建設業向け補助金の選び方とは?目的別おすすめ制度3選

この記事の要約
- 建設業が使える補助金の選び方を3つのポイントで解説
- 事業再構築・ものづくり・IT導入など目的別補助金を紹介
- 補助金申請は「目的」「要件」「時期」の確認が重要
- 目次
- 建設業で活用できる補助金とは?選び方の基本
- 建設業が補助金を活用する主なメリット
- 補助金と助成金の違いとは?
- 建設業が補助金を選ぶ際の重要ポイント3つ
- 1. 補助金活用の「目的」を明確にする
- 2. 「対象要件」をしっかり確認する
- 3. 「申請スケジュールと難易度」を把握する
- 【目的別】建設業におすすめの主要補助金3選
- まずは比較!建設業向け主要補助金3つの概要
- 1. 【制度A】(例:事業再構築補助金)- 大規模投資や新分野進出に
- 2. 【制度B】(例:ものづくり補助金)- 生産性向上・DX推進に
- 3. 【制度C】(例:IT導入補助金)- 手軽な業務効率化に
- 補助金申請で失敗しないための注意点
- 補助金は「後払い」が原則
- 「事業計画書」の質が採択を左右する
- 申請代行業者・専門家の選び方
- まとめ:自社に最適な補助金を見つけて建設業の課題解決へ
- 建設業の補助金に関するよくある質問
建設業で活用できる補助金とは?選び方の基本
建設業を営む中で、「新しい重機を導入したい」「IT化を進めて業務効率を上げたい」「人手不足解消のために何か対策したい」といった課題はありませんか? こうした課題解決の大きな助けとなるのが補助金です。
しかし、補助金には非常に多くの種類があり、
「どの補助金が自社に合っているのかわからない」
「申請手続きが複雑そうで不安」
「そもそも建設業で使える補助金があるのか知らない」
といった声も少なくありません。
この記事では、建設業に焦点を当て、数ある補助金の中から自社に最適な制度を見つけるための「選び方のポイント」と、代表的な「目的別のおすすめ補助金」をわかりやすく解説します。
建設業が補助金を活用する主なメリット
補助金を活用することは、単なる資金調達以上の価値を企業にもたらします。特に建設業においては、以下のような具体的なメリットが期待できます。
・ 設備投資やシステム導入のコスト負担を軽減できる
ICT建機や施工管理システムなど、生産性向上に直結する高額な設備投資は、補助金を活用することで自己負担額を大幅に抑えられます。これにより、資金繰りを圧迫せずに最新技術の導入が可能になります。
・ 生産性向上やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できる
補助金の申請プロセスでは、自社の課題を明確にし、解決策(投資)によってどのような成果(生産性向上)が得られるかを計画する必要があります。これは、建設業のDXを強力に推進するきっかけとなります。
・ 新たな事業展開や販路開拓に挑戦しやすくなる
従来の公共事業中心からBtoCのリフォーム事業へ進出するなど、新しい分野への挑戦には初期投資が伴います。補助金は、こうした事業転換のリスクを低減し、企業の成長戦略を後押しします。
・ 財務体質や対外的な信用の向上につながる
補助金の採択を受けるには、実現可能性の高い詳細な事業計画が必要です。審査を通過し採択されたという事実は、金融機関などからの対外的な信用評価を高める要素にもなり得ます。
補助金と助成金の違いとは?
