「NETIS」の基本知識

【2025年最新版】NETIS制度の最新変更点とは?注目すべきポイントを解説


更新日: 2025/10/22
【2025年最新版】NETIS制度の最新変更点とは?注目すべきポイントを解説

この記事の要約

  • NETIS制度の基本と登録技術の分類を解説
  • 発注者・施工者・開発者それぞれのNETIS活用メリット
  • 2025年最新の制度変更点(DX化・評価厳格化)を詳解
目次

そもそもNETIS(ネティス)とは?基本を解説

NETIS(ネティス)は、国土交通省が運営する新技術の情報共有データベースです。公共工事の効率化や品質向上を目的としており、多くの建設会社や技術開発者に利用されています。このセクションでは、NETISの正式名称と目的、制度の基本的な仕組み、そして登録技術の重要な分類について解説します。

NETISの正式名称と目的

NETIS(ネティス)は、「New Technology Information System(新技術情報提供システム)」の略称です。

その最大の目的は、民間企業などによって開発された有用な新技術の情報を収集・共有し、公共工事における活用を強力に促進することにあります。NETISを通じて優れた新技術が広く使われることで、建設プロジェクト全体の生産性向上品質確保コスト縮減安全性の向上、さらには環境負荷の低減などを実現することが期待されています。

[出典:国土交通省「NETISとは」]

NETIS制度の仕組み(登録から活用までの5ステップ)

NETISの制度は、新技術が開発者によって申請されてから、施工者・発注者に活用され、評価が確定するまでの一連のプロセスを管理するプラットフォームです。制度の仕組みを5つのステップで解説します。

  1. STEP1:技術開発者による申請
    技術開発者(メーカー等)が、開発した新技術の登録を国土交通省の地方整備局などに申請します。
  2. STEP2:国(審査機関)による審査・登録
    申請された技術が、新規性、有用性、信頼性などの基準を満たしているか審査されます。基準をクリアすると、まずは「A登録(新技術(申請中))」としてデータベースに登録・公開されます。
  3. STEP3:施工者・発注者による検索と活用
    施工者(建設会社)や発注者(国・自治体)が、NETISデータベースを検索し、工事の課題解決に適した技術を選定します。発注者は工事の仕様書で技術活用を推奨または指定します。
  4. STEP4:施工者による活用と調査表の提出
    施工者が現場で技術を活用した後、その結果(従来工法との比較、得られた効果など)を「活用効果調査表」として発注者経由で提出します。
  5. STEP5:評価の確定(V登録・VE登録へ)
    「活用効果調査表」が一定数(原則5件以上)蓄積されると、その有用性が評価され、「V登録(評価済技術)」へとステータスが変わります。特に効果が高いと認められた技術は「VE登録(活用促進技術)」となります。

NETIS登録技術の分類

NETISに登録された技術は、その申請段階や活用実績、評価状況によって明確に分類されています。特に公共工事の入札(総合評価落札方式)などで技術提案を行う際、どの分類の技術を選ぶかが非常に重要になります。

以下は、NETIS登録技術の主な分類をまとめた表です。

表1:NETIS登録技術の主な分類と概要

分類 正式名称(通称) 概要 登録期間
A 新技術(申請中) 開発者から申請され、審査機関が受理した段階の技術。まだ客観的な活用効果の評価は定まっていません。 1年度(※)
V 新技術(評価済) 活用効果調査表が一定数(5件以上)提出され、その有用性が評価された技術。信頼性の高い技術と言えます。 10年間
VE 活用促進技術 「V登録」技術の中でも、特に有用性が高く(例:従来比30%以上のコスト減など)、全国的な普及が期待されると認められた最上位の技術。 10年間
VR 活用促進技術(試行) 「V登録」技術のうち、さらなる活用効果の調査(試行)が必要と判断された技術。 3年間(最大5年)
(旧) 旧登録技術 登録期間(原則10年)を満了した技術。既に一般化した技術と見なされますが、活用実績として参照は可能です。 -
※A登録は、活用効果調査表が提出されればV登録へ移行審査されます。

