【2025年最新版】CIMの基本とは?最新動向を総まとめ

この記事の要約
- CIMの基本を3分で理解し、明日から語れる知識が身につく
- 国交省の最新動向から、2025年の原則適用に備える方法がわかる
- CIM導入の課題と、失敗しないための具体的な対策を学べる
- 目次
- CIM(シム)とは?建設業界の未来を変える核心技術
- 3次元モデルと属性情報で構成される「情報のかたまり」
- なぜ今CIMが注目されるのか?建設業界の課題と国の狙い
- 業界の構造的課題を解決する「i-Construction」
- CIMが実現する「フロントローディング」という考え方
- 【2025年最新】国土交通省が推進するCIMの動向と必須対応
- 2025年度「BIM/CIM原則適用」への具体的な準備
- CIM活用のためのガイドラインと標準化のポイント
- CIM導入を成功させるための3ステップ
- CIM導入前に押さえるべき4つの課題と対策
- 課題1:初期投資と運用コスト【対策案あり】
- 課題2:専門人材の育成と確保【対策案あり】
- 課題3:データ作成の工数増加【対策案あり】
- 課題4:地理的条件への対応【対策案あり】
- CIMとBIM、CADの明確な違いとは?
- 【表で比較】対象分野が異なるCIMとBIM
- 【表で比較】目的が根本的に異なるCIMとCAD
- まとめ:CIMを理解し、建設業界の変革をリードする
- CIMに関するよくある質問(FAQ)
CIM(シム)とは?建設業界の未来を変える核心技術
CIM(シム)は、建設事業の全プロセスに3次元モデルを導入し、関係者間で情報を連携・活用することで生産性を抜本的に向上させる取り組みです。単なる3Dデータ作成に留まらず、設計から施工、維持管理までの情報を一元化することで、手戻りの削減や品質向上を実現します。国土交通省が推進するi-Constructionの柱であり、今後の建設業界のスタンダードとなる重要な概念です。

3次元モデルと属性情報で構成される「情報のかたまり」
CIMは、単なる3Dモデルではありません。以下の2つの要素を組み合わせることで、その真価を発揮します。これにより、3次元の形状に多様な「情報」が結びついた、いわば「デジタルツイン」のようなモデルが構築されます。
- CIMモデルの構成要素
・3次元モデル
対象となる構造物や地形の形状を立体的に表現したものです。これにより、平面図では分かりにくかった構造や部材同士の干渉箇所などを直感的に把握できます。視覚的な理解が深まることで、関係者間の合意形成がスムーズになります。・属性情報
3次元モデルに付与される、部材の名称、寸法、材質、強度、コスト、製造元といった多様な情報です。これにより、モデルが単なる「形」から、詳細なデータを持つ「情報のかたまり」へと進化し、様々なシミュレーションや数量算出の自動化が可能になります。
なぜ今CIMが注目されるのか?建設業界の課題と国の狙い
CIMが国を挙げて推進されている背景には、日本の建設業界が直面する、避けては通れない深刻な課題があります。これらの課題を克服し、持続可能な建設産業を実現するための切り札としてCIMに大きな期待が寄せられています。業界全体の構造変革を目指す上で、CIMの導入は不可欠なステップと位置づけられています。
業界の構造的課題を解決する「i-Construction」
日本の建設業界は、以下のような構造的な課題を長年抱えています。
・生産性の低迷
他の産業と比較して、建設業界の生産性向上は長年の課題とされてきました。労働集約的な作業が多く、IT化や自動化が遅れていることが一因です。
・担い手不足と高齢化
若年層の入職者減少と、熟練技術者の高齢化・退職が同時に進行しており、将来的な技術継承が危ぶまれています。
・長時間労働の常態化
複雑な工程管理や天候による影響、設計変更による手戻りなどが、長時間労働の一因となっています。
これらの課題を解決するため、国土交通省は2016年からi-Constructionを推進。その中心的な取り組みとして、ICT技術を活用して建設生産プロセス全体を効率化するCIMの導入が強力に推し進められています。
CIMが実現する「フロントローディング」という考え方
CIMは、建設プロセスに先進的な考え方を導入することで、生産性向上を目指します。その中核となるのがフロントローディングです。
- フロントローディングとは?