「補助金」と「助成金」は混同されがちですが、性質が異なります。どちらも国や地方公共団体から支給される返済不要の資金ですが、主な違いは「目的」と「受給の難易度」です。
・ 補助金
主に経済産業省系が管轄し、事業の推進や設備投資、イノベーション支援を目的とします。予算と採択件数に上限があり、事業計画書の審査によって採択・不採択が決まります。
・ 助成金
主に厚生労働省系が管轄し、雇用の安定や人材育成、労働環境の改善を目的とします。定められた要件を満たせば原則として受給できます。
この記事では、主に経済産業省系が管轄する「補助金」(設備投資や事業革新に関するもの)を中心に解説します。
表:補助金と助成金の主な違い
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 主な管轄 | 経済産業省、国土交通省など | 厚生労働省 |
| 主な目的 | 事業の推進、設備投資、 イノベーション支援 |
雇用の安定、人材育成、 労働環境の改善 |
| 財源 | 税金(予算) | 雇用保険料など |
| 審査 | あり(採択・不採択) 予算と件数に上限があり、 事業計画の優劣で選定される |
なし(要件審査のみ) 要件を満たせば原則受給可能 |
建設業が補助金を選ぶ際の重要ポイント3つ
補助金は種類が多く、公募要領も複雑です。自社の状況や目的に合わない補助金に時間を割いてしまうと、貴重なリソースを無駄にしかねません。最適な補助金を見つけるためには、まず自社の状況を整理する以下の3つのステップが不可欠です。

1. 補助金活用の「目的」を明確にする
最も重要なのが「何のために補助金を使いたいのか」という目的の具体化です。目的が曖昧なままでは、最適な補助金を選ぶことはできません。まずは自社の課題を洗い出しましょう。
- 補助金活用の目的(例)
・ 設備投資・生産性向上
・ ICT建機(情報化施工対応の重機)を導入したい
・ 3Dレーザースキャナを導入して測量業務を効率化したい
・ DX推進・業務効率化
・ 勤怠管理システムや施工管理アプリを導入し、現場と本社の情報共有を円滑にしたい
・ 積算ソフトや会計ソフトを導入してバックオフィス業務を効率化したい
・ 人材育成
・ 若手技術者にドローン操縦やICT建機の操作研修を受けさせたい
・ 販路開拓・新事業
・ ホームページをリニューアルして、一般顧客からのリフォーム受注を増やしたい
・ ドローンを使った外壁診断サービスという新事業を立ち上げたい
目的が明確になれば、それに合致する補助金(例:設備投資なら「ものづくり補助金」、ITツールなら「IT導入補助金」)の候補が絞り込めます。
2. 「対象要件」をしっかり確認する
次に、絞り込んだ補助金の「対象要件」を公募要領で精査します。確認を怠ると、申請準備を進めた後に対象外と判明するリスクがあります。
主な確認項目:
・ 事業者要件(資本金・従業員数)
多くの補助金は「中小企業・小規模事業者」を対象としています。建設業の場合、中小企業基本法に基づき「資本金3億円以下 または 常時使用する従業員数300人以下」が一般的な定義です。自社がこの範囲に含まれるか確認してください。
・ 対象業種
補助金によっては対象業種が指定されている場合がありますが、建設業は多くの補助金(ものづくり補助金、IT導入補助金など)で対象となっています。
・ 対象経費
「何に使えるか」は補助金ごとに厳密に決まっています。「重機はOKだが、中古はNG」「ソフトウェアはOKだが、PC本体はNG」といった細かいルールがあります。自社が導入したい設備やシステムが対象経費に含まれているか、必ず確認が必要です。
・ その他の要件(賃上げ要件など)
近年、補助金の申請要件として「従業員の賃金引上げ」を計画に盛り込むこと(賃上げ要件)が求められるケースが増えています。達成できない場合は補助金の返還を求められる可能性もあるため、実現可能性を慎重に判断してください。
3. 「申請スケジュールと難易度」を把握する
目的と要件が合致しても、スケジュールが現実的でなければ申請は困難です。
・ 公募期間(申請受付期間)
補助金には必ず申請期間が定められています。人気の補助金は年に数回公募されますが、期間は1ヶ月~2ヶ月程度と短いことが多いです。設備導入の検討時期と公募期間が合うかを確認しましょう。
・ 申請書類(事業計画書)の作成時間
補助金申請の核となるのが「事業計画書」の作成です。特にものづくり補助金や事業再構築補助金では、10~15ページ程度の詳細な計画書(自社の強み・弱み、市場分析、投資による効果の具体的数値など)が求められます。作成には最低でも数週間~1ヶ月程度の時間を見込む必要があります。
・ 採択率と難易度
補助金には審査があり、必ず採択されるわけではありません。採択率(応募者に対する採択者の割合)は補助金や公募回によって変動します。難易度の高い補助金に挑戦するのか、比較的採択されやすい補助金を選ぶのかも戦略の一つです。
【目的別】建設業におすすめの主要補助金3選
ここでは、建設業の多様なニーズに応える代表的な3つの補助金(通称)を、目的別に分けて紹介します。これらの補助金は非常に人気が高く、建設業での採択実績も豊富です。
まずは比較!建設業向け主要補助金3つの概要
以下は、3つの主要な補助金の目的と規模感を比較した表です。自社の目的が「大規模投資」「生産性向上」「IT化」のどれに近いかで、まず大枠を捉えましょう。
建設業向け主要補助金3つの概要比較
| 補助金名 | 主な目的 | 補助上限額(目安) | 補助率(目安) | 建設業での活用イメージ |
|---|---|---|---|---|
| 事業再構築補助金 | 新分野展開、 事業・業種転換 |