なぜ今NETISが重要なのか?活用するメリット

NETISは、単なる技術データベースの枠を超え、公共工事に関わる「発注者」「施工者」「技術開発者」の三者に具体的なメリットをもたらす重要な制度です。特に人手不足や生産性向上が叫ばれる昨今、その重要性は一層高まっています。それぞれの立場から見た活用メリットを解説します。

発注者側(国・自治体)のメリット

公共工事の発注者である国や地方自治体にとって、NETISは税金を活用してインフラ整備を行う上での強力な武器となります。

品質の確保と安全性の向上:活用実績によって有用性が客観的に評価された「V登録」や「VE登録」技術を採用することで、工事の品質向上や現場の安全性確保が期待できます。
コスト縮減・工期短縮:従来の工法よりも効率的な新技術の活用を促すことで、事業全体のコスト削減や工期短縮を実現し、予算の効率的な執行につながります。
説明責任の担保:NETISという客観的なデータベースに基づいて技術を選定することで、技術選定プロセスの透明性や妥当性を住民や議会に対して説明しやすくなります。

施工者側(建設会社)のメリット

公共工事を受注する施工者(建設会社)にとって、NETISの活用は経営戦略上、非常に重要です。

総合評価落札方式での加点:入札時、NETIS登録技術(特にVE/V登録)の活用を「技術提案」として盛り込むことで、高く評価され、加点の対象となります。これは受注競争において非常に有利な要素です。
工事成績評定での加点:NETIS技術を実際に活用し、工期短縮やコスト削減などで良好な成果を上げた場合、工事完成後の工事成績評定で加点される可能性があります。評定点は、次の入札参加資格にも影響します。
生産性の抜本的な向上:現場が抱える深刻な課題(例:熟練工不足、危険作業、狭隘な場所での施工)を、NETISで探した新技術によって解決し、自社の生産性や安全性を直接的に向上させることができます。

NETIS技術を選定するためオフィスで議論する建設会社のスタッフ

技術開発者側(メーカー・ベンダー)のメリット

自社で革新的な新技術を開発したメーカーやベンダーにとって、NETISへの登録は技術普及のための最短ルートの一つと言えます。

信用の獲得:国土交通省という公的機関のシステムに登録されること自体が、その技術の信頼性や新規性の「お墨付き」となります。
圧倒的な販路拡大とPR効果:全国の発注機関や建設会社が日常的に閲覧するデータベースに掲載されるため、営業・マーケティングの機会が飛躍的に増大します。
技術の継続的なブラッシュアップ:実際の現場から提出される「活用効果調査表」という貴重なフィードバックを得ることで、技術のさらなる改良・改善に役立てることができます。

【2025年最新】NETIS制度の主な変更点と注目ポイント

NETIS制度は、時代の要請に合わせて常にアップデートされています。特に2025年度(令和7年度)に向けては、建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進や、より実効性の高い技術評価を目指した重要な変更点が施行されています。ここでは、最新の動向と注目すべきポイントを解説します。

2025年度改定の概要(変更点サマリー)

2024年度(令和6年度)から運用が開始され、2025年度に本格化する改定のキーワードは「申請プロセスのDX化」「評価の厳格化・明確化」「カーボンニュートラル対応」です。これにより、NETISはさらに使いやすく、信頼性の高いシステムへと進化しています。

表2:2025年最新 NETIS制度の主な変更点

変更カテゴリ 主な変更点 影響を受ける利用者
申請・登録 オンライン申請システム(新NETIS)の全面移行と入力項目の標準化・簡素化。 技術開発者
評価制度 「VE登録」への昇格要件の厳格化(従来工法比30%以上の効果が必須など)。 技術開発者・施工者
評価制度 「活用効果評価」の廃止と「V登録」への一本化(評価の簡素化)。 全利用者
新規テーマ 「カーボンニュートラル・脱炭素」関連技術の検索カテゴリ新設。 全利用者
検索機能 現場ニーズ(課題)からの逆引き検索機能の強化。 施工者・発注者

