【徹底比較】建設業で個人と法人どちらがお得?

この記事の要約
- 建設業で独立するなら必見!個人と法人の違いを費用・税金・信用面から解説
- 「利益800万円の壁」は本当?法人化による節税メリットとタイミングを分析
- 社会保険料や手続きの負担は?あなたに最適な会社設立の形がこの記事でわかる
- 目次
- 建設業における会社設立の選択肢:個人事業主と法人の違いとは?
- 個人事業主とは?手軽さと自由度が魅力
- 法人とは?社会的信用と節税の可能性
- 【表で整理】個人事業主と法人の基本情報と社会保険料の比較
- 建設業で会社設立するメリット・デメリットを徹底比較
- メリット① 税金の比較|利益800万円を超えると法人が有利
- メリット② 社会的信用の比較|大手との取引や融資で有利に
- メリット③ 経費の範囲の比較|役員報酬や退職金も経費に
- 【要注意】法人化の3つのデメリット
- 建設業の会社設立はいつ?法人化を検討する3つのステップ
- STEP1:売上1,000万円と消費税を確認する
- STEP2:利益800万円と所得税・法人税を比較する
- STEP3:事業の将来性(取引先・採用・融資)を判断する
- 建設業の会社設立でよくある不安と判断基準
- 手続きの煩雑さが心配な方へ
- 【結論】あなたの状況で選ぶべき事業形態はこれだ
- まとめ:建設業での成功に向けた最適な会社設立の選択を
- よくある質問
建設業における会社設立の選択肢:個人事業主と法人の違いとは?
建設業界で独立・開業を目指す際、最初の大きな選択が事業形態です。具体的には「個人事業主」としてスタートするか、「法人」を設立するかの二択が考えられます。この選択は、手続きの手軽さ、税金の負担、社会的信用度など、事業運営のあらゆる側面に影響を与えます。それぞれの特徴を正しく理解し、ご自身の事業計画に合った形態を選ぶことが、成功への第一歩と言えるでしょう。
個人事業主とは?手軽さと自由度が魅力
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む形態のことです。建設業においては、一人親方や小規模な工務店などがこの形態を選択することが多いです。最大の魅力は、その手軽さと自由度の高さにあります。
・開業手続きの手軽さ
税務署に「開業届」を提出するだけで事業を開始できます。法人設立のように、定款の認証や登記といった複雑な手続きや費用は基本的に必要ありません。
・事業主の自由度の高さ
事業で得た利益はすべて事業主個人のものとなり、その使い道も自由です。意思決定もすべて自分一人で行えるため、機動的な事業運営ができます。
法人とは?社会的信用と節税の可能性
法人とは、法律によって「人」と同じように権利や義務が認められた組織のことです。事業主個人とは別の存在として扱われるため、個人の財産と会社の財産は明確に区別されます。建設業で会社設立をする場合、主に「株式会社」や「合同会社」といった形態が選ばれます。
・社会的信用の高さ
法人は、法律に基づいて設立・登記されているため、一般的に個人事業主よりも社会的信用度が高いと評価されます。これは、金融機関からの融資や、大手企業との取引、公共工事の入札など、事業を拡大していく上で大きなアドバンテージとなります。
【表で整理】個人事業主と法人の基本情報と社会保険料の比較
個人事業主と法人の基本的な違いと、運営コストに大きく影響する社会保険料の扱いについて、以下の表にまとめました。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(株式会社の例) |
|---|---|---|
| 設立手続き | 開業届の提出のみ | 定款認証、登記申請などが必要 |
| 設立費用 | ほぼ0円 | 約20万円~ |
| 事業主の責任 | 無限責任(事業上の負債は個人の全財産で返済) | 有限責任(出資額の範囲内での責任) |
| 社会的信用 | 法人より低い傾向 | 高い |
| 社会保険の加入 | 従業員5人未満は任意 | 役員1名から強制加入 |
| 会計・税務 | 比較的簡易 | 複雑(専門家のサポートが必要な場合が多い) |
| [出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」] |
建設業で会社設立するメリット・デメリットを徹底比較
事業形態を選ぶ上で最も気になるのが、お金と信用の問題です。ここでは、会社設立におけるメリット・デメリットを「税金」「社会的信用」「経費」「法人化の注意点」の観点から具体的に掘り下げて比較します。公平な視点で両者を比較し、ご自身にとっての最適解を見つけていきましょう。

メリット① 税金の比較|利益800万円を超えると法人が有利
事業の利益に直接課される税金は、個人と法人で仕組みが大きく異なります。
・所得税と法人税
