジェクトマネジメント能力、社内調整力。

オフィスでBIM/CIMの3Dモデルを操作する建設エンジニア

専門性を追求するキャリアパス

デジタル化が進む一方で、建設業の根幹である高度な専門性を追求するキャリアパスも依然として重要です。

代表的なのは、施工管理技士(建築・土木など)や建築士といった国家資格を取得し、プロジェクト全体を指揮するキャリアです。これらの資格は、大規模プロジェクトの監理技術者や主任技術者として不可欠であり、高い専門性と社会的信用を得られます。

また、特定の工法や分野に特化する道もあります。例えば、以下のような分野のスペシャリストです。

特定工法:免震・制震技術、プレキャストコンクリート工法など
特定分野:大規模修繕・リノベーション、環境・エネルギー関連施設(洋上風力など)、インフラ維持修繕(橋梁・トンネルなど)

これらの分野は今後も高い需要が見込まれ、深い知識と経験を持つ専門家は市場価値の高いキャリアを築くことができます。

職種別キャリアモデルの比較検討

建設業のキャリアは、大きく「技術職(施工管理)」と「技能職(専門工事業者、いわゆる職人)」に分けられます。それぞれのキャリアパスには明確な違いがあります。

【技術職(施工管理)と技能職(職人)のキャリアパス比較】

比較項目 技術職(施工管理) 技能職(職人)
主な役割 現場全体の管理(工程・品質・安全・原価) 専門技術を用いた実際の作業(型枠、鉄筋など)
キャリアステップ例 現場担当 → 主任技術者 → 監理技術者・現場代理人(所長) → 本社管理職 見習い → 職人(技能士) → 職長 → 独立(一人親方・法人化)
求められるスキル マネジメント能力、調整力、PCスキル、幅広い工種の知識 高い専門技能、体力、段取り力、チームワーク
キャリアの広がり 本社(積算・営業・設計・開発)、発注者側(デベロッパー)、コンサルタントなど 技能の追求(マイスター)、後進育成(指導員)、独立・法人経営

どちらの道を選ぶかは、自身の適性(管理・調整が得意か、モノづくりそのものが得意か)によって決めることが重要です。

建設業のキャリアに関する読者のよくある不安と実態

建設業のキャリアを考える際、「きつい」「将来性がない」といった不安を抱く方も少なくありません。ここでは、そうした不安要素の実態と、2025年現在の業界の変化について客観的に解説します。

「3K(きつい・汚い・危険)」は過去のもの?

かつて建設業の代名詞とされた「3K(きつい・汚い・危険)」は、技術革新と制度改革によって大きく改善されています。

危険(Kiken)
2019年からのフルハーネス型墜落制止用器具の義務化をはじめ、安全基準は年々厳格化しています。厚生労働省の統計でも、建設業の労働災害(死亡災害)は長期的に減少傾向にあります。危険予知活動(KY活動)の徹底や、AIカメラによる危険行動の検知システム導入など、事故を未然に防ぐ取り組みが強化されています。
[出典:厚生労働省「令和5年 労働災害発生状況」]

汚い(Kitanai)
現場環境の整備が大きく進んでいます。男女別の「快適トイレ」(洋式・清潔・施錠可能)の設置が標準化し、更衣室や休憩所も整備されています。

きつい(Kitsui)
肉体的な負担を軽減する技術が普及しています。夏場の熱中症対策としての空調服(ファン付き作業着)は常識となり、重量物運搬を補助するアシストスーツ(パワーアシストスーツ)の導入も進んでいます。また、ICT建機の導入により、過酷な肉体労働自体が減少傾向にあります。

建設業の将来性と求められる人材

「建設業は斜陽産業ではないか」という不安もありますが、実際には今後も安定した需要が見込まれています。

建設業の安定需要を支える背景

インフラ老朽化対策:高度経済成長期に建設された橋梁、トンネル、上下水道などの多くが更新時期を迎えており、維持・修繕の需要は膨大です。
都市の再開発:大都市圏を中心に、駅前再開発や老朽化ビルの建て替えプロジェクトが多数進行中です。
防災・減災、国土強靭化:地震、台風、豪雨などの自然災害に備えるためのインフラ整備や補強工事は、国家的な重要課題です。
環境配慮型建築:ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)や木造建築など、脱炭素社会に向けた新しい建築需要も増加しています。

こうした背景から、建設業の仕事がなくなる可能性は極めて低いです。ただし、求められる人材像は変化しており、特に以下のスキルを持つ人材の価値が高まっています。

デジタル対応力:BIM/CIMやICT施工、各種SaaSを使いこなすスキル
マネジメント能力:多様な関係者をまとめ、プロジェクトを円滑に進める力

未経験からでもキャリアを築ける?