[出典:国土交通省「新技術情報提供システム(NETIS)の運用改善について(令和6年4月)」]

パソコンでNETISデータベースの評価を確認する技術者

注目ポイント①:申請プロセスのDX化と迅速化

従来の紙ベースや複雑だった申請プロセスが、オンラインシステム(新NETIS)に完全に移行・刷新されました。
開発者にとっては、申請手続きの負担が大幅に軽減され、登録までの審査期間の短縮が期待されます。また、申請情報のデータ入力が標準化されたことで、施工者や発注者が技術情報を比較検討しやすくなるメリットもあります。

注目ポイント②:評価の厳格化と「VE登録」の位置づけ

今回の改定で最も重要な変更点の一つが、評価制度の簡素化と厳格化です。従来の複雑だった「活用効果評価」が廃止され、評価済技術は「V登録」に一本化されました。

その上で、最上位ランクである「VE登録(活用促進技術)」への昇格要件が、より明確かつ厳格に変更されました。具体的には、「従来技術と比較して、コスト縮減または工期短縮の効果が30%以上であること」が、活用の効果に関する評価基準として明記されました。

これにより、「VE登録」技術の信頼性(=高い導入効果)が客観的に担保されることになり、施工者が入札提案で選定する際の価値が、以前にも増して高まったと言えます。

[出典:国土交通省「新技術情報提供システム(NETIS) 実施要領(令和6年4月)」(PDF P.18「別表-5 活用効果の評価項目及び評価基準」参照)]

注目ポイント③:「カーボンニュートラル」テーマの新設

現代社会の最大の課題の一つである「脱炭素」への対応も反映されました。NETISの検索システム内に、「カーボンニュートラル」(例:CO2排出削減、再生可能エネルギー活用など)に貢献する技術を明確に分類する新しいカテゴリが設けられました。

これにより、発注者が公共工事において環境配慮型技術を選定しやすくなるほか、該当する技術を持つ開発者にとっては、自社技術を強力にアピールする新たな機会となります。

2025年の変更に伴う既存ユーザー(施工者・開発者)の注意点

すでにNETISを活用している企業も、今回の変更に迅速に対応する必要があります。

開発者側の注意点

「VE登録」への申請準備:現在「V登録」の技術を「VE登録」に格上げ申請する場合、新しい厳格な基準(例:30%以上の効果)を満たすための客観的データ(活用効果調査表など)を準備する必要があります。
「カーボンニュートラル」カテゴリの確認:自社技術が「カーボンニュートラル」に貢献する場合は、カテゴリ登録を忘れずに行うことが重要です。

施工者側の注意点

「VE登録」技術の積極的検討:入札提案でNETIS技術を選定する際、厳格化された基準をクリアした「VE登録」技術は、従来以上に高い評価を得る可能性が高いです。
「カーボンニュートラル」への対応:発注者の仕様書や特記仕様書で、「カーボンニュートラル」関連技術の活用が推奨・指定されるケースが増加すると予想されるため、該当技術を積極的にチェックする必要があります。

NETISの活用で直面しがちな課題と対策

NETISは非常にメリットの多い制度ですが、特に中小の建設会社や技術開発者にとっては、活用する上でいくつかの「壁」が存在します。ここでは、直面しがちな課題と、その対策の方向性を解説します。

課題①:登録申請の手間と専門知識|対策:外部サポートの検討

新技術の登録申請には、その技術の新規性や優位性を客観的に証明するための詳細な資料作成が必要です。特に「従来工法」との比較データを定量的に示す必要があり、土木工学の専門知識やNETIS特有の申請ノウハウが求められます。
対策:リソースが限られる場合、申請書類の作成をサポートするコンサルタントなど、外部の専門家の活用を検討するのも一つの手段です。

課題②:「登録しただけ」で活用されない|対策:登録後のPR戦略

NETISに登録することはゴールではなく、スタートです。登録後、施工者や発注者に技術のメリットを正しく理解してもらい、実際の現場で使ってもらわなければ、活用実績(活用効果調査表)が集まらず、評価も上がりません。
対策:登録後は、自社ウェブサイトでの告知、展示会への出展、関係機関への積極的なPR活動など、技術を「使ってもらう」ための戦略的な広報活動が不可欠です。