プロジェクトの初期段階である計画・設計段階(上流工程)に、コストや労力を重点的に投入する考え方です。3次元モデルを使って事前に問題点を徹底的に洗い出して解決することで、施工段階での手戻りや仕様変更をなくし、プロジェクト全体のコストと工期を最適化します。
【2025年最新】国土交通省が推進するCIMの動向と必須対応
CIMの活用は、もはや一部の先進的な取り組みではなく、業界全体の標準となりつつあります。特に、国土交通省が管轄する公共事業においては、活用の流れが加速しており、2025年度が一つの大きな節目となります。事業者にとっては、この動向への対応が急務であり、ガイドラインの理解と技術の習得が不可欠です。
2025年度「BIM/CIM原則適用」への具体的な準備
国土交通省は、建設現場の生産性向上を目指す「i-Construction」の取り組みをさらに加速させるため、2025年度までに小規模なものを除くすべての公共事業において、BIM/CIMを原則適用する方針を掲げています。
これにより、CIMの活用は「推奨」から「必須」の段階へと完全に移行します。発注者から提出される3次元データをもとに業務を進めることが標準となり、対応できない事業者は公共事業への参入が困難になる可能性があります。
CIM活用のためのガイドラインと標準化のポイント
CIMの円滑な導入と事業者間のスムーズなデータ連携を実現するため、国土交通省は各種ガイドラインや要領を整備・公開しています。これらは、3次元モデルの作成方法、属性情報の付与ルール、成果品の納品形式などを標準化し、誰が作成しても同じ品質のデータがやり取りできるようにするためのものです。
定期的に改訂が行われており、常に最新の情報を確認することが重要です。
BIM/CIMに関する基準類 - 国土交通省 BIM/CIMポータルサイト
CIM導入を成功させるための3ステップ
CIM導入を成功に導くためには、闇雲にツールを導入するのではなく、戦略的なステップを踏むことが重要です。ここでは、導入を検討する企業がまず取り組むべき3つのステップを解説します。これらの手順を踏むことで、導入後の混乱を防ぎ、着実に成果を出すための土台を築くことができます。
・1. 導入目的の明確化とスモールスタート
まず、「なぜCIMを導入するのか」という目的を明確にします。「生産性を20%向上させる」「手戻り工数を30%削減する」など、具体的な目標を設定することが重要です。最初から全社展開を目指すのではなく、特定の部署やパイロットプロジェクトで試験的に導入し、成果と課題を検証するスモールスタートが有効です。
・2. 推進体制の構築と人材育成計画
CIM導入を推進する中心的なチームを組織します。経営層、設計、施工、IT部門などからメンバーを選出し、全社的な協力体制を築きます。同時に、社員のスキルレベルに応じた段階的な育成計画を策定し、外部研修やOJTを組み合わせて、継続的に人材を育てていくことが成功の鍵となります。
・3. ガイドラインに準拠した環境整備
国土交通省のガイドラインに準拠したソフトウェアやハードウェアを選定し、社内の標準ルールを策定します。データの命名規則や共有方法、モデルの作成基準などを統一することで、組織内および協力会社とのスムーズなデータ連携が可能になります。
CIM導入前に押さえるべき4つの課題と対策
CIMは強力なツールですが、その導入効果を最大化するには、事前に潜在的な課題を理解し、対策を講じることが不可欠です。ここでは、多くの企業が直面する4つの代表的な課題と、それらを乗り越えるための具体的な対策をセットで解説します。計画段階でこれらを織り込むことで、スムーズな導入と早期の成果実現を目指しましょう。
課題1:初期投資と運用コスト【対策案あり】
【課題】
CIMに対応した高機能なソフトウェアや、大容量のデータを快適に扱うための高性能なPCの導入には、数百万円単位の初期投資が必要になる場合があります。また、ソフトウェアの年間ライセンス費用やシステムの維持管理費といった、継続的なランニングコストも考慮しなければなりません。
【対策】
・クラウドサービスの活用
・補助金・助成金の調査
・スモールスタート
課題2:専門人材の育成と確保【対策案あり】
【課題】
CIMを効果的に活用するには、ツールの操作スキルに加え、3次元モデリングや属性情報の付与ルールなど、専門知識を持つ技術者が必要です。しかし、このようなスキルを持つ人材は市場で不足しており、育成にも時間がかかるため、多くの企業で人材確保が課題となっています。
【対策】
・段階的な育成計画の策定
・外部リソース(コンサルタント等)の活用
・社内ナレッジ共有の仕組み構築
課題3:データ作成の工数増加【対策案あり】
【課題】
従来の2次元図面に比べ、詳細な属性情報を付与した3次元モデルの作成には、相応の工数がかかります。特に導入初期は、作業に不慣れなため、設計段階での作業時間が一時的に増加し、業務を圧迫する可能性があります。
【対策】
・標準化とテンプレート化の推進
・属性情報の入力規則の策定
・プロジェクト目的に応じたモデル詳細度の定義
課題4:地理的条件への対応【対策案あり】
【課題】
CIMモデルの基礎となる地形データは、ドローンや3Dレーザースキャナで計測しますが、山岳地帯や樹木が密集する場所では、正確なデータ取得が困難な場合があります。不正確なデータはモデル全体の精度に影響を及ぼす可能性があります。
【対策】
・最適な測量手法の選択(複数の技術を組み合わせる)
・既存図面等を活用したデータ補完
CIMとBIM、CADの明確な違いとは?