はい、可能です。建設業界は慢性的な人手不足、特に若手の不足に直面しているため、多くの企業が未経験者採用を積極的に行っています。

入社後のサポート体制も整備されています。多くの企業では、まず座学で基礎知識(安全、法律、専門用語など)を学び、その後、先輩社員の指導のもとで実務を学ぶOJTが基本です。

さらに、資格取得支援制度を設けている企業がほとんどです。施工管理技士や建築士などの資格取得にかかる講習費用や受験費用を会社が負担したり、合格時には報奨金や資格手当が支給されたりするなど、未経験からでも着実にスキルを身につけ、キャリアアップできる環境が整っています。

理想のキャリアを実現するための具体的なステップ

建設業で自分に合ったキャリアを築くためには、戦略的な準備が必要です。ここでは、入職・転職を考える際に踏むべき具体的なステップを解説します。

STEP1:自己分析とキャリアプランの明確化

まずは、自分が建設業のどの領域で、どのように働きたいのかを明確にします。

  1. 関わりたい分野の明確化
    「モノづくり」のどの部分に関わりたいのかを考えます。現場で体を動かす「技能職」か、現場全体を管理する「技術職(施工管理)」か、あるいは図面を描く「設計職」か。また、建築(ビル、住宅)と土木(道路、橋)のどちらに興味があるかも重要です。

  2. 希望する働き方の整理
    給与、休日(週休2日希望など)、勤務地(地元か、全国転勤ありか)、企業規模(大手ゼネコンか、地域密着の工務店か)など、譲れない条件を整理します。

  3. 強み・適性の分析
    「体力には自信がある」「人と調整するのが得意」「PC作業が苦にならない」「コツコツと作業するのが好き」など、自分の強みや適性がどの職種に向いているかを分析します。

STEP2:企業研究と働きやすさのチェックポイント

自己分析ができたら、具体的な企業研究に移ります。特に「働きやすさ」を見極めるために、以下のポイントを確認することが重要です。

週休2日制の実施状況
「4週8閉所」(月に8日現場を閉める)など、具体的な休日取得の実績を確認します。

平均残業時間と36協定の内容
法定の上限規制(原則月45時間・年360時間)を遵守しているか、実態としての平均残業時間を確認します。

ICT・DX化への取り組み度合い
BIM/CIMの導入状況、現場管理アプリの使用、ICT建機の保有状況など、業務効率化への投資姿勢を確認します。

研修・教育制度の充実度
未経験者向けの研修プログラムや、入社後のOJT体制が整っているかを確認します。

資格取得支援制度
手当の額、受験費用の補助、社内講習会の有無など、具体的な支援内容を確認します。

過去の離職率や平均勤続年数
従業員の定着率(働きやすさ)を示す客観的な指標として確認します。

STEP3:スキルアップと資格取得の計画

自身のキャリアプランに合わせて、入社前、あるいは入社後に取得を目指すべき資格と学習計画を立てます。

  1. 目指す資格の選定
    施工管理を目指す場合:施工管理技士(1級・2級:建築、土木、電気工事、管工事など)
    設計を目指す場合:建築士(一級・二級)
    技能職の場合:技能士(とび、鉄筋、型枠など)

  2. 学習計画の立案
    施工管理技士や建築士は、実務経験が受験資格となる場合があります。まずは実務経験を積みながら、独学、専門学校の講座、社内の支援制度などを活用して、効率的に学習を進める計画を立てることが重要です。

まとめ:変化する建設業で、自分らしいキャリアを築こう

2025年の建設業は、働き方改革とDX化の波に乗り、大きな変革期を迎えています。かつての「3K」のイメージは払拭されつつあり、週休2日制の浸透や給与・待遇も着実に改善傾向にあります。

また、ICT技術の導入により、施工管理や現場作業のあり方が変わり、BIM/CIMオペレーターやICT施工担当者など、新たなキャリアの選択肢も生まれています。
インフラ維持修繕や再開発など、安定した需要が見込まれる建設業界で、自分自身の強みや希望を明確にし、積極的に情報収集とスキルアップに取り組むことで、やりがいのある理想のキャリアを築くことが可能です。この記事を参考に、ぜひ未来に向けた一歩を踏み出してください。

建設業のキャリアに関するよくある質問(FAQ)

このセクションでは、建設業のキャリアに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめます。

Q. 建設業で働くのに向いている人はどんな人ですか?

A. モノづくりが好きな人、チームで協力して大きな目標を達成することにやりがいを感じる人、責任感の強い人、段取りを考えて効率的に動くのが得意な人などが向いています。また、最近はICT化が進んでいるため、新しい技術やPC操作に抵抗がないことも重要です。

Q. 女性でも働きやすい環境は増えていますか?

A. はい、増えています。国土交通省や業界団体が「けんせつ小町」といった愛称で女性の活躍を後押ししており、女性専用の更衣室や「快適トイレ」の設置、産休・育休制度の整備、力仕事の少ないICTを活用した業務の増加など、環境整備が進んでいます。

Q. 施工管理の仕事で一番大変なことは何ですか?

A. 多くの関係者(発注者、設計者、専門工事業者、近隣住民など)との調整業務が挙げられます。天候や予期せぬトラブルにより工期が迫る中での対応や、安全・品質・コスト・工程のすべてに目を配る責任の重さも、大変な点と言えます。

Q. 建設業で身につけたスキルは、他の業界でも活かせますか?

A. はい、活かせます。特に施工管理で培われる「マネジメント能力(進捗管理、予算管理、品質管理)」「調整力・交渉力」「問題解決能力」は、あらゆる業界で高く評価されるポータブルスキルです。また、BIM/CIMなどのデジタルスキルも、製造業や不動産業界などで応用が可能です。

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