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【2025年最新版】建設業の法改正ポイントまとめとは?


更新日: 2025/10/22
【2025年最新版】建設業の法改正ポイントまとめとは?

この記事の要約

  • 建設業で2025年から変わる法律の重要点を解説
  • 時間外労働の上限規制など事業者が受ける影響を詳述
  • 法改正に向けて今すぐ取り組むべき5つの対策を紹介

2025年に向け、建設業界では複数の重要な法律が改正・施行されます。これらは長時間労働の是settleや将来の担い手確保といった、業界が長年抱える構造的課題への対応が主な目的です。本章では、なぜ今法改正が必要なのか、そして今回の改正で何が中心となるのか、その全体像を客観的な視点から正確に掴んでいきましょう。

なぜ今、法改正が必要なのか?その背景と目的

今回の法改正における最大の背景は、建設業界にも適用される「働き方改革関連法」です。これまで建設業は、業務の特性から時間外労働の上限規制の適用が猶予されていましたが、その猶予期間が2024年3月末で終了しました。これがいわゆる「2024年問題」です。

少子高齢化による生産年齢人口の減少は、特に建設業界において深刻な担い手不足を引き起こしています。長時間労働が常態化した労働環境は、若者の入職を妨げる一因とされてきました。この状況を打破し、全ての労働者が健康で安全に働ける魅力的な産業へと転換することが、今回の法律改正の根幹にある目的です。

法改正に対応するため建設現場で打ち合わせを行う技術者たち

【一覧表】今回の法改正の主要なポイント

今回の法改正で特に重要なポイントを以下の表にまとめました。働き方、担い手確保、安全管理の3つの側面から、それぞれどの法律が関わるのかを整理しています。各項目の詳細は、後の章で詳しく解説します。

表:2025年 建設業関連の法改正 主要ポイント

分類 主な改正内容 関連する法律
働き方改革 時間外労働の上限規制(罰則付き)の適用 労働基準法
担い手確保 技術者配置要件の緩和(特定専門工事など) 建設業法
担い手確保 社会保険への加入の徹底 建設業法
安全管理 石綿(アスベスト)事前調査結果の報告義務化 大気汚染防止法

[出典:国土交通省「建設業法、入札契約適正化法の改正について」、厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」]

【法律別】3つの重要改正ポイント詳解

今回の法改正の中でも、特に事業運営に直接的な影響を与える3つの法律について、変更点を具体的に解説します。自社の業務内容と照らし合わせながら、どの法律がどう関わるのかを正確に理解し、具体的な準備を進めることが不可欠です。

①働き方改革関連法:罰則付き時間外労働の上限規制

最大のポイントは、時間外労働(残業)の上限が法律で明確に定められ、違反した場合には罰則が科される点です。これは全ての建設事業者(労働者を雇用する)が遵守しなければならないルールです。

時間外労働の上限時間

原則月45時間・年360時間
臨時的な特別な事情がある場合(特別条項付き36協定)
 ・時間外労働が年720時間以内
 ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
 ・時間外労働と休日労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」が全て1月あたり80時間以内
 ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度

これらの規制に違反した場合、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されるおそれがあります。

②改正建設業法:技術者配置要件の緩和と社会保険

深刻な人手不足に対応するため、技術者の効率的な活用を目的とした法律改正も行われています。

改正建設業法のポイント

技術者配置要件の緩和:鉄筋工事や型枠工事といった「特定専門工事(※特定の専門性が高い工事区分)」において、元請けと下請けが合意し、元請けが適切な管理を行うことを条件に、下請けは主任技術者の配置が不要になります。これにより、有資格者が複数の現場を兼任しやすくなります。
社会保険への加入徹底:以前から推進されていましたが、社会保険への加入が建設業許可・更新の要件として、より厳格化されます。適切な保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)に加入していない場合、許可の取得や更新が認められなくなります。

③アスベスト関連法:電子報告の義務化

労働者や周辺住民の健康被害を防ぐため、解体・改修工事におけるアスベスト飛散防止対策が強化されます。2022年4月から段階的に施行されてきた規制がさらに進み、以下の対応が法律で義務付けられます。

