NETISと補助金・助成金制度の関係とは?使い分けを解説

この記事の要約
- NETISと補助金の違いを「目的」「審査」「管轄」の3点で比較
- 公共工事の受注増にはNETIS、設備投資の資金調達には補助金を活用
- NETIS登録のメリット・デメリットと、申請前に知るべき注意点を解説
NETIS(新技術情報提供システム)とは?基本を解説
NETIS(New Technology Information System)とは、国土交通省が運営する、新技術の情報を共有し公共工事での活用を促進するためのデータベースです。目的はあくまで「技術情報の共有と活用促進」であり、事業者へ直接資金を提供する補助金・助成金とは性質が全く異なります。まずは、このNETISの基本的な仕組みと、企業が活用するメリット・デメリットについて正確に理解しましょう。
NETISの目的と仕組み
NETISの最大の目的は、民間企業などによって開発された有用な新技術の情報を広く共有し、公共工事の生産性向上や品質確保を促進することにあります。
具体的には、企業から申請された新技術を国土交通省が審査し、有用と認められたものをデータベースに登録・公開します。公共工事の発注者はこのデータベースを閲覧し、工事に活用できそうな技術を探すことができます。これにより、発注者側はより効率的で質の高い工事を実現でき、技術を持つ企業側は自社の技術をアピールする機会を得られるという、双方にとってメリットのある仕組みです。
[出典:国土交通省 NETIS 新技術情報提供システム]
NETISに登録する企業側のメリット
企業が自社の技術をNETISに登録申請し、承認されることには、金銭的な支援とは異なる、事業拡大に繋がる3つの大きなメリットが存在します。
- NETIS登録の3大メリット
・公共工事での受注機会の拡大
公共工事の入札方式の一つである「総合評価落札方式」において、NETIS登録技術の活用を提案すると、技術評価点が加算されます。・技術の信頼性向上
NETIS登録は、その技術が国(国土交通省)によって「有用な新技術」であると客観的に認められたことを意味し、社会的信頼性が格段に向上します。・高いPR効果
NETISのデータベースは誰でも閲覧可能なため、登録自体が全国の潜在顧客に対する強力なPR活動となり、広告費をかけずに技術力をアピールできます。
【要注意】NETIS登録のデメリットと申請前の注意点
多くのメリットがある一方で、NETIS登録にはいくつかの注意点も存在します。これらを事前に理解しておくことで、より戦略的に制度を活用できます。
・登録に時間がかかる
申請から登録までには、書類の審査やヒアリングなど複数のステップがあり、数ヶ月から1年以上かかる場合もあります。すぐに公共工事の入札に参加したい場合には、スケジュールに余裕を持った申請計画が必要です。
・技術情報の公開が必要
NETISは技術情報を「共有」するためのシステムです。そのため、登録申請にあたっては、技術の核となるノウハウや詳細なデータをある程度公開する必要があります。どこまで情報を開示するかは、企業の知財戦略と照らし合わせて慎重に判断しなければなりません。
・登録後の活用報告義務
NETISに登録された技術を公共工事で活用した場合、施工業者には活用効果に関する調査票の提出が求められます。自社が施工しない場合でも、技術提供者として施工業者への説明や協力を求められることがある点を念頭に置いておきましょう。
【資金調達の選択肢】補助金・助成金制度とは?
補助金や助成金は、国や地方公共団体が特定の政策目標(例:中小企業の生産性向上、DX推進、雇用創出など)を達成するために、事業者の取り組みに対して資金の一部を交付する制度です。最大の特徴は、融資とは異なり原則として返済が不要である点です。事業の新規投資や拡大を考える事業者にとって、非常に重要な資金調達手段の一つと言えるでしょう。
補助金と助成金の目的と違い
返済不要という点は共通していますが、「補助金」と「助成金」はその性質や目的において明確な違いがあります。一般的に、補助金は競争性が高く、助成金は要件を満たせば受給しやすいという特徴があります。自社の目的がどちらに適しているか、以下の表で確認しましょう。
補助金と助成金の比較表
| 補助金 | 助成金 | |
|---|---|---|
| 目的 | 新規事業や設備投資など、国の政策目標達成のため | 雇用の安定や労働環境の改善など、厚生労働省が管轄するものが中心 |
| 審査 | 審査があり、採択件数や予算に上限がある(競争性が高い) | 要件を満たせば原則として受給できる(競争性が低い) |
| 管轄 | 経済産業省、地方自治体など | 厚生労働省が中心 |
事業者が活用できる主な補助金・助成金
事業の成長や経営課題の解決に役立つ補助金・助成金は数多く存在します。ここでは、特に知名度が高く、多くの事業者に活用されている代表的な制度をいくつか紹介します。
- 代表的な補助金・助成金の例
・事業再構築補助金:新分野展開や事業転換など、思い切った事業再構築を支援。
・ものづくり補助金:革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善の設備投資等を支援。
・IT導入補助金:業務効率化のためのITツール導入経費を補助。
・小規模事業者持続化補助金:小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みを支援。
・雇用調整助成金:事業活動の縮小時に従業員の雇用維持を図る事業主を支援。
注意:各制度には公募期間や詳細な要件があります。活用を検討する際は、必ず各制度の公式サイトで最新の情報をご確認ください。
NETISと補助金・助成金の戦略的な関係性と使い分け
NETISは「技術の信頼性証明と販路開拓」、補助金・助成金は「直接的な資金調達」と、それぞれ目的が異なります。しかし、これらは全くの無関係ではなく、戦略的に連携させることで相乗効果を生む可能性があります。ここでは、両者の関係性を深く掘り下げ、企業の目的別に最適な活用方法を解説します。

NETIS登録は補助金の審査で有利になる?
