NETISとは?制度の目的と仕組みを解説

この記事の要約
- NETISの目的から仕組み、登録のメリットまで基本を網羅
- 技術登録の具体的な手順と費用・期間の目安がわかる
- 発注者・受注者双方の視点からNETISの活用法を解説
- 目次
- NETISとは?新技術情報提供システムの基本を解説
- NETISの正式名称と運営組織
- NETIS制度が設立された背景と目的
- NETISの仕組みと登録から活用までの流れ
- STEP解説:NETIS新技術情報の登録プロセス
- 登録された情報の評価と分類
- NETIS登録情報の検索・活用方法
- NETISを活用するメリット・デメリット
- 【発注者側】のメリット
- 【受注者側】のメリット
- 【要注意】NETIS利用時のデメリットと対策(読者のよくある不安)
- NETIS登録を検討する際のポイント
- どのような技術がNETIS登録の対象となるか?
- 登録にかかる費用と期間の目安
- NETISと他の技術評価制度との違いを比較
- まとめ
- NETISに関するよくある質問
NETISとは?新技術情報提供システムの基本を解説
NETISとは、国土交通省が公共工事で活用できる有用な新技術の情報を集約し、提供するデータベースシステムです。正式名称を「新技術情報提供システム(New Technology Information System)」と言い、建設業界における技術革新を促進する重要な役割を担っています。このセクションでは、NETISの基本的な定義、運営組織、そして制度が設立された背景と目的について詳しく解説します。
NETISの正式名称と運営組織
NETISの正式名称は「新技術情報提供システム」です。このシステムは、国土交通省が主体となり、各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局が連携して運営しています。また、システムの開発・運用・管理の実務は、一般財団法人日本建設情報総合センター(JACIC)が担当しており、官民が連携して制度を支える体制が構築されています。この運営体制により、全国の公共工事に関する新技術情報が一元的に管理され、公平かつ広範に提供されることが可能となっています。
[出典:NETISとは|新技術情報提供システム]
NETIS制度が設立された背景と目的
NETIS制度は、公共工事における品質確保、コスト縮減、生産性向上、工期短縮、安全確保といった課題を解決するために設立されました。従来の画一的な工法や技術に依存するだけでなく、民間企業が開発した革新的で優れた新技術を積極的に公共工事へ導入することが、その主な目的です。これにより、建設分野全体の技術水準の向上を図るとともに、新技術を開発する企業の育成や競争力の強化も目指しています。NETISは、技術開発者と利用者を繋ぐことで、より良い社会インフラ整備に貢献するための重要な基盤となっています。
NETISの仕組みと登録から活用までの流れ
NETISは、技術開発者が自社の新技術を申請・登録し、公共工事の発注者や施工者がその情報を検索・活用するというサイクルで機能しています。この仕組みによって、優れた技術が埋もれることなく、必要とされる現場へと届けられます。ここでは、新技術がNETISに登録され、実際に活用されるまでの具体的なプロセスと、登録された情報の評価や検索方法について解説します。

STEP解説:NETIS新技術情報の登録プロセス
NETISへの新技術登録は、自社技術の価値を公的に示し、普及させるための重要なステップです。ここでは、申請から登録完了までの具体的な手順を、目的や注意点とあわせて解説します。
- 登録プロセスの概要
・目的: 自社開発の新技術をNETISデータベースに掲載し、全国の公共工事関係者へ情報提供を行うこと。
・必要なもの:
・技術の内容を具体的に説明する資料(技術概要、従来技術との比較データ、施工実績など)
・NETISウェブサイトからの申請者情報登録
・申請様式(オンラインで作成)
手順:
1. 【STEP1】申請者による登録申請
NETISのウェブサイトで申請者情報を登録後、オンライン申請システムを通じて必要事項を入力し、技術説明資料を添付して申請します。この際、従来技術と比較した際の優位性(コスト、工期、品質、安全性など)を客観的なデータで示すことが重要です。
2. 【STEP2】地方整備局などによる申請内容の確認・ヒアリング
申請が受理されると、管轄の地方整備局などの担当者が書類内容を精査します。書類だけでは判断が難しい点や、技術の詳細について、電話や面談によるヒアリングが実施される場合があります。ここでは、技術の具体的な内容や実績について、論理的かつ明確に説明する準備が必要です。
3. 【STEP3】有識者会議による審査
提出された資料とヒアリング内容を基に、学識経験者や専門家で構成される第三者委員会(新技術活用評価会議など)で審査が行われます。技術の新規性、有用性、信頼性などが総合的に評価され、登録の可否が判断されます。