課題③:データベースから適切な技術を探せない|対策:検索機能の活用

NETISには膨大な数の技術が登録されています。自社の現場が直面しているピンポイントな課題に対し、キーワード検索だけで最適な技術を探し出すのは困難な場合があります。
対策:最新のNETISシステムでは、現場の課題(例:「工期短縮」「コスト縮減」「安全性向上」)から技術を絞り込む「逆引き検索」機能が強化されています。これらの機能を使いこなし、効率的に技術を選定することが重要です。

課題④:制度変更や評価の仕組みが複雑|対策:公式情報の定期チェック

本記事で解説しているような制度変更が定期的に行われるため、「最新の評価ルールが分からない」「結局、入札で最も有利になる技術はどれなのか」を把握し続けるのは容易ではありません。
対策:国土交通省のNETIS公式サイトや、地方整備局が発信する情報を定期的にチェックし、常に最新の運用ガイドラインや実施要領を把握しておくことが不可欠です。

まとめ:NETISの最新動向を把握し競争力を高めよう

NETIS(新技術情報提供システム)は、公共工事の生産性・品質・安全性を向上させるために不可欠な制度です。

施工者にとっては「入札(総合評価)での加点」「工事成績評定での加点」、技術開発者にとっては「技術の信頼性獲得と販路拡大」、発注者にとっては「工事品質の担保とコスト縮減」という、三者三様の大きなメリットがあります。

2025年度に向けては、申請プロセスのDX化、評価の厳格化(特にVE登録)、そして「カーボンニュートラル」といった新テーマへの対応が大きな柱となっています。

これらのNETISに関する最新動向を正確に把握し、自社の技術提案や現場課題の解決に戦略的に活用することが、人手不足やDX化の波が押し寄せる今後の公共工事市場において、競争力を維持・強化するための鍵となるでしょう。

NETISに関するよくある質問

NETISに関してよく寄せられる質問とその回答を、Q&A形式でまとめます。

Q. NETIS登録にはどのくらいの費用と期間がかかりますか?

A. NETISの登録申請自体に、国(審査機関である地方整備局など)へ支払う審査費用はかかりません(無料です)。ただし、申請書類の作成(従来工法との比較データ収集、説明資料の作成など)を外部のコンサルタントに依頼する場合は、その費用が別途発生します。
審査期間は、申請内容の難易度や書類の不備の有無、申請時期によって変動しますが、一般的には申請から登録(A登録)まで数ヶ月程度を要します。

Q. NETISに登録されていない新技術は公共工事で使えませんか?

A. NETISに登録されていなくても、発注者の承認を得られれば公共工事で使用すること自体は可能です。ただし、その場合、NETIS登録技術(特にVE/V登録技術)を活用する際に得られるような、入札時の総合評価での加点や、工事成績評定での加点といったインセンティブは受けられない可能性が極めて高くなります。

Q. 「V登録」と「VE登録」の決定的な違いは何ですか?

A. どちらも「活用効果が認められた信頼できる技術」という点では共通です。決定的な違いは、「VE登録(活用促進技術)」は、その中でも特に「従来工法と比較して30%以上のコスト縮減または工期短縮が認められる」など、極めて有用性が高く、全国的な普及が期待できると認められた最上位の技術である点です。「V登録」よりも入札時や工事成績評定で高く評価される傾向があります。

Q. 登録が抹消されることはありますか?

A. あります。主な理由は、登録期間の満了です。例えば、「A登録」のまま活用実績が上がらずに規定期間(1年度)を過ぎた場合や、「V登録」のまま10年を経過した場合などです。期間満了となった技術は「旧登録技術」となり、入札加点などの対象からは外れます。また、技術内容に重大な問題(特許侵害や虚偽報告など)が発覚した場合には、期間内でも登録が取り消されることがあります。

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