結論から言うと、NETIS登録が補助金の審査項目として直接的な加点対象になるケースはほとんどありません。
しかし、補助金の申請書では、事業計画の「革新性」や「優位性」、「実現可能性」を具体的に示す必要があります。この際、「当社の技術は国土交通省のNETISに登録されており、客観的な優位性が認められています」と記載することで、審査員に対する強力なアピール材料となります。口頭での説明だけでなく、国が認めた客観的な事実として提示できるため、事業計画全体の説得力を大きく高める効果が期待できるのです。
目的別:NETISと補助金のどちらを優先すべきか
自社の現在の事業フェーズや、短期的な目標に応じて、どちらの制度を優先的に活用すべきか戦略を立てることが重要です。以下の表を参考に、自社の状況と照らし合わせてみてください。
目的別のNETISと補助金・助成金の使い分け
| 目的 | 優先すべき制度 | 理由 |
|---|---|---|
| 公共工事の受注拡大、技術の信頼性向上 | NETIS | 公共工事の入札で加点評価されるため、直接的な受注機会の増加に繋がる。まずは市場での実績と信頼を確立したい場合に最適。 |
| 新製品開発や設備投資の資金調達 | 補助金・助成金 | 開発や投資にかかる費用の一部を直接的に補助してくれるため、資金繰りを助ける。技術はあるが、製品化や量産化の資金が課題の場合に有効。 |
| 販路開拓、マーケティング強化 | 補助金・助成金 | 広告宣伝費や展示会出展費用などが対象となる補助金がある。製品や技術を市場に広めるための資金確保が目的の場合に活用。 |
NETIS活用を検討する際のよくある不安と解決策
NETIS登録には多くのメリットがありますが、申請を検討する事業者からは手続きの複雑さや費用に関する不安の声も聞かれます。しかし、これらの不安は事前の情報収集と適切な準備によって解消することが可能です。ここでは、代表的な2つの疑問にお答えし、具体的な解決策を提示します。
申請手続きは複雑で難しい?
確かに、NETISの申請には技術の内容を詳細に説明する書類や、既存技術との比較データなど、専門的な資料の準備が必要です。自社だけで全てを準備するのが難しいと感じる場合もあるでしょう。
その際の解決策として、以下の2つが挙げられます。
1. 専門家のサポートを活用する
行政書士など、NETIS申請のサポートを専門に行う専門家が存在します。書類作成の代行やアドバイスを受けることで、申請の負担を大幅に軽減し、採択の可能性を高めることができます。
2. 地方整備局の相談窓口を利用する
国土交通省の各地方整備局には、NETIS申請に関する相談窓口が設置されています。申請方法や書類の書き方について直接相談できるため、積極的に活用することをおすすめします。
[出典:国土交通省 地方整備局等所在地一覧]
費用はどのくらいかかる?
NETISへの申請および登録自体に、国へ支払う手数料などの費用は一切かかりません。これは事業者にとって大きなメリットです。
ただし、前述の通り、申請書類の作成を行政書士などの専門家に依頼する場合には、その報酬が別途発生します。費用は依頼する専門家や業務範囲によって異なりますので、事前に複数の事務所に見積もりを依頼し、比較検討すると良いでしょう。
まとめ:事業成長に向けた次のアクションプラン
本記事では、NETISと補助金・助成金制度について、その違いから関係性、戦略的な使い分けまでを網羅的に解説しました。両制度を効果的に活用し、事業成長を加速させるために、次のようなステップで検討を進めることを推奨します。
- 事業成長に向けた次のアクションプラン
・ステップ1:自社の現状と目標の明確化
まずは「技術の信頼性を高め公共工事に参入したいのか」「新製品開発のための資金が欲しいのか」など、最も優先すべき経営目標を明確にします。・ステップ2:各制度の情報収集
目標に合わせて、NETISの申請要領や、 relevantな補助金・助成金の公募要領を公式サイトで確認します。・ステップ3:専門家への相談
必要に応じて、NETIS申請なら行政書士、補助金申請なら中小企業診断士やコンサルタントといった専門家への相談を検討し、具体的な準備を開始します。
これらの制度は、どちらが優れているというものではなく、あくまでもツールです。自社の状況を整理し、最適な制度を賢く使いこなしてみてください。
よくある質問
Q1:NETISに登録すれば、必ず公共工事が受注できますか?
A1:必ず受注できるわけではありません。NETIS登録は総合評価落札方式において加点要素の一つとなりますが、最終的な落札は価格や他の技術提案なども含めて総合的に判断されます。しかし、受注の可能性を高める非常に有効な手段であることは間違いありません。
Q2:補助金と助成金は、両方同時に申請できますか?
A2:目的や対象経費が重複しなければ、両方を同時に申請・受給することも可能です。例えば、厚生労働省の助成金で従業員の雇用環境を整えつつ、経済産業省の補助金で新たな設備投資を行う、といった活用が考えられます。ただし、同一の経費に対して複数の補助金・助成金を受け取ることはできません。
Q3:地方の中小企業でもNETISに登録できますか?
A3:はい、企業の所在地や規模に関わらず、新規性のある優れた技術であればどんな企業でも申請・登録が可能です。実際に、多くの地方中小企業が自社の独自技術をNETISに登録し、事業拡大に繋げています。




