「会社設立」の基本知識

建設業で起業するための手続きと流れは?


更新日: 2025/10/15
建設業で起業するための手続きと流れは?

この記事の要約

  • 建設業の会社設立に必要な全5ステップと手続きがわかる
  • 個人事業主と法人設立、どちらを選ぶべきかの判断基準が明確になる
  • 建設業許可や資金調達で失敗しないための専門的な注意点がわかる
目次

建設業での起業・会社設立の前に知っておくべきこと

建設業で起業し会社設立を目指すには、まず事業の根幹に関わる重要な知識を整理する必要があります。具体的には、事業規模に応じた建設業許可の要否、個人事業主法人のどちらの形態が最適かの比較検討、そして起業に不可欠な資金計画です。これらの事前準備を怠ると、後々の手続きが滞ったり、想定外の費用が発生したりする可能性があります。まずはこの3つのポイントを確実に押さえ、スムーズなスタートを切りましょう。

そもそも建設業許可は必要?許可が不要な「軽微な工事」とは

建設業を営むには、原則として建設業法に基づき「建設業許可」を取得しなければなりません。ただし、例外として「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可がなくても事業を開始できます。自社が請け負う工事がどちらに該当するのか、事業計画を立てる上で最初に確認すべき最重要項目です。

建設業許可の要否を判断する工事規模

以下の表は、建設業許可が不要な「軽微な建設工事」と、許可が必要になる工事の具体的な基準をまとめたものです。

許可が不要な工事(軽微な建設工事) 許可が必要な工事
建築一式工事以外:1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事 建築一式工事以外:1件の請負代金が500万円以上(税込)の工事
建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円未満(税込)または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事 建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円以上(税込)または延べ面積150㎡以上の木造住宅工事

個人事業主と会社設立(法人化)のメリット・デメリットを徹底比較

建設業で起業する際、個人事業主としてスタートするか、会社設立(法人化)するかは、事業の将来を左右する大きな選択です。それぞれにメリットとデメリットが存在するため、社会的信用度、税金、責任の範囲といった観点から総合的に比較し、ご自身の事業計画に最適な形態を選択することが重要です。

建設現場で事業計画について話し合う2人の人物

事業形態によるメリット・デメリット比較表

以下の表で、個人事業主と法人の主な違いを確認し、どちらが適しているか検討しましょう。

項目 個人事業主 会社設立(法人)
社会的信用度 法人より低い傾向 高い(金融機関からの融資や大手企業との取引で有利)
税金 所得が増えると税率が高くなる累進課税 法人税率が適用される(一定の所得を超えると有利)
設立手続き 開業届を提出するだけで簡単 定款認証や登記など、手続きが複雑で費用もかかる
責任の範囲 無限責任(事業の負債は全財産で負う) 有限責任(出資額の範囲内で責任を負う)
経費の範囲 比較的狭い 役員報酬や退職金など、経費として認められる範囲が広い

起業に必要な資金の目安と、賢い資金調達方法

建設業での起業には、まとまった初期費用と当面の運転資金が不可欠です。具体的には、会社設立や建設業許可取得にかかる法定費用、事務所や機材の準備費用などが挙げられます。自己資金だけでは不足する場合に備え、公的な融資制度など、多様な資金調達方法についても事前に調べておきましょう。計画的な資金準備が、事業を安定させるための第一歩となります。

起業に必要な資金と調達方法

必要な資金の内訳
 ・会社設立費用(登録免許税、定款認証手数料など):約20〜25万円
 ・建設業許可申請費用(知事許可の場合):約9万円
 ・事務所の敷金・礼金、家賃
 ・機材や車両の購入・リース費用
 ・当面の運転資金(人件費、材料費など)

主な資金調達方法
 ・日本政策金融公庫の創業融資: 政府系金融機関による、創業者向けの低金利融資制度です。
 ・地方自治体の制度融資: 都道府県や市区町村が、金融機関や信用保証協会と連携して提供する融資制度です。
 ・信用保証協会の保証付き融資: 企業の借入に対して公的な保証を行うことで、金融機関からの融資を受けやすくする制度です。

【5ステップで解説】建設業で会社設立する手続きと具体的な流れ

建設業で会社を設立するプロセスは、法的な手続きを含め、大きく5つのステップに分けられます。各ステップの目的と要点を正確に理解し、順序通りに進めることがスムーズな会社設立の鍵です。ここでは、専門家の視点から各工程の目的、必要なもの、期間の目安を具体的に解説します。