数千万円~1億円超 | 1/2~2/3 | BtoCのリフォーム事業部新設、 ドローン測量サービス開始 |
| ものづくり補助金 (ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進補助金) |
生産性向上、 革新的なサービス開発 |
750万~1,250万円 | 1/2~2/3 | ICT建機の導入、 施工管理システムの開発 |
| IT導入補助金 | DX推進、 業務効率化(ITツール導入) |
5万~450万円 | 1/2~3/4 | 会計ソフト、勤怠管理ソフト、 インボイス対応ツールの導入 |
注記: 上記の補助金名、金額、補助率は年度や申請枠(通常枠、DX枠など)によって大きく変動します。申請を検討する際は、必ず最新の公式公募要領をご確認ください。
1. 【制度A】(例:事業再構築補助金)- 大規模投資や新分野進出に
事業再構築補助金は、新型コロナや物価高騰の影響を受けながらも、思い切った事業の「再構築」に挑戦する事業者を支援する大型補助金です。
・ こんな建設会社におすすめ:
・ 従来の公共事業依存から脱却し、民間工事(例:ZEH住宅建築)やBtoCのリフォームなど、新しい分野の市場に進出したい。
・ ドローンや3Dプリンター(建設用)など、既存事業とは異なる新しい技術を活用したサービスを始めたい。
・ 新事業のために、事務所や作業場の大規模な改修・新設が必要。
・ 補助対象経費の例:
・ 建物費: 新事業に必要な事務所、作業場、倉庫などの新築・改修費(※建設業者が自ら施工する場合は対象外など注意点あり)
・ 機械装置・システム構築費: 新規事業にのみ使用する重機、ドローン、専用ソフトウェアの開発費
・ 技術導入費、研修費: 新事業に必要なライセンス取得費用や従業員研修費
・ 広告宣伝・販売促進費: 新事業の認知拡大のためのWebサイト制作費、展示会出展費
[出典:事業再構築補助金 公式ポータルサイト]
2. 【制度B】(例:ものづくり補助金)- 生産性向上・DX推進に
ものづくり補助金(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、生産性の向上や革新的なサービス開発のための設備投資・システム開発を支援する補助金です。建設業のDX推進と親和性が高いのが特徴です。
・ こんな建設会社におすすめ:
・ ICT建機や3Dスキャナを導入し、測量や施工の精度向上とスピードアップ(=生産性向上)を図りたい。
・ 現場と事務所の情報をリアルタイムで一元管理する、独自の施工管理システムを開発(革新的なサービス開発)したい。
・ 人手不足解消のため、従来は手作業だった積算や図面作成プロセスを革新(自動化)したい。
・ 補助対象経費の例:
・ 機械装置・システム構築費: 生産性向上に資するICT建機、3Dスキャナ、測量機器、ソフトウェア開発費
・ 専門家経費: システム導入やプロセス改善に関するコンサルティング費用
・ 運搬費: 機械装置の運搬設置費用
・ クラウドサービス利用費: 開発したシステムの運用に必要なサーバー代など
[出典:ものづくり補助金 公式ポータルサイト]
3. 【制度C】(例:IT導入補助金)- 手軽な業務効率化に
IT導入補助金は、中小企業が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化や売上アップを支援する制度です。比較的安価なソフトウェア導入から対象となるため、活用しやすい補助金です。
・ こんな建設会社におすすめ:
・ まずはバックオフィス(経理、総務、人事)のIT化から進めたい。
・ インボイス制度や電子帳簿保存法に対応した会計ソフトや受発注ソフトを導入したい。
・ 現場写真の管理や図面共有をスムーズにする安価なクラウド型アプリ(SaaS)を導入したい。
・ 補助対象経費の例:
・ ソフトウェア購入費、クラウド利用料: 事務局に登録された「IT導入支援事業者」が提供するITツール(会計、勤怠、受発注、決済、施工管理ソフトなど)の利用料(最大2年分など)
・ 導入関連経費: ツールの導入設定、マニュアル作成、導入研修にかかる費用
・ (一部の枠のみ)ハードウェア購入費: PC、タブレット、レジなどの購入費用
[出典:IT導入補助金 公式ポータルサイト]
補助金申請で失敗しないための注意点
補助金は魅力的な制度ですが、申請や受給にはいくつかの「落とし穴」があります。特に建設業のように日々の現場業務が多忙な場合、以下の3つの注意点を事前に理解しておくことが、失敗を防ぐ鍵となります。

補助金は「後払い」が原則
最も重要な注意点として、補助金は原則として「後払い」です。
採択が決定したらすぐにお金が振り込まれるわけではありません。
- 補助金受給までの一般的な流れ
1. 申請・審査 → 採択決定
2. (交付決定後)事業の実施 → 設備の発注・購入・支払い(全額立て替え)
3. 事業完了 → 実績報告書の提出・検査
4. (検査合格後)補助金額の確定 → 補助金の振り込み
つまり、採択されてから実際に入金されるまでには、数ヶ月から1年以上かかる場合もあります。その間の設備購入費用は全額自社で立て替える必要があるため、一時的に資金繰りが悪化しないよう、金融機関からの融資なども含めた資金計画が不可欠です。
「事業計画書」の質が採択を左右する
特にものづくり補助金や事業再構築補助金のような審査型の補助金では、事業計画書の出来栄えが採択・不採択をほぼ決定します。
単に「最新の重機が欲しい」という内容では採択されません。審査では以下の点が厳しく見られます。
・ 自社の課題と強み: なぜ今、その投資が必要なのか?