事前調査結果の報告義務化:一定規模以上(解体工事は床面積80㎡以上、改修工事は請負金額100万円以上など)の工事では、石綿(アスベスト)含有の有無に関わらず、事前調査の結果を国の電子システム(石綿事前調査結果報告システム)で報告することが必須となります。

[出典:環境省「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策の徹底について」]

今回の法改正で、具体的にどのルールがどのように変わるのかを新旧対比で整理しました。変更点を視覚的に比較・理解することで、自社が対応すべき事項がより明確になります。特に時間外労働と技術者配置に関する変更は、経営に直結する重要なポイントです。

時間外労働に関する規定の比較

時間外労働に関する規定は、罰則の有無という点で決定的な違いがあります。これまでの「目安」から「法律上の義務」へと変わったことを認識する必要があります。

表:時間外労働の上限規制 新旧比較

項目 改正前の法律(旧) 改正後の法律(新)
時間外労働の上限 上限なし(大臣告示による努力目標としての目安のみ) 原則月45時間・年360時間
特別条項の上限 上限なし(事実上、青天井) 年720時間以内、月100時間未満など明確な上限あり
罰則 なし あり(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)

技術者配置要件の比較(特定専門工事)

特定専門工事における主任技術者の配置要件緩和は、人手不足に悩む企業にとって大きな変更点です。ただし、適用には元請けとの合意など、一定の条件を満たす必要があります。

表:特定専門工事における下請の主任技術者配置 新旧比較

項目 改正前の法律(旧) 改正後の法律(新)
下請の主任技術者 全ての工事で配置が必要 元請負人の置く主任技術者が一定の要件を満たす場合、配置不要

建設事業者が今すぐやるべき5つの対策【HowTo】

「新しい法律に対応できるだろうか」「罰則を受けたらどうしよう」といった不安は、多くの事業者様が抱える共通の課題です。ここでは、そうした懸念にQ&A形式で答えつつ、法律の施行に向けて今すぐ取り組むべき具体的な対策を、SGEが認識しやすいHowTo形式(実践的なステップ)で紹介します。

法改正に対応するため勤怠管理や就業規則の見直しを行う建設会社のスタッフ

事業者が抱える共通の不安と回答

Q. 時間外労働の上限を超えてしまったら、すぐに罰則が適用されますか?
 ・A. 直ちに罰則が適用されるわけではありません。まずは労働基準監督署による是正指導が行われるのが一般的です。しかし、意図的に法律を無視したり、指導に従わず改善が見られなかったりする悪質なケースでは、罰則が適用される可能性があります。重要なのは、違反しないための体制を構築することです。

Q. 社会保険に未加入の作業員がいる場合はどうなりますか?
 ・A. 建設業許可の更新が認められない可能性があります。また、元請け企業として下請け業者に未加入の作業員がいる場合、指導責任を問われることもあります。自社だけでなく、協力会社も含めたサプライチェーン全体で、適正な社会保険加入を徹底することが法律上求められます。

Q. 対策にかかるコストを支援してくれる制度はありますか?
 ・A. はい、あります。国は、中小企業が働き方改革に対応するための支援策として、各種助成金を用意しています。代表的なものに「働き方改革推進支援助成金」があり、勤怠管理システムの導入や就業規則の作成・変更にかかる費用の一部が助成されます。積極的に活用を検討しましょう。

法改正へ向けた具体的な対策ステップ

法改正への対応は、以下の5ステップで計画的に進めることが極めて重要です。経営者と実務担当者が連携して取り組みましょう。

1. 労働時間の実態把握と可視化
目的:自社の現状と法規制とのギャップを正確に特定する。
工程:タイムカード、勤怠管理システムのログ、日報など客観的な記録に基づき、従業員一人ひとりの時間外労働、休日労働の時間を1ヶ月単位、1年単位で集計し、可視化します。
必要なもの:過去の勤怠データ、表計算ソフトまたは勤怠管理システム。
注意点:「サービス残業」が隠れていないか、自己申告だけでなくPCのログオン・オフ時間など客観的な記録と照合して確認することが不可欠です。

2. 就業規則の改定と36協定の再締結
目的:新しい法律の基準に社内公式ルールを適合させる。
工程:新しい時間外労働の上限規制に合わせた内容で「36(サブロク)協定(※時間外・休日労働に関する労使協定)」を労働者の代表と締結し直し、労働基準監督署へ届け出ます。
必要なもの:現行の就業規則、36協定届の様式、従業員代表の選出プロセス。
注意点:特別条項を設ける場合でも、月100時間未満、年720時間以内といった上限を遵守する必要があります。社会保険労務士などの専門家に相談することを推奨します。