会社の設立手続きのため、デスクで書類作成を行う人物

ステップ1:会社設立の基本事項(商号・事業目的など)を決定する

会社の骨格を定義し、定款作成の土台を固めるための最初のステップです。
目的:会社の基本情報(商号、事業目的、本店所在地など)を確定させる。
期間の目安:1日~1週間
決定事項
 ・商号(会社名):使用したい会社名。同一住所に同じ商号の会社は登記できないため、法務局で類似商号の調査を行います。
 ・事業目的:どのような建設工事を行うのか、具体的に記載します。将来的に行う可能性のある事業も記載しておくと、後々の変更手続きが不要になります。
 ・本店所在地:会社の公式な住所です。
 ・資本金の額:事業の元手となる資金。建設業許可の財産要件(500万円以上)を考慮して設定するのが一般的です。
 ・発起人(ほっきにん):会社を設立する人(出資者)。
 ・役員構成:代表取締役や取締役などの役員を決めます。
 ・事業年度:会社の決算期をいつにするか決定します。

ステップ2:会社の憲法となる「定款」の作成と公証役場での認証

ステップ1で決定した基本事項に基づき、会社のルールブックである定款を作成します。株式会社を設立する場合、作成した定款は、公証役場で公証人による認証を受ける必要があります。この認証手続きを経て、定款は法的な効力を持つ正式な書類となります。

ステップ3:資本金の発起人個人口座への払い込み

定款の認証が完了したら、発起人(出資者)が定めた資本金を、発起人個人の銀行口座に払い込みます。この時点ではまだ会社名義の銀行口座は存在しないため、代表となる発起人の口座を使用します。払い込みが完了したら、通帳のコピーなどを取り、資本金が確かに払い込まれたことを証明する「払込証明書」を作成します。

ステップ4:法務局への会社設立登記申請(この日が設立日)

会社を法的に成立させ、社会的な存在として登録する重要な手続きです。
目的:法務局に会社を登録し、法人格を取得する。
期間の目安:申請から登記完了まで1週間~10日
ポイント
 ・必要書類一式を揃え、本店所在地を管轄する法務局会社設立登記の申請を行います。
 ・この登記申請日が、会社の設立日となります。
 ・登記が完了すると、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が取得できるようになります。

ステップ5:会社設立後に必須となる税務・社会保険の各種届出

登記が完了し、会社が正式に設立されたら、事業を運営するために各行政機関への届出が必要です。税金や社会保険に関する重要な手続きであり、提出先や期限がそれぞれ異なるため、リストアップして漏れなく対応しましょう。

会社設立後に必要な主な届出

以下の表は、会社設立後に提出が必要な主な書類とその提出先、期限をまとめたものです。

提出先 主な提出書類 提出期限
税務署 法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書 設立後2ヶ月以内
都道府県税事務所・市町村役場 法人設立届出書 設立後1ヶ月〜2ヶ月以内(自治体による)
年金事務所 健康保険・厚生年金保険新規適用届 設立後5日以内
労働基準監督署 労働保険関係成立届 労働者を雇用した日の翌日から10日以内
ハローワーク 雇用保険適用事業所設置届 労働者を雇用した日の翌日から10日以内

会社設立後に必須!建設業許可の申請手続き

会社の設立登記が完了しても、すぐに500万円以上の工事を請け負えるわけではありません。次に、事業の要となる建設業許可の申請手続きを進める必要があります。許可取得には専門的な要件をすべて満たす必要があり、書類準備にも時間がかかるため、会社設立と並行して計画的に準備を進めることが、スムーズな事業開始の鍵となります。

【5つの要件】建設業許可の申請前にクリアすべき必須条件

建設業許可を取得するためには、主に以下の5つの要件をすべて満たしている必要があります。申請前に、自社がこれらの要件をクリアできているか、証拠となる書類とともに最終確認を行いましょう。

建設業許可の5大要件

1. 経営業務の管理責任者がいること
 建設業の経営経験が5年以上ある役員など、経営管理能力を持つ人物が常勤している必要があります。

2. 専任技術者を営業所ごとに置いていること
 許可を受けたい建設工事に関して、国家資格や一定期間の実務経験を持つ技術者を、営業所に常勤で配置する必要があります。

3. 誠実性があること
 法人の役員などが、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことが求められます。

4. 財産的基礎があること
 自己資本の額が500万円以上あること、または500万円以上の資金調達能力があることなどが証明できる必要があります。

5. 欠格要件に該当しないこと
 役員などが、破産者であったり、過去に法律違反で処罰を受けていたりしないことなどが要件となります。

[出典:国土交通省 建設業の許可]