個人事業主には所得に応じて税率が上がる累進課税(5%~45%)が適用されます。一方、法人には利益に対してほぼ一定の税率がかかる比例税率(約23%前後)が基本です。一般的に、課税所得(利益)が800万円を超えると、個人事業主の所得税率よりも法人税率の方が低くなるため、法人化した方が節税上有利になると言われています。
・赤字の繰越
事業が赤字になった場合、その損失を翌年以降の利益と相殺できる制度があります。この繰越が可能な期間は、個人事業主が3年間であるのに対し、法人は10年間と長く設定されています。
メリット② 社会的信用の比較|大手との取引や融資で有利に
建設業においては、社会的信用が事業の成長を大きく左右します。
・取引先からの信用
大手ゼネコンや官公庁は、コンプライアンスの観点から法人でなければ取引しないという規定を設けている場合があります。将来的に大きなプロジェクトや公共工事を手掛けたいのであれば、法人設立は必須条件となることが多いです。
・資金調達と人材採用
金融機関は融資審査において、事業の透明性を重視します。会計処理が厳格な法人は、個人事業主よりも融資を受けやすい傾向にあります。また、社会保険が完備されている法人は、福利厚生が整っているという印象を与え、優秀な人材を確保しやすくなります。
メリット③ 経費の範囲の比較|役員報酬や退職金も経費に
法人の方が経費として認められる範囲が広く、節税の選択肢が増えるというメリットがあります。
- 法人で経費にできる費用の例
・役員報酬:社長や家族への給与を「役員報酬」として経費にできます。これにより、会社と個人の両方で所得を分散させ、全体の税負担を軽減できます。
・退職金:経営者に退職金を支払うことができ、これは税制上非常に優遇されています。個人事業主にはない大きなメリットです。
・生命保険料:会社で加入する生命保険の一部を経費として計上できる場合があります。
【要注意】法人化の3つのデメリット
法人化には多くのメリットがある一方で、無視できないデメリットも存在します。これらを理解せず法人化を進めると、かえって負担が増える可能性があります。
社会保険料の負担増
法人になると、社長1人であっても社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられます。保険料は会社と個人で折半するため、会社としての支出が大幅に増加します。これは法人化における最大の金銭的負担と言えるでしょう。赤字でも発生する税金
法人の場合、たとえ事業が赤字であっても、資本金の額などに応じて計算される「法人住民税の均等割」を納付しなければなりません。最低でも年間7万円程度の負担が発生します。設立・運営コストと事務負担の増加
株式会社の設立には約20万円以上の初期費用がかかります。また、会計処理や税務申告が複雑になるため、税理士との顧問契約が必須となるケースが多く、その費用も継続的に発生します。
建設業の会社設立はいつ?法人化を検討する3つのステップ
「個人と法人の違いはわかったが、具体的にどのタイミングで法人化(法人成り)すれば良いのか」これは多くの方が抱える疑問です。最適なタイミングを逃すと、余計な税金を払うことにもなりかねません。ここでは、ご自身の状況に合わせて法人化を判断するための具体的な3つのステップを解説します。

STEP1:売上1,000万円と消費税を確認する
目的:消費税の納税義務が発生するタイミングを把握する。
最初の目安となるのが、課税売上高1,000万円です。原則として、このラインを超えた年の2年後から、消費税の課税事業者となり納税義務が発生します。インボイス制度への対応で既に課税事業者になっている方も多いですが、この売上1,000万円は事業が一つ上のステージに上がった証拠であり、法人化による税務戦略を検討し始めるべき最初のシグナルです。
STEP2:利益800万円と所得税・法人税を比較する
目的:税負担が逆転する「損益分岐点」を見極める。
次に確認すべきは、税引前の利益(所得)が800万円を超えているかです。
個人事業主に課される所得税は、利益が増えるほど税率も上がる「累進課税」です。一方、法人税は利益に対してほぼ一定の「比例税率」が適用されます。この税率が逆転するのが、一般的に利益800万円前後と言われています。
・利益800万円以下の場合:多くの場合、個人事業主の方が税負担は軽い。
・利益800万円超の場合:法人化し、自身への給与を「役員報酬」として経費計上することで、トータルの税負担を軽減できる可能性が高い。
STEP3:事業の将来性(取引先・採用・融資)を判断する
目的:数字以外の事業計画から、法人格が必要なタイミングを判断する。
最後に、ご自身の事業の将来像から判断します。たとえ利益が800万円に達していなくても、以下のような計画がある場合は、早期の法人化が有利に働きます。
大手企業や官公庁との取引を目指すか?