建設業界のデジタル化を語る上で、「CIM」「BIM」「CAD」といった言葉がよく使われますが、それぞれの違いを正確に理解することは非常に重要です。これらは似ているようで、目的や対象分野が根本的に異なります。ここでは、それぞれのツールの役割と関係性を整理し、その違いを分かりやすく解説します。
【表で比較】対象分野が異なるCIMとBIM
CIMとBIMは、3次元モデルに情報を付与して活用するという基本概念は同じですが、対象とする分野が異なります。一言でいえば、CIMは土木、BIMは建築で使われる概念です。
CIMとBIMの対象分野の違い
| CIM (Construction Information Modeling) |
BIM (Building Information Modeling) |
|
|---|---|---|
| 主な対象 | ダム、トンネル、橋梁、道路など土木・インフラ分野 | ビル、病院、マンションなど建築分野 |
| 特徴 | 複雑な地形や広範囲を扱い、規格化が難しい | 規格化された部材が多く、比較的定型的な設計 |
※日本では土木分野をCIM、建築分野をBIMと呼び分けていますが、国際的には「BIM for Infrastructure」としてBIMに統合される考え方が一般的です。
【表で比較】目的が根本的に異なるCIMとCAD
CADは「Computer-Aided Design(コンピュータ支援設計)」の略で、主に図面を作成するためのツールです。CIMがプロセス全体の情報管理を目指すのに対し、CADは設計という特定のフェーズを効率化するツールという位置づけになります。
CIMとCADの概念の違い
| CIM | CAD (Computer-Aided Design) |
|
|---|---|---|
| 目的 | 情報の統合と活用によるプロセス全体の効率化 | 図面の作成 |
| 次元 | 3次元モデルに属性情報を付与 | 主に2次元(3次元機能もある) |
| 情報量 | 形状情報+コスト、材料、工程などの多様な情報 | 形状情報(線や図形)が中心 |
| 連携 | 設計から施工、維持管理まで情報を引き継ぐ | 各工程で図面を作り直すことが多い |
まとめ:CIMを理解し、建設業界の変革をリードする
この記事では、CIMの基本概念から2025年に向けた国土交通省の最新動向、導入成功のステップ、そして事前に知るべき課題と対策まで、網羅的に解説しました。
CIMは、単なる3D作図ツールではなく、建設生産プロセス全体を革新し、生産性向上、品質確保、そして働き方改革を実現するための強力なソリューションです。計画から設計、施工、維持管理までの全工程で情報を連携させることで、これまで分断されていた業務を繋ぎ、業界全体の効率化を促進します。
2025年の原則適用は目前に迫っています。この記事で得た知識をもとに、まずは社内で情報共有を行う、小規模なプロジェクトでの導入を検討するなど、具体的な第一歩を踏み出すことが、これからの建設業界で勝ち残るための必須条件と言えるでしょう。
CIMに関するよくある質問(FAQ)
Q1:CIMを導入すれば、必ず生産性は上がりますか?
A1:CIMは生産性向上に大きく貢献するツールですが、導入するだけで自動的に成果が出るわけではありません。導入目的を明確にし、既存の業務プロセス全体を見直すとともに、継続的な人材育成を行うことが成功の鍵となります。ツールを「使うこと」が目的になるのではなく、ツールを使って「何を解決したいか」を常に意識することが重要です。
Q2:中小企業でもCIMを導入することは可能ですか?
A2:可能です。近年は、比較的手頃な価格のソフトウェアや、初期投資を抑えられるクラウド型のサービスも増えており、中小企業にとっての導入ハードルは下がりつつあります。国や自治体の補助金を活用したり、複数の企業で共同投資を行ったり、必要な時だけ利用できるリースなどを活用し、スモールスタートで始めることも有効です。
Q3:CIMを学ぶにはどうすればよいですか?
A3:学習方法は多岐にわたります。各ソフトウェアベンダーが提供する公式の研修やセミナー、オンライン講座などが充実しています。また、関連書籍や国土交通省が公開しているマニュアル、各種ガイドラインも学習の助けになります。まずは基本的な知識を身につけ、実際にソフトウェアの体験版などを操作してみることをお勧めします。