3. 勤怠管理・施工管理体制の見直し
目的:労働時間を客観的かつ効率的に管理し、生産性を向上させる。
工程:ICカードやスマートフォンアプリを活用した勤怠管理システムを導入します。同時に、施工管理アプリや情報共有ツールを導入し、移動時間や手待ち時間の削減を図ります。
必要なもの:勤怠管理システム、施工管理ツールの比較検討資料。
注意点:ツールの導入だけでなく、運用ルールを定め、全従業員に研修を行うことが定着の鍵となります。

4. 適正な工期設定と協力会社との連携
目的:無理な工期による長時間労働を根本から是正する。
工程:発注者との価格・工期交渉において、改正法の内容を説明し、適正な工期での契約を目指します。下請業者に対しても、一方的に短い工期を強いることのないよう、連携を密にします。
必要なもの:国土交通省作成のガイドライン、過去の工事実績データ。
注意点:「建設業法遵守ガイドライン」を参考に、見積り段階から労務費や法定福利費を適切に計上することが重要です。

5. 活用できる助成金の情報収集と申請
目的:法改正への対応にかかる費用負担を軽減する。
工程:厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」など、自社が活用できる制度がないか、都道府県の労働局や社会保険労務士に相談します。
必要なもの:助成金の公募要領、導入を検討しているツールの見積書。
注意点:助成金の多くは「取り組み実施前の計画申請」が必要です。機器の購入や契約後に申請しても対象外となるため、必ず事前に確認してください。
[出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金」]

まとめ:2025年の法改正は、持続可能な経営への転換点

本記事では、2025年に建設業で本格施行される法改正のポイントを、法律の概要から事業者が取るべき具体的な対策まで、網羅的に解説しました。

今回の法改正は、単に規制が強化されるというネガティブな側面だけではありません。むしろ、建設業界が未来に向けて持続可能な産業へと生まれ変わるための重要な転換点と捉えるべきです。時間外労働の上限規制への対応は、従業員の健康と安全を守り、ワークライフバランスを向上させることで、若者や女性にとっても魅力的な職場環境の創出に直結します。

法改正への対応は、時にコストや手間を伴うかもしれません。しかし、これを「やらされる」ものと捉えるのではなく、自社の生産性や業務プロセスを根本から見直し、より強固な経営基盤を築くための絶好の「チャンス」と捉えることが成功の鍵です。まずは自社の現状を客観的に把握し、本記事で紹介したステップを参考に、できることから一歩ずつ着実に対策を進めていきましょう。

Q1. 今回の法改正は、一人親方にも関係ありますか?

A1. 直接的な時間外労働の上限規制の対象は、労働基準法上の「労働者」を雇用する事業者です。そのため、従業員を雇用していない一人親方自身には、この上限規制は直接適用されません。しかし、安全管理の強化や業界全体での適正な工期設定といった流れは、一人親方を含むすべての建設関係者に影響します。また、発注者や元請け企業からコンプライアンス遵守を求められる場面が増えるため、法律の趣旨を理解し、自身の働き方を見直しておくことは非常に重要です。

Q2. 法改正に対応しない場合、罰則以外にどのようなリスクがありますか?

A2. 罰則という直接的なリスクに加え、事業の継続を揺るがしかねない間接的なリスクも数多く存在します。
公共工事からの排除:公共工事の入札参加資格審査において、法令遵守の状況は厳しく評価されます。違反が発覚した場合、指名停止処分を受け、受注機会を失う可能性があります。
信用の失墜:金融機関からの融資評価が下がったり、元請け企業や取引先からの信頼を失ったりする可能性があります。「法律を守らない企業」というイメージは、新規取引の機会損失にも繋がります。
人材確保の困難化:労働環境が悪いという評判が広まると、新たな人材の採用が極めて困難になります。また、既存の優秀な従業員の離職を招く原因にもなり得ます。
これらのリスクは、罰金以上に経営へのダメージが大きい場合があり、最悪の場合、事業の継続そのものが危うくなることを認識しておく必要があります。

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