・ 市場と競合: 導入する設備や新サービスに市場ニーズはあるか?
・ 革新性・優位性: 競合他社と比べて何が優れているのか?
・ 実現可能性: 計画(売上、生産性)は現実的か?
・ 数値計画: 投資によって「生産性が〇〇%向上する」「労働時間が〇〇時間削減できる」といった具体的な数値目標と、その算出根拠が示されているか?
これらの内容を、客観的なデータ(市場調査、見積書など)と共に具体的に示す必要があります。
申請代行業者・専門家の選び方
多忙な建設業者が自社だけですべての申請書類を作成するのは困難な場合、中小企業診断士や行政書士などの申請支援専門家(コンサルタント)を活用するのは有効な選択肢です。
しかし、業者選びには注意が必要です。
・ 「採択率100%を保証します」
・ 「事業計画書はすべて丸投げOKです」
・ 「着手金が異常に高額」または「成功報酬が補助金額の30%を超える」
上記のような過度な宣伝文句をうたう業者には注意してください。補助金申請は、あくまで事業者自身が主体となって行うものです。
選ぶべきは、建設業の業界事情やDXの動向を理解し、事業者の強みや課題を丁寧にヒアリングした上で、計画書作成を伴走支援してくれる専門家です。
まとめ:自社に最適な補助金を見つけて建設業の課題解決へ
建設業が活用できる補助金は、設備投資、DX推進、人手不足対策など、さまざまな経営課題を解決する強力な手段となります。重要なのは、数ある制度の中から自社に最適なものを選ぶことです。
- 最適な補助金を選ぶための3ステップ
1. 目的の明確化:
まず「何のために」補助金を使いたいのかをはっきりさせる。
2. 要件の確認:
自社とやりたいことが対象になるかを確認する。
3. 制度の比較:
「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」など、目的別に主要な補助金の特徴を比較検討する。
この記事で紹介した選び方のポイントとおすすめの制度を参考に、まずは自社の課題整理から始めてみてください。適切な補助金を活用し、事業の発展につなげましょう。
建設業の補助金に関するよくある質問
建設業の補助金活用に関して、事業者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q. 複数の補助金を同時に申請・受給できますか?
A. 結論から言うと、「同一の事業内容(同一の経費)」で複数の補助金を受給することは原則できません。
例えば、「AというICT建機」の購入費用について、ものづくり補助金と事業再構築補助金の両方から受給することは不可能です。
ただし、「Aの事業(ICT建機導入)でものづくり補助金」を申請し、「Bの事業(勤怠システム導入)でIT導入補助金」を申請するなど、目的や内容、使用する経費が明確に異なる場合は、併用が認められるケースがあります。詳細は各補助金の公募要領で「重複申請」に関する項目を確認してください。
Q. 申請すれば必ず補助金はもらえますか?
A. いいえ、もらえません。
この記事で紹介した「補助金」(経済産業省系)は、予算と採択枠が決められており、提出された事業計画書の審査によって採択・不採択が決まります。優れた計画でなければ採択されません。
一方、「助成金」(厚生労働省系、主に雇用関連や人材育成に関するもの)は、定められた要件(例:特定の研修を実施する、新しい雇用制度を導入する)を満たして申請すれば、原則として受給できます。
Q. 建設業特有の対象経費などはありますか?
A. 「建設業専用」と銘打たれた補助金は多くありませんが、主要な補助金の多くは建設業のニーズに合う経費を対象としています。
例えば、ものづくり補助金では「ICT建機」「3Dスキャナ」「ドローン(測量用)」、IT導入補助金では「施工管理アプリ」「積算ソフト」、事業再構築補助金では「新事業(リフォーム事業部など)のためのモデルルーム改修費」などが対象経費として採択されています。重要なのは、それらが「建設業特有か」ではなく、「その補助金の目的(生産性向上、新分野進出など)に合致するか」を事業計画書で示すことです。