許可申請に必要な書類の準備と作成のポイント

建設業許可の申請には、申請書のほかにも非常に多くの添付書類が求められます。例えば、役員の住民票や身分証明書、会社の登記簿謄本、専任技術者の資格者証や実務経験を証明する書類、財産的基礎を証明するための財務諸表や預金残高証明書など、多岐にわたります。収集・作成に時間がかかるものも多いため、早めに準備に着手しましょう。

担当窓口への申請から許可取得までの流れと期間

すべての必要書類が準備できたら、本店所在地を管轄する都道府県の土木事務所など、担当窓口に申請書類一式を提出します。提出後、行政庁による審査が行われます。書類に不備がなく、要件をすべて満たしていることが確認されれば、正式に建設業許可が通知されます。審査にかかる期間は、自治体によって異なりますが、通常1ヶ月から2ヶ月程度が目安です。

建設業の会社設立で失敗しないための3つの注意点

建設業の会社設立と事業運営を成功させるためには、いくつかの重要な注意点があります。手続きの複雑さから専門家の活用を検討すること、予期せぬ出費に備えて余裕のある資金計画を立てること、そして法人としての法的義務である社会保険への加入を徹底することです。これらのポイントを軽視すると、事業の存続に関わる問題に発展する可能性もあるため、確実に対応しましょう。

手続きの確実性を高める専門家(行政書士など)への相談

会社設立の登記手続きや建設業許可の申請は、法律の知識が必要で書類も複雑なため、専門的なスキルが求められます。本業である建設業務に集中するためにも、これらの煩雑な手続きは行政書士などの専門家へ依頼することを検討しましょう。専門家に依頼すれば、時間と手間を大幅に削減できるだけでなく、書類の不備による申請の遅れなどを防ぎ、確実かつスムーズに手続きを進めることができます。

建設業特有の資金繰りを乗り切る余裕を持った資金計画

起業時には、会社設立費用や許可取得費用といった初期投資だけでなく、事業が軌道に乗るまでの運転資金が極めて重要です。特に建設業は、工事の完成後に入金されるまで時間がかかるケースも多く、資金繰りが厳しくなりがちです。材料費や人件費の支払いが滞らないよう、最低でも3ヶ月から半年分の運転資金を見込んだ、余裕のある資金計画を立てておくことが、失敗しないための鍵となります。

法人としての義務!社会保険への加入手続きを忘れずに行う

法人を設立した場合、たとえ社長一人だけの会社であっても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が法律で義務付けられています。手続きは、会社設立後5日以内に年金事務所で行う必要があります。加入手続きを怠ると、遡って保険料を請求されるだけでなく、延滞金が発生する場合もあります。従業員を雇用する場合はもちろん、役員のみの場合でも加入義務があるため、忘れずに手続きを行いましょう。

まとめ

建設業で起業し、会社を設立するためには、事業計画の策定から会社設立手続き、建設業許可の取得、そして事業開始後の各種届出まで、多くのステップを踏む必要があります。 特に、建設業許可の要件は複雑であり、事前にしっかりと確認し、計画的に準備を進めることが成功の鍵です。個人事業主と法人の違いを理解し、自身の事業規模や将来の展望に合った形態を選択しましょう。手続きに不安がある場合は、専門家のサポートを活用することも視野に入れ、スムーズな事業開始を目指してください。

よくある質問

Q. 資本金はいくら必要ですか?

A. 法律上、資本金は1円から会社を設立できます。しかし、建設業許可の財産的要件として「自己資本500万円以上」という基準があるため、これを満たす額(一般的には500万円以上)を資本金として設定するのが一般的です。また、当面の運転資金としても余裕のある金額を用意することをおすすめします。

Q. 会社設立までにかかる期間はどれくらいですか?

A. ご自身で手続きを行う場合、基本事項の決定から書類準備、登記申請、設立後の届出まで含めると、1ヶ月〜2ヶ月程度かかることが多いです。特に定款の内容や必要書類の収集に時間がかかる場合があります。専門家に依頼すると、よりスムーズに進められ、2〜3週間程度で登記完了まで至ることも可能です。

Q. 建設業許可がなくても請け負える工事はありますか?

A. はい、「軽微な建設工事」に該当する場合は、建設業許可がなくても請け負うことが可能です。「軽微な建設工事」とは、1件の請負代金が500万円未満(建築一式工事の場合は1,500万円未満)の工事などを指します。ただし、将来的に事業を拡大し、より大きな規模の工事を請け負うことを考えている場合は、早めに許可を取得することをおすすめします。

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