→ 大手ゼネコンや公共工事の入札では、法人格が取引の前提条件となるケースがほとんどです。従業員を雇用して事業を拡大するか?
→ 社会保険完備の法人は、求人において信頼性が高く、優秀な人材を確保しやすくなります。金融機関からの融資を検討しているか?
→ 法人は会計の透明性が高く、個人事業主よりも高額な融資を受けやすい傾向があります。
建設業の会社設立でよくある不安と判断基準
ここまで法人化のタイミングやメリット・デメリットを解説してきましたが、最終的な判断を下す上での不安や疑問は尽きないものです。ここでは、手続きに関する不安を解消し、ご自身の状況に合わせた最適な選択ができるよう、結論となる判断基準を提示します。

手続きの煩雑さが心配な方へ
・個人事業主
手続きは非常にシンプルです。管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出すれば完了です。
・法人設立
定款作成・認証、登記申請など、専門的な知識が必要な手続きが多くあります。自分で行うことも可能ですが、時間と手間がかかるため、司法書士や行政書士といった専門家に依頼するのが一般的です。費用はかかりますが、スムーズかつ確実に会社を設立できます。
【結論】あなたの状況で選ぶべき事業形態はこれだ
最終的にどちらを選ぶべきか、それぞれの推奨ケースをまとめました。ご自身の現状と将来のビジョンを照らし合わせて、最適な選択をしてください。
- あなたの状況に合わせた最適な選択肢
・個人事業主がおすすめなケース
・まずはスモールスタートで事業を始めたい
・当面の利益が800万円に満たない見込み
・手続きや毎月の社会保険料負担を避けたい
・一人親方として、自分のペースで仕事をしたい・法人がおすすめなケース
・年間の利益が800万円を超える見込みがある
・大手企業や官公庁と取引したい
・金融機関から融資を受けて事業を拡大したい
・従業員を雇用して組織的に事業を運営したい
まとめ:建設業での成功に向けた最適な会社設立の選択を
本記事では、建設業を営む上で個人事業主と法人のどちらを選ぶべきか、費用、税金、信用の観点から多角的に比較しました。
・手軽さとコストを重視するなら個人事業主
・節税メリットと事業拡大を目指すなら法人
それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の事業規模や将来のビジョンに合った最適な形態を選択することが、事業成功への第一歩です。もし判断に迷う場合は、税理士や司法書士などの専門家に相談し、客観的なアドバイスを受けることをおすすめします。
よくある質問
Q1. 建設業許可は個人事業主でも取得できますか?
A1. はい、個人事業主でも法人でも、要件を満たせば建設業許可を取得することは可能です。ただし、法人の方が社会的な信用度が高いと見なされ、公共工事の入札などで有利になる場合があります。
[出典:国土交通省「建設業の許可とは」]
Q2. 法人化すると、社会保険への加入は必須ですか?
A2. はい、法人の場合、社長1人であっても健康保険と厚生年金保険(社会保険)への加入が法律で義務付けられています。個人事業主の場合は、常時使用する従業員が5人未満であれば任意加入となります。
[出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」]
Q3. 個人事業主から法人化する「法人成り」のメリットは何ですか?
A3. 主なメリットは、所得税よりも法人税の方が税率が低くなることによる節税効果、社会的信用の向上、事業上の責任が個人の財産に及ばない有限責任になることなどが挙げられます。特に、年間所得が800万円を超えるあたりから、法人化による節税メリットが大きくなると言われています。