4. 【STEP4】審査結果の通知とNETISデータベースへの掲載
審査を通過すると、申請者に結果が通知され、正式にNETISデータベースに技術情報が登録・公開されます。登録後は、ウェブサイト上で自社の技術情報が検索可能となります。
注意点:
申請内容に不備があった場合や、説明が不十分な場合は、差し戻しや登録不可となる可能性があります。申請前には、公式サイトの「申請・登録にあたって」のページで最新の要件を必ず確認してください。
[出典:申請・登録にあたって|新技術情報提供システム]
登録された情報の評価と分類
NETISに登録された技術は、掲載されるだけでなく、その後の活用実績に応じて評価が行われます。公共工事で実際に技術を活用した施工者や発注者は、その効果に関する調査票(活用効果調査票)を提出します。集約された調査票の内容に基づき、学識経験者による評価会議が開催され、技術の有用性が客観的に評価されます。
評価結果は、「評価未実施技術」「設計比較対象技術」「有用な技術」といった形で分類・公表され、これにより、技術の利用者は、実績や評価に基づいて、より信頼性の高い技術を選択することが可能になります。
NETIS登録情報の検索・活用方法
NETISのウェブサイトでは、登録されている全ての新技術情報を誰でも無料で検索・閲覧できます。検索方法は多岐にわたり、利用者の目的に応じて最適な技術を探し出せるよう工夫されています。
・キーワード検索: 技術名称や特徴など、任意の単語で検索。
・工種による検索: 道路工事、河川工事、橋梁工事など、工事の種類から絞り込み。
・登録番号による検索: 特定の技術の番号が分かっている場合に直接検索。
発注者は工事の設計・積算段階でこれらの情報を参照し、施工者は施工計画の立案や入札時の技術提案などで活用します。
NETISを活用するメリット・デメリット
NETISは、新技術を開発する受注者(企業)と、それを利用する発注者(国や地方公共団体など)の双方に多くのメリットをもたらす制度です。しかし、利用する際には注意すべき点やデメリットも存在します。ここでは、それぞれの立場から見たメリットと、共通の注意点を整理し、制度を多角的に理解することを目的とします。
【発注者側】のメリット
公共工事の発注者がNETISを活用することで、事業の品質や効率を大幅に向上させることが期待できます。
・コスト縮減と工期短縮: 従来技術よりも施工効率が高い新技術を採用することで、工事全体の費用を抑え、工期を短縮できる可能性があります。
・品質と安全性の向上: より耐久性の高い材料や、作業員の安全性を高める工法などを選定でき、公共工事の品質と安全性の向上に直接的に貢献します。
・技術選定の透明性確保: NETISという客観的なデータベースに基づいて技術を比較検討するため、選定プロセスの透明性や公平性が高まります。
【受注者側】のメリット
新技術を開発した受注者がNETISに登録することで、ビジネスチャンスを大きく広げることができます。
・自社技術のPRと普及促進: 全国の公共工事関係者に向けて、自社技術の有用性を効果的にアピールでき、技術の認知度向上と普及促進に繋がります。
・信頼性の獲得: 国のデータベースに登録されることで、技術に対する客観的な信頼性が向上し、営業活動においても有利に働きます。
・公共工事での受注機会拡大: 総合評価落札方式(価格だけでなく技術力も評価して落札者を決める入札方式)において、NETIS登録技術の活用を提案することで、技術評価点が加算される場合があり、受注の可能性が高まります。
【要注意】NETIS利用時のデメリットと対策(読者のよくある不安)
NETISは有用な制度ですが、利用にあたって留意すべき点もいくつか存在します。これらを事前に把握し、対策を講じることが重要です。
- NETIS利用時の主な注意点
・採用が保証されるわけではない: 登録はあくまで技術情報の提供であり、採用を保証するものではありません。各工事の特性やコストに応じて発注者が最終判断を下します。
・申請・管理の手間がかかる: 申請には詳細な資料作成が必要であり、登録後も5年ごとの情報更新や活用効果調査への対応が求められます。
・期待通りの評価が得られない可能性: 活用実績が少なかったり、従来技術に対する優位性が明確に示せなかったりすると、高い評価に繋がらないケースもあります。
これらのデメリットへの対策として、「どの工事で、どのような効果を発揮できるのか」を明確にした提案資料を別途用意したり、活用されやすいように施工マニュアルを整備したりするなど、登録後の普及活動にも力を入れることが成功の鍵となります。
NETIS登録を検討する際のポイント
自社で開発した新技術のNETIS登録を検討する際には、いくつかの重要なポイントを事前に把握しておくことが不可欠です。どのような技術が登録対象となるのか、申請から登録までにかかる費用や期間はどの程度か、そして他の類似制度とどう違うのか。これらの点を理解することで、自社の状況に合わせた最適な判断が可能になります。
どのような技術がNETIS登録の対象となるか?
NETISの登録対象となるのは、建設分野における新技術全般です。これには、新しい工法、材料、機械、システム、ソフトウェア、調査・測量技術などが幅広く含まれます。ただし、登録されるためには以下の基本的な要件を満たす必要があります。
・新規性: 国内で一般的に使用されていない技術であること。
・有用性: 従来技術と比較して、品質向上、コスト縮減、工期短縮、安全性向上などの面で明確な優位性があること。
・信頼性: 安全性が確認されており、実用段階にある技術であること。
単なるアイデア段階の技術や、従来技術と大差がないものは登録の対象外となるため、申請前には自社技術の優位性を客観的に整理しておくことが重要です。
登録にかかる費用と期間の目安
NETIS登録を検討する上で、費用と期間は重要な判断材料です。以下に、申請から登録までの一般的な目安をまとめました。
NETIS登録に関する費用と期間の目安
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 申請費用 | 無料 | 申請手続き自体に費用は発生しません。 |
| 申請準備期間 | 数週間〜数ヶ月 | 技術資料、施工実績データ、比較データなどの必要書類を作成・整理する期間です。 |
| 審査期間 | 約2ヶ月〜4ヶ月 | 申請内容の確認、ヒアリング、有識者会議による審査などに要する期間で、申請時期によって変動します。 |
| 合計期間 | 3ヶ月〜半年程度 | あくまで一般的な目安であり、申請内容の複雑さや修正の有無によっては、これ以上かかる場合もあります。 |
NETISと他の技術評価制度との違いを比較
建設分野にはNETIS以外にも、特定の性能や目的を持つ技術を評価・認証する制度が存在します。自社技術の特性に合わせて最適な制度を選択することが重要です。
| 制度名(例) | 主な目的 | 対象技術の例 |
|---|---|---|
| NETIS | 新技術の「情報提供」と活用促進 | 建設技術全般 |
| 建設技術審査証明事業 | 特定の性能を第三者が「評価・証明」 | 新工法、新材料など、カタログスペックだけでは判断できない性能を持つ技術 |
| リサイクル資材品質認証制度 | 再生材の品質を「認証」 | 再生骨材、再生アスファルト混合物など |
NETISが広く情報を集めて提供する「プラットフォーム」であるのに対し、他の制度は特定の性能を深く掘り下げて「お墨付き」を与える役割を担います。両方の制度を組み合わせて活用することも有効な戦略です。
まとめ
本記事では、新技術情報提供システム「NETIS」について、その目的、仕組み、メリット・デメリット、そして登録を検討する際のポイントまでを網羅的に解説しました。
- この記事の要点
・NETISは、公共工事の品質向上や生産性向上を目指し、優れた新技術の活用を促進するための国土交通省のデータベースです。
・技術開発者は自社技術のPRや信頼性獲得、発注者はコスト縮減や品質向上といったメリットを享受できます。
・登録には一定の手間と時間がかかりますが、無料で申請可能であり、建設業界でのビジネスチャンスを広げるための重要なツールとなり得ます。
この記事を通じて制度への理解を深め、自社の状況に合わせて効果的に活用していくための一助となれば幸いです。
NETISに関するよくある質問
Q:NETISに登録された技術は必ず公共工事で採用されますか?
A: いいえ、必ずしも採用されるわけではありません。NETISはあくまで発注者が技術を検討するための情報を提供するデータベースです。最終的にどの技術を採用するかは、工事の特性やコストなどを考慮して各工事の発注者が総合的に判断します。ただし、総合評価落札方式の入札において、NETIS登録技術の活用を提案することが加点評価に繋がるケースが多く、採用上有利に働く場合があります。
Q:登録情報の有効期限はありますか?
A: はい、あります。原則として、新規登録された技術の情報提供期間は、掲載日から5年間です。期間終了後も掲載を希望する場合は、更新申請が必要です。また、活用効果調査の結果などに基づき特に有用であると評価された技術については、さらに5年間延長され、合計10年間掲載されることがあります。
Q:申請すれば、どんな技術でも登録できますか?
A: いいえ、登録には審査があります。申請された技術が、従来技術と比較して明確な優位性(新規性・有用性)を持つか、また実用段階にあって安全性が確保されているか(信頼性)などが、第三者委員会によって客観的に審査されます。これらの要件を満たさないと判断された場合は、登録されません。




